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Nothing’s Carved In Stone

日比谷の森が揺れた最高の夜

Nothing's Carved In Stone “Live at 野音 2017”
2017/5/21@日比谷野外大音楽堂

大都会のど真ん中、日比谷の森の中にある広いステージに姿を現した4人。Vo./G.村松が客席に目を向ける。G.生形が放つリフが高い空に吸い込まれていく。Nothing's Carved In Stoneの日比谷野外大音楽堂公演は、「Like a Shooting Star」で幕を開けた。

立ち上がった観客たちの意識がステージに一気に集中し、会場を大きな一体感が包み込む。「Moving In Slow-Motion」「ツバメクリムゾン」と立て続けに放っていく4人のテンションは高く、凶暴なサウンドが牙をむいて襲い掛かってくる。客席を見渡せば、食い入るようにステージに惹きつけられる人々。1年前の日比谷野外大音楽堂ワンマンでも痛感したことだが、風が清々しいこの季節、広い空の下でNothing's Carved In Stoneの音を全身で浴びるのは最高だ。

多くの観客が腕を振り上げて4人を称えた「November 15th」、村松が「みんな兄弟みたいなもんだ。踊ろうぜ兄弟!」と叫んで始まった「Brotherhood」、ヒリヒリと張り詰めた緊張感のあるサウンドと艶っぽいヴォーカリゼーションで魅了した「The Brake」。獰猛な音とキャッチーなメロディとのコントラストが絶妙な「Our Morn」、Dr.大喜多が立ち上がって始まった「Rendaman」。呼吸をすることすらも忘れてしまうような、印象的な情景の連続。火照った身体を涼しい風が包んでいく快感に酔いしれる。

村松が「1年前、ここで1つの曲をやって、意味を吹き込んで、俺たちはこの1年間を歩んできた。それは1年前の話。その曲を、今日ここでやることに意味があると思います」と告げて始めた「村雨の中で」は、伝わってくる感情の量と震えが凄まじく、更に増してぐっと意識が惹きつけられる。バンドとしての表現力の成長はもちろんのこと、“音楽”でどれだけのものを伝えることができるか? ということに全身全霊をかけて生きてきた彼らの軌跡をうかがい知ることができるステージに、心が強く揺さぶられる。

村松が「よし!」「よし!」とマイクを通さずに2回つぶやいて始まった「Red Light」、アコギを持って去年初めてここで披露した「Adventures」。この日、ここでやることに意味がある同3曲は、間違いなくこの日のライブの到達点の1つ。

そして何より、その後に鳴らされた「Prisoner Music」が強烈だった。Ba.日向のベースから始まる異次元のアンサンブル、アルバム『Existence』のツアーよりも更にパワーアップしたアレンジ、暴れる村松。オーディエンスを異世界へと誘うような音像が、脳内に快楽物質を溢れさせる。

「最高だ!」と村松が叫ぶ。「毎日楽器触って、楽しい日も、悲しい日も、苦しい日もあるけど…俺たちはこうやってみんなと一緒に未来を描いてます。ありがとう」と感謝の気持ちを告げ、「もっと新しい未来を作っていきたい」と「In Future」がスタート。数々のライブで鍛え抜いてきた同曲が、会場の興奮を更に上昇させる。拳を振り上げて歌い、時に感情を爆発させ、オーディエンスと共にライブを作っていく村松のステージングは神々しくもあり、全能感を帯びている。大合唱とともに大きな一体感を生み出した「Sing」の光景、巨大な怪物が暴れるかのような荒ぶる狂想曲「TRANS.A.M」、「最高の夜の入り口。会いたかったです!」「今夜だけは最高の夜にしようぜ!」と村松が叫んで始まった「Out of Control」(おそらく日没の時間を見計らってセットリストを組んだのだろう、同曲中に空はどんどん暗くなっていった)。そしてオーディエンスを踊り狂わせた「Spirit Inspiration」、ミラーボールの光とNothing's Carved In Stoneの音が夜空に吸い込まれていく光景に息を呑んだ「The Silver Sun Rise Up High」。観る者の意識を1秒たりとも離さない圧倒的な存在感を放ち続けた本編は、まさに「あっ」という間に終わっていった。

アンコールでは、「Overflowing」のソリッドな音で魅せた後、村松が声とギターだけで始めたのは「Isolation」。同曲が始まった瞬間にゾクゾクとした感覚が身体を包む。「あ、これ、ヤバい」…そう感じて間もなく、案の定会場全体は爆発的な盛り上がり。日向が暴れ、生形がギターを響かせ、大喜多がリズムを放つ。村松が歌い、観客が叫び、日比谷の森が揺れる。荒々しい音像を魂に刻み込むかのようなステージは、成長すること、前に進むことを選び続けてきた彼らの強い意志と姿勢の表れに他ならない。そして最後は村松が「みんな兄弟だと思っているので、仲間だと思っているので、また来てください」と言って「Sleepless Youth」で締め。ありったけの想いを込めた同曲は、胸の奥深くまで強く突き刺さった。

アンコールのMCで、9mm Parabellum Bullet、THE BACK HORNと共に東名阪ツアー“Pyramid ACT”の開催を発表した彼らは、これからも歩みを止めることはないだろう。彼らは今後、いったいどのような姿を、どのようなライブを見せてくれるのだろうか。更なる高みへと突き進んでいく猛者の集合体を、これからも見続けていきたい。

TEXT:Takeshi.Yamanaka
PHOTO:Viola Kam(V'z Twinkle)

 

 

 
 
 
 

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