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サンデーカミデ(ワンダフルボーイズ)

この天才音楽家は、まだ自分の才能に気づいていない。迷走した10年を経てたどり着くだろう、“本当の自分”と“かけがえのない音楽”にJUNGLE☆LIFE名物“PJ”が直撃インタビュー!!

奇妙礼太郎がカバーした名曲「君が誰かの彼女になりくさっても」のオリジナルは、何を隠そうこのバンド! 抱腹絶倒のMCとズバ抜けたソングライティング能力で絶大な人気を誇りながらも、自由気ままに活動していた“しゃかりきコロンブス。”が、“ワンダフルボーイズ”と名を改め、本気で音楽シーンに乗り出して来たというからさあ大変! “リアリティ meets ポピュラリティ”をキャッチコピーにニューアルバム『ビューティビューティビューティフルグッバイ』をひっさげて、関西から全国へ、イカした6人組がワンダフルな旋風を巻き起こす!!

「いろんなことをしてきたけど“ワンダフルボーイズ”として本気でやってみたい。やっと自分の道を見つけられたし、今なら出来る気がします」

●今作は、昔から大阪によくあるセオリーの曲調やねんけど、上手く今風のアレンジになっているよね。YouTubeでM-12「93年の唄」のPVを観たけど、12分もあるのに全然飽きなかった。いろんな人と話をしていても「良い曲ですよね」っていう感想を聞くよ。

サンデー:ありがとうございます。

●サンデーは今までにも“バグダッド・カフェ・ザ・トレンチ・タウン”や“A.S.P”、“しゃかりきコロンブス。”、“奇妙礼太郎”とか…いろいろな関わりや活動をしてきているけど、どれも“ソコソコ”みたいなイメージやけど。今まで自分の中で真剣に音楽をやろうと思った瞬間ってあるの?

サンデー:“ちゃんと歌を歌わないといけない”って思い始めたのは、わりと最近なんです。奇妙礼太郎くんがソロで全国を回る時に「一緒に行かへん?」って言われて、僕も一緒にライブして回ったんですけど、奇妙くんはめっちゃ歌が上手いし、一緒にやるには力の差がありすぎて申し訳ないなと思って。ブッキングの人も僕を“奇妙くんがカバーしている曲を作った人”という認識で呼んでくれるから、“これはやるしかない”と思って練習し始めました。それが1年前くらいですね。

●それが、適当から本気に変わった瞬間だった。

サンデー:そうですね。それまではお客さんからお題をもらって、即興で歌を作って…て感じや、勢いでやっていたというか。しゃかりきコロンブス。時代は、“適当にやった先に何が生まれるのか?”を念頭に活動していたから、常に遊んでいる状態でしたね。

●「毎日がサンデー(お休み)」っていうコンセプトだったもんね。それが今ではすごく真面目に取り組んでいて、“ようやくしっかりしたか!”って感じ。

サンデー:やっぱり、周りの人が「曲が良い」って言ってくれたからこそだと思うんです。

●もともとサンデーの曲が良いっていう人は多かったよ。ただ、そこそこ身内に知られていて、そこそこ身内にウケていたからそれで満足しちゃってなかなか広くは認知されていなかったんだよね。

サンデー:ここ10年くらいの僕はそうでした。

●だけど、この作品を聴く限りその期間は決して無駄じゃなかったって思う。今作はワンダフルボーイズとしての1作目ということだけど、アルバムには昔からやっている曲もあるよね。

サンデー:そうですね。でも、中には僕が忘れている曲もあって。前に奇妙くんがワンマンの時にM-4「恋のマジック」を歌ってくれたんですけど、「こないだ歌わせてもらったよ」って言われたんです。その時に「そんな曲もあったなあ!」ってようやく思い出したくらいで。遊び半分で作っていた曲も、改めて聴いたらよく出来てるなと思って、今さらながらしっかり作品として残しておきたい気持ちになったんです。コードや歌詞も残してないから、頭の中の記憶を引っ張り出して形にしました。

●天才やな。適当にやっていたのかもしれないけど、少なくともサンデーの世界観はライブを観た人たちには響いているし、俺もしっかり記憶に残ってるしね。奇妙くんがカバーした「君が誰かの彼女になりくさっても」も名曲やし。

サンデー:僕自身は全然意識していなかったです…(笑)。

●本人はチャラけてる部分があるからさ。気負っていないからこそ響いている部分もあると思う。サンデーの曲ってそういう意味ではリアルな生活感を感じないよね。だから余計に淡々と歌えるんじゃないかな。

サンデー:そうですね。やりたくても出来ないんですよ。

●ただ「93年の唄」はサンデーが経験した青春の日々が綴られている。情景が浮かぶし、詩で泣けるよね。

サンデー:面白かったり苦かったりした青春時代の曲を、1回作っておきたかったんです。90年代半ばくらい、僕が中高生の頃はクラブシーンがめっちゃ盛り上がっていたと思うんですけど、今は少し衰退しているような気がしていて。だけど、僕にとって一番最初のカルチャーショックは大阪のアメ村にあるクラブやった。そのギャップを考えている時に、“そもそも何でアメ村で遊んでいたのか”っていうのを思い出したんです。それが曲中に出てくる先輩の存在で。この曲は1年以上かけて作りましたね。

●サンデーって93年頃に中高生やったんや。

サンデー:80年代後半のことはテレビでしか知らない世代です。そして15歳頃、やっと街に出て遊べる年齢になった時、実際に目にしたクラブシーンはテレビよりも盛り上がってたんです。憧れていた世界が身近なアメ村にあったのがすごく嬉しかったですね。

●確かに、93年はそういう歌にできるピッタリの年だと思う。レコード屋やDJが盛り上がっていた時期でもあったし、僅か15年でこんなに変わるとは…って感じで。だからこの曲を聴いていると、あの頃は自分の好きやったことに対して、いろんな人が集まって真剣にぶつかって楽しんでいた気がする。

サンデー:自分の進みたい道が確実に実現できていた頃のような気がします。今は細分化され過ぎていて、ちょっとのことでも、大それたことをしたかのような気分になれてしまうじゃないですか。Twitterでつぶやいたりネットでコメントしただけで、いかにも発言をしているようなフリもできる。でもその頃っていろんな人に認めてもらわないと、何も実現できなかった時代やと思うんです。楽しかったり苦かったり、傷ついたり傷つけたり…いろんなことが今より往々にあったというか。もっとケンカしていたと思うし、逆にもっと仲良かったと思うし。

●このアルバムには、サンデーがやりたかったことや、行きたい方向を見失った10年が詰まっている気がした。だからM-1「firefly」から始まって「93年の唄」に終わっているというのに大きな意味があると思う。fireflyというのはクラブの名前だよね。

サンデー:僕が“lovesofa”という自主企画のクラブイベントをやり始めた頃は、いろんなクラブを点々としていたんです。そしてfireflyの店長と知り合って以来、fireflyでずっとやるようになって。他にもいろんなお店があったんですけど、A.S.Pやバグダッド・カフェ・ザ・トレンチ・タウン、韻シストもみんなfireflyに流れていったし、僕らの世代のバンド界隈では象徴的なクラブですよね。

●当時の大阪のクラブシーンはfireflyから派生した大きな流れがあったよね。fireflyで同じようにやって来た人たちでいうと、奇妙くんや韻シストがいるのかな?

サンデー:韻シストは今も昔も変わらず第一線でやってますよ。彼らは10年以上変わらないパフォーマンスを見せてくれます。だから、正直対バンする時は、真剣にやればやるほど恥ずかしいというか。しゃかりきコロンブス。では遊び感覚で気ままにやっていたから“面白かったらいいや”って軽い気持ちだったんですけど…今、ワンダフルボーイズとして本気で歌っていると「今度はこんな真面目にしてるんや」って思われるし、本気でやる以上韻シストにも恥はかかれへんし、ちょっとプレッシャーを感じつつやってますね。

●サンデーの音楽活動は、35歳にしてやっと自分の本質が見えてきたという感じだよね。適当にやっていてもシーンの親方的な存在だった人間が、今、本気で歌をやるというのはどんな感覚なの?

サンデー:留年した感覚です。もう一回1年生からやり直すような気分ですよ。

●あははは(笑)。自分では自分の本質はわかっていなかった?

サンデー:全然わかっていなかったですね。先輩たちにずっと「お前は何をしたいんや?」って言われて来ているんですけど、今でもあんまりわかっていないかもしれません。ただ、今は“サンデーカミデ(A.S.P/ワンダフルボーイズ/しゃかりきコロンブス。)”としてじゃなくて、“サンデーカミデ(ワンダフルボーイズ)”として名乗っているんです。いろいろなことをやってきたけど、ワンダフルボーイズのボーカリストとしてしっかりやってみようと思って。

●でも、サンデーって歌は上手くないけど“こいつしか出来へんよな”っていうものを持っていてなぜか泣けるねん。それってサンデーだけが持っている個性じゃないかな。

サンデー:確かに今回のレコーディングでエンジニアの人から「しゃかりきの時よりちょっとだけ歌が上手くなっているから、良くない」って言われました。「良さが無くなっているから、何とも言えない微妙な歌を歌って」とも言われましたよ(笑)。

●そうなんや(笑)。俺はいちリスナーとして“こういう歌い手ってなかなかいないな”と思って。今まではクラブ周りの人たちしか訴求できなかったけど、もっといろんな人にライブを観てもらえるような状況を作れるバンドだし、楽曲だよね。

サンデー:そうしていきたいですね。やっと自分の道を見つけた感がありますし、今なら本気で出来る気がします。

●これからはどんな活動をしていく予定。

サンデー:クラブだけじゃなくライブハウスもひっくるめて、“ライブ”をすること自体に重きをおいて活動する予定です。この1、2年は選り好みせず、いろんなところでライブをしていこうと思います。僕もメンバーも今ライブをしたいって思っている時期なんで。

●ワンダフルボーイズが売れていかないと、“またお遊びでやってるんや”と思われるからね。だから必ず勝たなあかんねんけど、今のサンデーならきっと出来る! バンド名の“ワンダフル”っていうのもこれからバンドに必要なイメージにピッタリな名前だし。

サンデー:“ワンダフル旋風”を吹かせますよ!

●トップになる人には何か魅力があるし、サンデーは絶対にその魅力がある。だからほんまに頑張って欲しいと思います。サンデーを見ていると“人って勉強して成長していくんや”っていうのが感じられるよ。35歳にしてこれからが楽しみって、なんか良いよね。

サンデー:この歳でまたいろんな人と関わっていけるのは、すごく幸せやなと思います。ワンダフルボーイズをやっていなかったら、どうしようもない30代になっていたかもしれない。

●純粋な実力だけじゃなくて、運も必要だもんね。ミュージシャンをやり続ける限り、ずっとこういう感じ入るような歌を作って欲しいと思うし。サンデーの周りのミュージシャンだけでなく、新しいジャンルや人脈にも繋がって関西特有の大きな広がりが全国に波及すると嬉しいな。

サンデー:今までのバンド活動ではマネージメントにも深く携わっていたんですけど、それによって自身のステージングや歌にあまり良くない影響を与えることもありますからね。僕はミュージシャンとして集中した方が伸びるタイプだと思うから、これからはガッツリとやっていきますよ!

Interview:PJ
Edit:森下恭子
Photo:待夜 由衣子

 

 

 

 

 

 
 
 
 

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