5月に4thアルバム『BREATH』の発売も控えているKeishi Tanakaが、3月20日に初のベストアルバム『CLIPS』をリリースした。Riddim Saunter解散後の2012年から、ソロ活動をスタート。これまでに発表した3枚のアルバムから切り取られたDISC:1と、アルバム未収録のレア音源が並ぶDISC:2というボリューム満点の2枚組だ。今回のリリースを記念して、自身の弾き語りイベントなどで交流のあるホリエアツシ(ストレイテナー/ent)との特別対談が実現。ストレイテナーとしては2018年にデビュー20周年を向かえたホリエと、“節目”をテーマに語り合ってもらった。
●今回の対談テーマが“節目”ということで、最初にお2人の“出会い”からお訊きしたいのですが。
ホリエ:ちゃんと話したのは“RUSH BALL”が初めてだったかもしれない。
Keishi:僕がRiddim Saunterで出ていた時ですよね。
●“RUSH BALL 2008”ですね。
ホリエ:ストレテナーのスタッフがRiddim Saunterと仲が良くて、彼が楽屋に赤いパンツ(※下着)を持ってきたんです。“何それ?”と訊いたらRiddim Saunterのグッズだと言うので、俺も欲しいなと思って。それでKeishiくんにお願いしたら“取ってきます!”と言って、すぐに取りに行ってくれたんですよね。
Keishi:ダッシュで(笑)。自分たちのグッズをミュージシャン仲間が“欲しい”と言ってくれることが、単純に嬉しかったんです。
ホリエ:よりによって、“パンツ”っていう…(笑)。でもそれがめちゃくちゃ印象深い出来事で、“意外と話しやすいな”というのもわかったんですよ。
●そこまではあまり絡みがなかった?
Keishi:挨拶をさせてもらったことはあったんですけど、確かにそこが最初の絡みかもしれないですね。それまでは、“フェスで一緒になる先輩”という感じでした。
ホリエ:自分たちよりちょっと下の世代なので、あまり対バンでの絡みもなかったんですよね。
Keishi:僕らに対しては、どんな印象がありましたか?
ホリエ:やっぱりTGMXさん(FRONTIER BACKYARD / SCAFULL KING)とかの印象が強いですね。そのあたりにはガッチリした“チーム感”みたいなものがあって、僕らからすると憧れる部分もありました。
Keishi:大変なこともたくさんありましたけどね…(笑)。
ホリエ:叩き上げな感じは重々承知しています(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
●“パンツ”というネタがキッカケだったことで、距離感が縮まったところもあるのでは?
ホリエ:それは間違いなくありますね。すごくアーティスティックなイメージがあったし、他とは違うスタンスを持っているバンドだなと思っていて。そういうイメージだったから、パンツの件で話した時にすごく気さくだったのが嬉しかったんです。
Keishi:ホリエさんが気さくに話しかけてくれたことも大きかったですね。
●Riddim Saunter時代に対バンしたことはあったんですか?
ホリエ:フェス以外ではなくて。ライブを一度ちゃんと観たいなと思っていたところで、解散を迎えてしまったんです。解散ライブもチェックしていたんですけど、結局行けなかったんですよね。逆にソロになってからのほうが、濃いお付き合いをしています。
●2017年4月にKeishiさんの自主企画“ROOMS”にゲストでホリエさんが出演されていますが、これがソロで最初の対バンでしょうか?
Keishi:そうですね。実はその年の1月に対バンする予定のイベントがあったんですけど、僕がインフルエンザにかかって出られなくなってしまったんです。誘われていたイベントに出られなかった悔しさがすごくあったので、自分の弾き語りのイベントで勝手に振替公演をやれないかなと思って誘ったのがその日でした。ホリエさんにすぐ快諾して頂いて、出てもらえたのが嬉しかったのを覚えています。それがO-EASTでのイベントにもつながって…。
ホリエ:2017年の夏にO-EASTでやったイベントにも出たんです。
●7月18日の“虎渓三笑ノ巻”ですね。
Keishi:“ROOMS”に出演してもらったホリエさんと拓ちゃん(※村松拓 [Nothing's Carved In Stone])と荒井さん(荒井岳史 [the band apart])が一緒にイベントをやる予定だというのを知って、“遊びに行きます〜”と言った流れから自分も出演させてもらえることになって。そのイベントは去年もO-EASTであったんですよね(※“四絃一撥ノ巻” 2018年8月13日)。
ホリエ:あと、去年は高崎での対バンもありましたね。山形の“DO IT 2018 -YAMAGATA MUSIC FES.”にもお互い呼んでもらっていて。そこで会った後に車で一緒に高崎まで移動して、2人で弾き語りのライブをやったんです。
●2018年6月10日に高崎WOALで開催した“ROOMS”のことですよね。
Keishi:そうですね。その他にも“ROKKO SUN MUSIC 2017”や上野水上音楽堂の“PLAYTHINGS IN BLUE SKY”(2017年7月8日)でもやっているし、色んなところで弾き語りでは共演していて。ありがたいことに、ここ2〜3年くらいは仲良くさせて頂いています。
ホリエ:弾き語り仲間になっていますね。
●“弾き語り仲間”という意識がある。
ホリエ:我々は元々がバンドマンだから、弾き語りを専門に活動している人たちとはちょっと“位(くらい)”が違うというか。弾き語りをやってはいるけど、自分たちの中でまだ掴めていないところもあるんです。でもお互いを尊敬し合って、意見も言い合いながら一緒にやっている“仲間”という感じですね。
Keishi:僕もソロ名義ですけど、音源はバンドセットで作っているから。そうやって弾き語りメインではない人たちが一緒に集まることが多いので、お互い無駄に褒め合ったりはしますね(笑)。
●お互いに参考にする部分もあるんでしょうか?
Keishi:僕がソロ活動を始めた当初は、参考という意味でもentを聴いていましたね。(ストレイテナーとは)どういう違いがあるのかと思って聴いてみたらやっぱり全然違うし、でもたぶんストレイテナーがあるからこうなっているんだろうなと思うところもあって。そういうところも参考にしつつ、“バンドのない僕はどうやっていこうか”と考えていました。一時期、僕がやたらと“entってライブをするんですか?”と訊いていたのを覚えていませんか?
ホリエ:そういえば、言っていたね。entをライブに誘ってくれていたんです。
●それは実現したんですか?
Keishi:訊いてみたら、“そんなにすぐはできないね”と言われて。
ホリエ:(ストレイテナーより)フットワークが軽いかと思いきや、実はentのほうが重かったという…。entで2009年・2012年とリリースして、2012年はライブもガッツリ3人のバンド編成でやっていたんです。ちょうどそれが終わったくらいの時期に声をかけてもらったのもあって、3人でまた集まって動き出すのはちょっと難しい状況だったんですよね。
Keishi:そういう中で、ホリエさんが“弾き語りだったら”と言ってくれたんです。
●それが実現したのが2017年だったと。ここ2年くらいで関係が一気に深まった感じでしょうか?
Keishi:そうですね。その後なかなかタイミングが合わなくて。最近は一緒にお酒を飲んだりもして、以前とは距離感が全然違うかもしれない。
ホリエ:近付いていますね。だからこそ去年、酒田から高崎まで僕は車に便乗できたわけですから(笑)。
●そういう時間を一緒に過ごしたことも大きいのかなと。
ホリエ:やっぱりインディーズの時に仲が良かったバンドといつまで経っても友だちや家族みたいな関係でいるのは、そういう時間があったからで。お金はなくても時間だけはあったから、長い旅や無駄な呑みを一緒にやったりしてきたんです。そういうものが今になってまたリバイバルしている中で、(Keishiとも)知り合ったんですよね。まだ高崎しか実現していないけど、地方での弾き語りにも一緒に行きたいねという話をここ2年くらいしています。
Keishi:行きましょう!
ホリエ:まあ、色々と考えた上で高崎が良いだろうということになったんですけどね。
●高崎を選んだ理由とは?
ホリエ:Keishiくんがちゃんと軌跡を残している場所というか、そこの街の人とのつながりみたいなものを各地で残していて。そういうものがないところにポンと行って、知らない人たちに手伝ってもらって、ただライブをやって帰るというのはちょっと違うなと。ちゃんとしたつながりがあって、迎えてくれる人たちもいて、そこで我々も“楽しい1日を作っていけたら良いな”という気持ちのハモりがあるんです。それを見ていて“良いな”と思ったから、一緒にやりたいなとなったところはありますね。
●つながりのある場所でやることが大事。
Keishi:それが醍醐味というか、やる意味だったりもするから。色々状況が変わろうとも、そういうふうにツアーをすることは辞めたくないんですよ。もうライフワークみたいにもなっていて。今日初めてこういう話を聴いたんですけど、ホリエさんがそういうところをちゃんと見てくれているのも嬉しかったです。
●ちなみに、entとの対バンはまだ実現していない?
ホリエ:entが僕1人になっちゃって、最近はバンド編成でやっていないのもあって。“ROKKO SUN MUSIC 2017”では一応entとして対バンしているんですけど、そこも弾き語りスタイルだったんですよ。
●entもデビュー10周年を迎えたわけですが、活動スタイルも変わってきているんですね。
ホリエ:活動を始めた時は、意を決したところがあって。バンドとは違う表現の仕方を、自分なりに宅録で作ろうと思っていたんです。元々は30歳の記念としてソロの作品を作ろうと思っていたんですけど、長い時間をかけて作ったので結果的には31歳になる年に出したのかな。
●当初は30歳の節目に、ソロ作品を出そうと考えていたと。Keishiさんが3月にベストアルバム『CLIPS』をリリースするのも、1つの節目という意味合いがあるんでしょうか?
Keishi:事務所が去年変わったこともあって、節目としては良いタイミングだったと思います。新しいアルバムに向かう1つ前のジャブという意味合いもあって、そういう話をもらった時もすんなり“出しましょう”となれました。でも出すからには色んなことを考えるので、結果的に2枚組という…かなりボリュームがあるものになりましたね。自分としては、特にDISC:2のほうが面白かったです。
●その理由とは?
Keishi:DISC:2にはカバーやリミックスを入れていたりして、“B面集”みたいになっているんですよ。こんなにリミックスを作れていることもありがたいし、自分でリミックスしたものもあったり、色々作ってきたんだなと思って。DISC:1もそうですけど、ちゃんと軌跡を感じられるものになっているなと思います。
Interview:IMAI / Photo:菊地英二
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