2018年も全国各地のライブハウスやフェス・イベント会場で大爆笑を作り出し、花団未到のコミックバンド道を突き進んできた我らが四星球。衝撃のメジャーデビューから丸2年、今年結成17周年を迎えた彼らが、メジャー1stオリジナルフルアルバム『SWEAT 17 BLUES』を完成させた。作品を発表するたびに予想の遙か先をいくアプローチで大爆笑を作り出してきた彼らは今回、いったいどのような発明で魅せてくれるのだろうか。正月休みを終えた4人を直撃し、アルバム『SWEAT 17 BLUES』について、そして“17”という数字に隠された恐るべき事実について話を聞いた。
「このままでは74分超えるということに気づいて、ヤバいなと思って。最終日に録る予定だったのはコントだったんですけど、余計なものを入れないようにして、結果的にギリギリOKでした」
●あけましておめでとうございます!
●以前、正月明けのJUNGLE☆LIFEの取材でまさやんが婚約を報告してくれてスクープをゲットできたんですけど、今年は何か特ダネあります?
●まさやん離婚しました?
●ちぇっ。
●2/20にアルバム『SWEAT 17 BLUES』がリリース予定ですが、このタイトルを見て、実際にCDを聴いてみたら17トラックも入ってたので、ちょっとアホなのかなと思いました。
●尺としては1時間超えですね。
74分ちょっとあるんですけど、「容量的には74分くらいまでしか無理」と聞いてたので、めっちゃ焦りましたよ。僕、(制作の)最終日の前日にこのままでは74分超えるということに気づいて、ヤバいなと思って。最終日に録る予定だったのはコントだったんですけど、余計なものを入れないようにして、結果的にギリギリOKでした。
●17周年で17作目だから17曲なんでしょうけど、別に“17”ってキリがいい数字じゃないと思うんですが…。
●ニューロティカ方式ですね。
“17”という数字には青春感があるというところから今作は始まったんです。17年目の四星球が出す17枚目の作品は17トラックで…という話をGetting Betterが提案してくれたんです。
●レーベルサイドからの提案だったんですね。よくそんな自分の首を締める恐れのある提案を…。
そうそう(笑)。トラック数を提案されるとは思いませんでしたね。
●でも17トラックって、なかなかの数ですね。
1つやりたかったのは…今まではコントとかでトラック数を水増ししていた感じがあったんですけど、そうじゃないやつもええなと思ったんです。
●確かに今作は音楽的ですよね。
トラック数が多い作品は今まで作ったことあるけど、トラック数が多い中でも今までやってないことは色々あるからおもしろいかなと。それにシングルとかの既発曲もあるし、M-6「コミックガール」みたいな他の人(※私立恵比寿中学)に提供した曲もあるし。
アルバムのために新たに作った曲は、M-1「モスキートーンブルース」、M-4「ラジオネーム いつかのキミ」、M-5「いい歌ができたんだ、この歌じゃないけれど」、M-13「Soup」、M-14「SWEAT 17 BLUES」ですね。曲以外ではM-15「SWEAT 71 BLUES」もありますけど。
●先ほど康雄くんが“青春感”とおっしゃいましたが、中学生とか高校生のような視点が曲のテーマになっているんですか?
そこは意識しましたね。今までシングルとかで出していた曲もアルバムに収録されるので、なおさら新しく作る曲は“青春感”が強くないとあかんなって。既発のものはそこを意識して作っていなかったので。
●なるほど。その録り下ろしの中の1曲「ラジオネーム いつかのキミ」ですが、これは真面目な視点で綴られていて、今作の中でキーとなる1曲だと思うんですが。
FM香川さんの開局30周年が2018年だったんですけど、2年くらい前から「30周年に向けて歌を作ってもらえないですか」と言われていたんです。でもなかなか作らなかったので、それが徐々に急かされる感じに変わってきて。
●「すみません、あと1年なんですけどまだですか?」みたいな。
あと3ヶ月くらいまで期限が迫ってきて、僕らFM香川のアンバサダーに任命されて。
「それくらいプレッシャー与えないとこいつら作らへんな」と思われたんでしょうね。
●ハハハ(笑)。この曲、語りっぽい歌が特徴的で、『陽はまたのぼりくりかえす』や『深夜⾼速』のような他のアーティストの曲名が歌詞に出てくるところにリアリティがあって、ジーンとしたんですよね。
テーマはラジオやし、しゃべりというか語りみたいなのが合うかなと思って作っていった感じですね。
●もう1曲、アルバムのキーとなっているのはタイトル曲の「SWEAT 17 BLUES」ですよね。珍しく熱いだけの曲。
●四星球は捻る傾向が多いですが、この曲は珍しくストレートで、自分たちの核の部分を詰め込んだもので。
「SWEAT 17 BLUES」は制作の最後の段階で作った曲なんですけど、それこそ最後なので“青春感”を思い切り出そうというのが前提にあって。最終的に書き終えたのは、ジャケ写を撮った後のタイミングだったんですよ。その時点では今の形よりも1フレーズ短いバージョンだったんですが、今作のジャケットがあまりにも思春期感があったので、内容の“青春感”がジャケに負けないようにと思って書き足したんです。
●そんないい曲がある一方で、「いい歌ができたんだ、この歌じゃないけれど」はずるい。いい歌ができたという動機だけで曲を作ってしまうという。
「ラジオネーム いつかのキミ」を書き終えた後、“この流れのままもう1曲できそうやな”という感じがあって、その勢いで作ったんです。音楽が音楽を呼んだというか。
●音楽が音楽を呼んだ…まるでミュージシャンみたいな発言ですね。
あとここ5年くらいずっと思ってることなんですけど、いいライブを観させてもらった後って歌ができたりするんです。音楽から刺激を受けるんでしょうね。でも我ながら思うんですけど、「いい歌ができたんだ、この歌じゃないけれど」は前半の中身の無さがすごいなと。
●ハハハ(笑)。確かに中身が全然無い(笑)。
“ともに歌おう”の繰り返しの部分とか、今年36歳になるやつが書く歌詞じゃないですよ(笑)。しかも“これは普通”とか言ってますもんね。
●うん。決して褒められた話ではない。
この曲、自分たち的にはアレンジも全部ダサい方を選んでいったんですよ。演奏で言うと、おそらく高校1年生でも作れるような曲なんです。
●中身が無いといえば、失礼ながら「Soup」も中身が無いと思うんですが…。
●でも「Soup」は歌詞の中身が無い割に、不思議なことに音楽的にはどんどん壮大になっていくという。
この曲は“スープちょっとちょうだい”というところから作っていったんです。
●“スープちょっとちょうだい”というフレーズから曲を作るモチベーションがなぜ湧いたのか、その理由がまったくわからない。
アハハハハ(笑)。この曲、僕としては今作の中でいちばんラブ&ピースを歌っているつもりなんです。
●ラブ&ピース?
ラブ&ピースをスープに混ぜて煮込んでいるっていう裏テーマがあるんですけど、そこまでは具体的に言わないというアプローチ。おそらく他の歌詞を書く方ってそこまでちゃんと考えた上で、歌詞では敢えて全部説明しない書き方をされていますよね。でも僕はそれを今までせずにここまで来た人間で、ちゃんと説明した歌詞をずっと書いてきたんです。そういう経緯があった上で、「Soup」では説明を敢えてしない書き方に挑戦したんです。
●敢えて説明を省いた。
省いたというか、奥行きを持たせたというか。そう考えたとき、僕らなりの奥行きの見せ方としては「意味のないものにする」ということだったんです。
●中身が無いと思ってましたけど、奥深い曲だったのか。実は色々考えているんですね。
●そしてアルバムを締め括るのはM-17「発明倶楽部」ですが、この曲は四星球の表現の根本的な部分が綴られた楽曲ですね。
「発明倶楽部」はアルバムの最後にしたかったんです。イメージとしては、それまでの16曲と「発明倶楽部」が対になっているという感じ。
●「発明倶楽部」について思うところがあって、以前から四星球は型破りな作品を作ったりライブをやっていますけど、それは「お客さんを楽しませた者が勝ち」という反骨精神のアウトプットだと解釈していて。要するに四星球の発想は、バンドシーンに於ける1つの発明だと思うんですよね。
僕らがやっていることの意図や狙いは気づかれないことも多いんですが、気づかれなくてもいいことと、“いつかは気づかれるだろうな”と思いながらやっていることもあって。ただ、そういう承認欲求というよりは、「これはしないでおこう」と思っていることの方が多いんです。
●「これはしないでおこう」と思っていること?
例えばバンドとか音楽に関係なく、「海外ではもうやってるよ」とか「◯◯の世界では当たり前だよ」って言う人ってダサいと思うんですよね。だから「そういうことはしないでおこう」と思ってるんです。どこかの世界で当たり前になっていることを、自分たちはバンドの世界でどうやるか? が大事だと思っていて。色んな人が色んなものを作っている時代ですから、0から1を作ることってなかなか難しいじゃないですか。だから大切なのは1からどのような2を作るか。発明というよりは、拝借の仕方だと思うんです。
●「発明倶楽部」でも歌っていることですけど、何と何を組み合わせるかが重要。
そうですね。他の世界でやっていることをそのままやらない。そのまましたら娯楽として負けているなと思うので。
●そういう意味では、四星球はどこを目指しているんですか? 目標にしている人とか、目標にしている娯楽やエンターテイメントはあるんですか?
うーん、分野によって目標とする対象は違うんですけど、四星球が持つパンク的部分は何を目指しているのか、それとは別に笑いの部分はどこを目標としているのか…というふうに細分化されると思うんです。例えば四星球が持つパンク的要素はバンクバンドとは対峙していなくて、たぶん芸人さんに対してだったりする。
●へぇ〜。
バンドマンの尖っている人より、尖ったネタをやっている芸人さんの方がよっぽど尖ってますし、そこに思想もちゃんとあるし。ネタとかを観せてもらったら、その人たちがほんまにそのボケをやりたくてやっているということがわかるじゃないですか。そういうところに自分たちの笑いの要素で憧れるんじゃなくて、自分たちの音楽で憧れたりしている。
●なるほど。そういうことか。
逆に、めちゃくちゃいい歌を歌っている人間に対して、どれだけ同じフィールドで笑わせるか? と考えたり。去年色々芸人さんと絡む機会に恵まれて、そういうことを改めて考えましたね。
●「発明倶楽部」はバンドのプライドを歌った大事な曲なんですね。
そうですね。今回でいうと“16曲 vs 「発明倶楽部」”くらい、強めに思っている曲です。
●よくわかりました。ではそろそろ時間なのでインタビューを終わりますが、最後にモリス何かありますか?
interview:Takeshi.Yamanaka
おまけ:『SWEAT 17 BLUES』収録「ラジオネーム いつかのキミ」の歌詞に出てくるアパートセピア(外部サイト)
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