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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第39回

ここ数回Joemeekについて触れていますが、今回はJoemeekの「プラグイン」についてのお話です。

仕事柄、各種プラグインだけでなく、EQやコンプの実機も数多く持っているので「プラグインと実機」をリアルに比較しながら、日々作業しています。

さっくり言いますと、実機とプラグインは「ほとんどが別物」です。代用品ではないことが多いので、頭を切り替えて使用します。

しかし例外もあり、特にJoemeekのプラグインは実に音楽的な効果が期待できます。

Joemeekのプラグイン(EQ)

Joemeekのプラグイン(コンプ)

「機材は結構そろっているが、電源を含むモニタースピーカーやケーブルなど周辺機器があまり充実していない状態でパラメーターをもらい、マスタリングのみを依頼される」
「パラデータをもらい、ミックスやマスタリングのみを依頼される」

上記のようなケースの作業時に、JoemeekプラグインのEQやコンプを使用することが多くあります。

プロ、アマ問わず、普通の部屋の家庭用電源を使用して制作されたトラックファイルは、ある一定のかたよりが見られることが多くあります。

↑上図のように「フラットではないところから作業している」場合、中低音域以下が薄く、逆に中高音域がどぎつくシャリシャリとしていて、ギターのエッジやハイハットのオープンなどのシンバル類が耳につき、痛い音になりやすいのです。

この現象をある程度改善することが期待されるプラグインとして、JoemeekプラグインのEQ、コンプが真っ先に挙げられます。操作も実にシンプルで使いやすくなっています。

音が細く、他と混ざりにくいといったファイルに対しても、このプラグインのコンプは大変良い結果をもたらしてくれます。


【大学生バンドのセルフREC】
【アジカン風ギターロック:BPM=158】のリードギターは、歪み系やクランチは全部録り終わり、残すはAメロのクリーンリフのみとなった。
ギター:ストラト

アンプ:Marshall JCM2000 TSL100(モディファイ)
マイク:SHURE BETA52、SM57、LEWITT MTP220

モニター

シールド:エリクサ

アンプ直なので、エフェクターは挟まない。

準備が整ったところで、モニターチェックと音色チェックを兼ねて1テイク、設定を作り直すがクリーンの音色が抜けてこない。

アンプのトレブルと、マイクプリのEQをいじって狙った音色に近づける

アルペジオのフレーズ、前半がなかなか決まらない。パンチインしてみるとリズムは良くなったがピッチに不満が残る。チューニングをやり直し、録りを重ねる。レガートなリフが多く、ピンポイントな編集がしにくいので、結果何度も演奏することになってしまった。休憩を挟み3回連続で録り、ようやくOK。他のAメロにはこれをコピペし、うまくはまった。
これで2曲分のリードギターは終了した。


【今月のちょいレア】ETEK Dynamagic
2chアナログコンプ。他のどのメーカーにも類似しない独特のキャラクターがウリだ。
ガツンとしながらも、どこかジェントルな質感に魅了される。


【今月のMV】S.H.E 「daub」
ドイツの音楽フェスにも出演経験があり、タイアップも複数あるエモロックバンドの力作。
ジャングルライフWEB連載「S.H.E meets Movies and Music」も是非ご一読を。
https://www.jungle.ne.jp/serial_post/s-h-e-243/


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

digda 「 From behind the moon 」

栃木在住、日×米のツインボーカルと、卓越した演奏力がウリ。ファンク、ソウルを中心にアブストラクト、エレクトロニカ、レゲエ、シューゲイザー、ディスコパンクを柔軟に飲み込んだ自信作。

GREEN EYED MONSTER 「 HELLO 」

神奈川県厚木市発のメロコアバンド新作。これまでも数回の全国流通盤を発売、フェス出演やヨーロッパ遠征も経験ありの実力派。

深川隆成 「 桜の季節 」


JAZZとAORがクロスオーバーした、有機的コンテンポラリーミュージック。少し抒情的な歌詞と、メロウな曲調のマッチングが素晴らしく、様々な音楽ファンを取り込む魅力にあふれている。

HOUSE


少し甘美な雰囲気がたまらない、ギターロックバンドのシングル。16ビートの楽曲と相性が良く、聴いていて自然に身体が動き出す。メンバーはそれぞれ茨城、千葉、新潟と遠距離ながらも、マイペースで展開している。

国吉亜耶子and西川真吾duo 「 PARAGRAPH –節- 」

メッセージ性の強い抒情的な歌詞と、シンプルながら洗練された楽曲とアレンジ、そして卓越した演奏力の彼らの世界観は圧巻だ。聴き手を選ばない懐の深い秀作。全国発売中。

【お知らせ】SOUND DESIGHNER2018年4月号の「宅録の主役 EQを知る」特集内の、P22「EQ処理を分析」、P64~66「パート別オススメEQ設定法(題材曲:中田ヤスタカ)」に執筆させていただきました。

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