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GHEEE

10周年を超えてもなお疾走する4人の速度と熱は増し続けていく

今年で10周年を迎えるGHEEEが、3年ぶりとなる待望のニューアルバム『CINQ』をリリースする。PEALOUT、PLAGUES、ZEPPET STOREという洋楽志向のギターロックの先駆者的バンドにそれぞれ所属していた3人に、現在はa flood of circleのメンバーとしても活躍するHisayo(Ba.)が加わり2007年に結成。そこからライブ・リリースともにコンスタントな活動を続け、10年間で5枚目となるアルバムを完成させた。プロフェッショナルなメンバー同士がピュアな音楽への想いで結びつき、脊髄反射で生み出す圧巻のサウンドは決して色褪せることなく、これからも鳴り響いていく。

 

「遮二無二疾走しているというよりは、無理のない速さなんですよね。だから不思議と、10年間走り続けられてしまうというか。それがこの4人が集まった時に生まれる雰囲気なのかなと思います」

●1stアルバムからずっとインタビューさせて頂いていますが、気がつけばもう10周年なんですね…。

近藤:早い!

深沼:“気がつけば10年”という表現が一番合っていると思います。“10周年になったら何かやりたいね”と今でも思うくらいで…、“あっ、今か!”みたいな(笑)。

●ハハハ(笑)。ライブもリリースもずっとコンスタントに続けてきた10年というか。

深沼:そうですね。作品としても今回でもう5作目だし、それは10年くらい経っているよなとは思うんですけど、何か実感がないですね。メンバーそれぞれに色々と活動しつつも、GHEEEを続けてきていて。結成した時の雰囲気から、今も全然変わらないんですよ。

近藤:ライブ後の打ち上げや楽屋の雰囲気とかが全く変わらないんです。誰も焦ったりする人がいなくて、みんなのんびりしているので居心地が良いというか。だから、ここまで続けられたのかなと思います。

●4人とものんびりしているのが良いと。

深沼:テンションが高いのは音楽だけなんですよね。

●確かに(笑)。

深沼:今回のレコーディングもすごくタイトなスケジュールで、リズムなんて時間がないから1日で全部録っていたりして。それぞれに忙しい中で作っているんだけれども、集まるとそういう雰囲気に全然ならないんですよね。みんな当たり前のように、やらなきゃいけないことはやってきていて、その上ですごくのんびりしているというか。

●4人でいる時は、誰も焦ったそぶりを見せない。

近藤:本当はそれぞれが忙しくて大変なはずで。特に深沼くんはミックスとかも全部やっているから一番大変なはずなんだけど、それを全く見せないんですよ。平気な顔をして、そのまま進むみたいな。

深沼:それで気がついたら10年続いていたのが、このバンドなんですよね。みんな色んなことをやりつつ、たまにGHEEEの空気を吸いに集まってきているんだなと思います。

●4人が4人ともプロとして、きちんとやるべきことはやる人たちだから成り立っているのかなと。

深沼:初期のインタビューでもよく言っていたんですけど、友だちが集まってバンドを組んでデビューしたというわけじゃなくて、最初からみんなプロの人たちが集まっているバンドだから。そういう意味での新鮮さがあるというか。それぞれがGHEEEの中の1/4として楽しむというスタンスでずっとやってこられたのは、すごく良かったなと思います。

●その新鮮さは今も失われていない?

近藤:そうですね。バンドを続けていると、マンネリ化する部分もあるじゃないですか。でもそれぞれが色んなことをやっているからかもしれないけど、パッと2ヶ月ぶりとかに集まるとすごく新鮮な感じがするというか。

深沼:毎回、“やっぱり良いな”と思いますね。すごく純粋に、音楽だけでつながっている気がする。人の組み合わせ的に、それができる人たちだったというところが大きいんだと思います。

●4人のバランスが良いんでしょうね。

近藤:お互いがお互いの良いところをわかっているというか。だから何か突出したものがある人は、どんどん突っ走れば良いと思うんですよ。それを引き戻して最大公約数的なものにするんじゃなくて、そのまま突っ走ってもらうことで何か自分の知らない面白さが出てくるんじゃないかなと考えていて。

●無理に制御して、最大公約数的にまとめる必要はない。

近藤:だから音に関しては、深沼くんに全部任せているんです。逆に俺がライブでメチャクチャに動いていても深沼くんは手綱を引くわけじゃなくて、“いってらっしゃい”みたいなスタンスで。そういうデコボコな感じが生まれるのが面白いのかなと思いますね。

深沼:そのデコボコ感を楽しめているし、良いバランスのまま10年間やってこられているから。音楽性もそうなんだけど、特に何かを変えたりして無理に新鮮さを出そうとしなくても、常に新鮮なんですよね。それが一番良いところかなと思います。

●今作を聴いても一発で“GHEEEだ”とわかる音でありながら、新鮮さもあるのがすごさというか。

深沼:自分たち自身が“GHEEEだからこうしよう”と思ってやっているわけでもないから。そこがすごくピュアで、良いところだなと思いますね。

●特にGHEEEらしい曲を作ろうと意識しているわけではない?

深沼:“この4人が光る曲を”とは思っていて。それが結果的にGHEEEらしさになるというか。たとえば“ここは自分が歌って、ここは近藤さんが歌って”と考えながら曲を作るのが好きだし、そこは他のバンドやプロジェクトにはない要素だから。“ライブでこういうふうに映えたら良いな”と思って作っていくと、最終的にGHEEEらしい曲になっていたりしますね。

●この4人で演奏することを想像して作るから、GHEEEらしい曲になる。

近藤:作る時はGHEEEを想定して作りますね。何となくできた曲をGHEEEに持っていこうという感じではなくて。この4人で演奏している風景を想像したりながら作っています。

深沼:役者は決まっているから、“この人にこういう役をやってもらおう”みたいな感じで脚本を書いていくような感覚ですね。それが楽しいから、あっという間に10年が過ぎたのかなと思います。

●今回の収録曲は、どれもアルバムに向けて作った感じなんでしょうか?

深沼:基本的には10周年だと気づいてから、作り始めました。“何か出さなきゃな”と。

近藤:10周年だし、アルバムを出してツアーくらいしておいたほうが良いかなと思って。今年の5月くらいから、アルバムに向けて一気に作り始めました。それ以前からライブでやっているものも何曲かはあったんですけどね。

●それ以前からあった曲とは?

深沼:M-7「Alone ahead」が一番古くて、M-4「Mind bomb」とM-6「Hello Cheers」もライブでやっていました。あとは全て書き下ろしですね。

●先にできていた曲は、何かキッカケがあって作ったんですか?

深沼:ちょっとライブの期間が空いた時に、(次のライブに向けて)“ここで1曲くらい新曲があると良いな”という時に書いた感じですね。

●「Mind bomb」はちょっと変わったリズムですよね。

深沼:“こういうリズムで作ろう”とか意識したわけでもなく、できてみたら新鮮な感じの曲だったという感じなので、たまたまですね。何故かそういう新鮮な曲のほうを先にライブでやっていたという…。今ライブでやっている定番曲の中に入れると考えた時に、“ちょっと違うものを作ろう”という意識が働くからなのかな。

近藤:ちょっとアクセントになるようなものというか。

●ライブのセットリストに入れることを想定した結果、アクセントになるような曲が生まれたと。

深沼:逆に“アルバムを作る”となると、僕の場合は王道な曲が出てくる感じはありますね。

●「Alone ahead」は今作で唯一の近藤さん・深沼さんの共作曲ですが。

深沼:これもライブがちょっと空いた時に「新曲をやりましょう」ということで作りました。「こういう曲ができたんですけど、歌詞は自由にお願いします」みたいな感じで、近藤さんに丸投げして。

●近藤さんは何かイメージがあったんですか?

近藤:この曲は、タイトルが先に出てきたんですよ。“お前1人でも前に進んで行けよ”というイメージですね。GHEEEの場合は英詞で書けるのが、自分にとっては楽しくて。昔はPEALOUTで英詞を書いていたけど、今はソロだと日本語詞ばかりだから。

●英詞で書く楽しさもあると。

近藤:書き方が違うんですよね。日本語で書く時と英語で書く時では思考が違うから、パターンも違う感じになるので楽しいです。英語のほうがより音楽的というか。語感だけでどんどん書き進めて、あとで訳詞を書く時に色々と意味付けをしていきます。

●訳詞を見ると、1行目の“きみが地獄でさまよい、泣き叫んでいると”がいきなりすごい表現だなと…。

近藤:そういうものも2行目以降に似た発音のワードがあるからこそ、言葉遊びの範疇で捉えられるというのが英詞の良いところなんですよね。

深沼:近藤さんがそうやって書くので、自分もしっかりライミングを意識して書くことが多いんです。同じ発音の言葉を上手く重ねるようにしていて。GHEEEの曲調的にも、そういうものじゃないと上手く乗らないんですよ。説明的になっちゃうと曲に乗らないから、そこは意識しつつ書いています。

●そこもGHEEEの特徴になっているというか。アルバムの1曲目がインストのM-1「Insomnia」から始まるのは、新しいなと思いました。

深沼:このインストは僕が最後に書いたんですけど、自分としては中間くらいの位置に入れようと思っていたんです。でも近藤さんが「1曲目が良い」と言って。

近藤:これはあえて1曲目にしようと思いました。

●近藤さんの中にイメージがあったと。

深沼:今回の曲順は、近藤さんの意見が大きく反映されているんですよ。

近藤:曲順は「Insomnia」を1曲目にするというのが、まず最初に浮かんで。聴いている人からすると、“歌が全然出てこない…?”みたいな(笑)。そこから始まって、最後はストレートに終わりたかったのでM-8「For real」でバシッと締める感じにしました。

●「Insomnia」は“不眠症”という意味ですが、これは曲調から?

深沼:これは何となくですね。たまたま12弦のエレキギターを買って、変なチューニングを色々と試している時にできた曲なんです。だから、この曲は相当変わったチューニングになっていて。最初はゆっくり眠れそうな感じだと思ったら、どんどんテンションが上がっていって“ダメだ!”となって結局、開き直って起きちゃうみたいな…。それで翌日、大事なところで眠くなるというね(笑)。

●その次にM-2「Empty laurel」が続くので、完全に目が覚めてしまいそうです(笑)。この曲の“いつも追い越し車線を走って来た僕は スピードを落とすことなんてできない”という歌詞が、GHEEEを象徴しているように感じました。

深沼:今回はMVもこの曲で撮ったんです。遮二無二疾走しているというよりは、無理のない速さなんですよね。だから不思議と、10年間走り続けられてしまうというか。それがこの4人が集まった時に生まれる雰囲気なのかなと思います。

●過去のインタビューでも“脊髄反射”という表現をされていましたが、そういう速さですよね。

深沼:無理がないというか、ピュアなんですよね。そういう感覚だから、あんまり“長くやってきたな”という感慨がないのかもしれない。自然な感じでやってきて、脊髄反射を繰り返していたら、10年経っていたというところはありますね。

●GHEEEの音楽にはベテラン感がないというか…。

深沼:全然ない! ベテランの“べ”の字もないところが、面白いんですよ。

近藤:落ち着いてはいないですね。ちょっと前のめりというか。

●自然とそういうものが生まれてくる?

深沼:それがやりたくてGHEEEはみんな集まっているとも言えるし、無理せずともそれができる不思議な組み合わせなんですよね。普通はそういうことをやろうとなると、“長くやっているし、歳も歳だし、テンションを上げたりしないといけないかな…”と考えるものなんですよ。でもGHEEEの場合は、そういうものが必要ないんです。4人で集まって“1・2・3・4”で、“ガァーッ!”という感じになれるのが良いところだなと。

●この4人が揃えば、そういう勢いや疾走感が自然と生まれるわけですね。

深沼:そういうのが歳とは関係なく、ちゃんと生まれてくるんですよ。

●10周年を超えても、そういう感じでずっと続いていくんでしょうね。

近藤:たぶん11年目も12年目も続いていくと思います。

深沼:10周年でどうのこうのとか言っているんですけど、実際はあまり意識していないんですよ。“そういや、10年経ったな”みたいな感じでやっていけるバンドに出会えたこと自体が稀だと思うから。そういう組み合わせの妙をこれからも楽しみたいなと思っていますね。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

 
 
 
 

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