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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第52回

今回取り上げる機材は、DigiTech STUDIO QUAD Ver.2 です。

前回取り上げたDigiTech のTALKERと同じく、90年代後半にリリースされた完全独立4chマルチエフェクターで、当時の価格は定価で8万円でした。

エフェクトの種類は「リバーブ、ディレイ、コンプ、EQ、コーラス、フランジャー、トレモロ、オーバードライブ、ディストーション」といった定番のものだけでなく、ボコーダーのような個性的なものもたくさん入っています。プラグイン以外を試してみたい方にはまさに打ってつけの逸品と言えます。

キャラクターは国産メーカーの物と比べると「全体的に派手」で、いかにもアメリカンといった言葉がハマりそうなモデルです。

とにかく1つ1つのクオリティーが非常に高く、現在使用しても十分通用する実力を持ち合わせています。プラグインではなかなか出せない濃密さと立体感が楽しめ、レコーディングだけでなくPAの現場でも大活躍すると思います。

また上位機種には2UラックのSTUDIO 400というマルチエフェクター(当時価格13万円)があり、レキシコンのPCMシリーズやT.C.electronicのM2000、M3000などと比べても遜色のないハイエンドな機種でした。QUAD Ver.2より出回っていないので、非常にレアな機材と言えるでしょう。


【大学生バンドのセルフREC:MIX編】
「4つ打ちダンスロック」の重要なボトムを支えグルーブを演出するのは、キックとベースだ。前回は「サイドチェーン・コンプ」という「キックの音が入ってきた瞬間に、ベースを自然に少し下げて低音同士のダブつきを回避させる」手法を試みた。

最初よりはずいぶん良くなったのだが、まだ何かしっくりこない。
サイドチェーンも何度もトライしたおかげで、自然な感じに効いているはずなのになぜかキックのアタックが少々不自然に聴こえるのだ。
使用マイクは通常の低音マイクElectro Voice N/D868と、SOLOMON MICS LoFReQ SubMicの2本。それぞれ1トラックずつ使用して録音している。

DAWソフトのN/D868トラックとSOLOMON MICSトラックの波形を比べてみると、波形の山と谷が逆になっており、アクセントを打ち消しあい不自然なアタック感が出ていたことに気づいた。コムフィルターという現象だ。

SOLOMON MICSトラックを少し前にずらすと、波形のピントがしっかり合う音像になり、標準的な4つ打ちの雰囲気が一気に高まった。

次に、3本のマイクを使用しているスネアの3トラック分を検証してみると、スネア裏側のボトムマイクのタイミングが少し後ろになっていた。こちらも波形を前にずらしてみると、EQを使わなくてもブライトな音になった。

またタム、フロアタムの鳴っていない部分の波形も切ることにより、ダンスミュージック的な分離感がより強調された。


【今月のちょいレア】FOSTEX UR-2(生産完了品)

ロープライスなのにハイクオリティーなFOSTEX らしいブランドカラーを継承するマスターレコーダー。AD,DAコンバーターも非常に優秀で、高品位な24bit 96kHzマスターファイルも気軽に作成できる。DAWの内部バウンスによる音質の変化に頭を悩ませている人は要チェック。


【今月のMV】 Andare 「トリックとりっくら」

確かな作曲力、そして等身大かつメッセージ色ある歌詞がより強固に結びついた、彼らの代表曲といえる作品。アルカラのベーシスト下上貴弘がゲストで参加している。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

ニトリヒロヤス 「光と影のうた」


エモさとシックさが絶妙なバランスで共存する、栃木在住のシンガーソングライターニトリヒロヤスのシングル。Radio Berry(FM栃木)のパーソナリティー、The Timersのドラマー、杉山章二丸と結成した「ニトリヒロヤストリオ」としても活動している。

楓 「きみのうた」

福島在住シンガーソングライターのデビューシングル。天然酵母のような優しさに包まれたポップミュージックに心癒される。中音域に独自の倍音が存在する声質と、楽器隊との緻密な絡みが魅力的だ。


川嶋志乃舞 「パンダトニック/CityShake feat.メイビーモエ」


モスクワで開催された日本文化フェスティバル「HINODE POWER JAPAN」に出演、三味線の魅力を全世界に広めている彼女。今回はヨーロピアンエレクトロと三味線を合体させた「パンダトニック」、ホワンVo.メイビーモエをフィーチャリングした「CityShake」ニューバージョンで、アーティスティックな対極性を見せている。


NIKIIE 「kimitoiruto」


ゲスの極み乙女。のBa.休日課長を中心としたバンドDADARAYのVo.REISとしても活動している、NIKIIEのデジタル配信シングル。無国籍風のサウンドが新鮮、かつ新しい音楽に挑戦する意気込みが感じられる。


MONA RECORDS MIX -Happy hourー (コンピレーション)


当スタジオではmusic makes me...の楽曲を担当。ハイソなポップセンスにさらに磨きがかかり、玄人志向の音楽ファンのみならず幅広い洋楽ファンにも響く佳曲となっている。

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