常にシーンの一歩先を駆け続けるラウドロックの雄・SiM。昨年、野外フェス“DEAD POP FESTiVAL”と武道館ワンマンを成功させた4人が、約2年ぶりとなる4枚目のフルアルバムを完成させた。作品を発表するごとに、我々を嘲笑うかの如く新しい進化を遂げてきた彼らの最新アルバムは、1年以上前から思い描いてきた“未来”を具現化させた楽曲が詰まっている。一聴しただけで聴き手を未踏の世界へと引き込むSiMの新しいスタンダード『THE BEAUTiFUL PEOPLE』は、歴史と我々の記憶に深く刻まれることだろう。
●coldrainとHEY-SMITHという盟友との“TRIPLE AXE TOUR'16”はどうでしたか?
SHOW-HATE:簡単に言っちゃえば、めっちゃ刺激になりましたね。「今後どうするの?」みたいな話もできたんです。「自分たちとしては最近こう思っているんだよね」というのも真面目にいつも話せるから、すごくお互いを確認できたし、“これからこういう風に成長していくのかな”というのも見えたし。すごくよかったですね。ライブに関しても「お前らはここがああだった」と突っ込んで言える仲なんですよ。ライブは4箇所だったけど、短期間ですごく考えてライブができた。みんな最終的には超よくなっていましたね。
●きっと3バンドにとって、初心を取り戻せる場なんでしょうね。
SIN:うん、めっちゃ楽しかったですね。何回もあいつらのライブを観ているはずなのに、毎回めっちゃ刺激をもらうし、どんどんかっこよくなっていくし。“このままじゃヤバいな”みたいに、脅かされますね。そういうバンドってなかなか居ないけど、あの2バンドはそういう存在です。
●coldrainは海外でタフな経験を積んできたし、HEY-SMITHは新しい体制になってより一体感と人間味が増していますもんね。
SIN:増してました。めちゃくちゃ強くなっていた。
GODRi:僕はあまり真剣な話をした記憶はないんですけど、その代わりに毎回ふざけまくって、全く内容のないことばかり話していました(笑)。それは内容のない時間ではないんですけど、それによって結果的に高め合えた。すごく楽しかったですね。
MAH:普通に活動していると、メンバー内の話で完結してしまうんですよ。例えば1日目の大阪でcoldrainのセットリストが全然おもしろくなかったんです。だから打ち上げで、俺と猪狩(HEY-SMITH)でMasato(coldrain)に「全然ダメだったよ」と言って。「セットリストを変えろ」と。
●お。
MAH:そこでcoldrainのメンバーも呼んで「絶対に変えた方がいいよ」と。そしたら次の名古屋では変えてきて、それがめっちゃよくて。メンバー同士だと「ん〜」みたいになって流れちゃうことも、あの15人の中で言われると、結構素直に受け止められるというか。
●なるほど。
MAH:別のバンドだと「うんうん」で終わると思うんですけど、この3バンドの中で言われると「そうだよね」みたいな。全部知ってくれている仲間だから、全部を観た上で今必要なものをバッと言い合える。それがすごくいいと思うし、俺と猪狩とMasatoに関しても似ている部分はあるけど全然タイプが違うから、“そういう意見があるんだ”と納得できることもあるし、“それは違うでしょ”っていう部分も含めて全部話し合える。そういうところが、1バンドずつで動いているときとは全然違う刺激なんですよね。
●客観的な見方もしてくれるし、懐にも入り込んでくれる。
MAH:そうですね。プロ野球のキャンプみたいな感じ。1シーズンやってきてそれぞれ結果を出して、集まって1〜2週間でギュッと成長して、また1年やる、みたいな。
●いい関係ですね。ところで今回のアルバムですが、武道館ワンマンについてのインタビューをしたときに「次のアルバムはあまりフェス向きじゃないかもしれない」と言っていましたよね。
MAH:はい。
●それが今作を聴くとすごく腑に落ちるというか…前のインタビューのときに言っていたのは「2016年の活動フィールドを見据えて、その活動と連動したアルバムになるだろう」と。今までのルーツを捨てているわけでもなく、語弊がありますけど、今のSiMができる“ポップミュージック”のような作品だと思ってびっくりしたんです。それに、年明けにMAHくんがブログで書いていた言葉が今作にもそのまま当てはまると思ったんですよね。ブログには「日本語がダサいんじゃなくて、ダサい日本語がダサいんだ」と書いていましたよね。
MAH:はい、書いていました。
●今作を聴いて思ったのは、“ポップミュージックがダサいんじゃなくて、ダサいJ-POPがダサい”ということ。例えばNo Doubtのようなポップミュージックへのアプローチに近いというか。
MAH:アルバムは一昨年くらいからずっと作っていたんです。一昨年の末…2014年末くらいには、2015年に武道館をやることが決まっていたわけじゃないですか。
●あ、そうか。
MAH:だからその辺で“ライブの仕方じゃなくて曲だな”と思ったんです。武道館で説得力のあるライブをするにあたって必要なものは? と考えたとき、ライブの仕方もそうだけど、俺らは曲がライブハウス向けすぎるなっていうのがちょっとあって。
●ほう。なるほど。
MAH:全体的にテンポを落とすとか、聴かせる展開をちゃんと作るとか、そういうところから考えないといけないなと思いながらデモを作ったりしていて。レコーディングが始まってからも違う曲を作ったり、ちょっと歌のアレンジを変えたりをやっていたんですけど、その中で去年の6月にONE OK ROCKのツアーに出たんですよ。
●全員が「超刺激的だった」と言ってましたね。
MAH:あのときに改めて“やっぱり曲だな”と思って。“アリーナを鳴らす”ということを意識しないとダメだと。俺らの中での“アリーナを鳴らす”ということは、たぶんさっき言ってもらったポップ感だと思うんですけど、勢いで押し切るんじゃなくてしっかり一般層も聴けるくらいの…“俺もモッシュピットに行きたい!”って思うんじゃなくて、2階席で聴いていても気持ちいい音を作らなきゃいけないと思ったんです。
●そういうことか。
MAH:武道館にはリリースが間に合わないというのはわかっていたので、武道館はそのときにある曲でできることをしようっていうスタイルだったんです。でも横浜アリーナとか、今後アリーナツアーができたらいいなと思っているので、今回のアルバムはそこに向けてアレンジを意識したんです。
●その話は現段階だとすごく納得できるんですけど、1年以上前に“曲だ”と思っていたわけですよね。当時は“DEAD POP FESTiVAL”もあの規模でやる前だったし、武道館も当然やっていなくて。要するに曲だけじゃなくて、バンドの規模とかライブの規模を大きくしていくということも同時並行的に考えていたわけですよね。そこに対しての不安感はなかったんですか?
MAH:逆に言ったら、“このままでどこまで行けるか?”と考えたときに、変わんなきゃ無理だなという風に思っていたんです。ずっといつまでもZeppクラスで満足できるか? といったら、俺らはできないので。大きいところでやりたいというのはずっと思っていたし、思っていたけど“いつかな?”と漠然としていたものが、武道館が決まったことによって現実味を帯びてきて、“俺らが変わらなきゃ”と思ったんです。だから不安というよりは、そういう曲にチャレンジすることが楽しかったですね。
●今作を聴いて思ったのは、1枚のアルバム単位でのバラエティというより、過去に出したすべての作品を含めて俯瞰した上でのバラエティ感なんですよね。それがおもしろいし、SiMらしいなと。
MAH:そうですね。俺は常にそういう考え方なんです。“前はこういう曲が入っていたから、今度はこういう曲を書こう”という感じ。でも今までの活動を落ち着いて考えたら、それでもライブハウスに寄っていたなと思ったんですよね。もちろん俺たちの活動のフィールドはライブハウスだからよかったんですけど、これからそのフィールドを広げていくとなると、どうしてもミドルテンポとか、ちゃんと聴けるものが必要になってくるというか。テンションが上がるだけじゃなくて、“好き”と思えるような曲が必要だと。本当にさっき言ってもらったイメージそのままなんですけど、今までに無かったところを足していくっていう感じなんです。
●そういう意味では、重要なのはメロディなんですか?
MAH:メロディもあると思うんですけど、全体のアンサンブルやアレンジだと思うんですよね。
●ほう。
SHOW-HATE:引き算するところは引き算して、シンプルに聴かせるとか。ギターについてはどのフレーズをいちばん聴かせるようにするかとか、引き算をして印象を残すようにしたりとか。あと音色の部分でいうと、前の俺だったら新しい音色を入れることに結構抵抗があったんですよ。だけど今回はサウンドプロデューサーが付いてくれて、色々と提案してもらったりして。
●あ、そうなんですね。
SHOW-HATE:この作品ではそれをすごく自然に受け入れられたというか。そういう風にバンドが変わろうとしているから自分も自然に受け入れられたし、次のステップが見えたから安心してできたというか。
●なるほど。
SHOW-HATE:俺も少し前まで“バンドがこのままずっと平坦でいくんじゃないか?”と思っていて、“この先はあるのかな?”みたいに考えていたんです。でもそれが見えたらやることが明確になって、それをレコーディングでもすごく出せたから“変わったな”と自分でも思えたんです。頭のなかでモヤモヤしていたところを取っ払って次に進むことができたというか。
●曲作りの方法は今までと変わっていないんですか?
MAH:変わってないですね。でも例えば電子音とか打ち込みっぽいフレーズをあまり躊躇なく入れるようになったというか。例えばM-1「MAKE ME DEAD!」でAメロに入る前にある音も、今までだったら…。
●抵抗があった?
MAH:要は“ギターでもキーボードでもない音を誰が鳴らすのか?”という問題があるので、あまり入れないようにしていたんです。M-13「Life is Beautiful」も結構いろんな音が入っていたりして。
●ですよね。
MAH:今までは“バンドで鳴らす”というのを意識していたし、打ち込みのドラムに関してもGODRiは生で叩きたいだろうから、“打ち込みの方がいいと思うけど本人が「嫌だ」と言ったら辞めようかな”と考えていたんです。でも今回は割と考えずにできたものをポンと聴かせて、それぞれが受け入れてやってくれた。その辺が変わったかもしれないですね。だからよりポップに聴こえているのかもしれないです。
●抽象的な感想を言うと、僕はMTV世代なんですけど、今回のアルバムは全曲MVを作ってほしいという。
MAH:作りたい(笑)。
●演奏シーンのMVじゃなくて、ストーリーがちゃんとあって登場人物も居て、たまにバンドが演奏する、みたいなMVが全曲作れますよね。ストーリー性だったり奥行きだったり、もっというと感情とか…そういうのが歌だけじゃなくて、いろんなところから感じられるアルバム。
SIN:確かにベースラインを考えるときに“この曲は◯◯の感じでアレンジしようかな”っていうのがあって。
●イメージが具体的に浮かぶんですか?
SIN:そうそう。例えばM-2「NO FUTURE」だったらFoo Fightersみたいな感じのサビにしようとか、M-4「Abel and Cain」だったらUKロックな感じとか、そういうのをそれぞれイメージして作ったんです。あと音作りもサウンドプロデューサーの人に入ってもらってイチからやったので、曲毎に違うバンドみたいに聴こえるというか。
●そもそも、サウンドプロデューサーを入れるというアイディアはどこから?
SHOW-HATE:さっきの話に関連するんですけど、「ワンステップ上がりたい」という話になって、そうなったら音作りをもっとライト層にも届くようなものにしようということになって。
MAH:今まで自分たちの好みだけでやっていたので、凝り固まったいつもの音になっちゃっていたんですよね。エンジニアさんは『SEEDS OF HOPE』(2ndフルアルバム)から変わっていないんですけど、変わっていないからやっぱり変わらなくて。表現したいことはもっと増えているんだけど、どうしてもパンチのある、ライブハウスで聴きたくなるような音になっちゃうんです。
●うんうん。
MAH:今まではそれでよかったんですけど、もう一段階上質なアルバムにするために、第三者の音のプロを呼ぼうと思って。今回のレコーディング初日に「この曲はこの人たちっぽい音で録りたい」というのを延々と話し合ったんですよ。例えば「Green DayとThe Offspringのどっちにしよう?」とか「スネアだけSublimeっぽい音で」とか。それで楽器を選ぼうという。今まで使ったことのない楽器とかも試してみて、「これいいじゃん」となったらそれで録ろうと。
●ギターはギターでも、今まで使ったことがないものを使おうと。
SHOW-HATE:そこは積極的に。
MAH:だから「SiMの〜」というよりも、楽曲のイメージをとにかく優先したんです。そういう発想がすごく活きているんじゃないかなと思います。
●アルバムを作り始めたのは1年以上前ということですが、そこから完成形までに変わっている曲はあるんですか?
MAH:「Abel and Cain」は、日本語のラップだけ最初にできていたんです。
●この曲は日本語がめっちゃマッチしていますね。
MAH:あれを作ったのは「Same Sky」(4thシングル『EViLS』収録)を作ったときなんですよ。だから2〜3年前ですね。
●お、かなり前だ。
MAH:「Same Sky」は日本語を初めてちゃんと入れた綺麗なレゲエバラードだったんですけど、そのときに“これはこれでいいんだけど、もっとSiMっぽいドロッとした日本語のレゲエだったらどうかな?”と思ったんです。それがこの曲に合いそうだったから入れてみて。でも続きができていなかったので、そこからみんなで作ったんです。でも他の曲は結構デモに忠実なんじゃないかな。ギターのアレンジは違うんですけど、ベーシックなバッキングとかはあまり変わってないと思います。
●最初に言いましたけど、今作はSiMなりのポップミュージックと解釈したんです。でも一般的なポップさとは違う気がするんですよね。SiMが考える“ポップ”は、どういうところに重きを置いているのか? というが興味深かったんですよ。
SHOW-HATE:うーん、俺は電子音とかが入っているのが結構デカいと思っていて。
●ああ〜。
SHOW-HATE:曲のイメージって、そういう音がパンッと入ってきたら一気に見えるじゃないですか。もちろんシャウトを減らしてメロが増えたっていうのもあると思うし。みんながそういう方向に向かっているからそうなるんじゃないかな〜。
●なるほど。自分たちでもポップになった感覚は当然あるんですよね?
SHOW-HATE:ありますね。でも言っている通り、その要素は1曲1曲が違う感じで。音色とか細かいところなんじゃないかなと思うんです。ちゃんとSiMらしさはあるけど、他の曲と聴こえ方が違うとか。それだけでも相当色がはっきり見えるじゃないですか。そういうのが大きいのかなと、俺は勝手に思っているんですけど。
MAH:メロだけで言うと、エンジニアさんはずっと一緒にやっているけど、未だに「メロがムズいね」と言われるんですよ。だから一般的なポップとは違うと思うんですよ。
●メロディがポップだからポップミュージックになる、という方程式ではないんですね。
MAH:ちょっと気持ち悪いとか、耳につくとか。そういうところなのかな?
●あ、それはあるかも。耳に残りますもんね。
MAH:何なんだろうな…これっていうポイントは特にないんですけどね。
●マニアックな音色とかフレーズを使っているのに、キャッチーでポップに聴かせるってすごいことだと思うんです。何にも迎合していないというか。今作は色々と研ぎすまされている感じがします。
MAH:アルバム全体の感覚で言うと、それこそNo Doubtの『Tragic Kingdom』とか、いろんな曲が入っているんだけど結果的に“あぁ、SiMだな”っていう。それくらいのふわっとしたものしかないから。やっぱりバラエティに富んでいる作品が好きなので、曲毎に全然違う方が俺は聴いていられるんですよね。
SHOW-HATE:でもこうやって見ると、イントロが全部違いますよね。
●あ! そう! イントロ!
SHOW-HATE:その印象ってすげぇデカいと思うんです。
●イントロのアプローチが全然違うし、本編に入ったらまた雰囲気が変わる曲も多いし。
SHOW-HATE:今から思えば、印象的なイントロがすげぇ多いな。それで印象を残せているのは、相当曲のキャラが立っているということなんじゃないかなと思います。
●そうかもしれないですね。それと「Life Is Beautiful」も「MAKE ME DEAD!」もそうですけど、“死”というものが…今までもテーマとしてはあったと思うんですけど…今作のキーワードになっていると感じたんです。以前のインタビューで言っていましたけど、MAHくんは27歳で死ぬと本気で思っていた人じゃないですか。その27歳から3年経ちますけど、現時点ではどういう心境なんですか?
MAH:ここ数年、『SEEDS OF HOPE』くらいから…震災ということもあったし、俺は「死にたい」とか「辛い」とか言っちゃいけないみたいな感じがあったと思うんですよ。
●世間の風潮的に?
MAH:はい。俺は結構「死にたい」とか言っちゃうタイプなんですけど、弱いことを歌わないようにしていたんです。力強いメッセージがあって、“がんばっていこうぜ”みたいなことを歌っていて。もちろんそれは本気で思っていたんですけど、でも内面にはそういう気持ちもどこかにあって、そろそろ隠さずに歌えたら楽だなと。
●MAHくんとしては、ここ最近は意識的にそういう気持ちを出していなかったんですね。
MAH:我慢していたわけじゃないんですけど、「どっちが正解かな?」と考えたとき、なるべくポジティブな方を選ぶようにしていたんです。でも元々そういう人間じゃないし、それを包み隠さず歌うっていうことも、今できることなのかなと。
●ほう。
MAH:とは言え、死を肯定していることは全くなくて。M-6「If I Die」という曲では主人公が死んじゃうんですけど、“死は美しくなんてない”という言葉を入れていたりとか。みんな、すんでのところでいつも考え方を変えて乗り越えて、毎日を生きているわけじゃないですか。それを普通に書いて歌うことは、別に悪いことじゃないと思ったんです。みんなそういうことってあまり歌わないけど。
●そうですね。あまり歌わないか、めっちゃ歌うかのどっちかですよね。
MAH:めっちゃ歌う人ほど、死を美しいものにはしたくなくて、やっぱり「死んじゃダメだよ」と言う。でも“死にたくなるときはあるよね。そういうときは言ったらいいんじゃない?”という感じですね。
●なるほど。ここ最近そうだったように、今作のアレンジも歌詞の世界観を意識して作ったんですか?
SHOW-HATE:いや。今まで俺は歌詞の内容に合わせて音程とかも選んでいたんですけど、今回もそれやったら、たぶんめっちゃ暗くなると思って。
●ハハハ(笑)。確かに(笑)。
SHOW-HATE:それでもいいんだけど、俺は歌詞を読んだときにすごくネガティブで暗いけど、俺の中では“死にたい”という言葉が逆に“生きたい”に聴こえたんですよ。「死にたい」と言うということは、何処かで“生きたい”と思う気持ちがあるからだと思うんです。
●逆説的ですけど、「死にたい」と言うということは、自覚的に生きている証拠ですもんね。
SHOW-HATE:だから俺はそこに希望があると思うし、そういう気持ちで読んだ人は希望を感じると思うんです。そもそも俺はそういう曲にも助けられた人なので、こういう歌詞を前向きに捉えられるようになったというか。
●ああ〜。
SHOW-HATE:バンドも変わっているし、自分も変わらなきゃと思えたし。だから今回のアレンジは、歌詞の内容に合わせるというより、聴いてもらう人を多くしたいという感覚で作ったんです。
●それは大きな変化ですね。
SHOW-HATE:そうですね。自分で言うのはあれだけど、俺はマジで最近はすごく変わったんだろうなと思います。
●その「Life is Beautiful」はどういう背景で生まれた曲なんですか?
MAH:タイプ的にはパワーバラードというか、「Same Sky」とは違うバラードを作りたいとずっと思っていたんです。電子音を入れてUSのポップス感というかパンクバンドがやるバラードみたいなものを作りたいなと。それで歌詞を書いていくときに、わりと早い段階で「Life is Beautiful」というタイトルが出てきたんですけど、自分の感情をそのまま反映していった感じですね。去年1年くらいで“力強いMAHさん像”に結構限界を感じていて、糸が切れちゃったみたいな。
●え? 去年1年の活動で?
MAH:はい。“俺はそんなに強くないし”みたいな気持ちがあって。俺だってヘコむことはあるし、人に嘘を吐いちゃうこともあるし、自分のこともそんなに好きじゃないし…そういうことを歌わないと無理だなと思ったんですよね。
●なるほど。僕からするとSiMというバンドは強いところだけじゃない側面もさらけ出していて、それが魅力であり強みになっているという印象があったんですけど、この規模まで大きくなったらそう見られることも増えるわけですね。
MAH:俺たちを前から知ってくれている人はたぶんそういうところも好きでいてくれていると思うんです。ちょっと危なっかしいところとか、翳りのあるところとか。
●そうですよね。たまに、危なっかしいくらいさらけ出すもん(笑)。
MAH:でも今は、そこまでまだ届いていない人たちにすごく助けられている部分もあるんです。そういう人たちに対して、音楽の聴き方をちょっと変えてもらいたいなというのもあって。タトゥーを入れて怖い顔をしていたら中身も怖いのかと言ったらそうでもないし。
●バンドマンって案外そうですよね。
MAH:こういう曲を一回吐き出しておかないと無理になっちゃうなと思ってバーッと書いたんです。でも「Life is Beautiful」は自分でも歌っていくのは結構キツい曲かもしれないですね(笑)。でもライブですごく大事な曲になると思います。“Life is Beautiful(人生は素晴らしい)”と人はよく言うけど、俺はそんな風に思っていないっていう逆説的な歌詞なんですけど。
●この曲、MAHくんのヴォーカリストとしての新しい面を感じることができたんですよね。
MAH:そうですね。元々歌うのは好きだったんですけど、シャウトとかそういうのが前に出ていくようになって。“別に俺はそんなにシャウトが得意じゃないんだけどな”みたいな気持ちも内心あったんですよ。
●今までめっちゃシャウトしてませんでしたっけ?
MAH:(笑)。“俺もどこまでできるかな?”みたいなところでやっていた部分があって、本職だとは思っていないんですよ。自分としては「Life is Beautiful」のような曲を歌うのが気持ちいいので、そういう部分をもっと知ってほしいと。
●あと今回のジャケットを見て思ったんですけど、SiMは“キュートさ”というかちょっと可愛らしいところも要素として持っていますよね。例えば楽曲でいうとM-11「The Problem」のBメロの、女声っぽいコーラスとか。そこは自覚的というか、意識しているのかな? というのが興味深かったんです。
MAH:自分でもそう思っています。例えば「Amy」でも女の子っぽい声で歌が入っていたりするんですけど、俺のイメージでいうとThe Offspringとかがそうなんですよね。
●ああ〜、なるほど。
MAH:ちょっとおちゃらけた感じとか、変な声が入っていたりとか、ああいうのがすごく好きで。EMINEMとかもセリフみたいなのが入っていたりとか。真面目すぎると聴いていてちょっと疲れちゃうんですよね。
●性格的に?
MAH:はい。ずっと硬派な感じで来られるとちょっと遊びがほしくなるというか。例えばcoldrainみたいなジャケはかっこいいと思うんですけど、俺らがやっちゃうとちょっとやり過ぎな感じがするんです。クールなシュッとした感じじゃなくて、ちょっととぼけた感じというか。今回のアーティスト写真もそうですけど。
●ふざけてますよね。今回、あなたたち表紙ですよ?
一同:アハハハ(爆笑)。
MAH:今までそういうことは、コミックバンドしかやらなかったじゃないですか。でも本人たちも言いますけど、コミックバンドってやっぱりナメられるというか。
●ですよね。四星球も「ナメんな」と言ってました。
MAH:だから見た目だけで判断して音まで聴いてくれないということが多くなってしまう。俺らはその逆をやっているというか。音から入ってかっこいいと思ったら“こんな一面があるんだ”みたいなところが愛されている理由なのかなって自分でも思いますね。別に敢えて出そうと思って出しているわけじゃないですけど、素の感じを素のままで出せたらいいかなと。
●なるほど。そして最近対バン相手を発表されましたが、リリース直後から“DEAD POP FESTiVAL 2016”まで、ツアーがありますよね。かなりの猛者たちばかりですが。
MAH:ツラいです。
●しかもこのアルバムを引っさげてのツアーじゃないですか。気になるのは、打ち込みの話もありましたが、ライブでどう表現されるのか? というところで。
MAH:でもライブでできないことはやっていないんですよ。「ここはGODRiがパットで」とかを全部想定して4人で鳴らせるようにしているんです。そこは大丈夫だと思うんですけど、なにしろレコーディング以外で練習をしていないので…。
●例えばM-7「I DUB U」って、鍵盤とギターが両方鳴っているところがありますよね?
MAH:本編の中でソロを弾いているところは、GODRiがパッドで鳴らしているんです。
GODRi:僕が一瞬ドラム兼キーボードになって。
●すごい! ライブで観たい!
MAH:ツアーでどの曲を中心にやっていくかというのもまだ考えていないんですけど、やっぱり1箇所で全曲はできないので、ローテーションして全曲やる感じになるのか、ワンマンでしかやらない曲が出てくるのか…ちょっとわからないんですけど。どうなるんだろう?
●そこは乞うご期待ですね。
MAH:今回は対バン相手も含めての“ツアー感”があるから楽しみなんですよね。同じバンドと1回ライブをして1日オフがあってもう1回ライブしてっていう。そういう組み方は最近できていなかったので、昔の感じを思い出しながらできそうだなと思っています。
interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子