【低音用デュアルマイク対決②】
前回は、低音用デュアルマイク「audio-technica AE2500」と「LEWITT DTP640REX」を用いてバスドラを録音し、比較してみました。
今回も同じ2本のマイクを使用して、エレキギターの録音をしてみましょう。
一般的にエレキギターREC用の定番とされているSHURE SM57で中音~高音を録り、低音補強用として上記のデュアルマイクを加えます。
ギターアンプは定番中の定番であるMarshall JCM2000と1960のキャビのセット。
スピーカーのど真ん中を少し外したポイントを狙い、収録します。
シールド、マイクケーブル、電源ケーブルは全てオヤイデ。ストラットのギターを使用して、エフェクター系は一切使わず、アンプ直でオーソドックスな歪みのバッキングを録音します。
【audio-technica AE2500 + SHURE SM57】
中音~高音用のSM57は、予想通りソリッドでやや粘っこい音を拾いました。
AE2500の「ダイナミックマイク」チャンネルは中低音域のふくよかさがしっかりと、「コンデンサーマイク」チャンネルはクリアな低音からブライトな中高音までまんべんなく録音されており、SM57を含めた3つのチャンネルを普通に混ぜるだけで、目の前でギターアンプが鳴っているような音で録音できました。
【LEWITT DTP640REX + SHURE SM57】
SM57は前述の通り。DTP640REXの「ダイナミックマイク」チャンネルは、低音から中低音にかけてタイトでファットな音が、「コンデンサーマイク」チャンネルは締まりのある低音とリッチな中低音域が好印象を残しました。
AE2500、DTP640REXのどちらの組み合わせでも、アンプシミュレーターでは再現しにくい濃密な音像が実現できました。
【大学生バンドのセルフREC~MIX編】
今回はリバーブの実践的な使用例を挙げてみましょう。
大学生バンドの曲「4つ打ちダンスロック」は、一部のパートを除き全体的にタイトでドライな質感。それだけにメンバー全員が「リバーブはほとんど必要ないのでは?」と思っているようです。しかし、ノンリバーブにしてしまうと各パートの混じりがイマイチになったり、リッチな広がりや奥行き感が演出しにくくなりがちです。著名アーティストの音源でも、全体的にドライであっても1つ1つのパートには少しずつ緻密なリバーブがかけられている事が多いのです。
ドライでありながらリッチな音像を創り出すには?
① ステレオとモノラルが混在しているトラックで、モノラルでも良いものは極力モノラルにして→モノラルのリバーブをかける。不必要なにごりや残響をある程度カットできる。
② 初期反射(アーリーリフレクション *前月分を参照)のタイム、Difusion、密度(dense)の数値をある程度減らし、パンを意識しながら細かくリバーブをかける。
③ 一曲の中に数多くのリバーブを使わない。出来ればプレート系とルーム系といった2種類くらいに留め、リバーブの次にエキスパンダーやノイズゲートを緻密にかけて、減衰が自然になるよう細かくコントロールする。
④ リバーブの種類を意識しないかけ方を試みる。例えばホールリバーブのプリセットは2.5m secぐらいが一般的だが、極端に短くし(例:0.5~0.8m secぐらい)イコライザーで低音部と高音部をある程度削って、モノラルで控えめにリバーブをかける。
【今月のちょいレア】 TASCAM X48MKⅡ
96kHzで同時に48トラック録音可能な業務用ハードディスクレコーダー。音質もProtools HDXと同等か、それ以上のクオリティーだ。2015年ごろ生産完了。
【今月のMV】スーパーアイラブユー「FORGET ME NOT」
エレカシ、真心ブラザーズ、サニーデイサービスに通じる、フォーキーでメロウなナンバー。良質なポップスと呼べる佳曲だ。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
クラウディールーム 「 LOSS 3.5 」
ギターロックの本質を少し斜めから解釈した、エモーショナルなロックバンドのミニアルバム。普遍性のある各パートのフレーズだが、バンド全体に混ざると化学反応をおこし、個性を発揮する。
迷い羊とノクチルカ 「 ロマンチカループ 」
インターナショナルな匂いのする、ポップな女性デュオのシングル。今作はクラウディールームのリズム隊をサポートに迎え、ポップワークスの枠を超えた、存在感のある熱い楽曲に仕上がっている。すばらしいコーラスワークも必聴だ。
海月ひかり 「 アーティスト 」
邦楽女性Vo.というカテゴライズでは括れない、実力派シンガーの渾身のマキシシングル。大人の女性をテーマとしつつも、メルヘンチックな雰囲気も漂う注目作だ。
カカシカシカカ 「 Jack Song 」
ポップマエストロ星野源を彷彿とさせる、セレブなセンスが光るポップチューン。随所に洋楽の黄金律が見え隠れし、聴き手を選ばない幅広い魅力がある。
Porcho
プリンスmeets レッドツェッペリン、VSレッチリといったような、欧米のオールドロックとブラックミュージック、オルタナが合体したような、とにかく濃いシングル。肩肘張らず聴ける英語詞の内容と発音がグッド。
配信も決定。https://linkco.re/6SBT97fB