昨年5月にエイベックス内のHPQにレーベル移籍し、新たなスタートを切ったNIGHTMARE(ナイトメア)。
移籍後の『VERMILION.』と『SLEEPER』という2枚のシングルに続いて、彼らが遂に約2年半ぶりとなるオリジナルアルバム『NIGHTMARE』を11月にリリースした。
結成10周年という節目の2010年を越えてなお挑戦することをやめない5人は今作でまた一歩、目指す理想へと近付いたと言えるだろう。
そして2012年にはホールツアーと、ツアーファイナルの武道館公演も待ち構えている。その先すらも見据えて今も走り続ける彼らに話を訊いた。
「良い意味で次にどんなものができるのか想像できなくなるというか。ここからまた新しいものが生まれる予感を抱かせてくれる作品ですね」
●今作『NIGHTMARE』はレーベル移籍後、初のアルバムとなりますが。
咲人:レーベル移籍で周りのスタッフが変わったりという環境面の変化はあったんですけど、作る曲が変わるかと言えばそうじゃない。自分たちが作りたいものを作るという意識はそれぞれに持っていると思うので、その根本が変わるほどの影響はなかったですね。
YOMI:自分の中で今回のアルバムには、10周年が終わって迎える新たなスタートという意味があって。今までのナイトメアのイメージを大事にしつつ、新しい一面を見せられたらいいなと思っていたんです。結果として今回はそういう曲も入っているし、自分の理想としていたアルバムができたので嬉しいですね。
●去年に10周年を終えたことで、今作から新たな一歩を踏み出す意味もあったんですね。
咲人:10周年を終えたことや移籍したことも含め、色んな要素をひっくるめて今回はセルフタイトルになっているんです。自分は"今までやりたくてもできなかったこともやっていける良い機会だな"と思っていました。実際に今作では色々と遊べた感覚がありますね。
●ちなみに、具体的に遊んだ曲というと?
咲人:わかりやすいところで言うと、M-8「Cherish」ですね。この曲は元々、アルバムの1曲目に持ってくるつもりで作っていたんですよ。だから当初は今作全体を通してのイントロ的なイメージがあったんですけど、アルバムタイトルが決まって曲も出揃ってきた頃に"これは1曲目じゃないな"と気付いて。だったら、とことん遊んじゃおうということになったんです。
●確かに一聴して、異色な曲ですよね。
咲人:女言葉で歌詞を書くのも初めてだったし、ギターアレンジに関してもこの曲はピックを一切使ってないんですよ。細かい部分も含めて、自分の中で新たな挑戦がたくさんできた曲だと思います。
YOMI:僕も「Cherish」は新しいと思うんですけど、他にM-13「$eam」とM-15「Dazzle」(type Cのみ収録)も今までにはあまりなかった曲調かなと。この3曲は自分的にもチャレンジした曲です。
●そういった新しい挑戦をすることは、今作を作り始めた当初から考えていたんですか?
YOMI:僕らはいつもコンセプトを立てて作るほうではなくて、それは今回も同じだったんです。
柩:そもそも今回は、アルバムを作るつもりでレコーディングが始まったわけじゃないんですよ。「とりあえず新曲ができたから録ろうか」みたいな感じで始まったのが、去年の夏くらいですね。
●アルバム全体のテーマやイメージが見えていた上で作っていたわけではない。
咲人:アルバムの全体像は、タイトルが決まってから見えてきた感があります。初めは漠然としたものしかなかったんですけど、だんだん道ができてきたというか。僕らはいつもタイトルを決めるのが遅いんですよ。コンセプトとまではいかないけど、そこを早く決めれば先も見えやすくなるんじゃないかっていう話をして、今回は頑張って早めに決めました。
●タイトルを決めてから作った曲もあるんですか?
YOMI:M-12「輪廻」がそうですね。
柩:他の曲がほとんど出揃っている中で、ゆったりした感じの曲があってもいいかなと思って。他とのバランスを考えて、足りない感じの曲を作った感じです。
●この曲の歌詞はYOMIさんが書かれていますが、どういうイメージで?
YOMI:自分の中で、今回は震災の影響が結構あって。全部がそれをイメージしているわけではないんですけど、人が亡くなってしまうことをどうにかマイナス思考ではなく、神秘的な感じで描けないかなという想いから生まれた曲です。
●3月に起きた東日本大震災から受けた想いを曲に込めている。
YOMI:僕らは出身が仙台ということで、やっぱり今作を作る上でも少なからず影響はあったのかなという気がしていて。
咲人:もちろん地元でなかったとしてもすごくショッキングな出来事なんですけど、やっぱり制作やライブにも精神的な面で余計にくるものがありました。
●この曲は特に異色な雰囲気ですが、今作は他の楽曲もバラエティが非常に富んでいる気がします。
YOMI:僕らは割とアルバムの振り幅が大きい方だと思っているんですけど、今回は特に広く感じますね。
咲人:基本的に良い意味でまとまることができないバンドなので、昔からバリエーションが豊富な作品を作ってきたんです。でも今回はさらに懐を広げられたらという想いもありました。
柩:今回のアルバムは特に咲人の曲で、広がりが生まれたような気がします。RUKAさん(Dr.)の曲はナイトメアの王道的な曲調が多い中で、「Cherish」みたいな曲があることによってすごく振り幅が出ているのかもしれないですね。
●咲人さん自身も振り幅を広げようと意識していた?
咲人:根本的に人間性があっちこっちに行っちゃうタイプなので(笑)、自然と色んなバリエーションの曲が出てくるんです。今回はいつも通りの感覚でまず曲を作ってから、アレンジや歌詞の面で振り幅を広げようと思っていましたね。
●曲ごとのバリエーションが豊かだけに、それを1枚のアルバムにまとめるのは大変だったのでは?
咲人:自分の中でも"これだけ幅広い曲調をどうやって1枚にまとめるか"っていうテーマがあったんですけど、やっぱり難しかったですね。一番苦労したのは曲の並びで、それによってそれぞれの印象も変わってくるのでどう違和感なく繋げるかを考えました。あとは曲間の長さを調整することで、何とか整合性を取ったというか。
●曲調がバラエティに富んでいるので、歌う側も大変だったんじゃないですか?
YOMI:今回は今まで以上に、曲調と合うように歌うことを意識していて。そこは上手く歌い分けられたんじゃないかな。前作『majestical parade』(2009年)にも色んな曲調があったんですけど、自分の中で上手く歌い分けられなかったと感じる部分もあって。
●前作での反省点を上手く活かせた。
YOMI:前作では、明るい曲を歌っている自分に違和感があったんですよね。でも最近は明るい曲でもすんなり歌えるようになったし、ちゃんとモノにできるようになってきたという違いはあるかもしれない。だんだん自然に歌えるようになってきて、最近はどんな曲調がきても納得のいく仕上がりにできているなと感じています。
柩:あんまり自分の声を作らなくなってきたなと思いますね。インディーズの頃は割と作った声で歌っている感じもあったんですけど、最近はナチュラルに歌えている気がする。
●歌い方も変わってきた?
咲人:根本的に声質も変わってきているんじゃないかな。昔はもっと甲高い声だったけど、最近はもう少し低音の部分も出ていると思うから。単純に歳を取ったというのもあるんじゃない?
YOMI:その変化には逆らっていきたいけどね(笑)。発声がちゃんとできるようになってきたり、単純に技術的な部分もあると思います。昔から自分の歌があんまり好きじゃなかったので、過去の作品を聴いたりするのも嫌だったんですよ。でも前々作『killer show』(2008年)くらいからだんだん好きになってきて、今回のアルバムは大好きになれた。自分で自分の歌を聴くようになったというのは、すごくデカいんじゃないかな。
●歌以外でも自分たちの進化を感じている?
柩:音に関しても前作と聴き比べて、"2年半でこんなに成長するもんなんだな"とは感じていますね。ギターに関しては、自分の好みの音に近づけているというか。自分の好きなバッキングが弾けているかなという印象があります。
●バンド全体としても、ナイトメアが目指す理想に近付けているのでは?
YOMI:僕的には近付いているなと思います。
咲人:今まではだいたい自分かRUKAさんが曲を書いて、YOMIが歌詞を書くパターンが多かったんです。でも今回のアルバムはメンバー全員が曲作りに関わっているので、作詞/作曲のクレジットに全員の名前が入っていて。5人で作っている様子を視覚的にもわかるようにしたいと前から思っていたのが、今回は実現できた。今後は柩やNi~ya(Ba.)の曲も増えてくるだろうし、そういう意味でも理想に近付けているんじゃないかな。
●自分たちでも満足のいく作品ができた。
YOMI:現時点での良いところを作品として残せたと思います。前回のアルバムよりもさらにカッコ良いものが作れたと思えることが、僕にとっては大きくて。
咲人:前作よりも幅が広がった感じはあるし、クオリティ的にも上がった気がしています。あとは今作で広げたものをどうやって新たな芯として作っていくかだと思っていて。もう意識は次に向かっていますね。
●もう次にやりたいことも出てきている?
咲人:良い作品ができたことは、次への良いプレッシャーにもなるから。また1つ超えるべき目標ができたというか。
柩:今後が楽しみになるアルバムだと思います。良い意味で次にどんなものができるのか想像できなくなるというか。ここからまた新しいものが生まれる予感を抱かせてくれる作品ですね。
●12月からのライブハウスツアーに続いて1月からはホールツアー、3月には武道館でのツアーファイナルも予定されていたりと、今後も楽しみですね。
咲人:ライブハウスとホールでは、別々の観せ方にしようという気持ちがあって。ライブハウスだと基本的にスタンディングで人がギュウギュウに詰まっているので多少、粗いくらいのほうが味が出ると思うんです。逆にホールではライブハウスのカオス感は出しづらいけど、ちゃんとショーアップしたものが見せられる。ホールツアーでは、そういう部分を見てほしいかな。
YOMI:4度目の武道館に向けて前回よりも良いライブにするために、1月からみんなと一緒に空気を作っていければと思います。これからも「今のナイトメアが一番カッコいいよね」と言ってもらえるようなバンドでありたいですね。
Interview:IMAI
Assistant:森下恭子 / HiGUMA