『音楽が飽和している。』こんな時代だからこそ、なんとか多くの人に自分達の音楽を、そして仲間の音楽を届けたい、何かのきっかけを作りたい、という一心で、昨年、V.A.『あっ、良い音楽ここにあります。』を制作しました。自分達の音楽に対する情熱を今この時代に伝えるため、今年も”その弐”をリリースします。コンセプトは前作同様ですが、前作のおかげで僕ら自身も新しい仲間やお客さん達と繋がることができました。そこで出会った新しい仲間や尊敬できる仲間と同じ気持ちで作品を作れたら、また違った角度でアプローチできると思ってます。是非聴いてみてください。良い音楽ここにあります。
グッドモーニングアメリカが自身のCDデビューを前に企画して大きな話題を呼んだV.A.『あっ、良い音楽ここにあります。』。バンド同士の出会いがきっかけとなり、リアルな"今"のギターロックシーンを切り取った同作は、バンド発信のコンピレーションとして数多くの音楽ファンが新たな"良い音楽"と出会うきっかけを生んだ。
あれから約1年、自身のツアーで代官山UNITワンマンを大成功させたグッドモーニングアメリカが、第二弾のV.A.『あっ、良い音楽ここにあります。その弐』を発表。今回は同企画の中心人物であるG./Cho.渡邊幸一と、"グッドモーニングアメリカの飛び道具"との呼び声高いBa./Cho.たなしんの2人がしゃべりたくった。
「一緒に頑張ってるみんなにもなんとかチャンスを作って、お互いの相乗効果で上がっていければいいな」
「経験を経て、また次の作品ができる…それって出会いで音楽が生まれているということですよね」
●昨年8月にリリースした第一弾、V.A.『あっ、良い音楽ここにあります。』の反響はどうだったんですか?
渡邊:正直、すごかったです。出すまではどんな感じで広がっていくのか全然分からなかったんですけど、第一弾も全国のバンドが参加してくれたので、各地域のタワーレコードさんで置いてくれたりして。ライブのお客さんで「コンピの音源を聴いて来ました!」と言ってくれる人もいたし、リリース後の反響はかなり感じました。
●第二弾がリリースとなるこのタイミングで改めて訊きたいんですが、そもそもこのV.A.はどういう意図で企画したんでしょうか?
渡邊:自分たちの周りにはあまり知られてないけどすごく良いバンドがいっぱいいたし、一緒に頑張ってるみんなにもなんとかチャンスを作って、お互いの相乗効果で上がっていければいいなと思って企画したんです。僕らが前にやっていたfor better,for worseが全国リリースするきっかけになったのもV.A.だったし。
●このジャンルは俗にいう"ギターロック"で、バンド数が多いせいか「みんなで盛り上げよう」という動きがあまりないという気がしていて。グッドモーニングアメリカはもともとメロディックパンクバンドで活動していたということもあって、そういうパンクシーンの"熱さ"をギターロックのシーンに注ぎ込んだような印象があって。
渡邊:やっぱりメロディックでやっていた頃とは周りの波長が全然違うので、グッドモーニングアメリカにバンド名を変えて歌モノでやり始めたときはちょっと違和感があったんです。もちろん自分たちが知らなかった場所だからそう感じたのかもしれないですけど、実際に会って話してみたらおもしろい人がいっぱいいるし、仲のいい人もできた。だからシーン全体を盛り上げられたらなという気持ちはあります。
たなしん:それに、このV.A.を企画した時期は周りに良いバンド仲間が増えてきて。だからタイミングもよかったと思います。
●このV.A.がきっかけとなってグッドモーニングアメリカの名前が一気に広がりましたよね。1年前と比べるとバンドの状況が全然違う中、今回は色んなキャリアのメンツが集まりましたね。
たなしん:第一弾をリリースしてからの1年間で対バンした人たちっていうか。
渡邊:それより前から知っているバンドもいるんですけど、メンバー4人で第二弾に参加してほしいバンドを話し合ったんです。
たなしん:ghostnoteは「どうしてもやりたいっす!!!」と言ってくれたよね。
渡邊:今年の8月くらいに初めて対バンしたんですよ。
●あ、知り合ったのはそんなに最近なんですか。ビビビ婚…ビビビコンピですね。
渡邊:その日にすごいグルーヴが出たんです。すぐにでも誘いたかったんですけど、ghostnoteは最近の曲は事情があってなかなか難しくて。でもghostnoteのメンバーが「熱意に打たれたから絶対にやりたい!」と言ってくれて、過去の音源であれば参加できるということで、それをミックスし直して参加してくれたんです。
●それは嬉しいですね。
たなしん:そんなエピソードが満載なんですよ。アルカラは今年の2/5に僕たちのイベントに参加してもらったんですけど、僕はアルカラの「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」っていう曲が好きすぎて、アンコールの後にカラオケで流して僕が勝手に歌ったんです。
●観てました。ひどかったけど(笑)、この曲が好きだという気持ちは伝わってきました。
たなしん:今回彼らが参加してくれることになって、収録曲として提出されたのがこの曲で。僕は偶然だと思っていたんですけど、実はアルカラの稲村太佑さんが「どの曲にしようか悩んでいたけど、たなしんが好きなこの曲にしようと思います」って。ただそれだけの理由で選んでくれたそうなんです。もうすごく嬉しくて。
渡邊:No Regret Lifeの小田和奏さんもまったく同じエピソードがあって、僕がずっと好きだって言い続けたら「この曲で参加するから好きに使ってくれ」と言ってもらって。
たなしん:先輩方の暖かい愛情ですよね。その時点でもう"絶対良いものになる"って思いました。
渡邊:planeも「花火」という僕らの大好きな曲を入れてくれたんですけど、今回のためにわざわざ録り直してくれたんです。
●"ギターロック"という括りの中でこれだけ良いバンドが並ぶと、ある意味バンドの個性が試されると思うんですよね。そんな中で、planeの「花火」は情景描写というか表現力の豊かさが抜群だと思いました。
渡邊:これを最後に持ってきた僕の曲順のセンスが抜群だと思います。
●そっちか! (笑)
渡邊:もちろん曲自体が素晴らしいのは当然ですけど、1枚を通して聴いて欲しいと思っているので、最後にこの曲を聴いて1曲目に戻るっていうリピートをしてもらえたら嬉しいなと思って。さっき「個性が試される」とおっしゃいましたけど、それも加味して曲順を考えたんです。
●キャリアのある先輩がいる反面、まだCDをリリースしていないバンドもいて。僕は、放ツ願いをこの機会に初めて知ったんですよ。
たなしん:放ツ願いのライブは本当にすごいですよ。熱量が半端じゃない。
渡邊:放ツ願いは真っ先に声をかけたかったんですけど、ギターとベースが2011年末で脱退すると聞いていたので声をかけられなかったんです。本人には「バンドがどう動くか分からない状況なのに誘うのも良くないと思うから、また次回一緒にやろう」と伝えて。で、V.A.の企画を進めていたんですけど、その後たまたまライブハウスの人に「来年からも活動できそうな気配だよ」という話を聞いて、すぐに電話したんです。「最後の1枠空いているから参加してくれない?」って。そしたらめちゃめちゃ喜んでくれて。
●そりゃ喜びますよ。
渡邊:「僕らの初の全国流通音源がグッドモーニングアメリカのV.A.で誇りに思います」って。本当に誘ってよかったなと思いました。
渡邊:あと、SAY MY NAME.は僕らがイベントやツアーに誘うと、必ず即答でOKしてくれるんです。いつも二つ返事で、「ちょっと待って」と言われたことがない。やっぱりライブに誘われたときはいろいろ考えちゃうし、それは決して悪いことではないんですよ。でもそこで即答してくれる男気が単純に嬉しいですよね。
●ところで1曲目に収録されている、グッドモ…グッドモーニン…グド…
たなしん:グッドモーニングアメリカです。
●あ、すみません。グッドモーニングアメリカの「カラツ風ガ吹キツケル」ですが、これはどういう経緯でできた曲なんですか?
渡邊:紆余曲折があってできた曲なんです。V.A.って1曲勝負じゃないですか。だから、キャッチーで分かりやすくてノれる曲を作るのか、そうじゃない部分で勝負するのか、ということをギリギリまで話し合って。
たなしん:実は、最初の候補はこの曲じゃなかったんですよ。もともとは、V.A.でやるんだしある程度自分たちの好きなことも踏まえつつ、他のバンドがやらないようなリズムやリフを入れたちょっとマニアックな曲を作っていて。でもそれだと少し分かりづらいかなという話になって、"冬っぽくてキャッチーなものにしよう"と決まったんです。そういったコンセプトをもとにできたのが「カラツ風ガ吹キツケル」なんです。
●この曲を聴いて改めて思ったんですけど、グッドモーニングアメリカのこの1年は音楽以外の部分にも焦点が当たる機会が多かったじゃないですか。第一弾のV.A.しかり、たなしんという飛び道具(短パンサングラスという出で立ちでライブの開始時にPA宅の上に登って「ファイヤー!」と叫んだりMCで「ファイヤー!」と叫んだりする。2階から飛び降りて登場したこともあった)しかり。でも、そもそも音楽がしっかりしていないとバンドとして成り立たないと思うんですね。そういう意味で、「カラツ風ガ吹キツケル」はバンドとしての芯というか、音楽的な芯が出ている曲だと思うんです。
渡邊:そう言ってもらえるとありがたいですね。
たなしん:あまり意識はしていなかったけど、自然とそういう曲を作れた気がします。こういう企画で、この季節でっていうキーワードがあって、それをもとに今の自分たちが出来るものを自然と作ったらこうなった。
●この曲ではたなしんはベースを弾いているんですか?
たなしん:弾いてないです…っていやいやいや! 弾いてますよ! 今までもずっと弾いてます!
一同:ハハハ(笑)。
●バンドをやっていると"大きな会場でワンマンをしたい"といった目標も当然あると思いますが、グッドモーニングアメリカは"みんなで一緒に盛り上がりたい"という意識も強いですよね。
渡邊:たぶんそっちの方が好きなんでしょうね。これは僕個人の考えなんですけど、代官山UNITのワンマン(10/10『ウォールペーパーミュジックじゃ踊りたくないぜ』リリースツアーファイナル)が終わったとき、"次はどこでワンマンをしよう?"とは思わなかったんです。それよりもバンドの繋がりを広げられるようなことをしたかった。
●人と出会ったり繋がったりすることに歓びを感じる?
たなしん:めちゃめちゃ感じます。
渡邊:V.A.もしかりですけど、ここから繋がりができて、また新しい繋がりができていくのがすごく好きなんですよね。参加してくれたバンドから「V.A.を通じて自分たちを知ってくれたお客さんもいる」という話とか聞いていて。そういうことがすごく嬉しい。
たなしん:僕らは前のバンドを休止してから、しばらくライブ活動をしていなかったんですよ。そのときにずっと家にこもって曲作りをしていて、"なんでこんなに良い曲が作れるのに上手くいかないんだろう?"と思っていた時期があって。その後にバンド名を変更してグッドモーニングアメリカとして活動を始めたんですけど、当初と比べて曲調も変わってきているんです。それはやっぱり、ライブでの"体感"があるからなんですよ。
●ああ~。
たなしん:目の前にいるお客さんの様子だとか、対バンとの兼ね合いで"こういう曲を作ろう"という意識が生まれているんです。だから、人との出会いがあるから音楽を作っていけるんじゃないかって思うんです。
●すごくいい話だ!
たなしん:V.A.第1弾のレコ発ライブの体感は特にすごくて、今まで感じたことがないほどの感触があったんです。そういう経験を経て、また次の作品ができる…それって出会いで音楽が生まれているということですよね。
渡邊:出会うたびに自分たちも成長出来るし、成長出来るから前に進んでいける。
●なんかかっこいい!
たなしん:現実はごまかせないし、絶対的に突きつけられるんです。でもどんどん体感することによってできる音楽もあるんじゃないかなと思っていて。今はそれが楽しみです。
●いつも金廣くんが「痛みのない音楽は作りたくない」と言っているじゃないですか。それはある意味、リアリティを追求していると思っていて。
たなしん:そうかもしれないですね。
●第一弾の取材のときに僕は「こういうバンドマン発信の企画っていいですね」と言いましたけど、それは"繋がり"というリアリティを感じたからなんです。今の世の人たちはリアリティのないものに期待しなくなっていると思うんですよね。このV.A.で歌っている人たちは、音楽に対して真剣に取り組んでいるというのが音から伝わってくる。それがこのV.A.のリアリティなんだと思う。
渡邊:人間が好きというのもかなり大きいですね。音楽が良くても人間的に合わなかったら嫌だし。でも参加してくれている人たちは全員好きです。
たなしん:うん、違和感がないっていうのはそういうことかもしれないね。
●人間性が見えるとその音楽がものすごく好きになることもあると思うんです。対バンしたら好きになるとか。そういうものもにじみ出ているような気がして。
たなしん:そうかもしれないです。会って話していても"こいつ本気なんだな"というのは分かるじゃないですか。曲を聴いていると、その本気が改めて伝わってくる。作品の善し悪しはそれぞれの主観だけど、そういうところ以外でも響いたというか感動しました。
●気持ちの純粋度というか。
たなしん:みんなの熱い気持ちと一緒に、赤字にしかならないかもしれないけど800円というパンチの効いた価格で出してやろうと。
渡邊:普通のバンドがこういう形でV.A.を出すのは難しいことだと思うし、そういうことをやらせてもらえている責任感を考えて取り組みたいですね。音源も広めたいし、レコ発も成功させたい。
●そうそう、2/19に渋谷O-Crest、3/2に心斎橋Music Club JANUSでのレコ発があるんですよね。
渡邊:最初は渋谷O-Crestだけでやる予定だったんですけど、planeの菊地さんに心斎橋Music Club JANUSを紹介してもらって、"大阪でも自分たちで仕切る企画をやったら面白いな"ってことで、東京と大阪の2カ所でやろうと思っています。
●参加バンドも日本全国に散らばっているから、東西に分けてという発想だったんですか?
渡邊:いや、そういう感じではないですね。何なら両方とも全バンド出演してもらってもいいくらいなんです。スケジュールや場所によって調整してもらっている感じです。でも両日とも今回のV.A.に参加してくれたバンドだけが出演するので、お祭りっぽいイベントにしたいと思ってます。
●楽しみにしています。では最後にたなしんお願いします。
たなしん:みなさんご一緒に! 3! 2! 1!
一同:ファイヤー!
interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子