2012年のインディ・シーン最注目バンド、root13.が放つ待望の2ndミニアルバム『傷痕/少女/想像/6月』。「リリィのいない部屋」のような蒼い衝動を駆り立てるroot節全開のギターロックだけでなく、メロパン・テイストも含んだアレンジで驚かせるM-3「マゼンダ」、幾度のリアレンジを経て完成したM-7「203号室(見離された子の部屋ver.)」など、新しい一面を覗かせる作品となっている。活動を重ね変化を遂げた、彼らの成長の軌跡を感じ取って欲しい。
●今作は、前作『窓際/少女/水槽/2月』と対になっているように感じたんですが…前作が「リリィ」という曲で終わって、今作はM-1「リリィのいない部屋」で始まるあたり、曲順もかなり意識されたんでしょうか?
オオタ:そうですね。今回のアルバム制作が決まった時点で、「リリィのいない部屋」を1曲目にしようと決めていました。「リリィ」は、“リリィ”と“僕”という2人の登場人物が、知り合ってから距離を縮めていく過程の話なんですけど、「リリィのいない部屋」はリリィがどういう人だったかを“リリィと一緒にいた誰か”が主観的に説明しているというか、時間軸でいうと「リリィ」より後の話なんです。
●オオタさんの書く歌詞は物語の展開が整然としているし、韻の踏み方が洗練されていて綺麗ですよね。
オオタ:歌詞カードを見る前に曲を聴いて自分で「こういう歌詞だ」と思い込んでいて、いざ歌詞カードを見たら全然違って「本当はこんなこと言ってたんだ」っていう時ありませんか? 僕はその感覚がすごく好きで。
●あ、それわかります。特にオオタさんは、歌詞をすごく大切にしているように感じます。
オオタ:言葉はかなり大事にしていますね。僕は昔から音楽をやっていたわけじゃないので、音だけでイメージを伝えるという感覚があまりないんです。でもメロディーに乗せた言葉は、普通に喋った言葉より心に入ってきやすいというのはすごく実感していて。
●音単体じゃなくて、言葉とメロディーを組み合わせた時の雰囲気を大事にしているんですね。
オオタ:雰囲気や人間味は大切ですね。同じビートでも、機械と人間が叩いた音とは全然違いますからね。人間が叩いた音には叩いた人の血の流れみたいなのを感じます。両方の要素を上手く取り入れながら、曲によって差をつけたいなと思って。例えばM-3「マゼンダ」はリズムマシーン的な音を、できるだけ人力で表現しているんですよ。今までになかった試みから生まれた曲ですね。
ナカジマ:今までだったら「こういう感じでやればいいかな」っていうイメージあったんですけど、この曲はメンバー間でそれぞれの考え方・イメージを作るのが大変でした。
●でも、随所でナカジマさんのコーラスが光ってますね。M-7「203号室」の“昨日もいらない 明日もいらない”というボーカル部分も素敵だと思います。よく聴くと、オオタさんが裏で違う歌詞を歌われていますよね。
オオタ:“どこにもいたくないなら 帰ろう帰ろう 帰る場所はどこ? 203号室 白いシーツ 赤いソファー青い目で笑った”って歌ってるんですよ。口では“明日もいらない”なんて言ってるけど、頭では口に出来ない別の事を考えているというのを表現したかったんです。「203号室」っていう曲は前のシングル(2012年6月リリース『6月の花嫁』収録)にも入っていたんですけど、アレンジが全然違うんですよ。もともと弾き語りVer.で出して、次にアコースティックVer.を出したんですけど、今回はその両方を足した完成形という感じです。さらに“見放されたこの部屋には あなただけ残った”、という歌詞が“見離された「子」の部屋”になっていて。
●それによって、“あなた”のニュアンスが大きく変わってきますね。
オオタ:そうなんです。アルバムに入れた時“やっと完成した”って思いましたね。
●アルバムがひとつの集大成になるんですね。そして最後にはボーナストラックが入っていますが。
オオタ:この曲、レコーディングに入った段階ではまだタイトルと、ある1行の歌詞以外出来てなかったんです。ミックス中に詩や曲を書いて。朝方に出来た曲をその日の午後に録ったんでしたっけ?
ナカジマ:私は受け取ってからレコーディングまで30分も経ってなかったかもしれない(笑)。
ハタケヤマ:歌もその場で練習してましたからね(笑)。
●ある意味すごい(笑)。みなさん的に、今作はどんなアルバムだと思いますか?
オオタ:今まで僕らの作った曲は、どれも青や白の曲ばっかりなんですよ。前作と今作は、1人の人間の過去と現在のような、2枚で1つの繋がりを持っているものにしようと思っていたから、当然青色や白色になると思っていたんですけど…時間が経つにつれて、曲中に登場する“少女”の思想が深みを増しているように感じたんです。
●というと?
オオタ:今までは主に、目に見える悲しさや喜びを表現していたんですけど、今回は言葉とは裏腹な頭の中や人の痛みに一歩踏み入った部分まで曲にしたという感じです。その結果、多くの曲に赤色が見えたんですよね。
●オオタさんは、よく色を使った表現をされますね。
オオタ:僕には少し共感覚があるらしくて。今までの曲は青か白の曲ばかりだったんですけど、最近は赤色がよく見えるようになってきて。
●ちなみに、どういうものが赤色に見えるんですか?
オオタ:人間の深い部分を表現する言葉とか、ずっしりとした音。あとは、機械的な言葉も。
●それは“人間の深い部分”と相反するのでは?
オオタ:ある意味、どっちも人間味が薄いと思うんです。極端に深い言葉も機械的な言葉も、すっと受け入れられない。どっちも赤色なのはそういう理由かなと。
●確かに。
オオタ:だからジャケットにも赤系の色を入れてもらいました。初めは真っ赤にしたかったんですけど、「それだと初めて見た人たちにroot13.のことがちゃんと伝わらないかも知れないよ」と絵描きのフクザワさんに言われて、ものすごく納得して、赤系の色・青・白を入れてもらう事になりました。
●まだ知らない人たちにも、今までの軌跡が見えるようにしたかったんですね。
オオタ:誰が振り返って見ても“最初に比べてここで何か変化があったんだな”っていうことを解ってもらえたらいいなと考えています。
Interview:森下恭子
Assistant:K.Tanabe