2018年から3ピース編成となり、バンド名の表記を“7!!”から変更した“seven oops”がニューアルバム『songs for...』をリリースする。高校2年生の時に地元・沖縄で結成してから共に活動してきた仲間との別れを経て、3人は今作で新たな一歩を踏み出した。初めて故郷である沖縄への想いを歌ったというM-11「この島で」を筆頭に、KEITA(Ba.)が中心となって生み出した全11曲は今まで以上にバラエティ豊かだ。作品・ライブ共に表現の幅を広げ、進化を遂げたバンドの第二章がここから始まっていく。
「3人になったことで、“4人の頃のほうが良かったね”とは絶対に言われたくないんです。過去の“7!!”を超えて“前より良くなったね”と言われるように、できる限りのことはしたいと思っています」
●昨年12月末でMICHIRU(G.)くんが脱退したわけですが、バンド名の表記を“7!!”から“seven oops”に変えたのは心機一転の意味合いもあったんでしょうか?
MAIKO:脱退したMICHIRU(G.)は色々とリサーチするのが好きで、よくエゴサーチもしていたんです。そういう時に“7!!”だと、検索に全然引っかからないんですよね。だから“表記を変えたい”とずっと言っていて、変えるタイミングを見計らっていたんですよ。でもそうこうしているうちに脱退することになっちゃったので…彼の遺言というか(笑)。
●遺言なんだ(笑)。
MAIKO:彼の遺志がここに生きております(笑)。
KEITA:実際、周りからも“心機一転ですか?”とよく言われるので、自分たちも“じゃあ、そういうことで”というところはありますね(笑)。
●ずっと一緒にやってきたメンバーが抜けるというのは、大きかったのでは?
MAIKO:そうですね。高校からずっと一緒にやってきたから。
KEITA:でもケンカ別れとかでは全然なくて、話し合いの結果として彼は新しい道を歩みたいということだったんです。今でも仲は良いし、レコーディングにも遊びに来てくれて、今回も声の出演という形で出てくれていて。喪失感は各々にあるとは思いますけど、ネガティブなものではないですね。
●今回の新作『songs for...』では、全ての作詞/作曲をKEITAくんが担当していますよね。そこもこれまでと大きく変わったところなのかなと思ったんですが。
KEITA:最初は“メンバー全員が作詞/作曲をする”ということで、売り出していましたからね。今回のアルバムを出すとなった時に、(他の2人にも)お願いはしたんですよ。
MAIKO:今まで曲をたくさん作っていたMICHIRUがいなくなったことでKEITAの負担が大きくなるから、“みんなで頑張って曲を作ろうね”と話してはいたんですけど…作れなかったですね。
●メンバー全員、作ろうとはしていたんですね。
MAIKO:KEITAだけに押し付けるつもりはなかったんですけど、“できる人とできない人って分かれるんだな”と改めて思いました。
KEITA:9月から始まったアコースティック・ツアー(※“Acoustic Tour - NEW! NEW! NEW!-”)で会場限定CDを販売することも決まっていたので、アルバムとは違う曲を入れようという話はしていて。そうなると全部で13曲必要になるから、他の2人にも“よろしくね”と言っていたんです。NANAEは頑張って1曲書いてくれたんですけど、MAIKOは全然書いてこないので…結局、もう辞めたMICHIRUにお願いしたんですよ(笑)。
●会場限定CDには、MICHIRUくんの作った曲が入っている?
NANAE:辞めたMICHIRUの曲が入っているCDを販売しております(笑)。
KEITA:でも辞めたメンバーの曲が入っているというのも、ファンの皆さんにとっては良いサプライズになるんじゃないかなと思ったんですよね。
●そういう経緯があったんですね。KEITAくんは1人で今作の全曲を作ったわけですが、大変ではなかった?
KEITA:苦労したと言えば苦労しましたけど、コンセプトやアレンジとかを自分で全部決められるというのは大きくて。前までは全体のバランスを見た上で“使えない”と判断していたエッジの効いた言葉も入れられたし、アレンジやリズムに関しても今回は自由にやらせてもらいました。
●1人で全曲を作るということで、自由にやれた部分も大きい。
KEITA:これまではバランスを取りながら作曲していたけど、今回は全曲で自分の好きにやれるなと思って。だから自分にしか書けない曲や、長所を伸ばして書いた曲を特に前半部分には詰め込んだ感じですね。
●作品全体のビジョンは何かあったんでしょうか?
KEITA:僕らは沖縄出身でずっと沖縄在住のまま活動させて頂いてきたんですけど、これまで沖縄について書いた曲は1つもなかったんです。でも今作のM-11「この島で」はデビュー7年目で30歳になるという節目でもあった去年、初めて沖縄への感謝を込めて書いた曲なんですよ。“この曲はずっと大切にしていきたいな”と思っていたところでアルバムリリースのお話を頂いたので、“絶対に最後に持ってこよう”と思っていて。そこから“どんなアルバムにしようかな”と考えながら、全体を組み立てていった感じですね。
●「この島で」が今作の起点になっている。
KEITA:その次に、“1曲目は「東京」から始めよう”というアイデアが浮かんで。まだメロディも歌詞も方向性も全く決めていなかったんですけど、そこから作り始めて、間を埋めていった感じですね。
●「東京」から始まり「この島で」で終わるまでの間に入る曲を作っていったと。「東京」は“振り向いてくれない”や“伸ばした手は届かない”といった、苦悩が見える歌詞になっているように感じたのですが。
KEITA:自分が自信作だと思う曲を出してもセールス的には伸びなかったり、逆に“この曲のほうが受けるんだ?”みたいなこともあったりして…。“東京っていうのは読めない街だな”と思ったりはしますね。
●沖縄とはやっぱり違いますか?
KEITA:全然違いますね。沖縄の音楽シーンも独特なんですけど、“ポップス”に限定すると、やっぱり東京のほうが洗練されている気がします。今作のコンセプトとして、都会的なアレンジやメロディの曲を前半に詰め込んでいるんですよ。歌詞の内容的にもネガティブなところから始まって、徐々にポジティブに向かっていって最終的には“故郷に帰る”という流れになっていて。外に出たからこそ見えてくる“故郷の良さ”や、人生の浮き沈みを描けたらなと思っていました。
●先ほど“エッジの効いた言葉”を取り入れたという話もありましたが、M-3「記憶」は特にそういう印象がありました。ちょっと生々しい感じというか…。
MAIKO:これはseven oopsにとって、初の男性目線の歌詞ですね。
KEITA:こういうものもたぶん、前までだったらやらせてもらえなかったんじゃないかな。
●前までなら抵抗があった?
MAIKO:MICHIRUも“イヤ”って言いそう(笑)。みんなで話し合いながら作っていた時は、誰かと意見がぶつかっても譲らないところがあって。でも今回はKEITAがすごくのびのびと制作してくれたおかげで、4人のseven oopsでは絶対にやらなかったようなところも切り開いてくれたんです。
●それはどういったところで?
MAIKO:たとえば前なら“ドラムソロをやってよ”と言われても、私は“やりたくない”と言っていたと思うんです。でも今回はKEITAが主導権を握っていたので、とりあえずやってみたら“意外と楽しいじゃん”と気付いたりもして。“誰かに従わなければならない”という環境になって、自分の中での壁を跳び越えてみたことで見える景色があったというか。KEITAの“俺についてこい!”感が強くて、それがすごく良い突破口になった気がします。
●KEITAくんが引っ張ってくれたことで、壁を超えられた面もあったんですね。
MAIKO:“こういうのもアリなんだ!”というのが見えたのは、すごく良かったです。
●「記憶」のような男性目線の歌詞を歌うことに、NANAEさんは抵抗がなかった?
NANAE:抵抗はなかったですけど…、ニヤニヤはしました(笑)。“あら、ヤダ〜!”っていう感じで。
MAIKO:“どこで経験してきたのかしら、KEITAくん?”っていう(笑)。
KEITA:新曲をNANAEに渡す時はいつも2人でスタジオに入って作業するんですけど、その時は4曲くらいあった中で最後にこの曲を出したんです。やっぱり恥ずかしいのもあって、“こういう曲なんですけど…”っていう感じで渡して。
●最初に聴いた時の印象はどうでしたか?
NANAE:“あら、まあ…!”とは思ったんですけど(笑)、男性目線の曲は今までなかったので新たな試みとして面白いなと。自分とは違うものを表現できるっていうのは、すごく楽しかったですね。あと、基本的にKEITAが書く曲は、(声の)レンジがめちゃくちゃ高いんですよ。でもこの曲に関しては男性目線というのもあって、低いところから入っていく感じなんです。これまであまりない展開だったので不安な部分もあったんですけど、思った以上に楽しかったし、自分の中では飲み込みも早かったかなと思います。
●KEITAくん自身はどんな想いで、この曲を書いたんでしょうか?
KEITA:普段は人に言いたくないようなことでも、歌詞にしたら面白いかなと思って。今回は自分の思っていることや実体験を多めに散りばめているんですよ。「記憶」に限らず、他の曲でもどこか恥ずかしいような想いを入れてあるので、“みんなに見せた時にどう思われるんだろう…?”という気持ちはありました。
●M-5「モノポリー」の“私の唇が疼いて求めちゃうじゃない!”というのも、男性ならではの表現かなと。
KEITA:その後の“アタマの中はとっくに君でイカれちゃってるの!”とか、そういうものは…男性の希望ですよね(笑)。女の子に言ってもらえたら嬉しいような言葉をあえて多めに入れたりもしていて。M-8「夏のロマンティカ」の“波打ち際の様な濡れそうな夏の恋”というフレーズも、自分としてはすごく気に入っています。
MAIKO:そういう表現もNANAEが歌うことで、柔らかくしているというか。KEITAが自分で歌っていたら、イヤですけどね(笑)。
●ハハハ(笑)。NANAEさんにとっても、歌の表現が広がったのでは?
NANAE:そうですね。すごく大変ではありましたけど、KEITAが新しいことに挑戦してくれたことで自分としても“新しい道が見えた”というか。今回のアルバムに関してはKEITAからの歌い方の要望が細かくて、それに基づいて色々とやっていったんです。自分が今までやったことのないニュアンスや表現をした時に、できなさすぎて逃げ出したくなることが何度もあって。でも苦労したからこそ、完成したアルバムを通して聴いた時に感動しましたね。
●KEITAくんが今回、歌い方を細かく要望した理由とは?
KEITA:前は歌について、要望は全くしていなくて。それは4人全員が作詞/作曲していたので、あまりにも僕がイメージする歌い方に寄せてしまうと、アルバムを通して聴いた時に変なNANAEが急に出てきたりするのが嫌だったからなんです。
●歌のイメージに統一感がなくなってしまうのを恐れていた。
KEITA:だから、歌に関しては本人に任せていて。でも今回は僕が全部やっているので細かく指示して、今まで見たことのないようなNANAEを引き出しても大丈夫だなっていう感覚があったんですよ。聴いたことのないNANAEを多く出せているはずなので、そこは新鮮に聴こえるんじゃないかなと思います。
●3ピースになって名前の表記も変わって最初のアルバムでそういう新たな面も見せられているわけで、結果的にはやはり“心機一転”の作品になっているのかなと思います。
KEITA:結果的に全てが上手くつながったという感じですね。ちょうど30歳になったところでバンド表記も変わって、曲や歌詞の幅も広がって、全てが合致したというか。本当に良いタイミングだったなと思います。
●これからどんなふうに進化していくのか、今後も楽しみですね。
KEITA:僕らはバンドでずっと活動してきたんですけど、今年はアコースティック・ツアーを2回まわって。幅も広がっているし、そういう部分での差別化も上手く図れるようになってきたなと思うんです。今まで見せられなかった色んな表情が見せられるはずなので、そういったところも含めて楽しんで頂けたらなと思います。
NANAE:このアルバムを引っさげて、来年はバンドでのツアーをやる予定なんです。色んな人にこのアルバムの曲を、ライブで聴いてもらえると嬉しいですね。
MAIKO:3人になったことで、“4人の頃のほうが良かったね”とは絶対に言われたくないんです。過去の“7!!”を超えて“前より良くなったね”と言われるように、できる限りのことはしたいと思っています。
Interview:IMAI
Assistant:Shunya Hirai