“夏のSHIKABANE〜日比谷場所〜”
2018/7/22@日比谷野外大音楽堂
佐々木 亮介(a flood of circle)
菅原 卓郎(9mm Parabellum Bullet)
山田 将司(THE BACK HORN)
村松 拓(Nothing's Carved In Stone)
昨年8/24、東京キネマ倶楽部にて開催された弾き語りイベント“SHIKABANE”。唯一無二の個性を携えた4人のヴォーカリストが集い、弾き語りで魅せる同イベントが、今年の夏は日比谷野外大音楽堂で開催されるという。前回は4人それぞれのソロと2人でのセッションで魅了したこのイベント、今回も当然ソロだけではなくスペシャルなコラボもあるだろうと期待する。
じりじりと日差しが照りつける中、浴衣を着て来場した観客も多く見られる日比谷野外大音楽堂。ステージに4人が登場して挨拶し、トップバッター・佐々木のライブがスタート。即興的に、まるで話すように歌い始めた彼は、一瞬で会場を自分の色に染める。「この世で俺がいちばんスピッツのことが好き」と言ってスピッツの「涙がキラリ☆」をカヴァーし、「俺は今日予想のできないことをしに来てるのでよろしく」と、ギターを爪弾きながら歌うように話し、名曲「無題」で圧倒する。
そして佐々木が迎え入れたのは村松。個性溢れるヴォーカリストたちの弾き語りを聴き比べるのも見どころ(というか聴きどころ)だし、出演者同士のセッションを堪能するのも“SHIKABANE”の醍醐味のひとつ。佐々木がギター、村松がタンバリンを手に披露した「め組のひと」(ラッツ&スター)、続いては佐々木と山田で「Honey Moon Song」、最後は佐々木と菅原による「勝手にしやがれ」(沢田研二)。選曲はそれぞれが相談し合って決めたらしいが、個々の“歌の魅力”が粒立ってわかるセッションにオーディエンスは酔いしれる。
ステージに残った菅原は「糸」(中島みゆき)、「イージュー★ライダー」(奥田民生)と披露。途中で間違ったのもご愛嬌、そういうハプニングも含めて“ライブ”を楽しむ贅沢なひととき。最後は情熱的に「The Revolutionary」を歌い上げる。その後は菅原の艶っぽい声が印象的だった「捨て台詞」、村松からのリクエストだという「ハートに火をつけて」、そして会場の熱がぐっと上がった山田との「飾りじゃないのよ涙は」(中森明菜)で魅せ、休憩を挟んで山田へとバトンを繋いだ。
ステージに現れた山田は「きょう、きみと」「キズナソング」「夏の残像」と、張りのある伸びやかな声で歌い上げる。前2者とはまた違った歌の魅力に聴き惚れる会場。セッションパートでは菅原と「風になりたい」(THE BOOM)、佐々木と「あなたが待っている」、村松と「酒と泪と男と女」(河島英五)。ただ単に一緒に歌うだけではなく、それぞれがコーラスをとる箇所も随所にあり、このスペシャルユニットが進化していることが伺える。オーディエンスは夕暮れの心地よい風を全身に浴びながら、ビールやサワーを片手に豪華な共演を思う存分楽しんでいる。
次に登場したのは村松。「西日本には大変な人たちがいっぱいいて、その人たちに捧げる曲を」と「青の雫」、そして「Adventures」「朱い群青」と、芯のある強い歌でオーディエンスの心を掴む。山田との「シナプスの砂浜」、菅原との「Let There Be Love」(Oasis)、佐々木との「サマーヌード」(真心ブラザーズ)。それぞれ1人で3曲、そしてセッションで6曲ずつという贅沢なステージ。空はいよいよ暗くなり、木々の間を涼しくなった風が吹いてくる。イベントは佳境に近づいた。
最後は4人でのセッション。それまでは「“個”と“個”」という印象が強かった“夏のSHIKABANE”だったが、4人のセッションでは素晴らしいハーモニーとアンサンブルで魅了する。「真夏の夜の夢」(松任谷由実)、「夏の終わりのハーモニー」(井上陽水&安全地帯)と“夏”にちなんだ名曲を見事にSHIKABANE色にして披露し、最後は「SHIKABANEのテーマ」。山田が元ネタを作ってきたという同曲、“歌い続けよう屍になるまで/燃やし続けよう屍になるまで”というメロディが日比谷の夜に鳴り響き、夏の夜の宴は幕を閉じた。
MCでの、4人の人間性が溢れる楽しげなやりとりは新鮮だったし、歌と歌との豪華なコラボはここでしか観ることができないものだった。バンド形式とはちょっと違った音楽とライブの新しい形を予感させたイベント“夏のSHIKABANE~日比谷場所~”。次の機会は未だわからないが、またこの豪華な4人が集う宴で、音楽とライブの魅力を存分に味わいたい。
TEXT:Takeshi.Yamanaka
PHOTO:RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)