G-FREAK FACTORYが2008年に開催したCROSS-CULTURE-FES“COLOSSEUM”。2009年には2DAYSに拡大して大成功を収めた同イベントが、規模と形を変え、地域の様々な協力を得て、群馬県史上最大のロックフェス“GUNMA ROCK FESTIVAL2012”となった。出演者はロックの枠組みに収まることなく実に豪華多彩。まさにカルチャーがクロスするフェスの実現だ。今月号では、“GUNMA ROCK FESTIVAL”の首謀者かつG-FREAK FACTORYのフロントマン・茂木と、盟友TAKUMAによるスペシャル対談を敢行。若き日の誓いを実現させた2人の熱い想いを訊いた。
●この2人に話を聞く上で思い出すことがあるんですけど、TAKUMAくんと茂木くんとROTTENGRAFFTYのN∀OKIくんの3人で「この3人の中で誰でもいいからいちばん先にできるような状況になった奴が、みんなを集めて大きなフェスをやろう」と熱く語り合っていたという話をTAKUMAくんから聞いたことがあって。
TAKUMA:かなり昔ですよね?
●10-FEETがメジャーデビューして少ししたくらいの時期かな。
茂木:会えばそういうことを言っているもんね。できる奴がやろうと。
●そういう初期衝動というか、熱い想いが“GUNMA ROCK FESTIVAL”という形になったんだなと思うと、第三者ながらなんか感慨深くて。
茂木:ありましたね。特に群馬みたいに辺鄙というか、関東の端っこの場所で何かを起こすのは正直簡単じゃないと思うんですけど、そこでいつかやりたいと思っていました。それがやっと形になったのが今年ですね。
●“GUNMA ROCK FESTIVAL”のそもそものスタートは、2008年に茂木くんの立案で始めたCROSS-CULTURE-FES“COLOSSEUM”なんですよね?
茂木:そうですね。でも、あれはこの規模じゃないんです。ライブハウスとスタジオを全部使って、フロアでライブをして、周りやステージにお客さんがいるという形でやっていたんですけど、そこに10-FEETにも出てもらって。でもその後、そのライブハウスが使えなくなってしまったんです。だったら群馬県のいちばんデカい会場でやろうということになって、今回の“GUNMA ROCK FESTIVAL2012”の企画がスタートしたんです。
●なるほど。
茂木:さっきおっしゃったように、昔からTAKUMAなんかとは「いつかやりたいね」と語り合っていたんですよ。というか、教えてもらうことが多くて。流れとかも“京都大作戦”のHPを見て“京都はこういう風にやっているんだ”って。だから色々とやり方を教えてもらっていました。
●今回“GUNMA ROCK FESTIVAL”をやろうと思ったとき、TAKUMAくんには何か言ったんですか?
茂木:「やろうと思ってる」と伝えたら「気張りや」と言ってくれて、絶対にやらなきゃなと。2008年に“COLOSSEUM”を始めましたけど、色々と事情があってイベントをちょっと休んでしまったんですよ。それで今回この規模でやろうと考えたとき、「絶対にやらなきゃダメだから、なんでもやる」と言ってくれて。「スーパーザックリな企画書でいいから送ってくれ。すぐに話を通すから」と。それが1年くらい前で、いちばん最初に10-FEETへ声をかけさせてもらったんですけど、ちゃんとした企画書も上がっていないような段階なのにOKをくれたんです。
●そうだったんですね。
茂木:“大丈夫なのか?”と思いましたけど(笑)、本当にすごく早い時期で。途中で「ブッキングも手伝うよ」と言ってくれたんですけど、「今回は自分たちでやってみる」と断ったら「お前らしいな」って言ってくれました。そこから駆け足でここまで来たという感じですね。正直、やろうと思ってもなかなかできるものではないじゃないですか。それがたまたま地元の人たちの熱と好意でなんとか形になるんじゃないかというところから、ドッと拡がっていきました。
●事情があって“COLOSSEUM”を休んでいたけど、でもやりたかった?
茂木:そうですね。最初は意地だったんですよ。“COLOSSEUM”を休んでしまっていたということもそうですし、群馬県の現場の事情というか、こんなにギラギラした人たちがいるのに、なんでなにも起こらないのだろう? っていうヤキモキした気持ちがずっとあって。それで今回の会場を見つけて、ここだったらできるかもなって。
●はい。
茂木:スタッフとかも「イベントをやるからこの指とまれ」という感じの集まり方じゃなくて、「俺もやりたい!」と言って集まってきてくれて、みんなのモチベーションとか活力とかがすごくあったんです。だから、これは1回やらなきゃ諦めもつかないなと思って。実際に動き始めたらスタッフは本当に強力で、俺なんかがピヨっているときにも、想像以上に動いてくれている。
●いちばん最初に声をかけたのが10-FEETだったとおっしゃっていましたけど、なぜ10-FEETだったんですか?
茂木:好きだからです(笑)。10-FEET以外に絵が浮かばなかったですね。それと、10-FEETが早い段階でOKをしてくれるということは、乱暴な言い方ですけど、俺らも「10-FEETが決まっています」と言えるのがめちゃめちゃ大きいんです。
●確かに。
茂木:そういうことをTAKUMAは言わなかったけど、それができる時期に返事をくれたんです。俺たちはそういう意味なんだと受け取って、存分に10-FEETの名前を利用してブッキングしました(笑)。
●きっとTAKUMAくんはいろんなことを考えて即答してくれたんだろうと。
TAKUMA:さすがは京都のKj(Dragon Ash)やと思いましたね。これは完全に俺の人徳が成せる技やなと。
●あっ、調子に乗った!
茂木:NAOKIに言っておけばよかった…。
●そうですね。TAKUMAくんはちょっと増長する傾向にありますからね(笑)。
茂木:今日はKOUICHIもいるみたいなので、対談相手を替えてもらってもいいですか?
●でもKOUICHIくんはKOUICHIくんで、中身スッカスカのことしか言わないですよ(笑)。
TAKUMA:声をかけてもらったとき、めちゃめちゃ嬉しかったんですよ。やっぱりそれがどういうことなのかということもわかるし、前身のイベントをやってきたり、前身の前身になるようなイベントからここに辿り着くまでの話もすっごく細かく聞いてきたから。それにずいぶん前、まだこのイベントの影すら浮かび上がっていない頃に「いい場所があるんだ」と言われたんですよ。「競輪場のドームがあって、いい会場を見付けた」っていうだけの段階から話を聞いていたんです。だからいちばん最初に10-FEETに声をかけてくれたこともすぐにわかったし、嬉しかったですね。自慢したいような嬉しさというか。
●「俺、いちばん〜!」みたいな。
TAKUMA:そうそう! 俺、いちばん〜(笑)。めっちゃ嬉しかったですね。
茂木:ライブハウスで“COLOSSEUM”をやっていたとき、10-FEETを誘わせてもらって「ごめん、その時期はツアーで北海道に行ってる」と断られたことがあったんですよ。その誘った日は、10-FEETは北海道ツアーの空き日でライブが入ってなかったんです。そしたらこの男、わざわざ群馬まで来て…。
●えっ!?
茂木:飛行機、電車、タクシーと乗り継いで「30分しかいられないけど観に来た」って。
●空き日が1日あるだけで北海道から群馬まで?
茂木:そういうことをやるんですよね、こいつは(笑)。こっちは「何やっているんだよお前!」って。
●そりゃあ言いますよね(笑)。
TAKUMA:G-FREAK FACTORYのメンバーみんなが大急ぎでご飯を用意してくれて「はよ食べ! はよ食べ!」って(笑)。
●オカンか!
TAKUMA:ギターの原田なんか「すぐにできるやつを持って来い!」って(笑)。
茂木:みんな混乱ですよ(笑)。
●ハハハハ(笑)。
TAKUMA:メンバーみんなで分担して仕事をしていてめっちゃ忙しいのに、俺のところに集まってしまって(笑)。
茂木:でも、そういうところですよね。だから最初に10-FEETに声をかけたのは当たり前のことです。
TAKUMA:昔から「誰かがガーッといったらフェスをやろう」と話していたし、それはそもそもライブハウスで対バンを呼ぶときと同じ気持ちなんですよ。自分らのツアーで呼ぶバンドって、一緒にやりたいという気持ちとか、お客さんに対して“お前らも絶対かっこいいと思うはずだから観てみて?”と思う気持ちの延長線上なんですよね。
●うんうん。
TAKUMA:だからフェスができるようになったらどういうメンツを呼ぶかというのは、聞かずともわかっていることだし、そういうことがしたくてフェスをやっている部分も大いにあるし。地元の奴しか知らないバンドの仲間もきっとお互いにいて、“こいつらが全国のお客さんの前でやったら響くだろうな”みたいなものもあると思うし。みんなが並列になって、えっちらおっちらとやっていた頃で、そのときによくもっちゃん(茂木)が「そっちが調子のいいときは、いくらでも俺は犬になるから」と言っていたんです。「犬になるから」っていう言葉は、めっちゃ残ってますね。
●そんなこと言ってたのか。
TAKUMA:「いくらでも俺が走りまわってやる。トラブルがあれば俺が謝ってもいい」とか、お互い本当にそんなことばかり言っていますからね(笑)。だから1回目の“京都大作戦”で呼べて嬉しかったし、今回もいろいろと話をしてきた上でいちばん最初に呼んでもらえたのもすごく嬉しかった。
●さきほど茂木くんが「群馬県の現場の事情」と言っていましたけど、群馬はどういう土地なんですか?
茂木:音楽シーンとしては、BOØWYとかBUCK-TICKといった大先輩たちが作ってくれた土壌ではあるんですけど、そこからはポッカリと開いたままなんですよ。それに音楽に対してすごくシビアというか、しっかりと音楽に耳を傾ける人が多いと思うんです。車社会なので、とにかくラジオ人口が多いし。
●あ、なるほど。
茂木:高校を卒業したら1人1台車を持つのが当たり前なんですよね。要するに、車の中で聴く音楽、車の中で聴くラジオというものが、その人のiPodのようになることが当たり前の土地なので、実は東京とかで普通に生活をしているよりも、音楽に触れる時間の長い人が多いんです。
●だから耳が肥えるというか。
茂木:そうなんです。すごくやり甲斐があっていいと思うんですよね。
TAKUMA:全国からたくさんお客さんが集まるだろうね。
茂木:うん。でも意外に県外の人よりも群馬の地元の人が多いみたいなんだよ。地元の人たちが作る地元のお祭だから、バックボーンも含めて全部地元の人たちでやり始めたところに県外の人たちが来てくれるっていうのは理想かなと。群馬っぽさというか、正直田舎でちょっとダサいところもあるけど、それを前面に出していった方が、俺らっぽく仕上がるんじゃないかなと。おもてなしですよね。
●なるほど。
TAKUMA:楽しみやな。初めてライブを観たときの感覚というか、ライブハウスで初めて何かに気付いてハッとした瞬間とか、何かが突き刺さったときの感覚というのは、よりたくさんの人に知ってほしいよね。その想いは本当に強い。
茂木:うん、結局初期衝動だからね。今もその延長線上だし。
TAKUMA:本当に人生が変わったし、ライブを観たり聴いたりするだけでも音楽は人の人生を必ず変えるものだと思うから。こういうイベントでその可能性をどんどん拡げたいし、よりたくさんの人に伝わったら、政治とかまつりごとに近いくらい、人の根底を変えられるパワーを持っていると思うんです。
茂木:うんうん。
TAKUMA:それも、ルールを決めて表面上で従ったり動いたりしてもらうんじゃなくて、みんなが自発的になって、けっこういい方向に行かせるパワーを音楽は持っていると思うんですよ。今更だけど、本当にそう思うんですよね。
茂木:そうだなあ。でも今の群馬は時代が変わったというか、かなりドライなんだよ。ドライなんだけど“このままじゃいけねえ”って思っている人は、演者側でもすごくいると思う。もしかしたら、わかっている奴はバンドを辞めちゃうかもしれないです。「ここではできない」って言うかもしれない。それくらい環境的にはよくないんです。
●バンドをやるにあたって。
茂木:やり続けていくということに対して。だからこそ、“このままじゃダメだ”ってみんながギラギラしていて。バンドマンが増えないとやっている意味もないと思うし、どんどん増えて、溢れていくべきだと思うんです。こういうことがきっかけで、何か変われば。大きなやり甲斐ですよね。
●楽しみにしています。そして今回、G-FREAK FACTORYが8年ぶりにCDをリリースするということで。2曲入りのニューシングル『EVEN』。
茂木:すごくよく録れました。制作に関してTAKUMAが言ってくれたことで、曲が化けましたね。
●あ、TAKUMAくんも制作に携わったんですね。
TAKUMA:ちょっと口出しただけですけどね。最初は何も言わんとこうと思ってたんですけど、やっぱりスタジオに行ったら、好きな分、色々と言ってしまいました(笑)。
茂木:方法論なのかはわからないですけど、やっぱりレコーディングを相当数やってきているから。エンジニアさんもすごくいい人で、すごく勉強になりました。実は歌詞を1回全部ぶち壊して、レコーディング前は1週間で合計9時間しか寝ていないんですよ。
●えっ?
茂木:歌詞に悩みまくって。1曲をリリースすることに対してこれほど悩んだことがないくらいでした。もともとは、ベースの曲にはいつでも戻せるから1回ぶっ壊してみようという感じだったんです。それで夜な夜な歌詞とパソコンとギターとにらめっこしていたんですけど、次の日にスタジオに行ったらまた変わったりして。“みんなこのくらい悩んで、自分をいじめてやっているのか”って。最後、ミックスが全部終わって、スタジオのでかい音で聴かせてもらったんですけど、もうよくわからない感情になっちゃって…寝ていないからピュアになっちゃっていたんでしょうね(笑)。どこにも当てはまらないような感情が出てきて、涙が止まらなくなりました。スタッフだって寝ていない状態で、外はもう朝で、そういう状況もいちいち涙になって出てきちゃうというか。
●納得するまでとことん突き詰めたからこそ、辿りつけたというか。
茂木:だからたぶん、いい曲なんです(笑)。「EVEN」はライブで2〜3回演奏したんですけど、制作のときの感情が曲にありますもんね。今までなんとなく書いてなんとなくやっていたのとは違って、作ったときの感情が、この曲を聴いたりライブでやったりするときにオートマチックのように出てきちゃうから、“みんなこうやって想いが入っていくのかな”と思いました。
●なるほど。
茂木:わからないですけど、とにかくピュアになるんです。制作のときは“これ以上のところまでいくのは無理だ”って本当に思えるくらいまでやったから。
TAKUMA:最後にエンジニアの人が、何度かデカいスピーカーで聴いてからラジカセで聴いてシミュレーションするんですよ。一般的な環境で聴いたときに問題がないかっていう。それをG-FREAK FACTORYのメンバーに聴かせて「何か注文はありますか?」って問いかけるんですけど、メンバーはみんな黙っちゃって…もっちゃんがメンバーに向かって「本当にこういうのは久しぶりだよなあ」って言って、感動したまましばらくそのまま止まってました。エンジニアさんは「注文はー?」ってなってた(笑)。
●ハハハハハ(笑)。
茂木:それで「注文は特にないです」って。本当にあのままでいいと思った。
TAKUMA:本当に一丸になってたなあ。スタッフ含めてみんながメンバーみたいになっていて、すごく感動した。
Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Hirase.M
Live Information
“GUNMA ROCK FESTIVAL 2012 Powered by COLOSEUM”
9/22(土・祝) グリーンドーム前橋
雷神-RAIJIN STAGE-
dustbox / EGO WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX / G-FREAK FACTORY / HAWAIIAN6 / 秀吉 / マキシマム ザ ホルモン / 10-FEET / 東京スカパラダイスオーケストラ / YOUR SONG IS GOOD
風神-FUJIN STAGE-
cro-magnon (Jazzy Sport) / DE DE MOUSE / DJ178 / EELMAN / FAT PROP / Fragment / GEORGE TIGER ONE / 小林 慶 / mabanua (laptop set) / NAIKA MC / Raiji & Chips / R da Masta / scrumbles