CHAPTER H[aus]エンジニア樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第 91回
前回に引き続きOYAIDEの電源ケーブルを取り上げます。
(写真)OYAIDE BLACK MAMBA-Σ V2
BLACK MAMBA-Σ V2は、OYAIDEの電源ケーブルの中でもクオリティー、プライス共に上位に値し、オールマイティーに使用できる実力のある逸品です。先月ご紹介した同社製TSUNAMIより多少レンジは狭いのですが、スピード感はピカイチ。アウトボード、ギターアンプ、ベースアンプ、キーボードなどに使用するのがおすすめです。
【大学生バンドのセルフREC】
以前からレコーディングしている「テンポチェンジありオルタナロック」のミックス作業。
この曲は全体的にドライに録られている。しかしメンバーからは、仕上がりをウエットにしたい、という意見が出た。
ウエットな仕上がりを目指すべく、今回はホールリバーブではなくプレートリバーブを使用する。
この曲は曲中でテンポチェンジがある( BPM126 – 151 – 126 )ので、プリディレイとリバーブタイム(Decay)を変えたプレートリバーブを、「BPM126用」「BPM151用」と2種類用意した。
それに伴いAuxiliary Track(オグジュアリ トラック)も2つ作る。
Auxiliary Trackは簡単に言うと「補助トラック」。
河川の流れに例えるなら、通常のオーディオトラックが本流、Auxiliary Trackは支流というイメージ。
本流から一旦分岐した(SEND)支流が、リバーブを付加して再び合流(RETURN)する。
Auxiliary はAuxと略され、こちらの表記を目にする機会が多くなっている。
【今月のMV】星野由美子「ソレイユ」
https://www.youtube.com/watch?v=lOhrHsH0Hho
J-WAVE系ボサノバ、カリプソ、ソンゴ、サンバ、そしてネオ渋谷系がほどよくブレンドされた、ハイソなポップチューン。当スタジオが、作編曲、REC、MIX、マスタリングの全工程に関わっています。
【今月のちょいレア】UNIVERSAL AUDIO 2-1176
レコーディングに関わる人なら間違いなく耳にする高級ブランド「UNIVERSAL AUDIO」のコンプの、2chバージョン。洋楽のロックサウンドで聴けるスネア、キックの音が他機より容易に作れる名機。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表
レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター
Whirlpool Records/brittford主宰
専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください
当スタジオで制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します
YOU「HIKARU-TOBERU」
ロックバンド LITTLE RED PUZZLEリーダー、Vo.&G.のYOU氏のソロアルバム。70’s欧米のR&Rやアシッドフォークに影響を受けたであろう楽曲群に、YOU氏独特のハスキーボイスが結合し、独自の空気感を作り上げている。オールドロック好き必聴。
栁かおりと酒呑み野郎共「酒呑みブルース」
1940~70年代あたりの昭和歌謡をデフォルメし、独自のフィルターを通して練り上げた「もう一つの昭和歌謡」。One&Onlyの楽曲とアレンジに乗って、ニッチでエグい歌詞を歌い上げる栁かおり氏の歌声が、ハイカラでディープな化学反応を起こしている。
ZERo「AMETHYST DISSONANCE」
日本の古典文化とロック、ポップスを融合させた新世代ポピュラーミュージック。ZERo氏の低音ヴォイスとクラシカルな歌詞、西洋サウンドに首尾よく絡む和楽器群など、どこをとってもオリジナリティーに溢れている。
YAPOOL「JUMBLE」
今、「ロックとは何ぞや」と問われたら「YAPOOL」と答えてしまう。今回のアルバムはそのくらい、高純度の精神論を超越した何かを感じる。一度ルーツに帰化し、その周辺に潜むロックの栄養素と共に根こそぎ掘り起こして、自分たちのセンスにフィードバックしているのだろう。