2年ぶり11回目の開催となった“京都大作戦2019”は、このイベントを誰がどれだけ大切にしているかを改めて思い知った。昨年の中止を経て、2年ぶりに太陽が丘に集まった多くの出演者、スタッフ、オーディエンス。全員が“京都大作戦”に対して熱い想いを爆発させた。サンボマスターの山口は「全員優勝!!」とステージで何度も叫んだが、まさに“全員優勝”という言葉が相応しい4日間だった。
「京都大作戦2019、は〜じま~るよ~!!」というG./Vo.こやまの声によってライブをスタートさせたのは、源氏ノ舞台トップバッターを飾るヤバイTシャツ屋さん。朝から客席エリアには観客がびっしり。「Tank-top of the world」から「かわE」まで一気に駆け抜け、宇治出身で実家がすぐ近くにあり、“京都大作戦”には皆勤参加しているというこやまは「ちょっとだけ個人的な話を…」と言葉を続けた。
「僕、“京都大作戦”と10-FEETのせいで人生を狂わされました。普通に大学を出て普通に就職をして、普通の人生を送ると思っていましたが、2008年の10-FEETを観て“バンドせなあかん”と思いました。人生を狂わされました。おかげで今、めちゃくちゃ幸せです!!」
こやま、そしてヤバイTシャツ屋さんは、まさに「“京都大作戦”と10-FEETに人生を狂わされたバンド」の筆頭だと思うが、少なからずここに来ている人たちは皆こやまと同じように、“京都大作戦”がそれぞれの人生に何かしらの影響を及ぼしていることだろう。音楽にまみれ、アーティストの熱い想いに触れ、過酷な環境の下でヘトヘトになるまで感情を振り切らせる…そんな日を経験したことがある人たちは、こやまが言った言葉に大きく気持ちが動かされたはずだ。
次に出演した四星球は(10-FEETやマキシマム ザ ホルモンやORANGE RANGEのカバーなども挟みつつ散々オーディエンスを大爆笑させたが)、康雄(シンガー)が「今36歳、40歳までに“京都大作戦”で10-FEETの1個前、トリ前をやります!」と啖呵を切ったのは、いつもの悪ふざけだけではなく、きっと“京都大作戦”に対する熱い想いがあったが故のことだろう。「四星球が“京都大作戦”でトリ前を担う」…考えただけでワクワクする。
牛若ノ舞台でトップバッターを飾ったTrack'sは力強いロックでダイバーを乱発させ、続くSHIMAは終始高いテンションでガンガンに盛り上げる。Vo.橋本が客前の柵に乗り、ダイバーを続出させたり全員で大合唱させたりと強烈な一体感を一瞬で作り上げたハルカミライ。極上メロディと吹き抜ける風のようなサウンドで牛若ノ舞台の空気を塗り替えたFIVE NEW OLD。ライブハウスと化した牛若ノ舞台はステージの上も下も気合いが満点で、Vo./G. HIROSHIの「高校生の頃からバンドをやっていて、昔10-FEETにサインをもらった。いつか一緒にライブ演りたいなって。あの3人は覚えてないだろうけど(笑)、僕らを呼んでくれて本当にありがとうございます!」という言葉に会場が湧く。
「上海ハニー」でのっけから源氏ノ舞台を揺らしまくったORANGE RANGEは、「新しめの曲ではスーッとなりますが(笑)、それ今日はやめましょう。楽しいフリできますかー?」と笑いを誘い、「イケナイ太陽」「キリキリマイ」まで全力で突っ走り、オーディエンスを心から楽しませる。
そして続くBRAHMANは、MCがほぼない攻撃的フォーメーションから繰り出す気迫のステージで圧倒し、東京スカパラダイスオーケストラとのスペシャルコラボ「怒涛の彼方」で楽しませ、客席に身を投じたVo. TOSHI-LOWはオーディエンスに支えられつつ「起こせ! 起こせ! ダイブする前にやることがあんだろ。誰もやんねえんだったらお前がやれ!」と「鼎の間」の迫り来るパフォーマンスで攻め立てる。そして「今年の4日間、どうか天気が保ちますように」とORANGE RANGEのBa. YOHが三線で参加した「満月の夕」で終演。前半の凄まじいステージも含め、気持ちをたくさん感じるライブだった。
2万人のクラップに包まれて登場した東京スカパラダイスオーケストラは最高のエンターテインメントで客席最後方の丘の上の観客たちまで大騒ぎ。BRAHMANのTOSHI-LOWがスーツ姿で登場した「野望なき野郎どもへ」、10-FEETの3人がステージに乱入して「Paradise Has No Border」で大はしゃぎした後、「HONE SKA feat. 東京スカパラダイスオーケストラ」でスペシャルコラボで魅了し、最後までオーディエンスを踊らせまくった。純粋に“音楽”と“ライブ”で観客をとことん楽しませるスカパラの真髄を見せつけた。
1曲目「ムーンレイカー」からガッチリとオーディエンスの心を掴み、キレキレのライブでダイバーを続出させたENTHが牛若ノ舞台を沸かせた後、いよいよ2年前の借りを返すときが来た。マキシマム ザ ホルモンが源氏ノ舞台に降臨し、ダイスケはん(キャーキャーうるさいほう)が「さあ行くぞー!」と叫べばナヲ(ドラムと女声と姉)が「やっとこの景色が観れたー! 2年ぶりの気持ち思い切り込めて行こうか!」と喜びを爆発させ、「3度の飯より飯が好き!」と全員で叫んでライブスタート。
2年間、誰もが待ち望んだこの瞬間、全員が全力でライブに没頭する。超絶なグルーヴとキレで攻めに攻める4人と、全身全霊で暴れまくるオーディエンス。「来年の“京都大作戦”の成功を祈って…」と恋のおまじないを(セキュリティも含めて)行った後、最後は太陽が丘に映えまくるチューン「恋のスペルマ」。2年分の気持ちが完全にエレクトした。
牛若ノ舞台では、SHANKが良い意味でいつも通りの圧倒的なステージにダイバーがまったく途切れない。源氏ノ舞台ではROTTENGRAFFTYが登場し、Vo. N∀OKIが「あの日から熟成された夢の続きをおっぱじめるぜ!」と叫び、数えきれないほどたくさんのダイバーが「金色グラフティー」で舞い、「D.A.N.C.E.」「響く都」で散々踊らせまくった後、KAZUOMI(G./Programming.)が「ここに居る全員、音でブチ殺す!」と牙をむいて「零戦SOUNDSYSTEM」で覚醒モードへ突入。Vo. NOBUYAが「京都のバンドは10-FEETだけじゃないぞ! 死ぬ気でかかってこい!」と叫び、最後の「70cm四方の窓辺」まで、まるで命を燃やすかのようなテンションで会場を沸騰させる。
そして10-FEETのSEをバックに牛若ノ舞台に登場したG-FREAK FACTORYも、その存在感は圧倒的。「SOMATO」を柵の上で歌いながら「源氏へ届け!」と叫ぶVo.茂木。「源氏に届くように1つになれるか!」と「日はまだ高く」で気持ちを1つにした後、「Too oLD To KNoW」「ダディ・ダーリン」で10-FEETへと繋ぐ。マキシマム ザ ホルモン、SHANK、ROTTENGRAFFTY、G-FREAK FACTORY…2年前に伝説を作った面々が、命を賭けて命の灯を繋いでいった最高の時間。あらゆる感情がひしめく中、いよいよ“京都大作戦2019” 1日目、残すライブは10-FEETのみとなった。
3人で拳を合わせ、Vo./G. TAKUMAが「よろしく!」と大きな声で叫んで「蜃気楼」でライブスタート。空が暗くなり、照明に浮かび上がった源氏ノ舞台をオーディエンスのコーラスが包み込む。「VIBES BY VIBES」「LITTLE MORE THAN BEFORE」とオーディエンスは全力で歌い、跳ね、叫び、笑顔で涙を流す。パラパラと雨が降ってきたがそんなことは一切お構いなし、全員が全力でライブを作っていく。
東京スカパラダイスオーケストラのホーン隊が参加した「hammer ska」、軽やかなイントロからヘヴィなサウンドへと繋ぎ、サビで一気に突き抜ける新曲「ハローフィクサー」で魅せ、「1sec.」でダイバー続出。「去年中止になったとき、出演者たちに言葉をもらいました。ありがとうございました。今日集まってくれた人たちにも、どうやって返したらいいか今も答えは出ていないけど…今まででいちばん取り乱して、大人げも恥ずかしげもプライドも、全部越えてやりたいと思います!」とTAKUMAが叫び、ROTTENGRAFFTYのヴォーカル2人を交えた「その向こうへ」、そして本編最後の「ヒトリセカイ」と走り抜け、アンコール最後は「感謝の気持ちを込めて。2年前に中断したときからやっとここまで来れました。その思い出の曲を」と「DO YOU LIKE...?」で終幕。最後の挨拶のためにステージに出てきた3人は、何度も何度も開催できた喜びを告げる。2年間待ちに待った“京都大作戦2019”、1日目が無事終了した。
「やっと言える! 源氏ノ舞台に立てました!」とDizzy SunfistのVo./G.あやぺたが喜びをあらわにして幕を開けた2日目。「めちゃくちゃ雨かも知れへんけど、ウチらの渾身の晴れ舞台」と彼女が言うように、この日は開幕前から強い雨が太陽が丘を濡らしていた。しかしステージの3人もオーディエンスもそんな天候をものともせず、「Someday」のスタートから怒涛のモッシュ&ダイブ。出演者も百戦錬磨ならオーディエンスも百戦錬磨の“京都大作戦”。「去年の中止を乗り越えた10-FEETもウチらも、ここにいるみんなも、めちゃくちゃ最強になってる!」と「STRONGER」で更に会場のテンションをあげ、最後まで突っ走る。
牛若ノ舞台も負けていない。FOMARE、Hump Back、SURVIVE SAID THE PROPHETと降りしきる雨の中、全力のステージで観客を沸かせに沸かせる。どのアーティストも気迫が凄まじく、ステージからの気迫に負けじと客席も大盛り上がり。ダイバーたちの泥まみれになった笑顔はとてつもなく眩しい。
Vo./G. SUGAが「想いは一緒! 思い切りやるから全力で来いよ!」と気持ちをスパークさせたdustbox、1曲目「Try My Luck」からテンションがやばい。ダイバーがオーディエンスの波に乗り、ぐんぐんと会場の気持ちをあげていく。“京都大作戦”皆勤賞のdustbox、そのライブの楽しみ方は誰よりもオーディエンスが知っている。シンガロング、モッシュ、ダイブ、ジャンプ、サークル…汗なのか雨なのか、観客たちは全身ずぶ濡れになりながら跳ね回る。そして「去年中止になった10-FEETに贈るために作った」と新曲「Summer Again」を披露し、10-FEETの3人もステージに入り乱れて大はしゃぎ。盟友の素晴らしいステージに、10-FEETの3人も心からライブを楽しんだ。
雨の中でライブをスタートさせ、1曲目「HE IS MINE」の大合唱で会場をひとつにしたクリープハイプ。Vo./G.尾崎世界観が「TAKUMAさんから電話がきたときは“なんか悪いことしたかな?”と思ったけど、電話に出たら誘っていただいて、出ることになりました。本当にありがとうございます」と喜びを告げ、本番前にバックヤードのトイレで鍵をかけていなかったG.小川と遭遇したエピソードで笑わせて「その光景を、早くこの素晴らしい景色でかき消したいと思います!」と「手と手」で多くのオーディエンスが手をあげる壮観な景色を作り出す。「これでも普段より3割増くらい楽しんでます」とテンションが高い彼らは最後の「栞」まで全力疾走。初出演にも関わらず一音でオーディエンスの心をガッシリと掴むバイタリティに舌を巻く。
一時はかなり強くなっていた雨が落ち着いたところでWANIMA登場。3人がステージに登場した瞬間、会場のいたるところから爆発的な歓声が沸き起こる。巨大なサークルを巻き起こした「いいから」、途中から10-FEETの3人も参加した「VIBES BY VIBES」。WANIMAは本当に楽しそうにライブをするので、観ているこっちの気持ちも自然とMAXに到達。最高のパフォーマンスがたくさんの笑顔を作り出した。
サウンドチェックの段階からダイバー乱発、本編はそれ以上のテンションで客席がカオスと化したNAMBA69。「2018年の借りを返しに来たぜ」と泥だらけの笑顔で宙を舞うダイバーを多数生み出す凄まじいライブのHAWAIIAN6。牛若ノ舞台も最高な光景の連続。SIX LOUNGEは「去年歌いたかった曲がありまして、それを少しだけ歌わせてください」と10-FEETの「その向こうへ」をカバーし、興奮が最高潮になった会場でキラーチューンを連発。どのアーティストも“京都大作戦”への愛と想いがハンパない。こんなフェス、大成功しないわけがないじゃないか。
空へ突き抜けるような、鋭く飛距離のあるサウンドが圧巻のACIDMAN。両手をあげてVo./G.大木の歌に没頭するオーディエンス。「もし今日も豪雨で中止になっていたらそれを機に10-FEETが解散することになったけど、そんなことにならなくて良かったです。音楽の楽しみ方は自由なので、自由に楽しんでください」と気持ちが惹きつけられる強い力を持った「リピート」「MEMORIES」で魅せ、曲を重ねる毎にその演奏の手は熱を帯び、「あまり他人の歌を歌うタイプのバンドではないんだけど…」と10-FEETの「RIVER」のカバーでそのステージを締めくくる。内に熱い気持ちを秘めた彼らのライブに、ぐっと心を掴まれた。
「ここは誰の土地でもねえ。君らの土地だ」と言って始めた「This Is Your Land」を反応が物足りなかったからなのか一旦中断し、「なんだお前ら? YouTubeで流れている曲でしか盛り上がれねぇのか? つまんねえフェスだな。来いよ馬鹿野郎!」と煽り、その凄まじい気迫でオーディエンスを魅了したKen Yokoyama。更にテンションを振り切らせたKenは「ムチャクチャなことが演りたくなったずら」とキッズのような笑顔を見せ、「Ricky Punks」「Come On, Let's Do the Pogo」で太陽が丘が揺れるほどにオーディエンスを思う存分暴れさせ、「来年も来るよ」と言ってステージを去った。
“京都大作戦”皆勤賞のDragon Ash。1曲目の「Viva La Revolution」は歌詞をアレンジしたスペシャルバージョンで、“ちっぽけな雨なんざ ふきとばして/次のこと始めよう さあ”という言葉に思わずぐっとくる。ダンサーのATSUSHIとDRI-Vが“京都大作戦”のロゴがプリントされたフラッグを手に舞い、ソリッドなミクスチャーサウンドでダイバーを乱発させた「Mix it Up」「ROCKET DIVE」、そしてこれぞライブ仕様のキラーチューン「The Live 」で爆発的な盛り上がりを作り上げる。
「中止が決まったとき、KOUICHI、TAKUMA、MAH(SiM)と4人で泥だらけの会場に来た」「NAOKIなんて、自分がいちばん悲しいのに街に出てお客さんに声かけられて“ごめんね、ごめんね”ってずっと言ってて」とKjが去年のことを話し始め、「バンドマンにできることは1つだけ。金払って来てくれている人の前で、誠心誠意ライブするだけ。俺たちバンドマンの2年分の想いに付き合ってくれよ」と10-FEETの「ヒトリセカイ」をカバー。そして「10-FEETの最後の曲の最後の一音が鳴り終わるまで、みんな泥だらけで素敵な笑顔で、最後まで楽しんでください。2018年裏方代表Dragon Ashでした」と「Fantasista」をみんなで大合唱。10-FEETの3人もステージに入り乱れ、Kjは最後にマイクを通さずに「ありがとうございました!」とガッツポーズ。彼らバンドマンの、そして我々の2年分の想いが結実した瞬間だった。
ヘヴィなサウンドと超絶ハイトーンボイスでオーディエンスを沸かせた牛若ノ舞台トリ・THE冠は、なんと10-FEETのライブが始まる頃には源氏ノ舞台の客席で肩車されていた。ステージの3人がその姿を見つけて笑いをこらえつつ、10-FEETのライブが始まった。
TAKUMAが「行こかー! ありがとう!」と叫んで「VIBES BY VIBES」で爆発的な盛り上がり。そして「去年中止になってしまったけどクリープハイプが動画を送ってくれた曲をやります」と「Fin」。大阪籠球会が参加してみんなめちゃくちゃ楽しそうにライブした「goes on」。1年に1回だけとは言わないが、これほど感情が大きく揺さぶられる経験はそうそうありはしない。
太陽が丘で初めて鳴らされた思い出が蘇る「風」に「太陽4号」を続けてぐっと気持ちを鷲掴みにし、新曲「ハローフィクサー」「ヒトリセカイ」で魅了した後、「RIVER」の曲中で、客席で奢ってもらったジーマを片手にKjが呼び込まれて曲が再開したのだが、ここで2週目にも繋がるハイライト的な出来事が起きた。
「今日はこいつらに何をしてもいいと思う。日本のロックフェスでいちばんデカい輪っか作れるか?」と客席に向かって言ったKjは、「MAHまだいる?」と観に来ていた私服のMAHをステージに呼び、「今からMAHとKOUICHIがそこに行くから、こいつらにお前らの気持ちを教えてやってくれ」とオーディエンスに告げ、自身はスティックを手にドラムを叩く準備を始める。会場が驚きの声に包まれる中、「先輩だからってやっていいことと悪いことがあるんだからな。なんでも許されると思うなよ、クソっ」と悪態をついたMAHが客に担がれた状態で「RIVER」が再開。普段見れないバンドマン同士のイチャイチャを垣間見れたサプライズにオーディエンスは大盛り上がり。アンコールの「その向こうへ」ではROTTENGRAFFTYのNOBUYAが参加、そして“京都大作戦2019”初披露となるアンセム「CHERRY BLOSSOM」では無数のタオルが夜空を舞ってたくさんの笑顔のまま終幕。
各出演者が“京都大作戦”のステージに至るまでの物語を持っていて、10-FEETとの物語を持っている。当然のことながら、年々その物語の数が増え、もはや“音楽フェス”というひと言だけでは説明できないほどの背景を持っている。1週目、大成功。翌週を楽しみにして太陽が丘を後にした。
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