前回来てもらった後、1人で3回行ってきたんですよ。前に来てもらった場所とは違う場所にも足を伸ばして。
まずは新川の現状を知ろうと思って、ゴミを拾いながらいろいろ見てきたんです。今日はその話を聞いてもらおうと思って。
ゴミを拾うにあたって実際に必要なものはなんだったのか。まずはこれ。
いや、1回ゴミ拾いに行って気づいたんです。まさに“これは俺が思っていたより根が深いな”と。
遊歩道はありますけど、川際は土だったじゃないですか。あの土はずっと前からあって、そこに草が生えていると思っていたんだけど、違ったんです。草が根付いているところにゴミが埋まっていたんですよ。
ということは、あの草が生えていたところは年々堆積してきた土砂やゴミでできているということ?
そうです。そこに草が自生しているという。あれはね、もうびっくりした。
新川が増水したときって、遊歩道の手前くらいまでは浸水しちゃうんですよ。そういうときに全部上がってきたゴミだと思うんですよね。
もともとは川底に沈んでいたものもあったと思うんですよね。要するに20〜30年前のゴミがめっちゃ埋まってるんです。日比谷野外音楽堂ワンマンの前日も行ったんですけど、こういうプルタブとかが出てきて。
うわ! プルタブってかなり昔ですよね(※日本では1983年までプルタブ式だった)。
水道の蛇口とか、小麦粉の袋とかも出てきたんです。3回行っただけで、とにかく時間をかけないと新川は綺麗にならないってことがわかった。
あのね、なんでこの水道の蛇口を見つけたかというと、最初に行ってもらったときにゴミが固まっていた場所があったじゃないですか。
まず1回目のゴミ拾いに行ったとき、そこの周りに生えていた草が抜かれていて、固まっていたゴミの量が増えてたんですよ。“あれ? なんだこれ?”と思ったんですけど、まずはその辺を綺麗にしようと思ってゴミを拾っていたんですけど、水道の蛇口とか空き缶とかプラスチックとか、ちょこちょこ土から顔を出しているんですよね。
それを引っこ抜くんだけど、次から次へと出てきて、“これはもうキリがないや”と思って、その日はとりあえず自分が拾ったゴミを持って帰ったんです。
そして次に行ったとき、固まっていたゴミが減っていたんですよ。要するに…未だ見ぬ仲間が居る(笑)。
あ、なるほど。あのたくさんのゴミは、誰かが拾ったものを集めて1箇所に固めていたんですね。
うん。やってみてよくわかったんだけど、1個1個ゴミ袋に入れていってたら、後から分別できないくらいの量になっちゃうんです。まずは燃えるゴミだけ袋に入れて持って帰って、燃えないようなゴミは1箇所にまとめておいて、後から処理しようということだと思う。
だから俺は完璧に後乗りだった(笑)。実際に会ったわけじゃないけど、でもゴミを拾っているとその人がどうやって新川を綺麗にしているかが見えてきて。
その人に教えてもらったところがあって、草を抜いてその周辺や土に埋まっているものを綺麗にしていかないと、根本的には綺麗にならないんです。目に見えないところにゴミがたくさんあった。
ということは、何十年もゴミが堆積しまくっているということなんでしょうね。
3回ゴミを拾いに行って、いちばんびっくりしたゴミはなんですか?
すごいな…。拓さんの記憶では、昔よりも新川は綺麗になっているんですか?
うーん、少しは綺麗になっているとは思うんですけどね。でも逆に隠れてしまっている部分もたくさんあるんだろうなと。草をかき分けて入っていくとヘドロが溜まっている場所もあったし、そのヘドロの中にゴミがたくさんあったりして。
うん。しばらくは俺1人でゴミを拾い続けようと思ってるけど、1人でやるには限界があるだろうというところも見えてきた。少し掘っただけで割れた瓶の欠片とか、とにかくいろんなゴミがいっぱい出てくるんですよ。ヤバいよね。
「土に還らないもの」って言いますけど、本当に土に還らないんだって。例えばポイ捨てとかタバコのマナーとか、ここ最近はかなりその辺のマナーやモラルが良くなってきましたけど、数年前まではそういう考え方も浸透していなかったじゃないですか。子供の頃なんて何も考えずにゴミをポイ捨てしたりして。その罪の重さったらないよね。
言われてみればそうかも。昔の方が、そういう部分のモラルは低かったですよね。
それが時代とともに高まってきて、俺たちも少しずつ変わってきたけど、やっぱりまだ残っているところがあるんでしょうね。だって「これさっき鼻をかんだんじゃね?」と思うようなティッシュが河原に落ちてるんだもん。
あの新川はサイクリングをしたり、自然を楽しんだりするような場所として地元の人たちに愛されていますけど、その楽しんでいる人たちの誰かがティッシュを捨ててるわけじゃないですか。だから“ゴミを捨ててはいけない”ということと“新川が綺麗であってほしい”ということがイコールじゃないんですよね。繋がってない。
そういうことか〜。我々は無意識的に取り返しがつかないことをしてきたんですね。ティッシュしかり、ガラスとかプラスチックとかビニールとか。
そうそう。やっぱり水が淀んでいるところにはペットボトルが溜まっているし。だから難しいよね。ゴミは出ちゃうし、捨てちゃうし。俺、考えたんだけどさ、ゴミを生まないようにするっていうことがいちばん難しいじゃん。ペットボトルの飲料とかガンガン飲むし、ペットボトルはリサイクルされるものだからまだいいけど、産業廃棄物とかだけじゃなくて、自然に還せないようなものが生活の中に溢れ返っていて、俺たちはそういう日常を送っているっていう。そういうことを、ゴミを拾いながら思った。
人間の文明は、自然という視点から見ればすごく歪な進化をしていると。
すごくスケールの大きな話ですけどね。でもゴミを生まない生活ができるか? っていうと、きっとできないんだよね。俺もそういう生活をしたくないし。だから“ゴミを生まない”ということをどこまでできるか? をリアルに考えなくちゃいけないっていうことと、新川を自然に戻していくための繋がりを作っていくことが今の僕には必要ですね。
ボランティアの人たちに会いに行ったりもできるだろうけど、新川に通っていれば自然に繋がっていくだろうなと思っているんです。
うん。行けばいくほどいろんなものが見えてくるだろうから、たくさん見つけて、人を集められるような活動をしていけばいいかなと思っていて。
あとね、新川周辺の歴史とかも勉強したいなと思っていて。新川周辺…いわゆる印旛沼水系って水田がめっちゃあるんですよ。畑もめっちゃあるし。ということは、新川の水で米が育っている可能性もあるわけで。
でも川が汚染されたら米も汚染されるじゃないですか。そういうことをちゃんと勉強したいなと思って。
おそらく図書館とかに行けば八千代市の歴史や変遷とかがわかるでしょうね。
それと国土地理院のHPで、年代別の航空写真を無料で閲覧できるんですよ。そういうのを年代別に見ていってもいいかもしれませんね。
いいですね。あとね、俺知らなかったんだけど、八千代市には“ボランティア袋”というものがあるんですよ。
ボランティアでゴミを拾う場合、有料のゴミ袋じゃなくてボランティア袋を使えば分別するだけで引き取ってもらえるんです。
八千代市のHPを見て知ったんです。八千代市の市役所にはクリーン推進課という部署があって、いろんなことをやっているらしいんです。そこにも電話したんだけど。
うん。そしたらわかったんだけど、新川の土手の管轄は八千代市じゃなかったんですよ。
土手もね、勝手に掘り返したら駄目じゃないかなと思って、八千代市のクリーン推進課に電話して訊いたんですよ。そしたら「いやいや、ウチじゃないんだよ」と言われて、千葉土木事務所に電話したんです。そしたら最初は「勝手なことされちゃ困る」みたいなテンションだったけど、ゴミを拾いたいっていう話をしたら「10〜20cm程度だったら川の流れは変わらないから大丈夫です」と。
まあまあ、向こうは個人かどうかもわからないですからね(苦笑)。というか、千葉県の管轄だったのか。
で、ボランティア袋は市役所とか支所に行って申請するともらえるんです。あと、粗大ゴミは市に電話すればいいんだって。“どうしようかな?”って悩んでたんだけど。
自転車とか落ちていましたけど、八千代市が処理してくれるんですか?
そうそう。クリーン推進課に電話して「どこどこに何があります」って伝えると、軽トラで回収しに来てくれるんです。
その軽トラで一時的な保管所に持って行ってくれて、後は市が処分してくれるんです。そういうところが、約1ヶ月活動してみてわかったことなんだよね。
うん。きっと各自治体あるんだと思うけど、人が動けば、物事が変わっていきそうな感じはありました。
うん。まずはゴミを拾って行きつつ、いろんなものを見つけて、いろんな人と出会って、少しずつ活動を拡げていければいいかなと思います。
最初に行ったのは休みの日だったんだけど、バーベキューしていたり、遊びに来ている家族連れが居たり、ビールを飲みながらくつろいでるおっさんも居たり。そういう中で誰もしていないことをするのは勇気が要るっていうか。例えそれが、自分が決めたことであっても。
始めちゃえば全然大したことないんだけどね。2回目も、新川に行って「じゃあ拾うか」って1人でゴミを拾い始めて。今自分がやっていることは正しいことなのかもしれないけど、でもただやりたくてやっている…その感じが、すごく成長させてくれる気がする。
何かを作り出しているわけじゃないけど、自分の意志で行動を起こして、やればやるほどいろんなものが見えてくる感じがあるんです。だからおもしろい。俺は夢を見始めたんですけど、あの河原の土手のゴミを全部綺麗にすることが1つの目標になりましたね。
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Nothing’s Carved In Stone Vo./G.村松拓 連載:たっきゅんの…………(タイトル未定)トップページへ戻る