10数年前、茂木とN∀OKIとTAKUMA(10-FEET)の3人が「いつかフェスが主催できるようになったらお互い呼び合おう」と誓い合ったというのは有名な話で、今まで何度も記事にしてきたが、“山人音楽祭”、“ポルノ超特急”、“京都大作戦”に行くたびにその話を思い出し、3バンドのライブを観るたびに胸が震える想いがする。過去に“山人音楽祭”特集として茂木×TAKUMA、茂木×猪狩(HEY-SMITH)という対談を組んできたが、今年は茂木が「兄弟」と呼んでいる盟友・N∀OKI(ROTTENGRAFFTY)とのスペシャル対談が実現。両者の出会いと繋がり、ヴォーカリストとしての共通点と想い、そして今年の“山人音楽祭2019”について訊いた。
「京都でやってきたことが、すべてに於いて正解だったと思えるようにしていけばいい。俺もそうだ。群馬でやってきたことが正解だったと思えるようにしていけばいい」(茂木)
「気づいたらお互いフェスを主催できていて、なんやかんやで続けていて、今もちゃんとSTILLでここに居続けてるっていうのは、素晴らしいですね」(N∀OKI)
●最近お互いのライブを観たのはいつですか?(※取材は7月末に実施)
“京都大作戦2019”では(出演時間が近かったので)観れてなくて、最近だと俺らの“20th Anniversary Beginning of the Story”に千葉LOOKで出てもらったとき(2019/5/2)ですね。
●この2バンドは何度も対バンしてきたし、何度もお互いのライブを観てきた仲だと思うんですが、現時点のお互いのバンドの印象はどういうものですか?
これ褒め合うやつ? (笑)
●ふふふ、そうです(笑)。
(G-FREAK FACTORYは)隙がないなって思いますね。俺は初めてG-FREAK FACTORYを観たときのことを鮮明に覚えているんです。19年くらい前なんですけど、京都WHOOPEE'Sで初めて観て「なんじゃ!?このバンドは!?」と衝撃を受けて。
●はい。
名前は知っていたんですけど、想像以上にえぐられて。その次に京都MUSEに来たときにも観に行ってて、そのときに初めて挨拶したんです。「はじめまして」って。そのとき気づいたら客席のいちばん前でノリノリで観てたんですけど(笑)、俺はあまりそういうことは無いんですよ。言葉しかり曲しかり、存在感しかり、引っ張られるというか。
●うんうん。
G-FREAK FACTORYを観て「今日はあんまりやな」と思うことが無いんです。G-FREAK FACTORYって順風満帆に来たバンドではないじゃないですか。俺らもそうだから、いつの間にか自分の気持ちも乗っけて観てしまうっていうか。
そうそう。G-FREAK FACTORYもしばらくリリース出来ない時期があったけど、シングル『EVEN』(2012年9月リリース)からどんどん音源を出して、「ダディ・ダーリン」(2016年9月リリースのシングル曲)とか素晴らしい曲を生んできて。だから更に隙がなくなってきた。
●初見で衝撃を受けて、それがずっと更新されている?
更新されてますね。「あれ? 今日なにしてんの?」っていうのがほんまに無い。G-FREAK FACTORYのライブに関しては、もっちゃん(茂木)が空間を支配するというか引っ張っているじゃないですか。
●はい。
だからこの人がどんな精神状態であっても…例えライブ前に「声が出ねぇんだよ」とか言ってても…いつも見せつけるステージをするというか。
N∀OKIは俺の精神状態をよく知ってるし、必要以上にプライベートも知ってるからね(笑)。
●ハハハ(笑)。
例え精神状態が落ちていてもそれを逆にバネにしている。満ち足りてないハングリーなライブでえぐられる。それに俺らが出ていないイベントでも、周りのバンドマンから聞こえてくるんですよね。例えばSHANK主催の“BLAZE UP NAGASAKI 2019”(2019/6/8開催)でも「G-FREAK FACTORYヤバ過ぎた」とか。だからね、G-FREAK FACTORYはバンドマンの中でちょっと特別な感じになってると思う。本物ですね。すげぇなって思って観てる。
普通はあるじゃないですか。めっちゃすごいライブ見せつけられて“くそー! 悔しい!”みたいな。でもG-FREAK FACTORYにはそれも無い。
“今日のN∀OKI”という感じで俺は観てるから。今日に至るまでN∀OKIが何を食ってきたのかな? 燃えてるなぁ! って。ライブを演る前にほんの少しだけしゃべって状態を見てからのライブを観るわけで。“SATANIC CARNIVAL'19”(2019/6/15-16開催)とか俺、殺されるかと思ったもん。横で観てちゃいけないんじゃないかって。こいつが背負っているものは、ROTTENGRAFFTYもそうだし、“SATANIC CARNIVAL'19”ごと背負っていた。
でも“SATANIC CARNIVAL'19”は…今のところ今年いちばんいいライブが出来たんじゃないかなって。
●おお!
WANIMAとKen Yokoyamaの後のトリをやらせてもらって…最初は「やだー!」みたいな感じやったんですよ(笑)。WANIMAのライブとか全員歌ってるし、会場パンパンやし。「嘘でしょ!」みたいなプレッシャーやったんですけど、絶対に決めんとあかんというか。だからめちゃくちゃ緊張しましたね。いつも緊張するんですけど、異常でした。
●でもそれがいいライブに繋がった。
自分のイベントじゃなくてさ、呼んでもらってトリをやるわけで。
周りを見れば自分のライブは終わって酒を飲んでいるやつが結構居て(笑)。その中で自分はこれから向かうための準備をする…あれすごいなって思ってたよ。俺とJESSEでだいぶほぐしてたけどさ、笑っても次の瞬間に今日のライブに賭ける何かがポンと降ってくるみたいな感じで、話題が続いていかないんだよね。
うん。どんどんみんな終わっていって、“いいな〜”って横目で見てた。小学生の頃、インフルエンザの予防接種でみんなどんどん終わって「わーい!」って言ってて、でも俺はいちばん最後やから「うわー!」みたいな(笑)。
●ハハハ(笑)。
それに松原(パインフィールズ/610inc. 松原社長)のこともあったので。やっぱりPIZZA OF DEATH RECORDSと松原の関係性もあって、20周年のROTTENGRAFFTYに華を持たせてくれてるというのもあったし…そういうことも含めて、めちゃくちゃ気合いが入ってましたね。「これコケたらクソやな」って。
●話を聞いていて、2人にとってライブにはメンタルが大きく作用している感じがするんですが…。
隠し切れるものなら隠したいけど、どうしても大きくのしかかってしまう。
例えメンタルが弱っていても、逆にライブでは弱っているときの方がめっちゃ良い方に出たり。もっちゃんとかそうじゃない?
ただ、メンタルが弱っているときは、ライブが終わったときの解放感が3倍くらいある。“あ〜、バンドやってて良かったな”って。まあそれはバンドとしてというより個人的な話だけどね。
うんうん。まあね、例えどんなことがあったとしても、ライブが決まっていたら絶対に飛ばせないし。
●そうですよね。
今回が会うのはラストチャンスかもしれない、しかもお金を払って来てくれている…そう考えたら、やっぱり何があっても超えないとっていう部分があるわけだから。
でも、お互いこれだけライブをしてきていて、まず「クソみたいなライブをしてはいけない」っていうのがあるし、「ヤバかった」というか、良いトラウマというか、“絶対に忘れさせへんぞ”っていう想いが次に繋がると思ってやってきているし、ヘラヘラやっているわけじゃない。もちろんそれはみんな同じやと思うんですけど、“今日を残す”っていう気持ちだけですね。何があろうがお客さんからしたらそんなこと関係ないし。
●あ、なるほど。確かに。
それ(ライブする場)が無かったら俺、とてつもなく苦しいと思う。今までを振り返ってそう思ったときがあって。“それが無かったら今何をしてたのかな?” って。釣りとかゴルフとかしてんのかな? って。
●釣りとかゴルフは、気晴らしになるかもしれないですが、拠り所にはならないでしょうね。
うん。ただの誤魔化しっていうか。だからそういう場所があるっていうのは幸せなことですよ。
●2人は出会って19年くらい経つわけですが、当初と比べて変わりました?
N∀OKIはN∀OKIですね。で、歳をとる毎に懐が深くなるっていうか。それに勢いも増してます。それに出会った頃は、まさかこんなに仲良くなるとは思ってなかった。
●いちばん最初はN∀OKIくんから挨拶したんですよね?
あのとき事務所も何もなかったので、俺とNOBUYAが名刺持って、いろんな人と会っていて。京都WHOOPEE'Sで観たときには声をかけへんかって、次に京都MUSEで観たときに声をかけて。それでROTTENGRAFFTYが前橋に行ったときに原田先生(G-FREAK FACTORY/G.)が来てて。しゃべるようになったのはどこからかな?
そうやな。群馬出身っていうし、ラスタな雰囲気やし、もっちゃんも原田先生もドレッドで。「なんじゃこれ?」って、「レゲエのシーンでやったらよろしいやん」みたいな(笑)。音楽性も含めて新しい感じがしたんですよね。あそこまでちゃんとレゲエを採り入れていて、嘘がなくて、カルチャーもきっちり自分たちの中で昇華している。いちいちかっこいいなって。
いつからかな? 気づいたらすげぇ仲良くなってて、フェスとかイベントのときもいつも2人で居て(笑)。
●めちゃくちゃ仲良い(笑)。
●N∀OKIくんから見て茂木くんは変わりました?
基本的には昔から変わってないと思うんですけど、1〜2年前くらいからライブ本数が異常じゃないですか。俺らのツアーに出てもらったときも、単発で群馬から高松に来て、打ち上げも出ずに「おつかれー!」って帰っていく。それに俺らが京都KBSホールで“ポルノ超特急”をやっていたとき…3rdアルバム『This World』(2010年4月)をリリースした頃ですけど…メンバー全員で群馬から駆けつけてくれて。
●えー!
土日だけライブして月から金までキチンと仕事してっていうバンド、あまり居ないじゃないですか。絶対に次の日に穴を開けないように動いているし。しかもシーンの前線に居て、フェスとかにも出て。こんなタフな人、知らんわって思いますね。ストイックすぎる。
●ハハハ(笑)。飲んでるときはどんな話をしてるんですか?
共通の友達以外の…例えば「最近あのラッパーすごかった」とか「◯◯っていうバンド知ってる?」みたいな。尽きないですね。
でもやっぱりもっちゃんって、打ち上げとかで2人で話しているときも、声をかけてきたバンドマンや関係者の人にもちゃんとコミュニケーション取って。“偉いな~”って思ってます。俺に足りひんところやなって。だから毎回何かをもらってますよね。
●波長が合うっていうか、お互いかけがえのない存在なのかもしれないですね。
俺が過去に会ってきた中で、このタイプの人間は居ないんですよ。すごくいい友達。
●今年も“山人音楽祭2019”にROTTENGRAFFTYが出演するということで今回の対談をさせていただいているんですが、客観的に見て“ポルノ超特急”に出演するときのG-FREAK FACTORYも、“山人音楽祭”に出演するときのROTTENGRAFFTYも、気合いの量がちょっと桁外れという印象があるんですが。
そうですね〜。
●例えば“ポルノ超特急2017”にG-FREAK FACTORYが出演したとき、MCでROTTENGRAFFTYとの関係性を全部言っていたし。
2017年はやっと呼べたんですよ。いつも“山人音楽祭”に呼んでもらってるから、絶対に出てもらうと。やっぱり素晴らしいライブをしてくれて。今でも鮮明に覚えてます。
●“山人音楽祭2017”でROTTENGRAFFTYが「マンダーラ」を演ったアンサーソングとして、“ポルノ超特急2017”では数年封印していた「島生民」を演りましたよね?
●ああいうの観ると、やっぱり特別な関係というか…そう言っちゃうと語弊がありますけど。
でもそれでいいです(笑)。
うん、どのライブも手を抜いてないんですけど、想いが先に出ちゃうというか。
もちろん大事じゃないライブなんて1本も無くて。その中で、例えば“ポルノ超特急”で、こういうライブをやらなかったらたぶん一生やらないだろうなって思うし、今日はそういうライブをやっていい日で、俺らはそのために呼んでもらっているからそれでいい。
●なるほど。
毎回、“その1日がこういう理由でそうなっている”と思っていたいというか。うん、「思っていたい」という感覚ですね。
●茂木くんがよく言う「フェスはプロモーションじゃない」ということですね。
本当にそうですね。
お互い紆余曲折があって、未だにステージに立って、フェスとかにも呼んでもらっていて。すげぇなって。10年前やったらお互い考えられへんかったし。TAKUMAと3人で「いつかフェスが主催できるようになったらお互い呼び合おう」と言っていて、TAKUMAがいちばん最初に“京都大作戦”を実現して。その初回、“京都大作戦2008”で俺らは1日目のオープニングアクト的な出演で、G-FREAK FACTORYは2日目で俺は客席で観ていて。
●そのときのG-FREAK FACTORYのライブも、客席で観ていたN∀OKIくんも覚えてます(笑)。
気づいたらお互いフェスを主催できていて、なんやかんやで続けていて、今もちゃんとSTILLでここに居続けてるっていうのは、素晴らしいですね。
●まだ若いですよ(笑)。
でも俺が20代の頃って、40代のバンドを聴かなかったですよ。
●ああ〜、でも今と昔では時代が違いますし。
確かに先輩たちもバリバリかっこよくやっていて、そういう意味では時代が変わっているけれども、それにしても自分が40代までバンドをやっているとは思ってなかったです。
確かに。それは思っていなかった。そもそもROTTENGRAFFTYがここまで続いているとは思わなかった。G-FREAK FACTORYも俺らもお互い20年選手ですけど、20年続いているバンドって数えるほどじゃないですか。
うん、でもお互い止まってないし、お互いのフェスに呼び合うとか。
●ROTTENGRAFFTYは“山人音楽祭”になってから2回出演していて、今年3回目の出演となりますが、N∀OKIくんから見て“山人音楽祭”はどういう印象ですか?
群馬の風物詩っていうか。他府県からもいっぱいお客さんが来て、群馬のカルチャーになっていて。“山人音楽祭”のポスターを貼ってくれる店舗も年々増えていて、地元にも愛されていて、みんな協力的で。会場もちゃんとフリースペースがあって、子供が遊ぶ場所もあったり。あの会場周辺一体がそういう雰囲気に包まれていて、羨ましいですね。
●確かに地域に根ざしている感じが強いですよね。
そう。1回俺、駅前のホテルから走って会場まで行ってぐるっと一周したんですけど、朝からお客さんがいっぱい並んでて、ほんまにみんな楽しみにしてるんやなっていうのが伝わってきたし。だからG-FREAK FACTORYが居る限り無くならないんじゃないですか。親も喜んでいると思います。
一同:ハハハハ(笑)。
“京都大作戦”もそうなってると思うんですけど、“ポルノ超特急”は未だそこには達していないかなと。
●京都の冬の風物詩っていう感じですけど。
でもそう考えるとすごいよね。京都で夏に“京都大作戦”があって冬に“ポルノ超特急”があって。これ、大阪であるんだったらそんなに違和感が無いけど、言ってみれば人口密集地からちょっと離れてるじゃん。そこがすごいなって。“山人音楽祭”も東京だったらもっとシンプルに出来ることもいっぱいあるんだけど、敢えてローカルでやっているっていう。その方がおもしろいと思うし。
お互い生まれた街に誇りを持っているし、「この街が好きや」っていう思いが活動に出ていると思うんですよね。
●うんうん。「地元に根付く」とか「地元を大切にしている」というのはこの2バンドの共通項だと思うんです。今の時代はそれが珍しくないですけど、以前の音楽シーンは東京に一極集中だったじゃないですか。でも昔から変わらずそのスタンスを貫いているのはかっこいいと思うんです。
俺らもG-FREAK FACTORYもがっつり在住ですからね。
今は(地方で活動を続けるということが)難しくなくなってきていますからね。
でも俺らがやり始めようとした頃の2000年くらいって、インターネットが普及してきていて「地元でもいける!」っていう感覚だったんです。それに自分の中でもおぼろげにそう思っていましたけど、やっぱりTHA BLUE HERBが札幌に居ながら活動していて…俺はやっぱりTHA BLUE HERBに姿勢とかの影響を受けているので。
そうそう。地元仕切れないやつが何を仕切る気だ? みたいなことを言っていて「その通り」と思って。東京に出て行ってたら、日々に追われてたぶん押しつぶされていたんかなって。事が進むのもすげぇクイックなのかもしれへんけど、落ちるのもクイックなんやろうなと思っていて。
そうそう。モチベーションをキープ出来るのは、俺は東京に行った方が早いと思っていたの。モチベーションもそうだし、色んなもののジャッジが出来るだろうし。
でも俺ら田舎暮しだから、そのジャッジをするまでに至らずにフワッとしていた部分がすごくあって。当たり前のように音楽が暮らしの中にある…だからやれていたこともいっぱいあると思うんだよね。
●はい。
だけど、音楽というかバンドというビジネスを成功させるためのジャッジというのは、今でも東京に出た方が早いと思っていて。
楽器を置く、マイクを置くという選択をしたとしても、それはそれで正解だと思うし。東京に行って“あ、不向きだったんだな”とか“辞めた方がいいんだな”と思えるんだったら、それも俺は1つの成功だと思うし。
東京で失敗しても俺らは群馬に居るからいつでも帰って来い。だから試してこい。でもずっと群馬に居るとそのジャッジが出来ない。
ずーっとフワフワしていてさ、それでいて地元でコケられないっていう。なんかね、よくわかんないモードがいっぱい散らばってるんだよね。地方発信で暮らしていくということを選んだが故に。
それは俺も思う。“あのとき東京に行ってたらどうなってたんやろう?”って。もしかしたら違った景色になっていたかもしれないし。上京する人を一切否定するつもりはないし、でもやっぱり俺らは行かなかったから。
京都でやってきたことが、すべてに於いて正解だったと思えるようにしていけばいい。俺もそうだ。群馬でやってきたことが正解だったと思えるようにしていけばいい。
●ハハハ(笑)。状況をポジティブに捉えて活動してきたからこそ、今がある。
そうですね。でも“東京に出ておけばよかったな”と思うタイミングなんて今までいっぱいあって。
それをエネルギーに換えてやっていくべきだし。でもやっぱり全部の原動力は“後悔”だと思うから。
そうやな。ないものねだりから全部始まってるし…。まあ、ほんまにそうやな。「原動力は“後悔”」ってええこと言うた。
一同:ハハハ(笑)。
●でも両バンドとも、地元で活動していくことがバンドのすごい原動力になっていますよね。そういう楽曲もあるし、バンドの個性になってるし。
リアルに「レペゼン京都」って言えますからね。
うん。大学で結成してとかだったら、そもそも地元が無いバンドも居るだろうし。俺らリアルな京都人やからな。
●“山人音楽祭”も“ポルノ超特急”も、ロックシーンとは違う他のジャンルの出演者がいて、それがイベント自体の色にもなっていると思うんです。N∀OKIくんは“山人音楽祭”のMCバトルに何度か出演されていますが、あのMCバトルはそもそもどういうきっかけで始まったんですか?
地元にNAIKA MCっていうすごく仲のいいラッパーが居て、俺自身が生で観たいっていう、単純にそういう気持ちからですね。それで声をかけたら「やりましょう!」っていう感じでトントンと進んだ話で。
NAIKA MCは“山人音楽祭”の前身イベントの“COLOSSEUM”から出てたしね。
●単純に好きな人を誘っていったら今のような形になったと。
そうですね。
●“山人音楽祭”でフリースタイルを観て思ったんですけど、2人のスタイルに通じるものがあるなと。全部が用意してきたものではなくて、その場で生まれる言葉を持っているというか。
やっぱり言葉を持っているやつは好きですよ。どんなジャンルでも。
2002年くらいから、ライブで即興は出来ないとあかんなっていうことに気づいたんです。
それで「ROTTENGRAFFTYのN∀OKI」っていう名前を出さずに修行のつもりでフリースタイルの現場に飛び込んでいったんですけど、“これ出来ないと死ぬわ”と思ってて。当たり前の決められたことしか出来なかったら、絶対にライブはおもしろくなくなるなと。
そこで何がいちばん説得力があるかと考えたら、セッションもそうやけどフリースタイルバトルみたいな現場だなと。バトル…別に闘いたくはないけど、これで俺の経験値が上がったらめっちゃ拡がると思って。
2002年にアンテナ立ててよく行けたよな。それがお前すごいと思うわ。
いやでも、地元で誰かのライブを観たときに、終わったあとで「さっきのラップみたいなやつ考えてやっていたんですか?」って訊いたら「いや、即興だよ」と言われて“これや!”と思って。しびれたんですよね。作り込むことも即興も両方大事だと思うんですけど、即興は絶対に必要だと。もっちゃんのMCもそうじゃないですか。
●はい。歌とMCに境目がわからない、独特のラップというか語りというか。
そうそう。ああいうのって、ガーッとライブして、アドレナリンがバーッと出ているときの方が言葉が降りてくるよな?
うん、言葉が出てくる。でも大事なのは、そこにいけるかいけないかっていうところだよな。逆に、今日のライブは脳みそを使ってしまったなっていう日もあるし。
●ああ〜。
頭で考える前に、パンパンッと感じたままにいけるときってあるじゃん。
いや、でも俺はどうやったらそのモードにいけるのか全くわからないんだよ。
●あ、わからないんですか。
俺の場合は1曲目から「ウォーッ!」ってスイッチを入れてテンション高くいってたらなれるっていうか。
●ハハハ(笑)。すごく興味深い会話。
もっちゃんのライブって、弱火からだんだん強火になっていく感じやん。でも俺らの場合は最初から「ウォーッ!」っていう。このテンションってあまり日常では無いんよね(笑)。
名前の付いてない病気みたいなもんじゃないですか(笑)。でも俺、それがROTTENGRAFFTYには大切やと思ってて。パチンコの大当たりみたいなテンションで突き抜けたときにいいMCが出来るっていうか。
何もしなくてもそのテンションにいけるときとさ、何か無理やり背中を押してもいけないときがあると思うんだよね。でもN∀OKIみたいに、どんなときでもあの位置にいけるっていうのは、どうやったらいいんだろう? って。
「そんな大きい声を出したら怒られるよ!」って言われるくらいのテンションで(笑)。ステージは唯一、何をしても怒られない場所やし。
そのことにこの1〜2年で気づいたかな。たぶん若いときは、意識なくそうやってたんですよ。でも“あれ? なんか1曲目から火が点かないな”という感じになって。それは自分の思い込みと「これでいく!」っていう強い気持ちがすごく大事やと思う。もちろんバンドによるんですけどね。でもROTTENGRAFFTYとしては最初から「オラー! 始まるぞー!」っていう感じでいった方が、合っている。
●さっき茂木くんが「めくれる感じ」とおっしゃいましたけど、両バンドともライブを観ていてめくれる感じがありますよね。「あ、めくれた」っていう瞬間がわかるというか。
あるある(笑)。「もっちゃん今日めっちゃいい感じや!」って。G-FREAK FACTORYは基本的にいつもいいんですよ。でも点数とかじゃなくて、トラウマレベルの「なんだこのライブ?」っていうのがある。そこは毎回更新出来るわけじゃないけど、やっぱりそこにいくと全体のレベルがグッと上がるというか。お互いその繰り返しやんな。
うん、毎回そういうライブにしようとするんだよね。でもそのためにどうやればいいかっていう。
一同:ハハハハ(笑)。
●“山人音楽祭”や“ポルノ超特急”に行って感じることなんですけど、“仲間”で成り立っている感じがすごくあるんです。
俺らが結成したての頃はそんな感じがあまり無かったですよね。
だけど、今のようにスクラム組む感じは無かったし、フェスも当時はこんなに無かったし。そういう“仲間”の感じが強くなってきたのは、ここ10年経ってないくらいだと思うんです。東日本大震災の影響もあると思う。
●あるでしょうね。震災をきっかけにして、故郷や家族、仲間の大切さを改めて認識したというか。
震災以降、今まで距離があったバンドとか絶対に絡まなかったであろうバンド同士が絡んだりとか。だから仲間意識がすごく大きくなった気がしますね。俺らが結成した2000年頃って競争意識が強かった。
“柔軟になった”とはちょっとニュアンスが違うのかな? ちゃんとお互いを見るようになったというか。
だから貴重なんですよね。やっていることは違えど、みんなの気持ちは同じっていうか、気持ちがわかるじゃないですか。機材車で移動して、ドカドカうるさいR&Rバンドが全国各地をまわっていて、みんな同じ境遇やし。
普通の社会だったらさ、そりが合わないやつが居たら、ただ連絡を取らなくなって終わりだと思うんです。「放っとけよ」で終わるっていうか。でもバンドマンって放っとかずにたぶん喧嘩するんですよ。
●うん、それも素晴らしいと思います。
バンドマンっていい意味でちゃんと病気に罹ってるし(笑)、さっきの高松の話じゃないけど、高松にライブをしに行くことについて、誰も何も疑ってない。「え? 普通だよ?」って。でも一般的に考えるとおかしいことで、普通だと「高松まで行って何分ライブするの?」とか「採算が合うのか?」とか考える。俺らは何も疑ってないけど、他人に言ったら「え? 高松まで車で行くの?」と驚かれる。それくらい俺らがやってることと一般社会とはかけ離れていて。
しかも1人じゃなくてメンバー全員とスタッフ、それが束になって高松に向かって車を走らせてるんだよ(笑)。
日帰りで帰っていったからね(笑)。“仲間のため”っていうか。こっちは「来てくれた!」と感激して、それを次にまた返していく。対バンってそうなんですよね。
●自然にそうなっていった。
うん。自然。すげぇ自然なことです。何も無理してないし、メンバー全員そうだっていう。
●おそらくそういうものが“山人音楽祭”や“ポルノ超特急”のステージに表れているんでしょうね。
そうですね。今年の“京都大作戦”を観ててもそう思った。「1日目のことみんなもう忘れてるやん〜」って思いながら最終日観てた(笑)。
そういう光景を見てて「いいな〜」って。羨ましさと悔しさがありました。
●ハハハ(笑)。そして今年の“山人音楽祭”ですが、現時点で発表されている出演者(取材時点では第4弾まで発表済)、とにかく錚々たるメンツですね。
今年はNAIKA MCがステージを踏んでくれるんですよ。
楽しみやな〜。やっぱりおもしろいのは、間違いのないメンツが揃っているということで。ワクワクしますし、今年の“山人音楽祭”は群雄割拠でしょ。
人もいいよね〜。それに俺たちが無理してスイッチ入れてやっていることを、彼らは素で出来ているし。
“俺らが若い頃はそうやったよな”って思い出させてくれるっていうか。
その上で、“俺がこの歳では絶対に出来ていなかった”ということも毎回思わされる。
今後どうなるんだろうね。あれをこの歳でやられちゃったらね、っていうくらいかっこいい。
嘘がないライブをしているのがすごくいい。Age Factoryも居るし、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDも居るし、高木ブーさんも居るし、ザ・クロマニヨンズが居て、 Spinna B-ILLが居る。他のフェスとは被らないような色もちゃんと出ていて。
●楽しみですね。今年の“山人音楽祭”も初っ端から大きな声で突っ走ると。
もちろんです。
一同:ハハハハ(笑)。
Interview:Takeshi.Yamanaka
LIVE PHOTO:HayachiN
山人音楽祭2019
2019/9/21(土)、9/22(日)ヤマダグリーンドーム前橋
出演:打首獄門同好会 / ザ・クロマニヨンズ / サンボマスター / G-FREAK FACTORY / 四星球 / 竹原ピストル / DJダイノジ / NAIKA MC / NakamuraEmi / NAMBA69 / ハルカミライ / HAWAIIAN6 / フラワーカンパニーズ / HEY-SMITH / 夜の本気ダンス / locofrank / ACIDMAN / Age Factory / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND / OVER ARM THROW / CreepyNuts / SURVIVE SAID THE PROPHET / SiM / SHANK / Spinna B-ILL / 高木ブー / 10-FEET / ヤバイTシャツ屋さん / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS / ROTTENGRAFFTY
http://yamabito-ongakusai.com/2019/
G-FREAK FACTORY
https://g-freakfactory.com/
ROTTENGRAFFTY
https://rotten-g.com/