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オトループ

心の奥底まで掘り下げた言葉と歌は誰かの救いとなることを願う

PH_otoloop心の中に秘めた誰にも言えないモヤモヤした感情を言葉にし、疾走感のある音に乗せて届ける3ピースギターロックバンド、オトループ。前作のミニアルバム『カタリベシンパシー』リリース後にメンバーチェンジがありつつも、よりバンド感を増した新作ミニアルバム『カメレオンは何も言わない』を彼らが完成させた。Vo./G.纐纈が今までの作品中で“一番自分自身の奥の奥まで掘り下げようと試みた1枚”と語る今作。自らの内面を徹底的にさらけ出すことで、誰かの救いにもなれたらという願いを込めた作品についてメンバー3人に訊く。

 

●前作『カタリベシンパシー』リリース後にメンバーチェンジがあって、Dr./Cho.小鹿さんが加入したんですよね?

纐纈:前メンバーが今年3月に脱退して、そこからサポートで手伝ってもらっていたんです。ツアーの最中だったので、残りのツアー半分くらいに参加してもらって。色んなところを一緒に旅したことで、関係性もすごく深まりましたね。そこで今年の7月に正式メンバーとして加入してもらいました。

●正式加入前にツアーを一緒にまわったことも大きかった。

纐纈:大きかったですね。それにビックリするくらい、すぐ馴染めたんです。

小鹿:サポートで参加する前から(前所属バンドで)対バンしたこともあったし、アーティストとしてリスペクトしていたから。オトループの曲が好きだったし、MVを見たりもしていたので、そういうこともあってスッと入れたのかもしれないです。

●小鹿さんは作詞・作曲・ボーカルもできる“歌うドラマー”ということですが、そこも期待しての加入だったんでしょうか?

纐纈:歌心がオトループにとっても大事なところだと思っているので、そのあたりは期待して(加入を)お願いしました。

●実際、今作『カメレオンは何も言わない』のM-5「コワモテメランコリー」は小鹿さんの作詞作曲によるものなんですよね。

吹原:前のバンドで活動していた時に、彼が作った曲を聴いたら良かったんですよ。だから加入する時にも「次にアルバムを作る時にはぜひ作ってよ」という話をしていたんです。

纐纈:絶対にオトループとして良いものになるという確信があったので、「ぜひ1曲書いて欲しい」とお願いしました。

●この曲の歌詞は実話を元にしている?

小鹿:ほぼ実話ですね。さすがに仔犬に逃げられたりはしないですけど…。

●歌詞中で、仔犬が顔を見て“首輪ちぎれんばかりの勢いで逃げ出した”というのはフィクションだと(笑)。

小鹿:実際に見た目で怖がられることはあって、でも「喋ってみたら意外と優しい人なんですね」と言われたりするんですよ。それってもし喋らないままだったら、ずっと距離が縮まらなかったということじゃないですか。そう考えると、世の中の男性も色んなところでチャンスを逃しているというか。本当はもっと仲良くなれた人とも仲良くなれないまま終わっているようなケースは異性に限らず、いっぱいあると思っていて。

●外見だけで判断して、そこから先に進めていない。

小鹿:そういう人間関係的なところで、背中を押せるようなものにしたかったというか。そこは他の曲で歌われていることにも通じると思っていて。外からは見えないけど、実は内面に持っている優しさや気遣いみたいなものをちょっと違う角度から描いてみた感じですね。

●今作は纐纈さんが“自分自身の奥の奥まで掘り下げようと試みた1枚”なんですよね。

纐纈:自分の“取扱説明書”みたいなアルバムにしようというところから、今回は始まっていて。僕は器用に見られたりもするんですけど、実は弱音を吐くのが下手だったり、自分のことを話すのが苦手だったりするんです。普段は言えないようなことをちゃんと言葉にすることで、そういうところに気付いてくれる人がいたら嬉しいなっていう想いで作り始めましたね。

●特にM-1「アマノジャクの独白」は、そういう自分の内面をさらけ出している曲というか。

纐纈:本当に弱音を吐けないんです。言いたくなる時もあるんですけど、言っちゃうとダメになる気がして…。自分を騙しているなと思うところもあったので、改めてそういうところに向き合って書いたらどうなるのかなというところで挑戦してみました。この曲を今作で一番最初に書いたんですけど、これを書き上げたことでちょっと気持ちが軽くなった感じはします。

●メンバーから見ても、この歌詞は纐纈さんを表しているように感じる?

吹原:この歌詞はめちゃくちゃ纐纈らしいですね。でも実際、本当のことを言わずに過ごしたほうが楽な場面もたくさんあるから。そういうところでは、自分自身もすごく共感できました。

小鹿:自分も確かにそういう面はあるなと思いますね。会って話した時にあまり上手く喋れなかったり、「この人は俺のことがあまり好きじゃないのかな?」と感じるような、ウマが合わない人っているじゃないですか。でもこの歌詞を読んだことで、そういう時も「この人も心の中では色々と考えてくれていたりするのかな」と思うようになったりして。…心が洗われた感じがします。

●「アマノジャクの独白」はコーラスも印象的ですが、これは小鹿さんがやっているんでしょうか?

纐纈:今までは自分で全部やっていたコーラス部分を、今回初めてメンバーにやってもらったんです。それによって、歌のパワーが何倍にも膨れ上がった感じがしますね。

吹原:小鹿はすごく歌が上手いんですよ。今回は全編にコーラスを入れてます。

●そこは小鹿さんが入った効果がすごく出ている。

纐纈:歌が僕らの一番伝えたいところなので、そのパワーをどうやったら増幅できるかというテーマがずっとあったんです。そのために絶対に良いだろうなと思って、小鹿を誘ったところはありますね。

●M-2「アリカ」は“メンバーチェンジを経て、新しくスタートを切ったオトループのはじまりの歌”ということですが。

纐纈:7月に会場限定シングル『アリカ / 感情方程式』を出したんですけど、初めてこの3人でレコーディングした作品だったんです。そういう意味で“リスタート”の曲になったかなと。

●「アリカ」の歌詞はどんなイメージで?

纐纈:他人から見られる印象と自分が本当に思っていることって、違ったりするじゃないですか。最近はスマートフォンの地図アプリで目的地を入れるとルートが表示されて、何の疑問も持たずにそのとおり進めば着いてしまう。でもたとえば自分が本当に言って欲しいことなんかは、そういう便利な機械では絶対に見つからないと思っていて。そこは相手とちゃんと注意深く向き合ったりしないと見つからないから。そういうことを大事にしないといけないよねという想いを込めて作った曲ですね。

●「アリカ」のMVには、フッキー(吹原)さんが全身タイツの不思議なキャラクター役で出演していますが…。

吹原:“スマフキン”という名前なんです。爆笑を取りにいったつもりが、楽曲のインパクトが勝ってしまって「そんな人いたね」くらいの感じに…もうちょっと話題になるかと思ったんですけど(笑)。でもすごく良い映像作品になったと思っていて、自分でも何回も見ています。

●ユーモアもありつつ、ちゃんとメッセージ性も伝わるものになっていますよね。

吹原:映像の制作もずっと同じチームにやってもらっているので、バンドへの理解もすごくしっかりしていて。

纐纈:歌詞の世界観を映像が増幅してくれるような印象はありますね。

●M-4「モトカノループ」とM-7「存在ワゴンセール」は恋愛の歌詞ですが、これも実体験から?

纐纈:恋愛の後期って、上手くいかなくなることが多いじゃないですか。別れ際の温度のちぐはぐさというか、それが自分の中で印象的なので歌詞になることも多いんです。トラウマでもあるし、思い出でもあるというか。そういうところからインスピレーションが湧いてきて書いた2曲ですね。

●「モトカノループ」の“女子は上書保存 男子は別名保存”という歌詞にもあるとおり、男子は共感しやすい内容かなと。

纐纈:きっとそうだと思うんですよね。それぞれの人に対する気持ちや思い出を、みんな引き出しの中にいつでも引っ張り出せるように残してあると思うから。

吹原:僕もそういう未練を抱いている時期が長いので、よくわかります。

小鹿:逆に僕は別れた後、わりとスパッと断ち切ってしまえるタイプで。一応、別名保存しているんですけど、フロッピーディスクに入れてどこかにやっちゃったみたいな(笑)。

●今どき、フロッピーディスクって…。

吹原:容量、少なっ!

一同:ハハハ(笑)。

小鹿:そういうところは女子に近いのかもしれない…見た目はこんなですけど(笑)。

●そういう意味では、女性目線のM-6「2番目の歌」は共感しやすいのかもしれませんね。

小鹿:すごく共感します! レコーディングの時も「うわ〜!」と思いながら録っていましたし、ミックスルームで聴いている時も泣いちゃいそうでした。

●そこまで共感できるんだ(笑)。この曲だけは女性目線の歌詞ですが。

纐纈:女性目線の歌詞を書きたいなとは、ずっと思っていたんですよ。やっぱり男の人が考える“女の人”って実際とはちょっと違うと思うので、色んな人に聞きながら書きましたね。女の子に聞きながら書いていったことで、すごく視点が広がった部分もあって。自分の中だけで書くと美化しちゃうところがあると思うけど、そうじゃなくてもっとリアルな感じを追求して書きました。

●M-3「無色透明カメレオン」は、アルバムタイトルの『カメレオンは何も言わない』にもつながっている?

纐纈:「無色透明カメレオン」が今回一番最後にできた曲で、そこで“カメレオン”というワードが自分の中に引っかかっていて。それをぜひとも使いたいなというところから、今回のアルバムタイトルにつながりました。ワード的には引っかかったんですけど、カメレオンのことを自分はあまり知らないなと思ったので、生態について色々と調べていったらすごく面白かったんですよね。

●それはどういうところが?

纐纈:ものすごく不器用な生き物なんですよ。生きた餌しか食べないとか、地上を上手く歩けないから木の上じゃないと生活できないとか。動いているものしか口にしないから、水も葉っぱから落ちてくるものしか飲めなくて脱水症状になりやすいとか色々あって。あとは体色変化して周りに溶け込んだりするところとかも含めて、調べれば調べるほどに“気難しい人間”みたいな印象を受けたんですよね。自分の中にもリンクするものがあるので思い入れがすごく強くなって、こういうタイトルを付けました。

●タイトルにはどういう意味を込めている?

纐纈:カメレオンは不器用な生き物なんですけど、それを決してネガティブなイメージで捉えているわけではなくて。誰しも普段は言えないことがいっぱいあるんだということを、肯定的な意味合いで言えたら良いなと。「俺もカメレオンだし、君もカメレオンだよね」という意味合いが表現できたらということで、こういうタイトルにしました。きっとみんな深いところでは一緒だと思っているから。“自分1人じゃないんだよ”と伝えたいという想いが、今までで一番強い作品ですね。

●作り終えてみて、奥の奥まで掘り下げることができたという実感はある?

纐纈:それはすごくあって。サウンド的には化学変化が起きているけど、(歌詞に関しては)ほぼデモの段階のものがそのまま“良いね!”という形になって焼き付けられたんです。言いたいことが最初の状態から全然変わらずに進めたというところが、自分にとってはすごく衝撃的でしたね。今までは色々と模索しながら作っていたので「やっぱりそうだよね」という感じで途中で変わっていくこともあったんですけど、今回は最初のものをそのまま形にできたのがすごく良かったなと思います。

●サウンド的には化学変化が起きた?

纐纈:3ピースバンドというのをすごく意識して作ったことで、(自分以外の)メンバー2人の役割の幅というのが今までよりも広くなったというか。バチバチにやり合いながらも、歌は絶対に負けないものになっているので、そこはすごく納得できていますね。

吹原:今回はベースのフレーズに関してもチャレンジしたり、やりたい放題やらせてもらっているんですけど、仕上がりを聴いてみると歌が一番前に出ていて。これまでの作品でも意識してきた“歌を活かす”という部分を踏襲しつつ、ベースとしてもやりたいようにやらせてもらえた作品ですね。

●バンド感もこれまで以上に増しているのかなと。

纐纈:この1年を通してツアーを何回もまわったりしたことで、バンド感は今までで一番出ているんじゃないかと思います。あと、お客さんに参加してもらった時のパワーを今まで以上に感じるようになって、ライブに対する気持ちが以前とは変わってきたんですよ。みんなで一緒にライブを作りたいという気持ちが今はすごく強いので、それを全国の色んなところでやれたら素敵だなと。

●リリース後のツアーでは、その変化を体感できるわけですね。

小鹿:今年のツアーやレコーディングを経たことで、今までのオトループの歴史の中でも「ライブがすごい」と言われるような状態になりつつあると思っていて。今回のリリースを経て、3ピースとは思えない音圧とライブ感にさらに磨きをかけて一回りも二回りもデカくなって、最高のライブバンドになった状態でファイナルの代官山UNITを迎えたいと思います。ぜひともそのライブを体感しに来て下さい!

Interview:IMAI

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