2017/3/16@Zepp TOKYO 10-FEET / 竹原ピストル
ロックバンドのライブが観ている者たちの身体を大きく揺さぶるものだとすれば、竹原ピストルのそれは観ている者たちの心をぐわんぐわんと大きく揺さぶるものだった。
ギターと声だけでフロアを埋め尽くす観客と対峙し、魂のこもった歌を鳴り響かせる彼のステージは、深く胸に突き刺さった。
そして10-FEET。“20th Anniversary”という文字が刻まれたバックドロップが照明に浮かび上がり、急激に会場のテンションが上がっていく。
フロアからの声が大きなうねりとなって響き、「火とリズム」でライブがスタート。
「VIBES BY VIBES」「hammer ska」と初っ端からキラーチューン連発、フロアの興奮が一気に振り切れる。数え切れない人が宙を舞い、拳を振り上げ、身体と身体をぶつけ合い、心を大きく揺らす。
泣いているような表情で叫ぶ人、Vo./G.TAKUMAと一緒に歌う人、Ba./Vo.NAOKIと一緒に暴れる人、Dr./Cho.KOUICHIのリズムに合わせて跳ねる人、ステージの3人を食い入るように見つめる人。
ライブハウスで見られる様々な現象が同時にいたるところで沸き起こる、フェスでしか、いや、“京都大作戦”でしか見たことがない光景が目の前で繰り広げられる。3人の気合いが凄まじいのだろう、会場全体がヒリヒリとした緊張感と高揚感に包まれている。
この日のライブは、いつものピースフルな雰囲気とは少し違っていて、なんというか、この瞬間に生まれる“何か”をガッチリとその手に掴んで、決して放すまいとしているような、死にものぐるいに近いテンションだった。
その理由は、MCでTAKUMAが告げた「今日はアンコールなし」という言葉で腑に落ちた。ライブを更にいいものにするために、彼らは自らの気持ちを限界まで追い詰めようと、アンコールをしないことを選んだのだ。予定調和をなくし、限界を超えたギリギリのライブで生まれる“何か”は、人々の心を大きく打つ。そのTAKUMAのひと言は、ライブの成功を予感させた。
「[final day]」「SHOES」と曲を続け、ライブが中盤に差し掛かったところでイントロのアレンジを変えて「RIVER」で会場のテンションは最高潮。フェイントを入れて肩車からのダイバーを何人か崩したり、MCでくだらないことを言って笑わせたりするなど、愛嬌たっぷりなところは相変わらずだが、一旦曲が始まれば会場の雰囲気は一変、凄まじい熱量で駆け続ける。
TAKUMAが「ライブも人間の人生も限られた時間や。いつかは終わる。大事なのはどうやってすごすかやろ。俺はお前らと腹ちぎれるくらい笑いたい!」と叫んで「goes on」。
曲を重ねる毎に、ステージもフロアもテンションが限界を超え、空気の温度と湿度が高くなり、肌にべっとりとまとわりついてくる。
急遽竹原ピストルの「Forever Young」のカヴァーもはさみ、全員で歌う「風」、数え切れないほどのタオルが舞った「CHERRY BLOSSOM」、そして最後は「back to the sunset」で終了。
TAKUMAが言った通りアンコールは無かったけれど、ライブ後の満足度は非常に高かった。
“ヒトリセカイ×ヒトリズム” TOURはこの日がファイナル。
こんなに楽しくて、心が大きく動かされる毎日を3人が送ってきたのかと思うと、メンバーが羨ましくなった。20周年を迎えても前だけを見つめ、自分たちの限界を超えようと日々走り続ける10-FEET。彼らがこれからどのように成長していくのか、どのように生きていくのか、ずっと見続けたい。
TEXT:Takeshi.Yamanaka
PHOTO:HayachiN / アミタマリ