数か月に渡り、三味線奏者 川嶋志乃舞さんの1stフルアルバムレコーディングに関わらせていただきました。東京藝術大学を卒業後も、三味線界のポップアイコンとして国内外の様々なシーンで活躍する彼女ですが、自らが作詞作曲を手掛ける楽曲は「クールジャズ、EDM、ファンク、トロピカルハウス」などをハイソに織り交ぜ、古来からの伝統芸能をより進化させる「レトロなフューチャーポップ」とでも言うべき新たなジャンルを生み出しています。
三味線のレコーディング風景です。
使用マイク:Luwitt 640、Brauner Panthera、AKG P820 TUBE(MOD)、SE Electronic GeminiⅡ(MOD)、SHURE KSM44(MOD)、etc…
マイクプリ、チャンネルストリップは AVALON 737をはじめ VINTECH AUDIO 273やRUPERT NEVE 5024、TUBETECH MP1A(MOD)、DBX 676、586(MOD)などを使用して、超低音域から超高音域までの全ての音域を無駄なくカバーして収録しています。
和太鼓にはマイクを5本使用
ボーカルには2本使用しました。
三味線だけでなく、和太鼓、篠笛、子どもたちのお囃子など、音域も様々な特徴ある音をどのように、より良い音で録るかということに毎回試行錯誤しながら取り組んでいます。
【大学生バンドのセルフREC】
「アジカン風ギターロック」のギターパートを全部録り終わり、次はキーボードを入れる。
ライブではキーボードは入っていないのだが、音源化にあたりサビ部分にオルガンやストリングスを入れてみようということになった。
使用機材はRoland FA08(88鍵タイプ)
マイクプリ/DIは、Forcusrite 428MKⅡ。キーボードとオーディオインターフェースの間にこれを挟むと、生楽器との混ざりが良くなり、より音楽的になるのだ。
1サビにオルガンを入れてみるが選んだ音色が可愛らしすぎたので、もう少々ワイルドな音を選んで再度挑戦。グリッサンドが決まらなかったのでもう一度取り直してOK。
2サビ、3サビにも同じフレーズがあるのだが、ここは敢えてコピペはしないで録音をすすめた。
3テイクほどでOKを出す。
ストリングスパートは、3サビのみに対旋律フレーズを入れることにした。
Strings1の音色だと、音の立ち上がりが遅くフレーズに合わないので、エンベロープのアタックを調整して録り直す。弾き始めの7連駆け上がりフレーズが決まらないので、そこはパンチインを使う。納得のいくまで繰り返して、波形をジャストに近づけるようエディットしてキーボードパートを録り終えた。
【今月のちょいレア】APHEX EXCITER
エンハンサー、エキサイターの現存する、数少ないアウトボード。The Chainsmokersをはじめ、ワールドクラスアーティストのミックスにもしばしば使用されている。
【今月のMV】新村けんぞう 「独りよがりなボクと何も言わない君の歌」
JellyFishやWingsなどにルーツを感じさせる、ポップスの伝道師が放つキラーチューン。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
川嶋志乃舞 「月曜日のマドンナ」
キャッチーなポップナンバーからアーバンR&B、EDM、ビックバンドサウンドからファンクまで、
彼女の描く世界はまさに欲張りなフューチャーポップだ。三味線奏者としての確かな技術力
を軸に、今回も様々なチャレンジが気負うことなく詰め込まれている。2018年4月発売。
Omoinotake 「Hit It Up/ダイアローグ」
日本テレビの深夜番組「バズリズム」の挿入歌に起用された経験をもつ、シティーポップの雄 Omoinotake。ライブでも特に人気の曲を集めた7インチアナログシングル盤。
Pygmalion 「Reconstruction.ep」
Syrup16gをよりシューゲイザー化したかのような、オルタナティブバンドのep。音楽に対する博学的バックボーンが豊かで、質の高いアイディアがみなぎっている。
ISAKA YUICHI 「DAY565」
サンフランシスコ、シンガポールをはじめヨーロッパにも遠征しているヒップホップグルーKAIJINのリーダーが放つ意欲作。ルーツミュージックの優れた要素を全面に吸収して制作された。全国発売中。
V.A 「PUNKS AND SKINS ARE FUCKIN’ WALKING DOWN THE STREET」
70年代後半~80年代前半の初期パンク、モッズ好きにお勧めの名盤コンピレーションアルバム。当スタジオではEvil Substituteの楽曲を担当。