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SpecialThanks

心を震わせるような珠玉の歌が平穏な日々に彩りを与えていく


SpecialThanks、通算3作目となるフルアルバム『Anthem』が遂に完成した。録りおろしの新曲ばかりを収録した今作でまず驚かされるポイントは、今まで英語中心だった歌詞が全て日本語となったところだろう。Vo./G.Misakiが15歳でバンドを始めてから様々な経験を積んできた中で、これまで以上に深く音楽と向き合う姿勢で紡ぎ出した言葉は、珠玉のメロディに乗ってリスナーの心へとダイレクトに響く。元々の持ち味でもあるスピーディなメロディックチューンから、エモーショナルなミドルナンバーやナチュラルな雰囲気のアコースティック曲までバラエティ豊かでありつつ、どれもがハイクオリティな全12曲。次なるステージの幕開けを予感させる1枚にして、バンドにとって新たなアンセム(=代表作)と呼ぶべき傑作の誕生だ。

「“誰かのためにこの声を使いたい”と考えるようになってから、歌詞もどんどん変わってきたと思います。“私とあなた”だったものが“私とみんな”っていうふうにどんどん変わってきて、“伝えたい!”っていう気持ちが強くなったんです」

●今回のニューアルバム『Anthem』では、遂に全て日本語詞になりましたね。ここ最近の作品でも徐々に取り入れていたわけですが、今回は最初からそういう作品にしようと思っていたんですか?

Misaki:思っていなかったです。歌詞は最後に書いたんですけど、元々は特に何も考えていなくて。歌詞よりも、曲作りに関して“こういうことをしよう”っていうところに意識が向いていたんですよ。元々は英語の曲が多かったので、今回は“今までやったことのないことをやる”という方向で行きたいと思っていたら、自然と全て日本語詞になっていました。

●“今までやったことのないことをやる”というテーマがあったんですね。

Misaki:ちゃんと1歩前に進んで挑戦をしようと思っていました。今作にもM-2「午走-umahashiru-」やM-4「white lover」、M-10「everyday」みたいに元気いっぱいな感じの曲は入っているんですけど、これまでの作品では割合的にもっと多かったんです。そこがどんどん変わってきましたね。

●パンク色の強い、勢いのある楽曲が多かったところから変わってきたと。

Misaki:最近はそういうものよりも、心地良くノれる感じの曲にしたいというか。実際、今はメンバーの中にも激しい音楽をやるタイプの人がいるわけじゃないんですよ。今回はフルアルバムというのもあって、色んなことを盛り込んで幅広い年齢の人に聴いてもらえるようなものにしました。

●そういう変化が生じたのは、今のメンバーになったことも大きい?

Misaki:メンバーが変わったことも関係あるかもしれないですけど、一番気持ちが変わったのは私自身ですね。前作の『heavenly』(ミニアルバム/2016年)を作る前くらいから、“変わりたい”っていう気持ちが強くなって。今までの作品は、私がパッと閃いて作ってきた曲をスタジオでみんなで合わせて“できた!”っていう感じだったんです。でも色んな音楽を聴くようになって、“より心に残る音楽を作るにはどうしたらいいか?”ということを考えるようになりました。

●聴く音楽の幅が広がったことも関係している。

Misaki:“もっと音楽を知りたい”と思ったんです。元々は自分の好きなメロコアバンドばかり聴いていたんですけど、最近は海外の曲や昔の曲だったり色々な音楽を聴きたいなと思うようになって。だから今は自分でもアンテナを張って、人からオススメされた音楽だったり街で流れている音が耳に入って“良いな”と思った曲を聴いたりもしています。昔に比べて、色んな音楽に触れる時間が増えましたね。

●それによって視野が広がったことが、変化につながっているのかなと。

Misaki:“良いな”って思ったことを“いつかやろう”じゃなくて、“今やろう”と思うようになったんです。これまではどこか遠慮してしまうところがあったんですけど、“自分で決めたルールなんかもうどうでも良いや”となって。“何でもやってみよう!”って思うようになりました。

●考え方が大きく変わったんですね。

Misaki:SpecialThanksは15歳の時から始めて今年でもう12年になるっていう節目もあって、音楽だけに限らず色々と振り返るところもあったんです。“今のままで良いのかな?”と考えた時に、“もっと色んなことに挑戦したい”と思うようになって。あと、それまでは安定主義で老後のことばかり考えているようなタイプだったんですけど、“いつ死ぬかわからない”と考えるようになったんですよね。“明日死ぬかもしれない”と考えたら、“今を生きたい”って思うようになったんです。

●今この瞬間を大事に生きようと思った。

Misaki:そうですね。だから、“ちゃんと考えて作ろう”と思うようになったんです。

●“明日死ぬかもしれない”と考えるようになったという心境は、“明日、全てが無くなっても”という歌い出しのM-9「reach you」にも明確に表れていますよね。

Misaki:そうですね。あと、M-5「we go」にもモロに出ています。昔は“自分が気持ち良ければ
いいや”っていう感じで歌っていたんですけど、今は“せっかく人が感動してくれるような歌声に生まれたんだから自分の声を大切にしたい”と思うようになって。自分の生まれてきた意味が“歌うこと”だったら良いなって思うんですよ。

●歌に対する意識も変わってきた。

Misaki:自分が良ければいいんじゃなくて、“誰かのためにこの声を使いたい”と考えるようになってから、歌詞もどんどん変わってきたと思います。“私とあなた”だったものが“私とみんな”っていうふうにどんどん変わってきて、“伝えたい!”っていう気持ちが強くなったんです。そこで“日本語のほうが伝わるな”と思ったから、日本語詞が増えたんだと思いますね。

●“伝えたい”という気持ちが強くなったことで、曲や歌詞も変わっていったんですね。

Misaki:そうです。だから自分が気持ちよく歌えるような“クセ”に頼った曲じゃなくて、“もっときれいに聴こえるような曲を考えなきゃ”っていう意識に変わって。そこから作り方も変わってきましたね。

●自分のクセに頼らないことで、楽曲の幅も広がるのかなと。

Misaki:そうなんですよ。ギターのコードやメロディに関しても“いつもだったら、この後はこう行くな”っていうものがあるんですけど、M-3「happy」ではそれを全部やめて。“こっちのほうがよりきれいに聴こえるな”っていうことを考えながら作った結果、今までにないような感じの曲ができたなと思います。

●ちゃんと“らしさ”もありつつ、新しさも感じられる曲になっていますよね。

Misaki:自分の中から自然に出てくるものもありつつ、それを改良して今までにはない感じにしようと思って作りました。

●歌詞に関しても、今伝えたいことが明確に出ているなと思いました。

Misaki:この曲では“幸せとは?”っていう、まさにタイトルどおりのことを歌っていて。私の歌で誰かの人生に彩りを与えられたら、それ以上望むことはないというか。それが私にとっての一番の幸せかなと思って書きました。あと、自分もたまに欲が出てきちゃったりするから、そういう時に“ダメダメ!”って自分を戒めたりもするんです。たとえば地位や名誉を欲しがったり、“売れているからすごい”とか“大学を出ているから大丈夫”みたいな考えだったり、別にそれが悪いわけじゃないんですけど…。

●“本当の幸せよりも優越を選ぶの?”というフレーズに、そういう気持ちが出ていますね。

Misaki:それよりも、今はもっと日常的なものを大事にしたくて。たとえば道端に咲いている花を見て癒やされたりとか、そういう幸せを感じられる人でいたいなと思うんです。“たくさんの花が美しく咲いている花壇の中に並んでいることが本当に幸せなのかな?”って考えてみたら、実際は周りと比べちゃったり競い合ったりして苦しいんだろうなと。それだったら道端に咲いている花のほうが、きれいに整えられていなくても幸せなんじゃないかなっていうことを考えながら書いた歌詞ですね。

●「happy」と共にMV曲になっている「午走-umahashiru-」の歌詞には過去の作品タイトルや曲名が取り入れられていますが、これはどういう意図で?

Misaki:これは今までのことを振り返って書いた曲ですね。この歌詞を書いたのが年末あたりだったので、干支の置物をよく見かけていて。SpecialThanksを始めた年から、ちょうど今年で干支が一周するので1つの節目とも言えるなと。あと、私は午年なんですけど、“午”は方角でいうと南を指すんですよ。そういうことも取り入れつつ、音楽に対して自分が今思っていることを書いています。

●“SEVEN LOVERSは今も愛し合っている”というのは、どういうイメージで歌っているんですか?

Misaki:愛をテーマに歌い始めたのが、その頃からだったんです。そこからずっと“愛と感謝”をテーマにやってきたから。

●「everyday」でも“and…love you♡”と歌っていますが、これも愛をテーマにしている?

Misaki:これはライブをイメージして作ったんですけど、お客さんへの感謝の気持ちを込めた曲ですね。“助けられたのは your smile”という歌詞は、ライブ中に疲れてきた時もお客さんの笑顔を見ると頑張れたりもするっていうことで。“本当にいつもありがとう”っていう曲なので、早くお客さんにライブで直接伝えたいですね。

●M-1「singing」もライブのイメージが浮かぶ曲ですよね。

Misaki:“ステージに上がってみんなで楽しみたい”っていう気持ちがまずあって。“SpecialThanksにしかできないライブの始め方をしたい”と思ったので、ドラムから入って1つずつ楽器の音が重なっていくようなイメージで作りました。ステージに上がる前のワクワク感とか、上がってからみんなに会った瞬間や音が鳴った瞬間のワクワク感とか、みんなと一緒に歌っている瞬間を考えて作った曲です。

●M-6「心を震わせて」に出てくる“あなた”も、ファンのことかなと思ったんですが。

Misaki:まさにそうですね。去年は自主企画やワンマンライブをしたりして。特にワンマンでは30曲以上もやって自分では“やり切った!”っていう感覚だったのに、ファンの人が「次はあれが聴きたい」ってどんどん言ってきてくれたのがすごく嬉しかったんです。ライブ後にもそういうメッセージが届いたり、私がやっているネットラジオ番組宛に届いたメッセージを読んだりしていたら嬉しくなって、すぐ曲ができました。

●そういう経緯で生まれた曲だったんですね。「white lover」とM-11「snow town〜雪の降る街に〜」はどちらもタイアップ曲ですが、それに向けて作った曲なんでしょうか?

Misaki:タイアップのお話を頂いて、作りました。「white lover」は“白い恋人PARK AIR 2017”っていうスキー・スノボのイベントのテーマ曲として作って。“白い恋人”という言葉から、“もしスノボをやる人が彼氏だったら”っていうイメージで書いたんです。「snow town〜雪の降る街に〜」は、“景色が思い浮かぶような曲を作りたい”と思って作った曲ですね。

●色んな情景やイメージが思い描けるような曲が、今作には入っていますよね。

Misaki:春夏秋冬や朝とか夕暮れだったり、何かしらの時間や時期にピッタリ合うような曲があれば良いなと思って、今回のアルバムには色々と入れ込んだんです。たとえばM-8「summer drive & summer dive」は夏のイメージで、M-7「tokyoサンセット」は夕暮れ時、「we go」は3月あたりの“別れの季節”をイメージして作りました。

●アルバムのラストを飾るM-12「LIFE to go」はアコースティック調ですが、これは弾き語りで作ったんでしょうか?

Misaki:弾き語りのライブを去年の夏くらいから1人で始めたんですけど、その延長線上にある曲ですね。“LIFE to go”っていう自主企画を去年やったので、それをそのままタイトルに当てはめました。歌詞は“音楽がみんなの日常生活に溶け込んで欲しい”っていう、私が今思っていることが書いてあります。それが“愛と感謝”の次の新たなテーマなんですよ。“音楽と日常の共存”みたいなテーマが今はあるんです。

●次にもつながるものになっている。そのアルバムタイトルを『Anthem』にした理由とは?

Misaki:過去の作品タイトルは私が全部決めていたんですけど、今回は全然浮かばなくて。それでメンバーと相談していた時に、Hiromuくんが持ってきてくれたアイデアなんです。“代表作”という意味では今回の曲に合っているタイトルだし、“賛美歌”という意味もテーマの“愛と感謝”に通じるものがあったので『Anthem』にしました。

●ジャケットの雰囲気もすごく良いなと思いました。

Misaki:“音楽とちゃんと向き合っていく”という強い意志を感じさせるようなジャケットにして欲しいと、デザイナーさんにお願いしたんです。女の子が強い眼差しで横を向いているようなイメージが頭に浮かんでいたから。

●今まで以上に音楽と向き合っていくという気持ちになれているんですね。

Misaki:そうです。“音楽に溺れたい!”っていう感じです。

●溺れたいんだ(笑)。

Misaki:もちろんライブハウスでも音楽を浴びるんですけど、日常生活でも常に音楽と共にありたいんです。みんなにもライブハウスだけじゃなくて日常生活でも聴いて欲しいので、ちゃんと日常に溶け込むような音楽が作りたいなと思っています。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

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