“MUSIC DAY 〜下北沢、風が吹く。吹く。吹く。”
2017/5/4 @下北沢CLUB251 / BASEMENT BAR / 440
秋葉正志(ザ・ビートモーターズ) / Aftertalk / 安頭 / イロムク / 嘘とカメレオン / wash? / 音橙 / キスできればそれでいいしス / こっけ / COYOTE MILK STORE / salsa / cinnamons / The Siren / Tigermilk / 田島茜 / Chapter line / THIS IS JAPAN / 東京パピーズ / TALKING HOUSE / FOX LOCO PHANTOM / The White Waltz / mandala / メロディーキッチン / もるつオーケストラ / 四丁目のアンナ / Rollo and Leaps
サーキットイベント“MUSIC DAY 〜下北沢、風が吹く。吹く。吹く。”が、CLUB251、BASEMENT BAR、440の3ヶ所で開催された。総勢26組がしのぎを削ったイベントの模様をダイジェストでお届けする。
CLUB251のトップバッターを飾ったのは、The White Waltz。1曲目「Innocent」の綺麗なメロディーラインと浮遊感のあるサウンドで、場内を優しく包み込む。「ダブルアップル」や「Eternal」などの情緒的なメロディと確かなグルーヴからは、優しさの中に秘められた熱いエネルギーを感じ取れる。Vo./G.Kazutoshi Leeの丁寧に歌詞を紡ぐ歌声は、聴く者にそっと寄り添うようだ。「新編成になってから初めてのライブ」とLee は語っていたが、そうとは思えないほど一体感のある演奏で観客を魅了した。
4人組ロックバンドのイロムクは、序盤からVo./G.藤沼健のハイトーンヴォイスと卓越した演奏スキルで魅せていく。藤沼が「悪口を言う奴らを見返すつもりで曲を作りました」と言って始まった「化け者」は、怒りや鬱憤がキャッチーなロックサウンドに昇華された楽曲でリスナーの注目を集めた。「綴る」のクライマックスでは照明が全て落ち、真っ暗な会場に彼の声だけが響く。感情を揺さぶる歌声が胸に突き刺さると同時に、彼らの音楽に対する信念も伝わってくる。切なさとカッコ良さが絶妙なバランスで成り立つ楽曲の中には強い芯が通っていることを感じ、これからの音楽シーンに欠かせないバンドになりそうな予感がした。
BASEMENT BARで素敵な歌声を響かせていたのは、Vo.アイコとPf./Cho.はすみによるガールズポップユニット、メロディーキッチン。暖かい陽だまりのようなメロディーと2人のハーモニーが、身体中に染み渡っていく。アイコが「のんびり楽しんでください」と言っていたように、とてもリラックスできる空気に包まれていた。切ないバラードの「きらきら」では会場をしっとりとした雰囲気にし、ウキウキするサウンドの「アオハライド」では胸を高鳴らせる。ゆっくりと回るミラーボールもあいまって、ライブハウスにいながらも、ピクニックに来たような気分になる心地良いステージだった。
440に姿を現したのは、女性ソロシンガーの音橙。ピアノの弾き語りで披露される彼女の繊細さと力強さをあわせ持った歌声に、いきなり虜になってしまった。その美しいピアノの音色を聴いていると、まるで海の底にいるような感覚になり、気持ちが安らいでいく。「ヒカリ」からは辛くても生きていくという前向きな歌詞が、シンプルな音に乗ってストレートに聴こえてきた。最後に演奏されたバラード曲「サヨナラウソツキ」は、一音一音に感情を込めて歌っている姿がとても印象的で、440のお洒落な雰囲気にもぴったりのステージだった。
続いてCLUB251に登場したのは、FOX LOCO PHANTOM。「青いライオット」でライブが始まるなりVo.依田達義がフロアに飛び降りて歌い、場内をかき乱す。「風を吹かそうぜ!」と叫びながら縦横無尽に駆け回り、登場してから数分であっという間に空間を制圧した。立て続けに繰り出される高速ビートのサウンドにはパンクスピリッツを感じ、思わず身体が動き出してしまう。高い演奏力に裏打ちされたロックンロールが、観る者全てにとてつもないインパクトを残したことは間違いない。
満員のBASEMENT BARに、このイベントのトリを務めるwash?が登場。オープニングチューンの「シーソー」から、いきなり3ピースバンドとは思えないほど骨太なグルーヴを炸裂させる。変拍子サウンドと脈打つビートに身を委ねていると、まるで音の波動が会場全体に広がっていくような感覚に陥った。終盤に向けて、演奏はどんどんヒートアップしていく。狂ったようにかき鳴らすVo./G.奥村大のギター、怪物のような破壊力を持ったDr.杉山高規のドラム、全てを呑み込むようなBa.河崎雅光のベース。その3つが折り重なった時に、誰も太刀打ちできないほど強烈なアンサンブルが誕生するのだ。その爆発力は、しばし時間を忘れて圧倒されてしまうほどだった。
表現する側と受け取る側という差こそあれど、共に“音楽”を愛する者同士が心を通わせ合った“MUSIC DAY”。様々な表現スタイルをもつアーティストの気持ちに間近で触れたことで、改めて音楽の可能性を実感できた一日だった。これからも下北沢から吹く風は、大勢の音楽好きの心を揺さぶっていくに違いない。
TEXT:室井健吾
PHOTO:イトウ ユキ / 美澄