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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第23回

最近、私の周りでグローバル、かつボーダーレスな活動展開をするバンドやアーティストが増えている気がします。今回ご紹介する「砂漠、爆発sabaku∞bakuhatsu」というサイケ・トランス・サイバーロックバンドも、今まさにそういう流れに乗ったグループです。毎年海外遠征を行うだけでなく、月イチペースで海外からのツアーバンドを招き、企画を組んだりと着実にワールドワイドなコミュニケーションを増やし続けています。11月には新譜をTシャツでリリース?という変わった取り組みも。興味のある方は彼らのホームページをチェックしてみてください。
http://www.sabakubakuhatsu.com

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ギター録りに突入した大学生バンド。セルフRECも3回目になり、録りのスケジュール決めも迷わず出来るようになってきた。

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ギターアンプはマーシャルJCM900、MESA Boogie TripleRecti、ローランドJC120。バッキングギター用にはテレキャスを使用、アンプはMESAで歪みチャンネルを作る。チューナーを間に挟むと音が細くなるので、アンプのチューナーアウトに接続し、いつでもチューニングが出来る体制をとった。

【4つ打ちダンスロック:BPM=170:F→Dm7→Gm7→C7sus4:同期は16ビートアルペジオのシーケンスフレーズ、ストリングス、シンセブラス、の3パート】
どの曲でもベーシック録りの時に仮ギターを2本(リード、バッキング)録っているので、今回のバッキング録りの際には仮バッキングをミュートしてモニターする。使用するマイクは3本。SHUREのSM57、Beta52、DPA4091を近づけてセッティング、いわゆる「オンマイク」である。この曲に関しては、同期が3パートあるのでアンプ裏からラインでも録音する。

mic1 mic2

ディーゼルやMESAのようなハイゲインアンプに対してオンマイクだけで録ろうとすると、音がファットになりすぎて同期フレーズをなじみにくくなることもある。
そこで「ラインをアンプ裏から取り、DIなどを挟んで別トラックに録る」と、MIXの時に同期との混ざり具合が良くなりツブシが利きやすい。

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オンマイクの手法だが、マイク1本だけだと低音がスカスカになりやすい傾向がある。そこで低音用、中低音域用の2本を追加して、マイク3本でフルレンジで録るのが重要なポイントとなる。さらにオフマイクが必要な時は、4本目としてコンデンザーマイクを使用してみるのも良い。

今回使用するキャビネットには4つのスピーカーが搭載されており、耳を近くに寄せてじっくり聴いてみると、それぞれのスピーカーに音のバラツキが多いことに気づく。4つの中でも一番鳴りの良いスピーカーの、中心より少し下を狙ってセッティングするのがおすすめ。

また、オンマイク3本とライン1系統は、全部バラのトラックに独立させてRECしておくと、MIXとの時にEQに頼らなくても4つのトラックのブレンド量が変えられるので、ある程度の対応が出来る。アンプの下には吸音用にタオルやカーペットを敷いておくと、タイトでクリアな音を狙える。

試し録音用のモニターバランスは下図のとおり、少しずつ調整・変更しながら進める予定。

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出音と録り音のギャップがどれだけ埋められるか、気になる所である。


今月のちょいレア TL AUDIO【 DUAL PENTODE PRE-AMP】
中低音域から中音域にかけての音の粘り気と密度感がピカイチのマイクプリアンプ。Vo.はもちろん、真空管ギターアンプで歪みサウンドを録るのにも突出している。アナログライクな音作りにおいて、この機材より右に出るものはないように思える。

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今月のMV 川嶋志乃舞「City Shake」
東京藝大在学、4度の三味線日本一などの経歴を持つ川嶋志乃舞のMV。シティーポップと日本の伝統楽器三味線とが高次元で融合する心地よい一曲。本年11月3日にさいたまスーパーアリーナで開催された「ニコニコ超パーティー2016」で小林幸子のバックとして出演など、活躍の幅はますます広がっている。

 

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

YU-DAI 「Doo 4 Real」
yu-dai
HIPHOP界の今後10年を示唆するインテリジェンス溢れる入魂作。豪華なゲスト陣、ルーツミュージックの押さえ方も素晴らしい。ニュ-ヨークのアンダーグラウンドシーンを90年代のフィルターを通し多方面においてブラッシュアップさせているのが特徴。2016年12月全国発売。

 

どろだるま「どろだるま」
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頭脳警察、村八分、初期のRCサクセション、70年代のローリングストーンズ、などを彷彿させる新進気鋭のロックバンド1stフルアルバム。硬派な体質の中に感じられる少し甘めのメランコリックな声質が好印象、ビジュアル面の存在感も圧倒的。2016年11月全国発売。

 

GLOWS「WAYS/HURT」
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仙台出身の5人組バンド、80年~90年代のビートロックを基調としたメロディアスな両A面シングル。KYOSUKEの声質や歌い回し、バンド全員でのステージングなど見せ場も多く、今後の活躍がますます期待できる。

 

バツクレ!!「バツクレ」
batsukure
一聴して誰もが魅かれるのは、歌の上手さと渋さと密度のある声質だろう。曲のアレンジ力やバリエーションも手伝って、アルバム全体がバランスよくデコレーションされている。典型的になりがちなJ-POPを、カラフルに彩る才能は見事としか言いようがない。

 

Gypsy of MAria「CLASSIC」
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70年代ロック、フォーク、パンク、R&Rと90年代ガレージロックをベースに、2010年代の要素をも加味されたニューオールドスクールロックバンドの新作。少々ハスキーなVo.の声質は一度聴いたら忘れられない。ワイルドさの中にも繊細さが感じられる処に味がある作品。

 

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