音楽メディア・フリーマガジン

オワリカラ短期連載

ステージで個性を芽吹かせる異形の舞踏家ベーシスト・ツダフミヒコ

PERSONAL INTERVIEW…ツダフミヒコ

●ツダさんが音楽を始めたきっかけは何なんですか?

ツダ:音楽にはあまり興味はなかったんですよ。中高とソフトテニスをやっていたんですけど、どっちもキャプテンで、一生懸命がんばって大会で優勝したりして。昔から何でも"やったるぞ!"みたいな負けん気が強かったんです。人が好まないことを進んでやったり、人と同じことがイヤやと思ったり。

●はい。

ツダ:それまでは聴いていたのはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTみたいな、テレビでも流れてくるんやけど尖っているような音楽が好きで聴いてて。で、1年浪人して東京の大学に入ったんですけど、サークルの勧誘で音楽に出会ったんですよね。で、楽器できひんかったらヴォーカルやろうと思ってバンドを組んだんです。その辺りから音楽にのめり込んでいって。

●なるほど。

ツダ:そのバンドは3年になって就職活動とかで解散したんですけど、同じサークルの他の人とまたバンドを始めて。ヴォーカルとギターがいたので「じゃあ俺ベースやるわ」って。

●あ、そこでベースになったんですね。

ツダ:その頃には音楽もいっぱい聴いてたしライブとかもいっぱい観に行ってて、音楽を血と肉にしていたんですよ。で、他のバンドのベーシストとか見て"全然知らんけど俺やったらおもろいことできる"って思っちゃったんですよね。"ベースっておもんない奴ばかりやな"って。それで就職活動の時期にベースを持つようになって、一生懸命ベースの勉強して。周りからは「お前なんでいきなりベースやり始めてんねん」って言われたんですけど、その時点では"音楽やる!"ってなってたんです。子供の頃からの反骨精神みたいな感じで、やるならとことんやって納得させたいし、人ができないこともやりたいし。

●なるほど。

ツダ:それと、僕は夢中になったらハマり込むんです。高校の頃はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTにハマるとそれしかダメみたいな感じになってて。裏声ダメ、女性ヴォーカルダメとか、限られたものになっちゃうんです。でもそういうものを崩されたのが、大学のころに出会ったビートルズとかドアーズで。ガチガチの体育会系のノリのままバンドを始めたんですけど、ビートルズに出会って、ものすごい感動したんです。なんてかっこいいんだろう! って。あんなに太陽の光を浴びてた奴がずっと部屋にこもって『ホワイト・アルバム』を1ヶ月くらい聴いてたんです。それから何でも聴けるようになったんです。

●ちなみに就職活動はしたんですか?

ツダ:いや。そのときにはもう"音楽やる!"となっていたので就職活動はしませんでした。そのままの流れで今に至ります。

●ツダさんにとって音楽の魅力って何なんですか?

ツダ:魅力? ……何でしょうね。普通の質問に思えるけど…でも何やろ? 今までそこを考えたことがなかったんかな…。目に見えへんけど、なんかいちばん生命の表現に近いからかな? それに魅力を感じてるんかな? …いや、なんか違うな…魅力…魅力…。

~ 10分経過 ~

ツダ:…さっきビートルズの話をしましたけど、感謝なのかもしれないです。こんなに感動させてもらったし、俺もこんな音楽を作りたいって。…あ、でもなんかちがうな…魅力ではないですね。

~ 更に10分経過 ~

ツダ:考えてえへんかったな。こんなに音楽をやってるのになんでパッと考えられへんのやろ? …魅力…。

~ 更に30分経過 ~

ツダ:…すべての考え方が音楽的なのかな? 小さくて狭かった好奇心が、音楽と出会うことによってその好奇心が一気に世界や宇宙の範囲にまで広がったからかな…うーん…。

~ 更に30分経過 ~

ツダ:僕は一度、"死んでやる!"って思うくらい気分が落ちたことがあったんですよ。挫折っていうか。

●あ、そうなんですね。

ツダ:同棲していた彼女と毎日朝まで喧嘩ばかりしてて、頭がパンクしそうになったんです。結局彼女が出て行ったんですけど、そのときに"もういいや"っていう心境になって。"音楽しかない!"っていうわけじゃないやけど、更にどっぷり音楽に入るようになって…。でもそれは魅力の説明になってないな …。
~ 更に30分経過 ~

ツダ:あ、これかもしれない。

●はい。

ツダ:さっきビートルズの話をしましたけど、ビートルズってヤバいっていうか、すべてを包んでいるようで優しくて厳しくて、混沌としているけどポップで思想も詰まってて、アートで、日常的にも聴けて、差別的じゃなくて…すべてが詰まっている感じがするんです。あのでっかい塊に衝撃を受けて、自分もそういうものを作り出すことに夢中になっているというか。あれを僕も現在の自分の生活を通して、自分の体験を通して体現したいっていうことだと思います。自分でも意識していないうちに人生を賭けていたのかもしれないです。

Interview:Takeshi.Yamanaka

PERSONAL LIVE REPORT…ツダフミヒコ
※これはツダフミヒコだけに限定して書かれたライブレポートである

2011/7/06(水)下北沢SHELTER よしむらひらく 1st mini album『はじめなかおわり』レコ発イベント

ツダはライブ開始直後にDr.カワノの方を向いて右腕をグルグル回した。まるでエンジンをかけるかのように。
ツダの動きはよくわからない。ロックバンドの人たちがステージで取るような動きはひとつもない。それはコンテンポラリーダンスとイメージが重なる。意味はわからないが、その動きひとつひとつには意味があることはわかる。
「ベイビーグッドラック」が始まり、ドラムに合わせて首を前後させるツダは無表情で泣いているように見えた。ベースラインがポイントになっている新曲では無表情のまま恍惚に浸っていた。
ツダは終止無表情だが、じっくり彼を見ていると、身体全体の動きや手に持つベースのネックの角度でなんとなく彼のテンションや感情が掴めて来るような気がした。吉田ヒロのギャグ「まゆげボーン!」のような仕草も、たまにやる三点倒立も、すべて彼の自己表現なのだ。
ライブがすべて終わり、ツダは無表情のままステージから消えた。

Text:Takeshi.Yamanaka

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj