どんな壁に阻まれても自らの脚で乗り越え、自分たちが信じる音を鳴らし続けてきたFUNKIST。日本国内だけではなく海外でもライブを重ね、音楽シーンの枠組みを越えて様々なコラボや出会いを生んできた彼らが、女子プロレス団体『SEAdLINNNG』と夢のコラボ。3/17にリリースするシングル『THE WIND AND THE SUN』のタイトル曲は『SEAdLINNNG』公式応援ソング。FUNKISTが胸を打たれ、感動する『SEAdLINNNG』の試合には何かあるのか? なぜFUNKISTの音楽が人の心を打ち、なぜ『SEAdLINNNG』が人の心を震わせるのか? プロレスと音楽との意外な共通点に迫る、スペシャル対談が実現した。
「THE WIND AND THE SUN」の歌詞について、自分がSEAdLINNNGを観て感じたことも入ってますけど、それ以上に「SEAdLINNNGはこういう人たちなんだぞ」っていうこともちゃんと描きたかったんです。
FUNKIST Vo.染谷
同じ「人の前に立つ」という部分で重なるところはすごくありますね。刺激を受けたり、イマジネーションが湧いたり…ステージに立っている自分にシンクロするところはすごく多いです。
FUNKIST G.宮田
ライブを観ながらプロレスのことに還るというか、「こんなに歌で届けてくれるんだから、私たちは闘いでもっと魅せなきゃだめだ」とか、その場で試合のイメージが浮かんでくる。
SEAdLINNNG 高橋奈七永
全部が真実っていうか、みなさんの本気が音として言葉として全部入ってくる感じというか。ライブを観てそういうことを感じたのも初めての経験で、自分がやってきたプロレスにも重なった。
SEAdLINNNG 南月たいよう
●FUNKISTは昔から音楽シーンの枠を超えた活動をされていますが、今回のシングル曲「THE WIND AND THE SUN」は女子プロレスリング団体『SEAdLINNNG』の公式応援ソングということで。
染谷:はい。
●FUNKISTはいつもインタビューのたびに情報量が多くて困るんですが(笑)、そもそもどういう経緯で『SEAdLINNNG』と出会ったんでしょうか?
染谷:たいようさん(南月たいよう)が現役だった頃の話なんですけど、僕らが“旅祭”というお台場で開催されたフェスに出ていたとき、たいようさんがお客さんとして遊びに来ていて。そこでFUNKISTのライブを観て気に入ってくださったみたいで、CDを買ってくれたらしいんです。
●はい。
染谷:当時、僕らは女子プロレスラーである木村響子選手の入場曲を担当させてもらっていて(「月下のラスタカラー」)、そのCDにその曲がたまたま収録されていたんです。で、たいようさんと木村選手はライバル関係で。
●あら。
染谷:たいようさんが家に帰ってCDを聴いてみたら「なぜライバルの曲が入ってるんだ?」と(笑)。「木村ばかりずるい」「いつか私もコラボしたい」みたいに思ってくださったみたいで。
南月:はい。
染谷:その後、再会したのは2〜3年前なんですけど、DJダイノジさんのところでダンサーをやっている森森子さんに「プロレスやっている方で紹介したい人がいる」と言われてたいようさんを紹介されたんです。そこで“旅祭”の話とかを聞いて。
●ほう。
染谷:たいようさんは初めてプロレスを観たときに、自分と同じくらいの身長の小柄なレスラーががんばっている姿に感動して、プロレスラーを志したらしいんです。そのレスラーに憧れて、いつかその選手と試合をしたいと思ってプロレスラーになって。でも自分がプロレスラーになった頃、自分が憧れた選手はもう引退してしまっていたんです。
●あらら。
染谷:たいようさんは小柄なので、練習は人一倍過酷らしいんですが、そういうのもあって「現役は30歳まで」と決めて突っ走っていて。辞める時を決めておかないと、心も身体も保たないので。
●ふむふむ。
染谷:それで30歳になり、引退試合が決まって…引退試合の相手は奈七永さんだったんですが…引退試合の1つ前の試合の相手が、10年以上前に引退されたたいようさんが憧れた選手だったんです。その1試合だけのためにトレーニングして、復帰して。
●うわ。
染谷:それでたいようさんは「いつか夢は叶うんだ!」と言って引退して。そんな中でFUNKISTの音楽を知って、どこかに共通するものを感じてくださったみたいで。
●FUNKISTは「いつか夢は叶う!」「諦めるな!」というメッセージを常に発してきましたもんね。
南月:FUNKISTの音楽には、いつも挫けたときには背中を押してもらっているし、特に歌詞やメッセージに励まされているんです。
染谷:再会したときにそういう話を色々と聞かせてもらって「いつかコラボできたらいいよね」という話になって。たいようさんは、プロレスと音楽とお笑いを融合した“たいよう祭”というフェスを企画されたんですが、FUNKISTも出させてもらって。そこで「ちょっとおこがましいですけどSEAdLINNNGの応援ソングを作ってもいいですか?」とお願いしたんです。
●あ、FUNKISTサイドからお願いしたんですね。普通はこういうタイアップみたいな話って、ミュージシャンサイドではなくて企業や団体サイドから話が出ることが多い気がするんですが…。
染谷:お願いしちゃいました(笑)。なぜ応援ソングを作りたくなったかというと、SEAdLINNNGの試合を観て感動したからなんです。女子プロレスというものは割と裾野が広がってきていて、アイドルっぽい人たちが活躍する場があったりとか色々とある中で、SEAdLINNNGはかなりゴリゴリなんです。それを観ていて、貰うものが本当にいっぱいあって。
●うんうん。
染谷:たいようさんは以前から「女の子たちが命を賭けて、心と身体を削ってがんばってるんだから報われなきゃだめだ」とおっしゃっていたんですけど、「SEAdLINNNGは女の子たちが報われる場所にしたい」という想いを聞いて。試合を観てそれがすごく腑に落ちたんです。だから「曲を書いた」というよりは「湧き出てきた」というニュアンスに近いのかな。
●なるほど。
染谷:何度も観に行かせてもらっていて、その中で今回の「THE WIND AND THE SUN」は生まれた感じなんです。
●高橋さんと南月さんはそれまでに色んな団体にも所属されていましたよね? SEAdLINNNGはどういうきっかけで立ち上げることになったんですか?
高橋:きっかけは2015年の初め、試合中のことなんですけど…世志琥が相手選手を怪我させてしまって…試合中のことなんですけど、相手に怪我させるのは良くないことなんで…。
●当時、ニュースにもなりましたね。
高橋:はい。それがあったときに、自分がトップに居るのに守ってあげられなかったことに責任を感じたんです。プロレスなのにそういうことが事件になってしまうのが悲しくて、私自身プロレスを辞めようと思ったんです。
●あら。
染谷:世志琥さんはそれがきっかけで無期限活動休止になって、後に引退されていて。
高橋:それは自分が思うプロレスじゃないなと。当時、ものすごく落ち込んでいて、気分転換のためにハワイに行ったんですけど、同じタイミングで南月は世界一周旅行に行っていて、ハワイで合流したんですよ。
南月:世界一周旅行をしていて、奈七永さんがハワイに居るというので、日本に帰る前にハワイまで会いに行ったんです。
染谷:南月さんは引退して世界一周の放浪の旅に出て、日本で先輩と後輩が大変な状況になっていることを旅先で知ったらしくて。
●なるほど。
南月:ハワイで再会したとき、奈七永さんの落ち込み様がすごくて(笑)。
高橋:でもハワイで何も考えずにみんなでワイワイしていたら元気が出てきて、ドーナッツを食べたら…マラサダっていうハワイの揚げパンなんですけど…食べたら元気になって、「もう1回なにかやろうか!」という気持ちになって。
南月:続ける/辞めるというのは個人が決めることだけど、奈七永さんがこのままフェードアウトするのは絶対に無いなと思って「もう1試合やりましょう!」と励ましていくうちに、「あと10試合やろう!」みたいな感じで徐々に元気になっていったんです。そのうち「人生はどうなるかわからないから楽しいね」とか言うようになって(笑)、奈七永さんがどんどん元気になっていったんです。
●一方で、2人から見たFUNKISTの印象はどうでしたか?
南月:初めて曲を聴いたとき、今までにない音楽でびっくりしたんです。さっき西郷さんがおっしゃったように初めて聴いたのは木村さんのテーマソングが収録されたCDだったんですけど、色んな音が入っていて、民族的なテイストもあって、「バンドでもこんな音楽があるんだ!」って。ライブも、とにかく胸が震えるっていうか。“かっこいい”を通り越して、全部が真実っていうか、みなさんの本気が音として言葉として全部入ってくる感じというか。ライブを観てそういうことを感じたのも初めての経験で、自分がやってきたプロレスにも重なったんです。
●プロレスにも重なった?
南月:プロレスも、単に「すごかったね」「かっこよかったね」で終わっちゃだめだと思うんです。入場しただけで涙を流させるような、心を震わせる闘いを目指していたので、フィールドは違うんですけどFUNKISTから勇気をもらって。すごく刺激と影響を受けていました。
●なるほど。
染谷:今の話は初めて聴いたんですけど、僕らも「SEが鳴っただけで感動させられるバンドになろう」っていうのはずーっと言ってきていて。
宮田:びっくりしたね(笑)。
染谷:それって見た目がどうとかじゃなくて、積んできた経験だったり、持っている空気感だったりすると思うんです。僕らも海外とかでライブしたりしてきましたけど、そういう背景をライブで活かせたらいいなと思っていて。だからびっくりしました。
高橋:FUNKISTは熱いですよね。初めてライブを観たときはイベントだったのであまり出演時間が長くなくて“もっと聴きたい!”と思ったし、実際にワンマンに行っても、飽きる時間が全然無くて。それは自分の胸にスッと入ってくる言葉だったり想いがあるからだろうし。ライブを観ながらプロレスのことに還るというか、「こんなに歌で届けてくれるんだから、私たちは闘いでもっと魅せなきゃだめだ」とか、その場で試合のイメージが浮かんでくるくらいで。とにかく熱いし、すごく刺激を受けるんです。
●先ほど染谷さんが「SEAdLINNNGの試合を観て感動した」とおっしゃいましたが、SEAdLINNNGのプロレスを観てFUNKISTの2人はどういう印象を受けましたか?
宮田:やっぱり感動するんですよ。もちろんリングの上で闘っているのを見ると「痛そうだな」とか、どっちの選手が攻撃を受けても自分がくらっているような感じで「うわー!」ってなるんですけど、だんだん変わってきて。最終的にはすごく手に汗を握って見入ってるし、「一緒に闘っている」と言うと変な話なんですけど、なんか全員が一体となっている感覚になるというか。
●一体になる感覚?
宮田:リングの上と客席の境目がなくなって、みんなで闘っている感じになるんです。実際に選手の方たちはリングから降りて来られるので、いっぱい飲み物こぼしたこともあるんですが(笑)。
一同:アハハハハ(笑)。
宮田:そういう感じで一体感があるので、自然と会場が1つになって、最後感動に行き着くっていうのはすごいなと毎回思います。「エンターテインメント」というものでもないというか、通り越しているものがありますね。それは“熱さ”がすごく大事なのかなって思うんですが、いつもそこまで持って行ってくれるというか。さっきの2人の話を聞いて、同じようなことを結構考えているんだなって思いました。
●プロレスを観ても音楽に対する刺激を受ける。
宮田:そうですね。プロレスと音楽は全然違いますし、プロレスをやっている自分は全然想像出来ないですけど、同じ「人の前に立つ」という部分で重なるところはすごくありますね。刺激を受けたり、イマジネーションが湧いたり…ステージに立っている自分にシンクロするところはすごく多いです。
●なるほど。染谷さんはどうですか?
染谷:SEAdLINNNGは“想い”みたいなものがすごく強いなと思っていて。試合が終わって、負けた選手が号泣していることもあるし。奈七永さんと世志琥の試合で…2人は同じ団体だし、いつも会っている人じゃないですか…でも2人にはちゃんと物語があって。世志琥さんが一度引退されて、たいようさんが何度も通ったけど全然話してもくれない状態が続いて、やっと話せたら「もうプロレスはしない」と言われて。そんな中で、世志琥さんが奈七永さんの試合をこっそり観に来たことがあって。
●ほう。
染谷:試合を観ているうちに熱さに感動して、思わずリングサイドで応援して。その姿に奈七永さんが気づいてリングに上げて、最終的に世志琥さんは「やっぱりプロレスがやりたい」となって。完全に『スラムダンク』の三井なんですよ(笑)。それで世志琥さんの復帰試合の相手が奈七永さんで。
●そういう背景はお客さんにも伝わるから、感動しますね。
染谷:更に、復帰試合は世志琥さんが勝つんですよ。その後、3年後にまた2人のカードが組まれるんですけど、今度は奈七永さんが勝って、世志琥さんが泣いていて。奈七永さんが「お前の涙が見れてよかった。私はいつまでもお前の大きな壁で居てやる」と言って、僕が客席で泣いている。
一同:アハハハハハハ(爆笑)。
染谷:すごいなと思うんです。仲良くさせてもらっていて、僕も裏側まで知っていますけど、そういう立場でも納得させられるって。よくプロレスは「やらせじゃないか?」とか「筋書きがあるんでしょ?」って言われますけど、全部裏側を知っている僕が観ても嘘が1つも無いんです。
●そういうことなんですね。なるほど。
染谷:それが「命がけでやる」っていうことだと思うし、もっとたくさんの人にこの人たちの生き様や物語が届いたらいいなって思うんです。今回の「THE WIND AND THE SUN」の歌詞について、自分がSEAdLINNNGを観て感じたことも入ってますけど、それ以上に「SEAdLINNNGはこういう人たちなんだぞ」っていうこともちゃんと描きたかったんです。
高橋&南月:そうだったんですね〜。
染谷:そういう生き様が試合に毎回出ていて、すごいなって思うんです。
●ちなみに、高橋さんはいろんな選手の引退試合の相手に指名されていますよね?
高橋:はい。22年やっているので、キャリアが長い分だけいろんな人と接しているからだと思うんです。
染谷:でも引退試合の相手って特別ですよね?
高橋:そうですね。責任重大です。
南月:だって奈七永さんは「女子プロ界の送り人」って言われてますもん。
一同:アハハハハハ(爆笑)。
高橋:引退試合の相手って責任重大ですけど、色々と考えて私を指名してくれたんだったら、もう全力でいい試合をしたり、その人がそのときに持っているすべてを引き出してあげて、その上で浄化させるっていうか…そういう役目があると思っているんです。熱い想いや悔しい想いも全部引き出してあげて、その上で全力で闘いたいなって。でもそれは引退試合に限らず、全試合そう思ってますね。
宮田:なるほどな〜。
染谷:プロレスの入り口として「なんで相手の技をよけないの?」という疑問が生じることがあると思うんですけど、すべてを受ける=相手のすべてを引き出して、相手も自分のすべてを引き出して、全部出し尽くしたところで最後に立っていた1人が勝つ競技だなって思うんです。そこには“やらせ”という言葉とは全然違う次元の、命をかけた魂のぶつかり合いがあると思うんです。それはきっと、試合に足を運んだ人たちには絶対に伝わっているんですよね。
●うんうん。
染谷:闘っているんだけど、根底には“愛”みたいなものがあって。すごいなと思いますし、納得しますよね。
●余談ですが、バチバチに喧嘩しちゃうこともあるんですか?
高橋:はい、よくあります。
一同:アハハハハハ(爆笑)。
南月:奈七永さんはよく「膝で人は殺せる」と言っていて。
染谷&宮田:アハハハハハハハ(笑)。
高橋:キレると膝が出るんです。
●すごいな。高橋さんが先ほど「全部引き出す」とおっしゃいましたけど、試合に関してそういう考えに至ったきっかけは何かあるんですか?
高橋:私は以前、全日本女子プロレスっていう老舗の団体に所属していたんですけど、私が入って2年目で会社が倒産して、倒産しても大会は続いていて。先輩たちに給料が支払われない状況になって、どんどん選手が辞めていったんですよ。そんな中、結構早い段階からメインに起用される機会があって、でも自分たちは若いしやる気しかなくて、全力の出し方がわからなくて藻掻いていたんです。
●はい。
高橋:当時、私と組んでいた中西百重という選手…南月は中西百重に憧れてプロレスの世界に入ったんですけど…その子はすごく天才肌で、どんどんいろんなベルトを獲っていくんです。私はその隣に居て、むしろ僻みっていうか「どうしたらいいんだろうな?」と悩んでいたんですけど、そんな中、全日本女子プロレスの創立35周年大会が横浜アリーナで開催されて。鬱憤が溜まりに溜まっていて、その試合が終わった後に「プロレス辞めます」と言っちゃったんですよ、コメントブースで。
●え! コメントブースで?
高橋:はい。次の日の新聞に「高橋奈七永引退」と大きく出ちゃって。でも私はそこまで深く考えてなかったんですよ。でもファンの人が泣いちゃったり、大ごとになってしまって、そこで初めて自分の影響力や応援してくれている人の多さも実感して。結局「すみませんでした」って引退撤回の会見をしたんですけど、そのときに、いつが最後の試合になるかわからないし、お客さんたちを裏切ってしまったことを取り返すにはやっぱり試合しかないなと。毎回「これが最後の試合だ」と思ってやろうと決めたんです。
●なるほど。
高橋:「これが最後の試合だ」と思うとやりきらなきゃ納得できないし、そういう風に思ったら「出し切る」とか「受け切る」っていうコツが掴めてきて、周りの景色が変わって見えるようになったんです。自分が評価されるようになったり、いちばん上のベルトが獲れるようになったのはそこからですね。
一同:おお〜。
●なんかバンドやライブの話に似てますよね?
染谷:似てますね。ライブバンドってライブ自体の本数が多いじゃないですか。そうするとツアー中なんかは1週間に4〜5本ライブが続くこととかもあって。そうするとだんだん気持ちが疲弊していって、「昨日と同じライブになってないか?」とかわかんなくなって。でもそういうときに、一緒にツアーをまわっている先輩のバンドに昨日を超えるステージを見せつけられると「ここまでやんなきゃだめなんだ」と痛感するというか。さっき奈七永さんがおっしゃっていた「これが最後の試合だ」というのは宮田とかともよく話していて、「これが人生最後のライブだと思ってやろう!」って。
南月:FUNKISTのライブに行くと「なんて特別な1日なんだ!」と思えるので、また明日からがんばって生きようと思えるんですよね。プロレスも着飾ってる人よりも、黒パン1枚で出てくる人のオーラって、やっぱり今まで培ってきたものしか出せないので、本当にバンドもプロレスも一緒だなと思いました。
●先ほど高橋さんは「お客さんたちを裏切ってしまった」とおっしゃいましたけど、お客さんから得るものは大きいですか?
高橋:大きいですし、それがほぼ100%に近いと思いますね。相手の技を受けて受けて、私は「それでも立ち上がれるんだよ」ということを伝えたいんですけど、それはプロレスだけじゃなくて人生も同じだと思うんです。仕事や人間関係で「もう嫌だ」と思うことがあっても、それでも明日は来て、立ち上がらきゃいけなくて。その活力になれたらいいなと思うし、そういうことをお客さんが実際に言ってくれることも多いんです。「奈七ちゃんががんばってるから自分もがんばれたよ」とか「学校に行けなかったけど、奈七ちゃんのプロレスを観て学校に行けるようになったよ」とか。
●それは嬉しいですね。
高橋:そういうのを聞くと本当に「がんばってよかった」と思えるので、身体が痛くても、何があってもリングに立とうと思いますね。
南月:負けることとか、リング上でボロボロになることって、私は恥ずかしいと思っていたんです。むちゃくちゃ一生懸命やっても負けたときとか、人前で泣くなんてあり得ないと思っていて。だから自分はさらけ出せる強さに憧れてプロレスの世界に入ったんですけど、まず入って練習するのは受け身なんです。要するに相手の技を受ける、負ける練習なわけですよ。
染谷:ああ〜。
南月:倒されることは恥でもなんでもなくて、そこから立ち上がる力をどれだけ出せるかがプロレスなんですよね。
●高橋さんと、染谷さん・宮田さんは同い年とのことですが、続けることってすごく大変で難しいことだと思うんです。高橋さんはなぜ今もプロレスをやっているんですか?
高橋:好きだからです。それにどんどんプロレスが好きになってますね。やるのも好きだし、観に行くのも好きだし、とにかくプロレスは最高なんですよ。
南月:ずっとプロレスをやっているのに、休みの日にプロレスを観に行くんですよ。
高橋:今年も元旦からプロレス観に行ってました。
一同:アハハハハハ(笑)。
●FUNKISTはなぜ音楽を続けているんですか?
染谷:僕は今まで何度か「もう無理かも」と思ったことがありましたけど(笑)、やっぱり僕も好きだからです。それに、「もう無理かも」と思ったときにがんばれたのは仲間が居たからで、宮田にも「お前に歌っていてほしい」と言われて支えられて、その言葉を信じてまたがんばって。今年FUNKISTは20年目なんですけど、サッカーやプロレスのテーマソングを作らせてもらって、はっきり言うと僕の好きなものに色々と携わらせてもらっているんです。それってすごく幸せなことだなって。
●そうか、FUNKISTは好きなことしかやってない。
染谷:そうなんですよ。自分の好きなことしかやってなくて、それが誰かの人生の支えになっていて。めちゃくちゃ幸せなことだと思うし、FUNKISTで良かったなって改めて思います。生まれ変わっても、やっぱりFUNKISTのヴォーカリストになりたいです。
高橋&南月:いいですね。
●宮田さんはどうですか?
宮田:僕はたぶん最初に決めちゃったんですよ。「FUNKISTをやる」ということは最初に決めていて、染谷とは幼馴染で、こいつの歌が好きで、こいつの人生の背景とかも知っていて、それを音楽の力を借りて発信したら、もっともっといっぱいの人たちに伝えられるんじゃないかなって。決めたことで、それが楽しいからずっとやっていられるんでしょうね。
Interview:Takeshi.Yamanaka
EAdLINNNG
2015年8月に高橋奈七永と南月たいようが設立した女子プロレスリング団体。所属選手は高橋奈七永、中島安里紗、世志琥。代表は高橋奈七永、レフリー/コーチ/取締役は南月たいよう。
http://seadlinnng.com/