2016年、結成日である6/3に赤坂BLITZで10th Anniversary Liveを成功させ、10周年イヤーへと突入したheidi.。同月にベストアルバム『回奏-heidi. the best 2006-2016-』をリリースした後もレコ発ツアーを含め、精力的にライブ活動を行ってきた彼らがオリジナルアルバムとしては2年半ぶりの新作『邂逅』を完成させた。バンドとしての軸はブレることなく、様々なチャレンジに挑んできた4人が作り上げた今作の収録曲は今なお新鮮なクリエイティヴィティに満ち溢れている。10年間の歩みの中で経験した喜びも苦しみも全てを糧にして、創作へと昇華してきた音楽家たちの前進は決して止まることがない。1つの節目を超えて、その先の未来へと力強く踏み出したメンバーに訊く10,000字インタビュー。
「今作のトータルな印象として、“内で燃えている”みたいな感覚があって。そういった意味で、“ヘヴィ”な印象があるんです。初期の頃もそういう印象だったので、燃え方が近いのかなと」
●結成10周年を迎えたわけですが、自分たちとしても1つの大きな節目として捉えている?
桐:最初から10周年を目指してやろうという気持ちはもちろんなくて、行けるところまで行こうという感じだったんです。でも8年目くらいで急に、“あれ? もうすぐ10年になるぞ…”と意識し始めて。そこからはバンドの状況がどんなふうになろうと、とりあえず10年は目指そうと思っていましたね。実際に10年を超えてみると何てことはないんですけど、少し肩の荷が下りた気もしていて。気が楽になって、楽しんで音楽がやれているなというのは感じています。
●近付いてきたことで、節目を意識するようになった。
コースケ:“何が何でも10年やりたいな”というのは、俺も9年目くらいで思い始めて。バンドに限らず人生において10年も同じことをやったことはないし、ましてや同じメンバーでやるなんてこともなかったので、やっぱり意識しちゃいましたね。あと、“10年経って赤坂BLITZのステージに立った時に、自分はどう思うんだろう?”という想いもあったんです。結局は“楽しかったな。やってきて良かった”みたいな気持ちしか残っていないんですけどね(笑)。
●2016年の6/3に赤坂BLITZでやった10周年記念ライブも大きな節目だった。
義彦:俺たちは基本的にライブばかりやってきたので、何年目かというのをあまり意識していなくて。でも赤坂BLITZのライブを終えた時に、“10年経ったんだなぁ”って実感しましたね。
コースケ:俺の中ではあのステージがあったことで、今回のアルバムを作ろうというエネルギーが出てきたのかなという気がしています。
●10周年記念ライブ以前からニューアルバムのイメージがあったわけではない?
コースケ:それ以前には、アルバムを作ろうという意識がまだ自分の中にはなくて。とりあえず赤坂BLITZでやるということだけしか考えていなかったし、その先のイメージはまだなかったんです。まずはその1日を楽しんで、後のことはそれから考えようという感じでした。
●実際にライブを終えてからは制作意欲が湧いてきた?
コースケ:平日にも関わらずたくさんの人が来てくれて、“こんなにも応援してくれる人がいるんだな”というのを感じられたんです。そういうものが何にも代えがたいパワーになるんですよね。自分はそれがあったから、今回のアルバムができたように感じています。そこでもらったエネルギーを返したいなっていう。
●ナオさんはどうでしたか?
ナオ:10年という節目については、バンドよりもお客さんがどう捉えるかということのほうが大きかったというか。俺自身としては特別な気持ちはなくて、むしろ“その先をどうしようか?”ということしか考えていませんでした。10年で区切り良く辞めるバンドもいるじゃないですか。自分たちもそうだとは思われたくなかったから、heidi.としての未来をその日にどうやって見せるかということが重要だと思っていましたね。
●次の展開を想像させるものを見せようと考えていたんですね。
ナオ:今もそうなんですけど、自分たちは毎回アルバムを作るごとに“次はもっと違うものを作ろう”という試みを繰り返してきたんです。でもそこで自分たちにできること以上のことをやろうとすると、失敗するケースが多くて。だから最近はそういうことはあまり考えずに、出てきたものを素直にやるという部分もありつつ、今まで培ってきたものをブラッシュアップしていくような感覚なのかなと思いますね。
桐:heidi.としての軸はブレていないと思うんですけど、色んな挑戦はしてきていて。もちろん売れたいという気持ちもあるし、面白いことをしたいという気持ちもあるから、色んなことをやってきたんです。たとえば自分たちとは違うジャンルの相手と一緒にライブをすることによってheidi.の良さに改めて気付いたり、“やっぱり俺たちにはこれしかできないな”と感じたりもして。10年かけて、本当に“これなんだな”というものに辿り着いた気はします。
●2012年にリリースしたアルバム『アルファ』は外部からプロデューサーを招いたりと、大きな試みをした作品だったと思うのですが。
ナオ:率直に言えば、“人に頼っちゃダメだな”と思いました(笑)。もちろんあそこで学んだこともあって、それを自分たちなりに抜き出して次につなげていった部分もあるので、良い経験にはなったんですけどね。そこを経ての前作『ヒューマン』(2014年)は、すごく良いアルバムになったと思っていて。だから今作に関しても“今度はどう違ったアプローチで攻めていくか?”という考え方にもなったし、結果的には良かったんじゃないかな。
●『アルファ』で学んだことを『ヒューマン』で活かして、それをさらに今作にまでつなげられている。
桐:今ナオが言ったとおり、『アルファ』は良いところも悪いところもあったアルバムだと思うんですよ。1つの試みとして自分たち以外の人間を多く入れたことで勉強にはなったんですけど、“やっぱり自分たちのやることに対して、自分たち自身が責任を持ってやるほうが良いんだな”ということはすごく感じたんです。
コースケ:確かに『アルファ』の時は色々ありましたけど、本当にダメだったら今はないわけですから。月日が経って、今はメンバーやバンドの状態がすごく良いなと思えている。全てのことが良かったとは言わないですけど、今につながっているなとは思います。もしかしたら、もっと良い道もあったかもしれない。でも今が良いんだったら、それで良かったんじゃないかっていう捉え方をしていますね。
●今が良いと思えていることが大きい。
コースケ:たとえば「2年目の頃は良かったな…」と言うわけじゃなくて、10年経って「今が一番良い」と言えることがすごく良いなっていう。少なくともメンバーはみんな、そう思えているというのが大きいですね。
●色んな経験を経て今回のニューアルバム『邂逅』が完成したわけですが、どういうものにしようということは話し合っていたんですか?
ナオ:いや、今回は選曲会すらもしていなくて、俺がやりたい曲をやるっていう感じでした。
●ナオさん主導だった?
桐:でも「俺が作るから」っていう感じではなかったんですよ。「みんなも良い曲を作ったら持ってきて」というスタンスで、毎回アルバムは作っていて。とはいえ基本的にはナオが作ってくることが多くて、どんどん曲が増えていくうちに“これはナオのアルバムになるな”というのをすごく感じたんです。だから今回は、色んなことに口を出すのを止めようと思いました。
●それくらい楽曲のクオリティが高かったということ?
桐:そうです。“ノってるな!”と思いました。
ナオ:“ノってるな!”というフレーズが、今回の制作中に流行っていたんです(笑)。
●その言葉が流行るというのは、ナオさんの調子が良かったことの証明ですよね。
桐:「できたよ」って、3曲くらい一気に持ってくる時もあって。しかもクオリティも高くて、“好きだな”と思えるものが多かったんです。
コースケ:出てきたものがどれも濃いというか。そもそもナオの作り出す世界観で“heidi.”というバンドは始まっているので、“吐き出したくてしょうがないんだろうな”というのをすごく感じて。だから自分としては、送られてきた曲を聴いて“ベースはどうアプローチしようかな”ということだけを考えていました。
●自然とナオさんの曲をやるという形になっていった。
義彦:送られてきた曲を聴いた時に、“10年経ってもまだこんな新しい曲を作ってくるんだな!”っていう印象がすごくあって。歌に関しても“こんなフレーズは歌ったことがないな”と思えるのが楽しくて、すごく新鮮でした。もちろん昔ながらのheidi.らしい曲もありつつ、新しい感じの曲も持ってきてくれたので、何の文句もなく「歌わせて下さい」という感じでしたね。
●実際、ナオさんの中からは曲が溢れ出してくる感じだったんでしょうか?
ナオ:曲って何も考えなければ、意外と勝手に出てくるものなんですよ。前作の『ヒューマン』は“これぞアルバムというものでしょ!”っていう感じで、すごく考えて作った作品だったんですよ。でも今回はそういうものにしたくないなと思っていて。もっと自然に出てくるものをそのままに、特にバランスも取らないでおこうと思っていたんです。
●自分の中から湧き出てくるものをそのまま出した。
ナオ:『ヒューマン』が広く聴けるアルバムだとしたら、今回はもっと狭く深くというか、“heidi.”というバンドの純度が詰まったアルバムにしたいなというのは漠然と思っていて。そのためにはコンポーザーである俺があれこれ考えずに作った曲を詰め込んだほうが、その考えに沿ったものができるんじゃないかと思ったんです。もちろん自分の中で“これをやろう/これはダメだな”という選別はしていたんですけど、基本的には素直にできた曲をそのまま詰め込んだ形になりましたね。
●それでも良いものになるという実感があったからこそかなと。
コースケ:今回は選曲会どころか、“どういう作品にしていくか?”という話し合いすらしていないんです。もしそれをやっていたらまた別のものになっていたかもしれないので、やらなくて良かったなと。今の状態だからこそ作れたアルバムなんじゃないかなと思います。今回の曲はメンバーとしてやっていても単純に気持ち良いし、実際に「この曲カッコ良いね」ってナオに言ったりもしたんですよ。それを言えるというのが良いなと思いますね。
●本当に自分たちが良いと思ったものをやれているというか。
コースケ:その結果として狭くはなっているかもしれないけど、色んな面で“heidi.”感は凝縮されている感じがしましたね。
桐:今回のアルバムを母親に聴いてもらったら「1枚目の頃の雰囲気に似ているね」って言われたんですよ。最初の頃って衝動的というか、みんなも勢いで作っているところがあったので、そういう意味では深く考えてやっていたわけではないと思うんです。“どんどん良い曲を作っていこう”っていうだけだったけど、それが“heidi.らしい”っていうことだったりするのかなと思っていて。狙ったわけじゃなく、良い意味で初期の空気感が出ているというのは面白いなと思いました。
●初期衝動感みたいなものが曲に出ている?
ナオ:初期衝動みたいなものも、確かに詰まっていると思います。だから初めて聴く人にも、そういう勢いが伝わるアルバムになっているんじゃないかな。
●今回はサウンド的に激しめの曲が多いように感じたんですが、それは衝動的な部分からきているんでしょうか?
ナオ:それはどうなんでしょうね? “激しい/激しくない”の定義って、人によって違うじゃないですか。たとえば俺だったらM-1「テディベア「ハニー」」やM-11「烙印」が激しい部類に入るんです。テンポが速いから激しいっていう感覚は、俺には全くなくて。内側からの激しさみたいなものが出ている曲を“激しい”と俺は捉えているから。
コースケ:確かに今作のトータルな印象として、“内で燃えている”みたいな感覚があって。そういった意味で、“ヘヴィ”な印象があるんです。初期の頃もそういう印象だったので、燃え方が近いのかなと。
●内面的なヘヴィさがある。
コースケ:そこが強いですね。感情に問いかけるようなヘヴィさというか。heidi.独特の“この感じ”を上手く言葉では表わせないんですけど、そういうものが詰まっているんじゃないかなと思います。
ナオ:そういうものが、自分が今やりたいことなのかなって。デモを作っている段階では何となくの想像しかできない部分もあったんですけど、今回はどの曲もメンバーと合わせてみた時に想像以上のものになっていたので良かったなと。
●バンドで合わせた時に、自分の想像を超えるものになっていた。
ナオ:そうですね。それが俺の中では一番良かったところだなと思っています。
「“heidi.ってカッコ良い!”と自分でも思えるんですよ。すごくカッコ良いアーティストにハマった時みたいな感覚を自分たちでも感じられているから、本当に今はワクワクしています」
●今作では半分近くの歌詞を義彦さんが手がけているというのも大きな変化かなと思ったんですが。
ナオ:そうですね。でも歌詞に関しては、ここ2〜3年くらいずっと義彦に任せていたんですよ。
●えっ、そうなんですか?
ナオ:『ヒューマン』以降に作っていた曲では、義彦が大体の歌詞を書いていたんです。今回のアルバムでは久しぶりに自分でも歌詞を書いてみようかなと思ったので、どちらかというと俺のほうが多くなったのかなという印象があって。
●リリースがなかった期間に作った曲では、義彦さんが歌詞をメインで担当していたんですね。
ナオ:俺が作った時点で“この曲は義彦に歌詞を書いて欲しいな”というものがあって。“今までなら完全に俺が歌詞を書いているような曲だけど、それだといつもと一緒だから義彦にちょっと任せてみようかな”というものもあったんです。それくらい最近の義彦は、良い歌詞を書くんですよ(笑)。
義彦:ありがとうございます(笑)。
●義彦さんの作詞能力も進化している?
ナオ:M-6「朧」は、最初に公式サイトでアルバムの収録曲を発表した時点では違うタイトルだったんです。義彦が自分から「書き直したい」と言ってきたんですけど、“何、その歌詞に対するほとばしる情熱は?”って思いましたね(笑)。
桐:元々はまるっきり違う歌詞だったんです。
義彦:ハッピーエンドから失恋になりましたからね(笑)。
●真逆の内容になったんだ(笑)。
桐:最初にデモを聴いた段階から歌詞の制作を進めていて、“よし、これでいこう”とはなっていたんです。でも本番で歌ってみたら義彦が「合わない」と言って、そこからモヤモヤし始めて…。ナオから「デモより良いものに仕上がった」とは聞いていたんですけどね。
義彦:本番で歌ってみて、“これはハマらないな”と思ったんです。今まではそういうことがなかったんですよ。歌詞を書き直したことで歌録りの時間も短くなったんですけど、それでも変えたいなと思って。結果として、本当に思い入れのある曲になりました。
ナオ:それくらい自由に自分が書きたいことを書いてもらえれば、そこが俺の歌詞と義彦の歌詞との個性の違いになっていくと思うんです。変に気取らず、変えたかったら変えれば良いし、それで満足できるんだったらそのほうが良いから。結果として良い方向に行ったと感じているし、今回のアルバムに関してはお互いの個性がきちんと振り分けられているんじゃないかなと思います。
●2つの個性があることで、バンドの表現にも広がりが出るのでは?
桐:カラーが違うことで違う面が生まれて、外から見た時にも広がりを感じられるのが良いなと。最初の歌詞も悪いとは思っていなかったんですけど、「朧」は本当に良くなったなと思うんです。それだけの情熱を持って義彦が歌詞を書いてきたんだなというのをすごく感じました。
義彦:自分でも良い歌詞が書けたなと思います。全然後悔しないものが書けたので、ちゃんと形に残せて良かったですね。昔からナオの書く歌詞はすごく感情を込めて歌えるので、そういうものが書きたいなと思って自分でも作り始めて。やっと自分の歌詞でも、気持ちを込められるようになったんです。長くやっていないとこういうことは感じられないなと思うし、そこからの今作だったので本当に満足して歌うことができました。
●前作からの2年半の間に義彦さんが歌詞を担当するという試みをしてきた成果が、今作で結実しているのかなと。
ナオ:それは絶対にあると思いますね。その間にも曲は作っていたし、ライブでも披露していたから。ライブでやっていたことによって、その後のアルバム制作に臨みやすかったというのもあって。リリースがなかった期間に関しても、無駄なことはしていないなと思います。
●ちなみに今作の中で、既にライブでやっていた曲とは?
ナオ:先行シングルとして11月にリリースしたM-3「サクラアンダーグラウンド」に、M-4「アッシュ」とM-8「狂騒アルティメット」、3月に会場限定でリリースしたM-10「虹色レイン」も含めて、半分近くはやっていますね。
●ライブで磨き上げてきたものを作品として形にしたという感じでしょうか?
ナオ:そうですね。だから“録音したらこういう感じになるんだ”というのが面白かったりしました。ライブでイメージができあがっている曲もあったので、そこはちょっと大変でしたけどね。でも元々heidi.は音源とライブは別ということで割り切っているバンドなので、せっかく音源を聴いてもらうならライブとはちょっと違う感じで聴いて欲しいなというので変えた部分がある曲も結構あります。
●アルバムのリリースが決まってから書き下ろした曲もあるんですよね?
ナオ:10周年イヤーのうちにオリジナルフルアルバムを出したいなとは思っていたので、“それに向けて曲を作らなきゃな”とは漠然と思っていて。6/3に赤坂BLITZを終えてからベストアルバムを出してツアーをやっていたんですけど、その間にレコーディングは始めていたんです。元々やっていた曲からどんどん録り始めていって、新しい曲ができたらプリプロをしてという感じで…。
●スケジュール的には詰まっている中での作業だったんですね。
ナオ:ライブ活動と並行しながらのレコーディングだったので、11月までやっていて。12月のリリースを発表したものの、“本当に間に合うのか?”って思っていました(笑)。結果的には間に合って良かったなと。
●曲作りで煮詰まったりはしなかった?
ナオ:そうですね。自分の中で“これはメンバーの反応がどうかな…?”と思った曲もあったんですけど、そういう曲が意外とすんなりOKをもらえたので良かったですね。
●ちなみにその曲とは?
ナオ:M-9「レトロエレクトロ」ですね。
桐:あ〜、なるほどね。でも僕としては“最高!”っていう感じでした。“新しいものに挑戦してきたな”と思ったし、単純に良いなっていう。
コースケ:自分も「レトロエレクトロ」は、真っ先に気に入りましたね。聴いた瞬間に、“ベースはどうしようか?”と考えていました。
●メンバーにはすんなり受け入れられたんですね。
ナオ:俺自身は元々こういう音楽が好きなんですよ。でもそういうアプローチをあまりしたことがなかったし、あえてheidi.でやることでもないかなと思っていたんです。そういう意味で迷ったというだけで、曲としては良いものができたなと思っていました。今までやってきたストレートなロックとはまたちょっと違った感じのアプローチをやってみるのも面白いのかなというところで、アルバムの中でちょっとしたポイントになる曲かなと思っていたんですよ。
コースケ:すごく濃い曲を持ってきた中でも、新しいことをやろうとしているのが伝わってきて自分のモチベーションも上がりましたね。もし誰かが却下するようなら、それを止めようと思うくらいでした。
義彦:新しいライブの見せ方ができる曲かなと思いましたね。メロディも新しいし、今までに歌ったことのない感じもあって、第一印象からすごく良かったです。“こういう歌も歌えるんだ!”と思って、新鮮な気持ちになりました。
●演奏する側の自分たちとしてもワクワクする曲だった。
桐:まさにそうですね。これを聴いたファンの人からの反応もすごく楽しみだし、ライブでどう反応してくれるかも楽しみです。
●アルバムの1曲目を飾る「テディベア「ハニー」」も、“これからどんな展開を見せるんだろう?”とワクワクさせてくれる曲かなと思ったんですが。
ナオ:結成して最初のライブでその日だけの会場限定シングル(※『夕焼けと子供/マリア』)を出したんですけど、そのジャケットにクマのぬいぐるみのシルエットを載せていて。この曲ができて歌詞を考えている時に、“あいつの歌を書こう”と思ったんです。このタイミングで出すアルバムの1曲目に何かしら意味を持たせたいなというのもあったので、そういう歌詞を書いてみようかなと。
●一番最初に出した作品とつながっていたんですね。
ナオ:伏線じゃないですけど、“実はあいつはそういう名前だったんだよ”みたいな感じにしたくて。そうなった時に“テディベア”とタイトルにつけないと、聴いた人は何の話かわからないなと思ったのでこういう曲名になったんです。だから“テディベア”の部分は、実際には読まないんですよ。
●曲名の読み方としては「ハニー」だけだと。
ナオ:単に「ハニー」だけだと、はちみつの歌だと思われても嫌だなと(笑)。どうやったら伝わるのかなというところで、そこはすごく考えました。こうやって取材の機会がないとそういうことも伝えられないので、良い機会になりましたね。
●確かに今日のインタビューを聴いてからだと、“心に秘めた思いを吐き出せ”という歌詞もナオさんの内面で燃えたぎるものを曲に出しているというところにつながっているのかなと思います。
ナオ:そうですね。この曲の歌詞はあくまでも物語であってリアルではないんですけど、ところどころに自分たちを代弁しているような言葉も入れたかったんです。そのあたりは感じてもらえるんじゃないかなと思うし、聴いてくれた人の反応が楽しみですね。
●逆に、アルバムを締め括る「烙印」にも何か秘めた想いがあるんでしょうか?
ナオ:「烙印」に関しては、歌詞先行でまず“こういう曲をやりたい”というのが決まっていて。歌詞の内容的には“足跡を残す”というか、“それをずっと背負っていくんだよ”ということが言いたかったんです。
●だから最後の歌詞は、“爛れたこの烙印と共に痛みと未来の枷を背負って”となっているんですね。ちゃんと未来に向かっているというか。
ナオ:“そこだけで終わらせないよ”っていう。さっきの『アルファ』の話じゃないですけど、それがあったから今があるんだろうし、ずっと背負い続けていくものなんですよ。
●今作を作り終えたことで見えたものもあるのでは?
コースケ:俺は単純に気持ち良かったというか、今作の曲をみんなで合わせている時に“バンドって楽しいな”って思えたんですよ。やっぱりバンドが好きなんだなっていう。大抵は、続けていく中でだんだん嫌になったりするじゃないですか。でも今作を作っていて“バンドって良いな”と思えたので、俺はそれだけで十分です。
●バンドを始めた頃の、原点の気持ちに戻れたんでしょうね。
コースケ:それこそお金を払っても感じられないものというか。あとはこれを世に出して、聴いてもらった人がどう思ってくれるのかなっていうだけで。少しでも評価してもらえたら嬉しいし、こちら側としては後悔は全くないです。
●作品を作り終えて、満足感や喜びを感じられている。
義彦:自分としてはheidi.というバンドで15年、20年とずっとやっていきたいなと思っているんです。その中でこうやって自信のあるアルバムができて、1月からまたワンマンツアーをやれるということが嬉しくて。バンドってやっぱりライブだと思っているので、このアルバムを持ってツアーを回れるのが一番嬉しいですね。
桐:本当に自信作ができたと思うし、ジャケットや作品の雰囲気に自分の中にあるキッズ心をくすぐられるというか。“heidi.ってカッコ良い!”と自分でも思えるんですよ。それをファンの人にも感じてもらえるだろうという確信があって。すごくカッコ良いアーティストにハマった時みたいな感覚を自分たちでも感じられているから、本当に今はワクワクしています。
Interview:IMAI
Assistant:森下恭子
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