主催2マンイベント“Hand In Hand Tour 2019”を大成功させ、ニューシングル『Beginning』のリリースと日比谷野外大音楽堂でのワンマンを控えてるNothing’s Carved In Stone。同バンドのヴォーカリスト村松拓(たっきゅん)が日本一の漢を目指す当連載『続・たっきゅんのキングコングニー』、シングル『Beginning』リリースが間近に迫る今月号では、(たまには真面目に)シングル『Beginning』についてじっくりと訊いた。
“Hand In Hand Tour 2019”はどうでしたか?
対バンしてくれた若いバンドから超パワーもらいました。すごく嬉しかったし、“やってやるぜ!”みたいな感じで刺激もビシビシもらったし。
そうそう。それがすごくかっこよくて。Survive Said The Prophet、Ivy to Fraudulent Game、Dizzy Sunfist、3組ともかっこいいのは分かりきっていたんですけど、予想以上にすごいライブをしてて。それがすごく刺激になりましたし、“俺の中のメラメラしたもの”が反応するのを感じました。
そして“Hand In Hand Tour 2019”の東京公演で、『Beginning』のリリースツアーとして6/22の日比谷野外大音楽堂ワンマンを発表されましたよね。
そうです。野音はこれで3回目なんですけど、本当は毎年やりたいんですよ。
好きなんですよね。お客さんも嬉しそうだし、いつもライブハウスで…俺たちからするとライブハウスはドリーミーな空間ですけど、言ってみたら閉鎖的な場所だし…でも野音は開放的な場所で、まずそれがいいですよね。東京のど真ん中なのに。
そうでしょ? あそこなんか染み付いてますよね。街のど真ん中にある森の中で、外に並んでたらリハーサルの音も聴こえてきてドキドキするし。だから毎年やりたい。
今回の野音も楽しみですね。ところで5/29にリリースとなるシングル曲「Beginning」は、ここ半年くらいのバンドの流れや経緯やMCで言ってきたことが凝縮されている楽曲ですよね。
“おとぎ話はいつも君次第”とか、こういう譜割りってあまりしないですよね?
しないですね。今までの俺の歌詞って「結局何だったの?」と受け取られてしまう内容が多くて(笑)、それは自分でもわかってるんですよ。でも今回は明確に…バンドの1年目だと思っているので、1年目の第一歩目に相応しいものにしようと思って。
そうですね。「Beginning」というタイトルも最初から決めてたし、今のバンドが持っているストーリーをちゃんと聴いてくれる人たちも共有できて、聴いてくれる人たちの曲にもなれるようなものにしようという明確なテーマがあったんです。
最初に生形さんから曲があがってきたときに、ピンとくるものがあったんですか?
そうですね。バンドもそういう空気だったから。新しいスタジオに入って、今までとまったく環境が変わって、全部が新しくなったんですよ。前だったら自社のスタジオがあって、そこにこもってゆっくりと時間をかけて歌詞を書くことができたんですけど、それが今は2日間で全部仕上げて歌詞も付けなくちゃいけない。だから余計なものを削ぎ落とす必要もあったんです。
なるほど。でもこの歌詞が拓さんというのはちょっと意外でした。
たぶん俺は今後、この方向性になっていくと思います。『Beginning』の制作が終わった今、次に向けて曲作りをしているんですよ。その中でも日本語のストレートな歌詞を乗っけたりしていて。それが新しい武器になればいいなと思って、色々と試しているんです。
 
そうそう。詩的な表現とか、聴いた人に考える余地がある歌詞っていうのが俺は好きなんですけど、なんかもっとグッと凝縮して、「結局何なんだろう?」というところがちゃんと刺さるような歌詞の方が、このバンドにはもしかしたら合ってるのかもなと思い始めていて。
やっぱり現状維持じゃなくてもうちょっと先を見たいじゃないですか。そのためには明確な変化が必要だから。これは前から言ってることですけど、バンドって現状維持をし始めたらもう落ちていくだけだと思っていて。だからこれはバンドを更に先に進ませるためのひとつの手段ですよね。
「Beginning」はNothing’s Carved In Stoneが持っているメッセージとすごくリンクしている曲だなと思うんですよね。
めちゃくちゃリンクしていると思います。昨年の武道館のMCで言っていた「同じ音楽を好きな仲間」。その仲間たちと一緒に新しい景色を観たいというメッセージ。ここ一連のバンドの流れや、MCで言ってきたことと全部繋がってますよね。
歌詞に“the silver sun”、“銀の月”という言葉が入っているので、改めてこのタイミングで“silver sun”という言葉が持つ意味や背景を訊きたかったんです。“silver sun”は4thアルバム『Silver Sun』で初めて出てきて、現在のバンドを象徴している言葉だと思うんですが、どういう意味合いがあるんですか?
Nothing’s Carved In Stoneのストーリーって、もともと中心で輝いていた人たちの集まりではないんですよ。そこが俺はいいと思っていて。だから、俺もそうなんですけど音楽をやること以外に答えを持っていない人たちの集まりだと考えていて。
だから俺たちはそれを逆に武器にして、お互いを支え合って、それぞれの個々の能力だけでやってきた。それが強烈なストーリーに変わってきていると思っていて、だからそれを俺は“月”で表現したかった。
お客さんとの関係性もそうだなと思っていて。「ああしろ」「こうしろ」とか言ってこなかったのに、これだけの人がついて来てくれているし。説教くさいバンドじゃないけど、ちゃんとそういう想いが伝わる言葉や表現できる言葉を考えたときに、“月”という表現がしっくりきたんです。
それってすごく僕らっぽいと思うんですよね。俺たちはお互い、できないことが多いことは知っているんです。でも一緒にバンドをやっていて、俺はストーリーテラーの役割で。お互い照らし合える関係性で。
なるほど。個人的には“干からびそうな夢を照らす月”っていう表現がすごくぐっときて。自分の今の状況にハマったというか。
俺の世代的には、みんな考える時期だと思うんですよね。ここで一発、グッと歯を食いしばって耐えて、自分で色々と変えて、泥をすすって強くなって。
そこは拭えないんですよね(笑)。俺ら結局は叩き上げのバンドだから。特に俺なんかは羨ましがられることもあるけど。
1発目のツアーで、ファイナルが恵比寿LIQUIDROOMだったんですよ。それって普通に考えたらあり得ないことじゃないですか。
 
初めてのツアーのファイナルがLIQUIDROOM、あり得ないですね。
だから羨ましがられるけど、でも俺たちが考える理想と現実はいつも乖離していて、結構泥をすすってきたんですよね。じわじわと少しずつお客さんを増やして、一生懸命1年に1回アルバム作って、妄想を現実に変えてきたんですよ。拭えないものはあるよね(笑)。
そういう背景も含めて、「Beginning」は伝わる曲ですね。
うん。だからこういう曲をもっと作りたいですね。今までステージに立っている姿を観てもらったりして、それでみんなが感動してくれることもあっただろうけど、相手がファンであろうとなかろうと、少しでも観てくれた人に対するメッセージみたいなものがNothing’s Carved In Stoneとして強くなっていければなと思うんです。
中身がない歌ではなくて、あくまでも存在する物語を曲と歌に変えて鳴らしているわけだから、それがよりリアルに伝わるものにしていけば、もっとバンドが強くなれると思うんです。それがいちばん大事なんじゃないかなって。
「Beginning」の歌詞は昨年の武道館のライブと合致するというか。1つのライブが次に発表する楽曲にここまでリンクするということも珍しい現象だと思うんです。
ハハハ(笑)。確かに(笑)。独立したことも大きいんですよ。より足元が見えるようになったからこそ、削ぎ落としていくしかないんですよね。だから結局、軸が大切。
なるほど。個人的にこういう表現が好きか/嫌いかというところの話ではなく。
うん。自己満足ではない何か。それは“洗練させる”っていうことだから、Nothing’s Carved In Stoneに合うと思うんです。曖昧なものより、はっきりしている何か…それを提示できるバンドにまた近づけたっていうことですよね。よかった〜(笑)。
リリース情報 New Single 『Beginning』 Silver Sun Records DQC-1631 ¥1,700+税 2019/5/29 Release |
ライブ情報
Nothing’s Carved In Stone |
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