音楽メディア・フリーマガジン

THE SLUT BANKS 新しい血を入れたTHE SLUT BANKSのロックンロールは更に加速する

THE SLUT BANKS 新しい血を入れたTHE SLUT BANKSのロックンロールは更に加速する


Moi dix MoisのHAYATOと、元TEDDYのTAKAURA TOMMYという2人のドラマーが加入し、新たな体制に生まれ変わったロックンロールの体現者・THE SLUT BANKS。新しい血を入れた彼らは一切立ち止まることなく、バンド史上最強とも言えるアグレッシヴかつパワフルなアルバム『NOIZ THE RIPPER』を完成させた。勢いとバンドらしさを重視したという今作は、彼ら自身のロックンロールの初期衝動が詰まった渾身の作品。首振りDollsのnaoが全編にバッキングヴォーカルで参加し、生々しいリアルなサウンドで埋め尽くされた今作は、THE SLUT BANKSがこれからも爆音を鳴らし続けることの宣言である。


「いつも一緒に居たマネージャーが死んだ、ドラムの交代もあった、戸城さんも結構いい年を重ねている…さあどうする? そろそろ諦めますか? まだやりますか? という時期でもあった」


 
 
●昨年夏にドラムのカネタクさんが脱退され、後任のドラムとしてTAKAURAさんとHAYATOさんが加入されましたが。
 
TAKAMURA&HAYATO:はい。
 
●ドラムが2人というのは…?
 
DUCK-LEE:別にドラムが1人である必要もないし…だからと言ってツインドラムで叩くわけではないんだけど…2人とも忙しいし色々とあるだろうから、2人のドラムがメンバーでもいいんじゃないかと。
 
●それぞれどういう経緯で加入されたんですか?
 
DUCK-LEE:同じくらいの時期に、友達が紹介してくれたんです。
 
TAKAURA:実は僕、紹介されたときにTHE SLUT BANKSのことを初めて知ったんですよ。
 
●あっ、そうだったんですか。
 
TAKAURA:僕にはドラムの師が居るんですけど、その師がTHE SLUT BANKSのみなさんと仲が良くて。
 
DUCK-LEE:Jah-Rahっていうドラマーなんですけど、そいつから紹介されて。
 
TAKAURA:だから僕から見たらTHE SLUT BANKSは大先輩なんです。最初に紹介されたとき、「なんで師匠は俺をここに突っ込もうと思ったんだろう?」と戸惑っちゃって。僕がそれまでやってきたジャンルともまったく違うし、キャリア的にも大先輩なので。
 
DUCK-LEE:ハードロックとかも全然聴いたことなかったくらいだよね?
 
TAKAURA:そうですね。だから最初は「大丈夫かな?」という感じの始まり方だったんです。
 
●HAYATOさんは?
 
HAYATO:THE SLUT BANKSはレジェンドの集まりなので当然知っていたんですけど、去年の夏に“The Time Machine Never Destroyed 2018”というイベントがあって、スタッフとして関わらせてもらっていたんですけど、そのときに菊地哲さん経由でご挨拶させていただいて、今に至ります。
 
TUSK:2018年の秋にはHAYATOくんのドラムでライブをやったりもしていて。
 
●加入して間もない2人から見た“THE SLUT BANKS”の印象を聞きたいんですが。
 
TAKAURA:速くて音がデカくて、アドレナリンが大爆発するバンドですね。
 
DUCK-LEE:人間的には?
●メンバーからの質問いいですね(笑)。
 
TAKAURA:最初はやっぱり怖い人たちじゃないのかな? と思っていたんです。「ボコボコにされるんじゃないかな?」みたいな(笑)。それくらい情報が無くて、でもいざ会うとみんな優しくて、僕の気持ちを汲み取ろうとしてくださるというか。だからこそ僕も言いやすいし。
 
HAYATO:僕の印象としては…変な言い方かもしれないですけど…THE SLUT BANKSは感覚がすげぇ若いんですよ。もともとそういうイメージは持っていたんですけど、加入してよりそう思いましたね。音もそうですし、音を出している最中の会話だったり…求めているサウンドが全然落ち着いてないというか、年相応のものを求めないというか。それはビシバシ感じてます。
 
●それは僕も今作『NOIZ THE RIPPER』を聴いて感じたところなんですけど、作品を重ねるごとにだんだんパワフルになっているというか、いい意味で丸くなるところが一切ないバンドですよね。
 
DUCK-LEE:ああ〜、そういう意味では、今回の制作は全然悩まなかったことが影響しているかな。急に作った曲が多くて、リフとかがポンポン出てきてそのまま曲にしたり。後でTUSKの歌のいいところを出そうと思ってキーを変えることとかはあるんだけど、曲は普通にポンポン出てきましたね。
 
●アルバム全体のコンセプトはあったんですか?
 
DUCK-LEE:バンドらしい感じというか、“リアルさ”を求めていた。自分が好きだった音楽は何だったんだろうな? と思い返してみて、イギー・アンド・ザ・ストゥージズの「Raw Power」を聴いて“なんでこんなにかっこいいんだろう?”と子供の頃に抱いた感覚とか、エアロスミスだったら『Rocks』がいちばん好きなアルバムだったり、昔はよくライブ盤とかあったけどKISSの『Alive!』とか聴いて、家の中で盛り上がったり。今回はそういうサウンドにしたかった。
 
●速い曲が多かったり、あとはアルバムタイトルにも関係していると思うんですけど、ひずみから曲が始まるパターンも多いですよね。
 
DUCK-LEE:そこは意図的っていうか、とりあえず生っぽくやりたかったから。ほぼ一発録りのつもりで、ギターをダビングするときはスピーカーの前で音を感じながら弾いてもらって。そこでノイズが入っても全部録っちゃおうと。もともと考えていたアルバムタイトルは『ROCK THE RIPPER』だったんだけど、ミックスしてて「ノイズも入れよう」とエンジニアとずっと話してて、結果的にノイズだらけになっちゃったから(笑)、『NOIZ THE RIPPER』にしようと。
 
●アルバムタイトルが音と直結していますよね。今回の制作で戸城さん(DUCK-LEE)がそういうモードに入ったのは、何か背景があるんでしょうか?
 
DUCK-LEE:うーん、今作の制作はタケ(※竹下マネージャー:THE SLUT BANKSのマネージャー兼プロデューサー。2018年10月に亡くなった)が闘病していた時期と重なっていて、一時期はバンドの活動が止まっちゃったんです。あいつが全部やってくれていたから。
 
●はい。
 
DUCK-LEE:だから「俺たちもう終わりかな?」くらいに思っていたときもあったんですけど、幸いにしてキングレコードの方が「新作出しましょう」って尻を叩いてくれて。
 
●だからこそ、その反動じゃないですけど、エネルギッシュなサウンドを求めたと。
 
DUCK-LEE:そうかもね。制作は、本当に勢いだけで進めた感じだったんです。ドラムなんてほぼ1日で録り終わったよね?
 
TAKAURA:そうですね。今回はライブをやっている感じに近い感覚で録ったんです。当初の予定では2日間で録るつもりだったんですけど、1日で一気にやりきった方がいいものが出来そうな予感があって。
 
HAYATO:僕もあまり神経質になることなく、1〜2テイク、多い曲の場合でも3〜4テイクくらいでほぼ録り終わった感じですね。ノリ重視で。今作はTAKAURAくんと俺とで叩いてるんですけど、先発のTAKAURAくんが「1日で終わりました」との連絡が来て、「まじか!」と。ノリ重視でやりましたけど、気持ち的には「絶対負けられへん!」「ぶっ殺してやる!」という気合いをぶち込みました(笑)。
 
●ハハハ(笑)。そういうエネルギーも込められているんですね。
 
DUCK-LEE:2人のドラムは溌剌としていていいよね。いい意味でラフで、いい意味で若くて。カチッとまとめられるより、一緒にやっている感じだったりその場の勢いがいちばん大事だし。とりあえず俺からの注文は「叩き倒してくれ」くらいしか言ってないんですよ。
 
ACE DRIVER:たぶん2人とも1回合わせてみて、「ここはもっとこうやりたい」とか「もう1回やりたい」とか細かいことを色々と考えていたと思うんだけど、でも隊長(DUCK-LEE)は「そんなのいいよ!」って。「全体のノリが良ければそれでいいんだから!」って、その場の空気感を大事にしてどんどん進んでいったんです。
 
●そうだったんですね。
 
TUSK:というか、THE SLUT BANKSでいちばん大事なのは、DUCK-LEEのノリについていけるかどうかなんですよ。
 
一同:ハハハハ(笑)。
 
TUSK:ざっくばらんに言ってますけど、戸城さんの中には実は具体的に求めているものが意外とあるんです。だからそのノリを解釈して、プレイにフィードバックしてついてこれている2人が俺はすごいなと思ったんです。「いや、違う。もっとウワーッ! という感じ」と言われて、短時間で「ウワーッ!」とやれている2人がすごい。
 
●言葉の表面上の意味だけじゃなくて、求められているものを表現したというか。
 
TUSK:そうそう。
 
DUCK-LEE:俺たちみたいな名前ばかり大きくなったおじさんバンドに若い人たちが入ると、普通は萎縮しちゃうからさ。だから好きにやってほしくて。それが俺の求めていたものだし。
 
●だからこんなにパワフルな作品になったんですね。TUSKさんの歌詞で興味深いところがあったんですが、M-7「The Rolling」は、THE SLUT BANKSの本質を歌っている印象を受けたんです。具体的に言うと“愛嬌のない愛に愛を注ぎつづけてゆくだけさ“、“無意味なような意味を探し続け/追いかけてゆくだけさ”という部分。これはTHE SLUT BANKSというバンドの有り様というか。
 
TUSK:俺的にはね、こういう曲を歌うのは結構こっ恥ずかしかったりするんですよ。でもこれは俺なりのロックンロールの解釈なんです。
 
●THE SLUT BANKSって、一見コワモテで、丁寧に愛情を表現されないですけど、根本にはすごく愛があって、人間味溢れている人たちで。だから“愛嬌のない愛”というのは、本当に言い得て妙だと思います。
 
ACE DRIVER:俺も本当にそう思う(笑)。
 
TUSK:今回の制作で、戸城さんの中で曲を作った順番はもちろんあると思うんだけど、俺が聴かせてもらった中で「The Rolling」は結構最初の段階にあった曲だったんです。バンドとしては、いつも一緒に居たマネージャーが死んだ、ドラムの交代もあった、戸城さんも結構いい年を重ねている…さあどうする? そろそろ諦めますか? まだやりますか? という時期でもあったんですよね。でも戸城さんは「まだまだいくぜ!」という感じだったから「よし! いこう!」と。そんなこともあって、こういう歌詞になったと思います。
 
●なるほど。あと音楽的にすごくおもしろいと思ったのはM-12「病んでんのさ」なんですけど、このイントロとアウトロ、そして本編とのコントラストというか物語性がすごいなと。
 
DUCK-LEE:物語性とか特になくて思いつきだけどね。
 
TUSK:いやいや(笑)、物語性は充分あるよね?
 
●はい。すごく叙情的だと思います(笑)。
 
DUCK-LEE:その場で思いついたというか。たぶん20年くらい前のそういう音楽が好きだった頃だったら、もっと壮大に10分くらいの曲にしていたかもしれないけど。
 
TUSK:あ、そうだね。戸城さんの中にあるプログレッシブな部分が「病んでんのさ」に出てるのかもね。
 
●ああ〜。
 
DUCK-LEE:うん。キング・クリムゾンとかイエスとかすごく好きな時期があって、当時だったらもっとしっちゃかめっちゃかにして、歌ももっと複雑にしてたかも知れないですね。でも今だったら、シンプルでいいのかなと。
 
TUSK:やろうと思ったら果てしなくいく曲だね。
 
DUCK-LEE:エマーソン・レイク&パーマーやイエスが全盛期の頃に俺は中学生で、やっぱりああいうのが好きでやりたくなるんです。「病んでんのさ」はもっとやりたい気持ちをグッと堪えました(笑)。作品のコンセプトとは違っちゃうと思って。
 
●ハハハ(笑)。
 
TUSK:でもそう言われてみると「病んでんのさ」は結構入り組んでるよね。ギターはオシャレなカッティングで、でも病んでるっていう…。こういう曲が来る度に俺は「なんだこれ!?」となるもん。
 
一同:アハハハハハハ(笑)。
 
●異物感というか、違和感のあるキャッチーさですよね。
 
ACE DRIVER:そうそう。不思議な感じしますよね。
 
DUCK-LEE:あの時代のプログレが持っていたような、変な展開が好きなんだろうね。M-3「me and」とかも間奏でテンポを変えたり。そういうのは嫌いじゃないかな。
 
TUSK:でもM-14「かったりぃ日々抜け出して」とか、俺的には意外だったんですよ。●あっ、僕も意外でした。スケール感が大きいロックで、他の楽曲から受ける印象とはちょっと違っていて。
 
TUSK:そうそう。俺、この曲は歌詞でいちばん困りましたもん。戸城さんの中のどういう引き出しから出てきたんだろう? ってイメージしづらくて。
 
DUCK-LEE:でも俺、こういうのも好きだもん。チープ・トリックとか。
 
TUSK:ああ〜、チープ・トリックの感じなのか〜。
 
ACE DRIVER:俺こういうの大好き。突き抜けてるよね。
 
●突き抜けてますよね。僕はこの曲がアルバムの最後に入っているのがいいなと思ったんです。アルバム前半の楽曲は、THE SLUT BANKSが持つ退廃的な色が濃く出ていることに対して、アルバム最後に「かったりぃ日々抜け出して」があることによって、希望が見えるというか。
 
ACE DRIVER:救われちゃうよね(笑)。
 
TAKAURA:「かったりぃ日々抜け出して」は、僕がそれまで聴いていたような音楽に近い感じがあったんですよ。オアシスとか。
 
DUCK-LEE:オアシスも好きだからな〜。
 
TUSK:世代を超えたロックンロールだね(笑)。
 
●今作はすごくライブ映えする楽曲が詰まっていて、ツアーが楽しみですね。既に新曲は何曲かライブで演っているとのことですが、ツアーはどんな感じになりそうですか?
 
TUSK:今回はワンマンツアーじゃなくて、色んなバンドと一緒に演るんですけど、そういう相乗効果が生まれるライブになればいいですね。アルバムの新曲はもちろんだし、今までの曲も演るつもりだし、俺たち自身が楽しみにしているツアーです。
 
Interview:Takeshi.Yamanaka

Member
Vo.TUSK
G.ACE DRIVER
Ba.DUCK-LEE
Dr.TAKAURA TOMMY
Dr.HAYATO

リリース情報
Album
『NOIZ THE RIPPER』

KING RECORDS
KICS-3783
¥3,000+税
2019/4/10 Release

ライブ情報
“切り裂きノイズ”ツアー
5/11(土)吉祥寺GB
5/17(金)新潟GOLDENPIGS-BLACK STAGE-
5/18(土)長野J
5/19(日)高崎FLEEZ
5/25(土)名古屋UPSET
5/26(日)神戸ART HOUSE
5/28(火)広島SECOND CLUTCH
5/30(木)福岡DRUM SON
6/01(土)岡山DESPERADO
6/09(日)仙台FLYING SON
6/14(金)横浜ベイシス
6/15(土)稲毛K’s Dream
 
 
 

http://slutbanks.jp

 
 
 

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj