今年結成10周年を迎え、恒例となった主催イベント“GOOD LUCK”を今年は東京と大阪で開催するラックライフ。常に目の前に居る大切な人たちに向けて歌い、音を鳴らし続けてきた彼らが2018年第一弾としてリリースする新作は、ラックライフらしい人間味溢れる3曲と、彼らの真骨頂であるライブ映像がパッケージされた5thシングル『僕ら』。ツアーを重ねて更に成長した彼らは、今年もあなたのために歌い続ける。
「そこで気づいたんですよ。たまたま自分が先頭に立っているけれど、後ろを見たらメンバーが居てスタッフさんが居て、更にその向こうにはラックライフの音楽を好きで楽しみにしてくれているたくさんの人が居るということに。そう考えたら、がんばれた」
●1/8の恵比寿LIQUIDROOM公演を拝見したんですけど、大盛況でしたね。
PON:すごかったですね。普通に感動しました。毎回のことながら(笑)。
●1/18の心斎橋BIGCATで締め括りましたが、今回の“ラックライフ 2017-2018 ~Change The World TOUR~”はどうでしたか?
PON:褌を締めなおして、じゃないですけど、意識が変わったツアーでした。
●ラックライフはツアーを重ねる毎に成長してきたバンドだと思っているんですが、更に意識が変わった?
PON:はい。“生きてるだけで丸儲け”ツアー(2017年5月〜7月にかけて行った対バン&ワンマンツアー/全20公演)で感じたことを、今回のツアー前に改めて考えて。「ここからマジで変えよう」という意識で挑んだんです。「もっとちゃんとしよう!」みたいな。
●今回のシングルは“生きてるだけで丸儲け”ツアーのライブ映像が収録されていますけど、要するにあのツアーの映像を自分たちでも見直したりしたんですね。
PON:そうですね。いろいろと振り返って、すごく悔しい想いもたくさんしたツアーだったんです。だから今回のツアーはそういう悔いが残らないように…ライブバンドというだけじゃなくて、ミュージシャンとしてもしっかりと成立するようなバンドになりたいと。
●勢いだけではなくて。
PON:そうです。「バンドマンとして」だけではなくて、「音楽を届ける人間として」という部分で、ちゃんとツアーをまわりたいと。
●それは具体的にいうと、どういう部分なんですか?
PON:お客さんにとって聴きやすいライブ、伝わりやすいライブ。僕らクリックもちゃんと聴いてないし、打ち込みもないし、完全にその場のテンションですべてやってるんですけど、そういうところを改めて見直していったんです。曲の良さをそういうライブで壊してしまうときもあるので、「いちばんいい状態で歌をお客さんに届けるには?」というところをメンバーやスタッフと話して。だから今まででいちばんバンドをやってました。
●リハーサルもたくさんした?
PON:もう地獄のようにしました。ラックライフって良くも悪くも感覚的なところがあって、ライブが終わった後にメンバー全員で集まって「今日のライブのどこが良くてどこが悪かったか」みたいな反省会をあまり長時間するようなバンドではなかったんですよ。そういう場はあることはあったんですけど。
●そうなんですね。
PON:でも今回は初日の福岡公演(2017/11/24@福岡Queblick)が終わってすぐにメンバーみんなで集まって、PAさんにも入っていただいて「ここはどういう風に見えていたか?」みたいなことも訊いて。初めてのことだったんですけど、みんなでちゃんとライブを作っていこう、みたいな意識が生まれたツアーだったんです。
●PONくんは前から、曲中にその場で感じたことを話したり叫んだりするじゃないですか。MCと歌の境目が無いステージというか。恵比寿LIQUIDROOMの印象は、その深度がどんどん増していて、更に何があってもアンサンブルがびくともしない強度みたいなものを感じたんです。
PON:そう感じてもらえたんだったら嬉しいですね。土台をしっかり固めたというか。まずはちゃんと“ラックライフ”というものがあって、そこに自分たちの人間性を乗せる…そういう順番をすごく意識していたんです。
●その感じはすごく伝わってきました。
PON:めっちゃゲネプロしたんです。スタジオにPAさんやスタッフさんにも入ってもらって、セットリストもテンションもライブ通りにやってみる、というゲネプロを1日3回くらいやったんです。それを3日間。
●すごい!
PON:もうヘトヘトでした(笑)。
●でもその苦労に見合うツアーになりましたね。“Change The World TOUR”というタイトルでしたけど、自分たちの世界も変わった。
PON:そうですね。演っている側も世界が変わったし、観に来てくれた人たちも世界が変わっていたら嬉しいですね。
●ところで今回のシングル曲「僕ら」は映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)』エンディング主題歌ということですが、この曲はいつ作ったんですか?
PON:去年の秋頃ですね。お話をいただいたときにエンディングということは決まっていて、「余韻が残るようなバラードを」みたいな感じでざっくりとしたイメージで言われて。
●この曲、いきなりびっくりしたんです。歌い出しが“神様ならさっき出て行ったよ”という、ちょっと絶望的な内容で(苦笑)。
PON:ハハハ(笑)。そうですよね(笑)。『文豪ストレイドッグス』の主人公はすごく人間味のあるキャラクターで…今回3回目のタイアップなんですけど…僕はすごくシンパシーを感じているんですよね。いろんなことで悩んでいるんですけど、人のためだと燃えるようなタイプで。そういう部分がすごく自分に近いなと思っているんです。
●なるほど。
PON:そういうキャラクターが成長していく物語なんです。原作を読ませていただいて“なるほど! そうやな!”と。“何も迷うことなく自分のことを歌えばいい”と思って、最初はバンドのことを書いていたんですよ。
●ほう。
PON:“僕ら”というのはラックライフのつもりで書き始めたんです。4人が肩を組んで、正解は無いけどがんばっていく姿を歌にしたいなと。
●なるほど。
PON:でも1番の歌詞を書いたくらいでつまづいてしまったんです。何も出てこなくなって、「うわ〜、ヤバい!」と焦っているとき、『文豪ストレイドッグス』の公式ツイッターアカウント(@bungostraydogs)から「エンディングはラックライフが担当します」という発表があったんですよ。
●未だ曲ができていないのに。
PON:そうなんです。「できてへんのに発表されてしまった! ヤバい!」と更に焦って、そこでMr.エゴサーチ(※PONの得意技はTwitterでエゴサーチをすること)が登場するわけですよ。
●出た。
PON:それでひたすらエゴサーチしてたら、ラックライフを応援してくれている人も、『文豪ストレイドッグス』というアニメを好きな人たちもすごく喜んでいてくれて。「ラックライフで良かった!」とか「ラックライフおめでとう!」とか「楽しみ!」とか、もうすごい量のツイートが出てきたんです。
●うわ。
PON:それで“そんなにみんな喜んでくれるんだ!”と。2時間くらいエゴサーチしていたんですけど、新しいツイートもどんどん追加されて、感動して。“嬉しいな〜”と思いながら、続きの歌詞をその日のウチに書いたんです。
●たくさんの人から勝手に力をもらったんですね(笑)。
PON:SNSに頼って(笑)。でも曲作りは本当にしんどい作業で、1人で「あーでもないこーでもない」の繰り返しなんですよ。そうすると、バンドと言えどもすごく孤独感を感じてしまうんです。「バンドの先頭で自分が生み出さなくてはいけない」という使命感もあるし、「俺がやらなければ!」とプレッシャーを感じつつ孤独な作業をしている中で、そういうことがあって。そこで気づいたんですよ。たまたま自分が先頭に立っているけれど、後ろを見たらメンバーが居てスタッフさんが居て、更にその向こうにはラックライフの音楽を好きで楽しみにしてくれているたくさんの人が居るということに。
●うんうん。
PON:そう考えたら、がんばれた。1人じゃないことに気づいたというか、その人たちの為ならがんばれるというか。もともとわかってはいたんですけど、曲作りで頭がいっぱいになっているときは、後ろを振り返る余裕がなかなか無かったんです。だから「僕ら」は、応援してくれている人たちが書かせてくれた歌詞なんです。
●この曲のポイントは、“涙”や“悲しみ”など、自分の弱い部分から目を逸らさないところですよね。
PON:開き直りですね。「はい、僕は無敵じゃありません。すみませんでした」っていう。ある時からそういう考え方になりました。強がることを辞めたというか、弱さを認めることは強みになるんじゃないかなって。
●はい。
PON:僕は自分のことをスーパースターやと思いたいし、無敵のヒーローやって信じたいですけど、全然なりたい自分になれてないし。でも、それはそれでしゃーないというか、「挫けるときは挫けてもいいやん。でもそのあと立ち上がることが大切でしょ?」っていう考え方になったんです。だから隠すことを辞めたし、強がって歌うことを辞めたんです。そういうことは本当に強い人が歌ってくれるだろうし、僕には僕の性格があるから、それを正直に歌う方が自分も気持ちいいし、共感してくれる人も多いんじゃないかなって。
●誰もが経験することだと思うんです。なりたい自分になれなくて心が折れそうになったけど、そんな弱い自分も認めることができたというか。
PON:そうなったときに、僕の場合は周りに人が居てくれたんです。で、周りは僕の本質を知っていたんです。「PONは無敵じゃない」と。自分は強がっていたつもりだったけど、近くに居る人たちは僕の本質に気づいてくれていて「いや、お前はそうやで」と言ってくれたというか、認めてくれたというか。そこで“このままでいいんだ”と思えた。
●SNSって余計な感情もたくさん溢れてますけど、その反面、知り得ない気持ちもたくさん溢れてますもんね。
PON:実際のところ、そっちの方が山ほどありますからね。何度も励まされて“がんばろう”と思えてますからね。すごい時代ですよね。若者やなと思いました(笑)。
●あとカップリングのM-2「ライターライナー」ですが、“ライター”は“ソングライター”という意味だと想像したんですが、“ライナー”はどういう意味なんですか?
PON:“定期便”というニュアンスですね。定期的に歌いたいことというか。
●確かにPONくんは定期的に“あなたに笑ってほしいから歌っている”というような内容の曲を書く。
PON:意識していないんですけど、こういうことを定期的に歌っちゃうんですよね。歌いたくなっちゃう。だから書き始めたときに“あ、またこのことを書いてる”と思うんですけど、でも今思っていることが正義やから“また”とか関係ないと。
●前に思ったことを歌っているわけじゃなくて、今思っていることを歌っている。
PON:“前にも同じようなことを書いたけど、今マジで思うねんな〜”と思いながら書いてます。
●「ライターライナー」を聴いて思ったんですけど、これは音楽の究極的な伝え方かなと。
PON:“あなたのために歌っています”みたいなことを書いた曲って、ラックライフには本当に山ほどあるんです。「素晴らしい世界」も「ハルカヒカリ」もそうやし。そういう歌を歌いながら、“やっぱりこれや”と思うんです。どんどんその想いが増えていくというか。逆に、“なんでこういう歌が他にないんかな?”と思うくらいです。
●ハハハ(笑)。M-3「贅沢病」はどういうきっかけでできたんですか?
PON:僕はみんなと一緒に居るのに“さみしいな”と思うことがあるんですけど、あるとき“なにその感情? アホちゃう?”と思って、自己嫌悪したんです。“最悪やな”って。「好きな人と一緒に居れること」って100点の案件じゃないですか。
●そうですね。
PON:100点の状態であるにも関わらず、それ以上のことを求めている。“そう思っている俺、めっちゃキモいわ”と思って書いたんです。嫌やなと(笑)。そう思って書いた曲なんですけど、同じようなことはみんな思ってると思うんですよ。“〜をしてほしい”って、誰もが思うことじゃないですか。やっぱり、どんどん慣れていくのが嫌なんですよね。
●この曲、サウンド的には横ノリで気持ちいいグルーヴじゃないですか。そういう内容を、ノリのいいサウンドに乗せて歌うのがいいですよね。
PON:そうですね。今までのラックライフには無い感じというか。“自分めっちゃキモいわ”と思ったことをちょっとでも和らげようと思って、ライブでは気持ちよく歌いたいです(笑)。
Interview:Takeshi.Yamanaka