吉田 巧(チーフエンジニア)
くるり、シャ乱Q、のデモを担当した、入社28年のベテランエンジニア。
レコーディングが好きで好きで仕方がない246名物エンジニアの吉田は、今だに「僕はバンドマンの1番の理解者」でありたいと語る。
●吉田さんはバリバリやってたロックバンドのギタリスト・ボーカリストで、現在エンジニアという経歴ですが。エンジニアを始めたのは何年ぐらい前になりますか?
吉田:もともと246には簡易録音システムがあったんですね、僕が23歳で入ってから、レコーディングの真似事みたいなことはやってたんですよ。なのでそこから計算したらもう28年ぐらいになるんですけど、本格的にレコーディングを意識しだしたのは2000年ぐらいからですね。
●あら意外と。
吉田:そうですね。それまではスタジオのサービスの一環として、なんかリハーサルの値段でレコーディングもできますよっていう売り文句でやってたんで。
●印象深いバンドとかアーティストは山ほどいるでしょうね。
吉田:シャ乱Qが大阪城公園でストリートやってる頃に急に、当日電話かかってきて「今日の夜中6時間パックでレコーディングできますか?」って言われたんですよ。もちろんせっかく言ってくれてるので「はい! やりますよ! 」とか言って、僕も朝から仕事してたんですけどそのまま夜中まで残ってやったんですけど、当時の僕のシャ乱Qのイメージはコミカルな歌詞で、面白おかしく音楽をやってる感じなんで、言ったら悪いですけどバカにしてたってわけじゃないですけどそういうところがあって。
●なめてかかってた。
吉田:そうそう(笑)。どうせオチャラケてるバンドやろって思ってたんですけど、メンバー全員集まって「どうやって録っていきましょう?」って言ったら「6時間で6曲ミックス、マスタリング完パケしたいんで、演奏はもう全員一発でいきます」って。歌だけ「つんく♂さんだけあとで来て歌被せて行きます」っていうパターンやったんで、「わ、分かりました」って言って、ドラム、ベース、キーボード、ギターのこの4パートにマイキングとかして、でも当時は16チャンネルしかないんで必死にチャンネルをやりくりして、サウンドチェックとかもするんですけど、サウンドチェックの時にね「じゃあ皆さんでいったん合わせてもらえますか?」って言ったら、自分達の曲をするのかなって思ったらTOTOとかやりだしたんですよ。
●ほぉー。
吉田:TOTOの「Rosanna」とかけっこう難しい曲やり始めて、それが、皆さんメチャメチャ上手いんですよ(笑)
●上手いんや。
吉田:はい。僕は洋楽から入ってるんで、洋楽のこういう代表曲とかを演奏されるとハッてすぐ入ってしまうんで。うわぁ、めっちゃ上手いやん…って思って。で、そのまま自分たちのオリジナルの曲を録っていくんですけど。ほぼワンテイクでOK(笑)
●へー。
吉田:4人全員同時に録ってワンテイクで終わらせちゃうんですね。ちょっとギターここ1ヵ所だけっていうのがあったりしてもホンマに1ヵ所パンチインとかでやり直すぐらいでワンテイクで終わらせちゃって。歌も「ピッチ悪いんで何回もやるかもしれません」とか言ってはったんですけど、ほぼワンテイクぐらいで終わらせて6時間できっちり6曲完パケされて…。
●ハ~~。
吉田:その朝、「朝イチの新幹線で東京持っていく」って言ってはって。「このデモテープでデビューできるかどうか決まるんですよ」って言われて。「まじですか!? めちゃめちゃプレッシャーですやんか!」みたいに思ってたんですけど、その後トントンってデビューされたんで、あ、よかったなって…。
●いやぁ、でもそれぐらいポテンシャルが高かったって事ですよね。
吉田:本気のバンドマンの底力を感じましたね。
●これはいいエピソードやね。
吉田:でもすごいなって思いました。あと僕が担当したバンドで印象に残ってるのは「くるり」ですかね。
●くるり、ね。
吉田:くるりのVo.岸田君(くるり Vo.岸田 繁)が歌う前は、岸田君はギターで、ボーカルの子がいてたんですよ。えっと…立命館やったかな?
●そうでしたね。
吉田:大学の軽音サークルでバンド組んでて、確かね当時、怪傑ライオン丸かなんかそんな名前やったと思うんですよバンド名が(笑)。で、ボーカルの子いてたんですけど当時僕も録音してて。京都からわざわざ来てくれてたんですよね。でもボーカルの子が辞めちゃって、どうしよってなって「僕歌います」って岸田君が歌うことになったんですけど。「歌えんの自分!?」みたいな(笑)。
一同:ハハハ(笑)
吉田:「いやまぁ下手やけど」みたいなんでやりだしたんですけど、それからバンド名もくるりになって。大学に在籍していて、東京にまだ行かない、レーベルもまだついてない頃にデモを何回か僕が録らせてもらいました。
●あぁそうなんや。
吉田:僕の経験する中でもね、岸田君は変態やったなって思いますよ、音楽的な。彼あのー…当時から汽車のマニアじゃないですか?
●あぁ! そうそう! 電車マニア。
吉田:その気質が音楽にもそのまま出ていて、ひとつ面白いのがギターって弦が6本あるじゃないですか。
コードをジャラランって弾いたら6個の音が鳴るでしょ、その6本の弦を1本ずつ弾いてオーバーダビングするんですよ。6弦だけドンドンって弾いて、次に5弦だけデンデンって弾いて4弦、3弦、2弦、1弦って6トラック使って6本重ねて、それでオーケストラみたいな。ギターオーケストラみたいな(笑)
●へー。
吉田:いったら昔でいうQueenのBrian Mayみたいな。多重録音してひとつの和音にするみたいなことをやってたり(笑)「それして何の意味があんの、それもうジャーンって弾いたらええやん」みたいな話なんですけど、それをパラで1本ずつ録って和音にしたりとか。
●うんうん。
吉田:あと僕はけっこうThe Beatlesとか中学生時代聞いていて、ボーカルとコーラスのハーモニーとかつけるのも好きやし、コーラスを歌うのも好きなんですけど、岸田君もそういう面があって、でも僕と違うのは分かっていてわざと外して音をあてるところなんです。
不協和音にしたりして、「岸田君それあたってるで。もう半音上じゃないとあかんのちゃう? 」とか言ったら「いやこの何とも言えない混沌とした感じが出したいんで、吉田さんが言うのも分かるけどこっちでいきたいんですよ」ってもうそこまで説明されたら僕としては太刀打ちできないっていうか。演者さんがやりたいことを100%やらせてあげたいし、そこに自分のポリシーというか、分かったうえでそうやってるっていうのがあるんで、応援したいなと思いますし、そのまま作品にしましたね。
●そうなんや。でも30年近くやってると、今では日本を代表するミュージシャンみたいな人達とも随分関わってるよね。
吉田:そうですね。あとは僕のこと知ってる人はけっこういると思うんですけどflumpoolとか。
●あ~、flumpoolねぇ。
吉田:あのバンドもインディーズ時代によく録らせてもらって、彼らはテレビで取材とか、大阪のゆかりの地を巡るみたいなロケの時は大体スタジオ246を選んでくれて、今まで2回ぐらいテレビのロケでも来てくれてるんですよね。
●へ~。
吉田:まぁそれもありがたいなって。一時でも一緒にこの仕事というか、作業した場所をそうやって取り上げてくれるっていうのはまぁ僕らとしたら凄い嬉しいことかなって。言っても街のスタジオなんで。
●いやいや、言っても…(笑)
吉田:まぁ今はね、まぁ8店舗あり大きくなってきましたけど。
●でもそう思うと素晴らしい仕事やね。
吉田:そうですね。そうやって色んなバンドを録って、録る度にこのバンドいいのに何で売れへんねやろって思うバンドはいっぱいいますね。
●いっぱいいますか?
吉田:いっぱいいますね。「こんなん有線でかかってても全然おかしくないやん」っていうバンドとか、「なんかの主題歌になってても全然おかしくない」とか。なんか女性ボーカルとかでけっこうラウドな音でいいメロディー歌ってるバンドとかも録音するんですけど、絶対これアニソンとかのタイアップいけるんちゃうんって思うんですね。でも、それは色々オーディションなりでチャンス掴んだり、知り合いのつてとかもあるとは思うんですけど、でもまぁ世の中には凄い埋もれた才能がいっぱいあるなって感じてます。
●いろんなドラマありますね。しかし、吉田さんはレコーディングでパンパンに詰まっているみたいですね。
吉田:僕的には、現場が大好きなので本当は毎日でもずっとずっとレコーディングしたい。だから今が、幸せって言えば幸せですね。
レコーディング大好きですし、例えば初めてのバンドが「音源録るの初めてなんです」「分かった、じゃあ心配ないように打ち合わせから頑張ろう」ってきちっと打合せして「こんなんにしたいんです」「分かった! じゃあそういう感じで進めていこう!」って。でも初めて録る人達ってホンマにどんな感じになんのって凄い不安に思うんですよ。そこで、色々やりたい事とかを録り進めながらも相談しながら、例えば「これはどういう思いでやってんの?」とか「このギターは、これを出したいからこんな感じで弾いてんの?」とかお互いの意思疎通をはかりながら、最終出来上がった時に「もう自分たちの曲がこんなになるなんて…」って想像以上の出来ですごい喜んでくれている顔を見たら、やっぱり、やってて良かったなって思いますね。
●なるほどなるほど。
吉田:お客さんの満足度が僕らの満足度というか、凄い幸せな仕事やなって思います。お客さんっていうか、アーティストの喜ぶ顔が見れるっていうのは、僕からしたらすごい幸せな事ですね。
●そこで、日本でも珍しい取り組みというか、いわゆるスタジオエンジニアとミュージシャンがイコールであるというようなコンセプトで、246は独自の『ACCEPT』っていうフリーサンプラーCDを6000枚も無料で配布してますよね。吉田さんにしたらその『ACCEPT』のコンセプトに沿って色々夢もあると思いますけど。
吉田:コンセプトに沿って夢…というならばさっき言ったんですけど、世の中にはなかなか日の目を見ない凄い良い曲書いたり、いい演奏するバンドさん、アーティストさんがいっぱいいてて…。「こんなん売れててもおかしないのにな」とか「街でかかっていても全然遜色ない」バンドがいっぱいいるのになって。そう思えるアーティストさんが、フリーサンプルに収録されているんで、色んな人の耳に届くようになればいいなって思いもあります。なおかつ、僕たち246GROUPのエンジニアは20数名もいますのでお披露目の場ともなっていますね。
●みたいですね。
吉田:その中で各個人、各エンジニアが得意とするサウンドづくりであったり、またうちのスタジオも現在8店舗あるので、8店舗それぞれに特色を持たせて価格帯もそれに合わせて安く設定してたり、一番良い機材おいてるところは安いとこよりは高めになってるんですけど。そういうランク付けもしてて、フリーサンプラーにはどこのスタジオで誰が録ってこういう音になりましたっていうところまで書いてあるので、レコーディングを考えてるバンドさんがいてたら、そういうところを参考にしていただけたらなっていう思いもあるんですよ。
●あれは参考になるね!
吉田:246 心斎橋で録って、例えば246 OSAKAでミックスしたら、「録りは凄い安い価格で抑えられても、ミックスでここまで持っていけるんや」とか。
●なるほど。そういう事も出来るんや。
吉田:そういう考えもできますし、予算の立て方もいろいろご提案できるかなっていうのもあります。
なのでそういう見方をしてもらえたらなって思いますね。あとは各個人のサウンドの特色も、14曲ぐらい入ってたらサウンドが14色あるので、
ジャンルが同じバンドが入ってても担当するエンジニアで解釈が違うから、あっ僕らどっちのタイプでも行けるけどAっていうサウンドよりは、Bのほうがいいなって思ったら、Bのエンジニアを選んでくれたらいいし色々音源を作る際に、自分たちの求めてるものとスタジオを選び、予算も全部ひっくるめて、自分たちでちょっとプランニングできるようなフリーサンプラーになっていければなって思うんですよ。最近は特に東京のインディーズレーベルさんとかにもフリーサンプラーを送ってたりしていて、メジャーアーティストの方が入ることはなかなか契約上難しいと思うんですけど、どこにも属していない、いわゆるフリーで活動しているインディーズバンドの方を中心に入れているんですね。メーカーさんにもサンプラーとして送ってるんですけど、メーカーさんも新しいバンドは欲しいし発掘していきたいので非常に好評ですね。
●新人発掘の参考になりますね。
吉田:そうですそうです。先日も東京にお話しに行ったときに「これいいですよね」って話で「実はこの中に入ってるバンドに声かけたりしてます」っていうお話もあったので、そういう風に東京とかに繋がるようなパイプにもなれればいいなとは思います。8店舗あるんで、色んなバンドが関西にはいるし、東京の方も「今、関西が面白い」って言ってらっしゃって。僕らは関西を中心に展開してるスタジオなんで、そう言ってもらえたら余計にもっと頑張って関西初の世の中に出るバンドを、いっぱい出していけたら凄い良いなっていう思いは『ACCEPT』にはありますね。
●うんうん。
吉田:凄いいろんな面から見て楽しめるコンセプトアルバムやと思うんですよ! ただ単にレコーディングエンジニアを探したいためにちょっと聞いてみるっていうのでももちろん十分伝わりますし、さっきも言ったようにレコーディングエンジニアプラス、どこで録ったらどんな音になんねやろっていうそのスタジオ選びとしても分かりやすいですし。関西関東問わずインディーズのバンドを探してるようなメーカーさんとかレーベルさんとかにも通じるというか。そういう内容であったり。あとは、一般のリスナーの方が普通に新しいライブに行きたいなって思う、最近あんまいいバンド無いねんなみたいな子たちがこの音源を聞いて足を運べるような、自分に合ったバンドを見つけてもらえたらなっていうのもあります。それに付随して前回の第4弾からライブも一緒に展開するような流れになってきまして。
今回も秋ぐらいにリリースですが、10月にはライブイベントを演る予定で準備しています。
乾 誠太朗(レコーディングエンジニア)
あらゆるジャンルの音楽を吸収して、いかに目の前の作品を完成させるのか。
ひと癖も二癖もある、アンダーグラウンドから学んだ独自の制作センス。
●乾さんは、バンドマンからのエンジニアですか?
乾:そうですね。ずっとハードコアバンドやってます。
●ハードコア、イメージ違いますね(笑)
乾:まぁガチャガチャやかましい感じです。
●そうなんだ。今は録音する側にも回っていますが、こだわりなどは・・・
乾:とりあえず何でも聴いて、いったん自分自身が受け入れてみるみたいなところですね。そこから自分の中で考えていくっていうイメージですね。
●例えば、いろんな音があると思うんですけど。フォークソングみたいなのもあればパンクも、ギターロックとかもあると思うんですけど。いったん取り込むというのはどういう意味でしょう?
乾:お客さん(アーティスト)のやりたいことをいったん全部聞き入れるって感じです。抽象的過ぎたかな(笑)
●聞き入れるというのは、レコーディングの現場でいうと?
乾:こんな雰囲気にしたいみたいな、お客さんが抽象的なことを言ってもいったん自分の中で聞き入れて消化するみたいな。例えば「夏っぽくしたい」とか「冬っぽくしたいとか」っていうのも一回聞いて「こういう夏っぽいのは、僕はこう思うんですけど、どうですか?」って一回答えを出してみるって感じですね。
●けっこうバンド側は自分の目指す音みたいなモノがあると思うんですけど、そういうサンプルとかって出てくるんですか?
乾:サンプル…。一番最初サンプルはあるんですけど、結局は違ってしまうことも多いですね。
●というと?
乾:バンドがこうしたいっていうイメージと、実際出てる音のイメージがけっこう違うことがあるんで、そこは間を取り持ってやっていくって感じですね。お互いのコンセンサスを取ることが最も大切な事だと思っています。
●録音する側からしたら、それは如実に分かるもんなんですか?
乾:如実に…分かります。
●じゃあ結構意見を言う方ですか?
乾:言ってるんですかね?音に関しては言ってるかもしれないです。要望があればですけどね(笑)
●結構エンジニアとバンドの関係ってデリケートなものじゃないですか?
乾:そうですね。でも僕はどっちかというと、意見を尊重するタイプではあると思います。
そのガッて我を出していくというよりかは、バンドさんの意見を聞きながらその人がしたいことを考えるタイプだと思います。
●今まで録ってきて、やっぱり自分が録ったからすごく良くなったっていう気持ちはある?
乾:それは、今まで関わった全てのバンドに言えますね。
●それは、どういうときに感じますか?
乾:あぁ…。やっぱり出来上がった音を聞いた時ですね。
●出来上がった時って、レコーディングルームで聞いてるときとCDになった時の違いとかあるんじゃないですか。
乾:違いますね。CDになって改めてゆっくりひとり、レコーディングルームで聞いた時ですかね。
●あぁそうなんや(笑)。 やっぱりそういう時間ってあるんですね。
乾:あります、あります。過去の作品を聞き返す時間が僕は好きなんですよ。
●例えば自分の好きなバンドっていうのはどんなバンドなんですか? 邦楽洋楽問わず。
乾:いわゆるアングラな感じが好きかもしれない(笑)
●かもしれない?例えば?
乾:ハードコアであったり、ドゥームであったり。重たくて暗い音楽とかですかね(笑)
SleepとかElectric Wizardとか。なんかいわゆるアングラみたいなのが好みってだけなんですけどね。日本でいうと、昔よく聞いたのはCorruptedとか、S.O.Bあのあたりですね。
●何を食べたらそんな音楽好きになるんですかね?どういう育ち方したら(笑)
乾:なんなんでしょうね(笑)
でもメロコア世代なんで僕ら。中学校の時にHi-STANDARDとか。なんかあそこからもっとハードな音楽を掘り下げていったらこうなってしまったと。
●今まで乾さんが録ってきた中でもこれ最高、納得できるもの録れたなってバンドは?
乾:そうですね、大阪のFIVE NO RISKっていうバンドはもうアルバム3枚、4枚ぐらい録らせてもらってるんで、自分の中では、全力で正面から向き合ってきました。やっぱアルバムやと関わり方が密接になるので、できた時の満足感はぜんぜん違いますね。
●まぁFIVE NO RISKはねぇ、もう重鎮でしょ。
乾:重鎮ですね。あとは…LONEとか。
●LONEすごく良いバンドです。また、意識の高い良いバンドですね。
乾:LONE録ってました。
●あの子らめちゃくちゃいいと思いますよ。
乾:いいですよね。ロックな感じで。それから…、ちょっと待ってくださいね。あとはLaxity。
これも頑張ってやってますね。あとはポップどころでいうと、ムノーノ=モーゼスとか。DAISY LOOとか。あとは、昔のミラーマンとかですかね。
●やっぱり技巧派というか上手いし独特の自分らの世界観を持ってる、けっこう洋楽に近いイメージがあって、一般にはあんま刺さってないけど、知る人ぞ知るみたいなそんなイメージのバンドばっかりですね笑)
乾:確かにそうですね(笑)
●でもその辺のところがすごく売れてくると市場的には楽しいんやけど。LONEなんかもJUNGLE☆LIFEのBIGCATのイベントにも出てもらったし、ぴょんぴょん跳ねるパフォーマンスは最高に良かったですね。
乾:確かに一般にはめっちゃ刺さるバンドではないかもしれないですね(笑)。
●いやでも、音楽的にはすごい…僕が言うのもなんですけど、僕的には優れてる人が多いかなっていうイメージはします。
乾:そうですよね。
●やっぱり乾さんは、簡単に言うと本物志向みたいなバンドが得意なんですね。
乾:そうなんですかね(笑)自分では意識してないですけど(笑)
●でもそういう「乾さんに録ってもらいたい」っていうオファーが多いみたいですね。
乾:そうですねぇ。まぁその人たちのつながりでその周りのバンドを録ったりすることも多いですね。
●結局口コミやから「よかったんでまた乾さんに」、「あの手の音やったら乾さんに」みたいな形になってるんですかね?
乾:だとありがたいですね。
●ありがたい、えらい謙虚やな(笑)。自分ですごい心がけてるというか、ポイントにしてる部分はありますか?
乾:ライブ感ですかね。雰囲気とライブ感。お客さんが出してる音をとりあえずいったんは忠実に出せるようにマイキングであったりとか、EQを使いますね。お客さんが耳で聞いた音と、コントロールルームで聞いた音が違和感がないように 、まずは一番に心がけている事です。
●ミキシングで特徴みたいなのはあるんですか?
乾:めっちゃこれも抽象的なんですけど、ライブをしてる姿を思い浮かべながらミックスしてます。ライブしてるステージを考えながらミックスすることが多いかもしれないですね。
●それはでも、大きな特徴やね。
乾:そうすると何か雰囲気やったり、バンドの匂いを感じながらミックスできますね。というか勝手にそうなりますね。
●最近『ACCEPT』をよく耳にしますが、これで5枚目ですかね?
乾:そうですね。
●いろいろと乾さんのやつもピックアップされてると思うんですけど、最近これ気になるぜ!みたいなバンドっていうのはいますか?まぁそれは録ったやつ全部でしょうけど(笑)
乾:そうですね、自分の中では今度入るmemento森とかは現在進行形でアルバムを録っているので、今後要注目といいますか(笑)
アルバムを楽しみにして下さいって感じですかね。あとは前回出てもらったKITANO REMとか。
●はいはい。KITANO REMさん。
乾:面白い子ですね。
●自身のライブ活動もですが、ライブハウスの行きつけは(笑)
乾:Music Bar HOKAGEとか難波ベアーズとか。
●あ、難波ベアーズね。難波ベアーズ面白いところですね。"湿度95%"ぐらいのところね(笑)
乾:そうそう(笑)
●そういうとこに乾さんが生息しているんですね。
乾:そうですね
●これは、脈々と関西のアングラシーンの生血を引き継いでるよね。
乾:そうですね(笑)でも今でも年上の方とライブやらせてもらう機会が多いんで、僕のメンバーも僕以外40…10歳ぐらい上なんで。
●乾さんが、リアルタイムの時10歳とか15歳ですもんね(笑) 。それってある意味どんだけ壊れてんねんって話じゃないですか(笑)
乾:ははは(笑)
●仕事としてのレコーディングやってるわけですけど、プロやなって思える瞬間っていうのは?
乾:求められている答えとは違うかもしれないんですけど、売り物のCDができてそこに名前が入ってることが、きちんと仕事したものが作品になってるねんなって、そこでプロとしてちゃんとした仕事をしてるなとは思いますね。
●でもこれ生涯の時間に換算したら、レコーディングってそんなに多くのバンドを録れるわけじゃないじゃないですか?
乾:そうですね。
●そういう意味でいえば指名されてやる仕事っていうのは凄い貴重やと思うんですけど。
乾:そうですね。
●自分がもしも録ってみたいって言って録らしてくれるんだったら録りたいアーティストっていますか? 例えばU2なら俺が録るみたいな(笑)
乾:そのバンドなら自分録るっていう…。
●はい、これ俺に録らせろっていう。
乾:いっぱいいますね。
●まぁ読者がわかりそうなところで(笑)
乾:Swansです。もうおじいちゃんバンドですけど。エレファントカシマシも録りたいですね。
●それはまたなんで?
乾:単純に好きっていうだけです。
●そういうのも好きなんや! じゃあエレファントカシマシはハードコアに通じる部分があるのかもですね。
乾:通じるかもしれないですね。ある意味(笑)
●なるほど(笑) けっこう年配のバンドが好きなんですね。
乾:そうですね。そうかもしれないですね。
●何かそれ乾さんに言わしてるみたいでアレなんやけど(笑)。
乾:いや、あまり意識したことなかったので。そういわれるとそうなのかなみたいな。
●なるほど。でもけっこう年齢も高いところいってるから。
乾:そうですね。
●そらそうか。出が出やから仕方ないか(笑)。
乾:若い音楽も聴きますよ(笑)最近やとandymoriとか。
●関西でこれから期待できるシーンは?
乾:やっぱりまたロックが盛り上がってくるんじゃないのかなと思いますけどね。何か、なんとなくですけど(笑)
●なんとなく(笑)。 肌感覚で?
乾:肌感ですね(笑)ラウドロックよりかはもうちょっとバンドっぽいロックな感じがありますね。ポップロックとかですかね、
次に来るんじゃないのかなって予感がしてます。。
●246『ACCEPT』っていうのはそれこそ246だけのコンセプトじゃないですか?
乾:そうですね。
●『ACCEPT』っていうコンセプトに沿ったインタビューなんで、将来的にはその中でどんなビジョンを描いてたり、夢があるのかなって。エンジニアもメンバーの一人と言うことですもんね。
乾:はい。『ACCEPT』に入りたいのでレコーディングしたいっていう方が増えてくれればいいんですけど。
●ていうかそれもうだいぶ出てきてますけどね(笑)
乾:あっ、本当ですか!? なんかこう登竜門的なオムニバスになったら面白いかなって。
●もうそろそろ意識はされてますけどね(笑)少なくともこれ面白いですねって言われる方は多いですよね。やっぱりエンジニアがチョイスしてるっていうことなので、ある意味A&Rの役もやってるって訳ですもんね。
乾:けっこう色んな大人の人が聴いてますもんね。音楽関係者や特にレーベルの方も。
●業界の人も聴いてますし。246Groupで総力上げてやってるわけですからそれはチェックしますよ(笑)
乾:ですよね(笑)
●まぁそういう意味では、下手な作品は出せないっていうところはあると思うんですけど、それを踏まえて将来のビジョンとかってありますか?
乾:なんか有名どころばっかり入るっていうのも違うと思うんですよ。でもシーンごとに違うアルバムが出るのも面白くないなって思ってて。
ハードコアバージョン、ロックバージョンみたいな固まり方するのも違うなって。色んな音楽が集まっている、それも個性的で秀逸なものですよね。
●ある意味、今はいい塩梅になってますよね。
乾:そうですよね。聴いていて飽きることがないです。
●最後にエンジニアとしての夢は?
乾:いろいろなバンドを録って、そのCDが売れてくれるのが1番ですね。いろんな人の耳に届いて豊かな気持ちになる。アーティストと造り上げて来たものが評価される。これが僕の珠玉の喜びとなっています。