昨年7月に1stミニアルバム『TIMES SQUARE』でデビューした次世代ダンスロックバンド、KEYTALK。
音大出身のメンバーならではの超絶テクニックと綿密に練り上げられたアレンジメント、そこに重なる一聴して耳に残るポップなメロディーとハーモニーはシーンに衝撃を持って迎えられた。
そこから1年以上の時を経て、彼らが2ndミニアルバム『SUGAR TITLE』を11/9にリリースする。前作同様、TGMX aka SYUTA-LOW TAGAMI氏(FRONTIER BACKYARD)のプロデュースを受けて制作された今作は、彼らの確かな進化を感じさせる1枚だ。
全曲が日本語詞となったのに加えて、新たな試みとしてツインボーカルも導入。前作で一番人気だった「トラベリング」の路線を軸にしてキャッチーさを増しつつ、ライブでのさらなる盛り上がりを予感させるダンサブルなキラーチューンが出揃った。バンドとして1つのオリジナリティを確立すると同時に、4人はネクストステージへと飛躍を遂げていく。
「これも1つのオリジナリティとして確立した上で、"それだけのバンドじゃないんだ"っていうことを今から証明していきたい」
●前作の1stミニアルバム『TIMES SQUARE』リリース後に初の全国ツアーへ出たわけですが、そこで見えたものもあったんでしょうか?
武正:曲にムダな部分が多いと観ている側もノリづらいんだということが見えて、もっと曲をシェイプアップしなくちゃいけないと思いましたね。だから今回の曲作りでは、ムダを極限までカットすることを意識しながらやっていました。
●そういえば、友将(Vo./G.寺中)くんの体型もシェイプアップされた気が…。
友将:10キロ近くは痩せましたね。僕は節目ごとに自分を変えるのが好きなので、大学を卒業したタイミングで何かやろうと思って。走ったりしている内に、こうなりました(笑)。
●脂肪も削ぎ落したと(笑)。ツアーでの経験は、今回の2ndミニアルバム『SUGAR TITLE』にも活かされているんでしょうか?
武正:レコーディングする前にライブでやっていた曲もあるので作業もスムーズに進んだし、ライブ感も詰め込めたかなと思います。
●ライブで見せる武正くんの変な動きも、今作に詰め込んでいる? (笑)。
武正:そこももちろん詰め込んだので、とんでもない出来になりましたよ(笑)。でも最近はライブでも、もっとギターで聴かせられたらいいなと思うところがあって。前は正直、パフォーマンスに逃げていたところもあったから。でもやっぱりパフォーマンスも重要視してるので、そこの兼ね合いも取りつつ成長していけたらなと思っています。
●武正くんはライブパフォーマンスのインパクト同様に、ギターフレーズもすごく印象的で耳に残るものが多いですからね。
武正:耳に残るフレーズということは重要視していますね。今作のレコーディングでもギターは1音聴いただけで「これは武正の音だ!」とわかるくらい、すごく想いを込めて弾きました。
●その言葉通り、前作以上にギターフレーズのフックが強烈な気がします。
武正:ギターに関しては、前作収録の「トラベリング」で使った手法を中心にアプローチした感じですね。コードはあまり弾かずに、メインのメロディーに対して裏のフレーズを単音で弾くような感じで組み立てました。
●今回はコードよりも単音弾きが多かった。
武正:前作では2本のギターでコードを重ねて、ハーモニーを生み出している曲が多かったんです。でも今作は歌がある部分も、その裏でディストーションを使って歪ませたギターやフレーズ的なギターを多く入れていますね。
●「トラベリング」がそのキッカケになっている。
武正:前作のツアーでは「トラベリング」が一番盛り上がったので、こういう曲が人気なんだとツアーを通して感じられたんです。お客さんからも"こういう曲がもっと欲しい"という要望があったので、今回は「トラベリング」に近い路線の曲を集めたミニアルバムを作ってみようということになりました。
●そこから今作の方向性が定まったわけですね。
武正:前作の中で一番最後に出来た曲が「トラベリング」だったんですけど、その3ヶ月後くらいにM-1「PASSION」ができたんです。すぐにライブでもやるようになって、そこから同じような路線の曲がバンバンできていきました。
●その頃から既に今作の方向性は見えていた?
武正:その時点ではまだ見えていなかったです。そもそも「トラベリング」をライブでやることにもまだ慣れていなかったので、お客さんもそこまで盛り上がる感じではなくて。僕らもお客さんもライブを重ねていく内に盛り上がるようになって、そこから方向性が見えてきた感じですね。だから今作の曲は、前作よりもライブのイメージが浮かびやすい気もします。
●今作では「PASSION」に加えてM-4「ストラクチャー」とM-6「a picture book」が、義勝(Ba./Vo.首藤)くん作詞/作曲によるものですが。
武正:「トラベリング」をうまく継承しているのが「PASSION」で、それを少し複雑に変化させたのが「ストラクチャー」。そして「トラベリング」からの新路線になっているのが、「a picture book」という感じですね。
●この3曲では、義勝くんがメインボーカルを担当しています。
武正:義勝と友将は、それぞれ自分が作った曲でメインボーカルを取っているんです。僕が曲を作って義勝が歌詞を書いたものに関しては、義勝と友将のツインボーカルになっていて。
●武正くんが作曲したM-3「sympathy」とM-7「アワーワールド」は、KEYTALK初のツインボーカル曲なんですよね。
武正:曲を作っている時に、AメロとBメロでボーカルを分けてみたら面白いんじゃないかなと思って。試してみたら評判も良かったので、ツインボーカルの曲を2曲入れることになりました。
●この2曲はどんなイメージで作ったんですか?
武正:「sympathy」はガツガツしたギターロックで、4つ打ちを使ったキャッチーなイメージで作りました。サビの「ラララ」はメンバー全員で歌っているんですけど、ライブではお客さんと一緒に歌えたらいいなと思っています。「アワーワールド」はスカパンクやメロディックパンクとか、僕が元々好きなものの要素を詰め込んだ感じですね。でも"複雑な印象は与えないように"というコンセプトで作りました。
●確かに「アワーワールド」は、今作で一番軽やかな感じがします。
武正:軽やかですね。
友将:彼の人間性が出ています(笑)。
●ノリが軽いですからね(笑)。
武正:何てことを言うんですか~! …でも、その通りです!(笑)。僕という人間性をこの円盤に残しておこうという狙いで…。
●その発言が軽いんですよ!
一同:(爆笑)。
●とはいえ、「sympathy」と「アワーワールド」は、どちらも今作の鍵になる曲ではありますよね。
武正:KEY!!
一同:…(絶句)。
友将:…「sympathy」は初のツインボーカル曲だし、サビの「ラララ」という歌詞とメロディーがすごく耳に残るんですよ。「アワーワールド」は今作の中で前面に押し出していく曲という感じではないけど、最後をしっかり締めてくれていて。2曲ともそれぞれの役割を果たしているなと思います。
●フォローありがとうございます(笑)。友将くんはM-2「アゲイン」とM-6「僕のなか」を作詞/作曲しているわけですが。
友将:次の作品に向けて曲を作ろうとなった時に、"「トラベリング」の路線でいく"というのと"日本語詞で書く"という2つは決まっていたんです。「僕のなか」が先にできたんですけど、自分では「トラベリング」的なライブ感をイメージしていた割にはそういう感じにならなくて。オートチューンを使って声を加工したりもしたので、逆に今作の中では新境地的な1曲になりましたね。
●歌詞についても新たな試みをしていたりする?
友将:この曲はメロディーとアレンジが先にできていたので、歌詞は後から書いていて。今までは1つの音に1つの言葉しか入れていなかったんですけど、今回は1つの音の中に2つの言葉を入れることに挑戦してみました。
●歌詞は友将くんと義勝くんがそれぞれ書いているわけですが、2人でイメージを統一していたりもするんでしょうか?
友将:歌詞には特にメッセージ性があるわけではないんですけど、"さっと読んだだけでは意味がわからないようなものにしよう"というのはあって。それと"メロディーに合った言葉を乗せる"ということは、特に話し合ったわけではないけど統一されていますね。それ以外は2人とも自由に書いています。
●収録曲は統一感を意識して選んだ?
武正:候補としては13曲くらいはあったんですけど、そこから厳選した感じですね。みんなで話し合って、プロデューサーのTGMXさん(FRONTIER BACKYARD)とも相談して決めました。
●前作に引き続き、今回もTGMXさんプロデュースだったわけですが。
武正:前回は曲の構成からフレーズに至るまでガッツリ意見をもらったんですけど、今回はその経験を踏まえて曲を作ったというのもあって前ほど助けてもらう部分はなくて。僕らが作ってきたものに、TGMXさんも「良いね」と見守っている感じで言ってくれることが多かったんです。
●ツアーを経たことで前作制作時の経験も上手く消化して、自分たちのものとして今回は出せたんじゃないですか?
武正:前作はそれまでに影響を受けてきたものがそのまま出てしまっている部分もあって、何が自分たちなのかを確立できていなかったところがまだあったんです。でも今回は「トラベリング」に見出した自分たちらしさを、すごく凝縮できた作品だなと思っています。
●今作は、KEYTALKというバンドのオリジナリティを確立しつつある作品と言えるかもしれないですね。
友将:まさにそうですね。前作よりも、全曲を通してKEYTALKらしさが出ていると思います。イントロを聴いただけで「これはKEYTALKだ!」とわかるような感じに近付けたんじゃないかな。
武正:これからも色んなことに挑戦すれば、それを自分たちのものにしていけるんじゃないかという自信にもつながった気がします。
●ライブでも盛り上がりそうな作品ですよね。
武正:今までのKEYTALKファンには絶対に楽しんでもらえると思うし、まだ僕らを知らない新しいお客さんも今まで以上に巻き込める自信があります。今回も最高な作品ができて、次につながるものにもなったなと思っていて。"ライブにも絶対足を運んでもらいたい"って思える1枚です。
友将:ツアーでは今作の曲を知っている人だけじゃなく初めて聴くという人も含めて、ライブハウス全体の人を"KEYTALK大好き!"っていう雰囲気に持っていきたいなと思っています。
●今回のツアー初日は、下北沢SHELTERで初のワンマンですね。
友将:ワンマンは初めてなので、どうなるのか想像がつかないんですよ。不安もあるんですけど、目標としてはとにかく"すごく楽しかった"と思えるものにしたいですね。
武正:僕は期待されればされるほど返せる男なんで…楽しみです(笑)。これまでにリリースした以外の曲も含めて、持ち曲は全部やる勢いで頑張ります!
●前作のインタビュー時には「行き当たりばったりなので、次がどうなるかは自分たちでもわからない」と最後に話していましたが、今回はどうですか?
武正:今回はここまで1つの方向性に凝縮してしまったので、逆に次は"これだけじゃないんだ"っていうところを見せたい気持ちが僕にはあって。これも1つのオリジナリティとして確立した上で、"それだけのバンドじゃないんだ"っていうことを証明していきたい。いくつもオリジナリティを持っているバンドになりたいですね。
Interview:IMAI
Assistant:HiGUMA