CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の
セルフRECはプロRECを越えられるか? 第74回
今回取り上げるマスターレコーダーはTASCAM DV-RA1000です。
DSD [Direct Stream Digital]と呼ばれる、ハイエンドアナログのようなデジタルフォーマット方式を採用、従来のPCMフォーマットも選べる先進的な機種であり、発売当初(2005年ごろ)大変話題になりました。
音質面でも、当時のマスターレコーダー群の中でダントツに良く、現在の同様機種と比較しても十分通用する代物です。
またリアパネルにあるUSBポートとPCを接続すると、PC側がDV-RA1000を「CDドライブとして」認識するので、いとも簡単に高品位なマスターが製作できます。
特筆すべきは、高水準なダイナミック系エフェクターが搭載されている点です。
現行品の同種プラグインと比較しても劣ることはありません。
残念ながらすでにディスコンとなっている機材ですが、中古市場では3万円後半~5、6万くらいで見かけることもあります。興味のある方はぜひチェックしてください。
【大学生バンドのセルフREC】
【アジカン風ギターロック】のコーラス差し替えは、グレードアップさせたキューボックスのおかげで比較的短時間で済ませることができた。
次は【ミスチル風バラード】のコーラス録り。
この曲は音数が少ないので、ごまかしが全く効かない。
コーラスはAメロからアウトロまで、曲全体にわたって入っている。
特にBメロとサビは、上下のコーラスでがっちり固めるだけでなく、ダブリングまで入れるのでかなりの精度が要求される。
使用するマイクは、世界中のレコスタの定番NEUMANN U87Ai。
通常のU87Aiに「エンハンスド・オーディオ」と呼ばれるオーディオアクセサリーを装着した。
(写真の丸い銀色の金属パーツ部分、上部の黒い部品はポップガード)
マイクを固定する金属パーツはサスペンションまたはショックマウントと呼ばれ、REC時の床から伝わる低周波振動などをある程度分散させ、少しでもクリアな音像を録音する役割を担っている。
この「エンハンスド・オーディオ」もサスペンションの一種だが、サスペンションの役割に加え「マイク本体から出る振動そのものを抑えられる」ので、さらにピントのあった音像が期待できる。
まずAメロ1の下ハモからチャレンジすることにした。
【今月のちょいレア】ACOUSTIC REVIVE
Absolute-POWER CORD
POWER SENSUAL MD
ACOUSTIC REVIVE社の頂点に位置する、超ド級電源ケーブル。このケーブル達によってもたらされるスーパーフラットなエネルギー感は、他の追随を全く許さない。
【今月のMV】Cuicks 「indie pop fan club[guitar pop version]」
ヨーロッパのライブハウスの空気感がセンシティブに充満する、洗練されたレトロフューチャーエレポップのMV。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
magenta 「shine」
直球ではなく、少し斜めからみたオルタナピアノロック。UKプロジェクト的サウンドと、現在進行形ブリットポップの融合系ともとれる意欲作。
Cuicks 「indie pop fan club [guitar pop version]」
2021年3か月連続リリース第一弾として、各種サブスクにて配信中。
ツイッター上で、伝説のテクノポップバンド「プラスチックス」のメンバーから直々にコメントをもらったことでも盛り上がっている。
THE ECHO DEK「my friend」
5か月連続リリースの第三弾。70年代のAl Greenや80年代のAl B. Sure!を彷彿とさせながら、2020年代ソウルサウンドもさりげなく細部に散りばめられている。Spotify公式プレイリスト「Edge!」にも選曲された。
COLLAPSE 「VERTIGO」
国内シューゲイザー名門レーベルOnly Feedbacj Recordが放つ、2021年第一弾シングル。轟音に埋もれない、アンニュイなウィスパーボイスも健在だ。彼らの楽曲の幅広さを感じさせる一曲。
V.A.「ULTRA HIGH BEAM 2021」
大手インディーレーベルHIGH BEAM RECORDのコンピレーション盤第二弾。全国より選び抜かれた精鋭15バンドが参加、当スタジオでは11曲目BONNET MONKEYのRECを担当。全国発売中。