2015/10/24@東京LIQUIDROOM ebisu
出演:BURGER NUDS / Poet-type.M / Good Dog Happy Men
こんなにワクワクした気持ちでライブを観るのは正直、ちょっと久しぶりだ。というのは、会場に集まっていたオーディエンスの多くも同様の気持ちだったのではないだろうか。昨年、10年ぶりに奇跡の復活を遂げたBURGER NUDSのライブを同じくここ恵比寿LIQUIDROOMで見つめていた人々もそうだったであろう。この日はそのBURGER NUDSに加えて、長らく活動休止中だったGood Dog Happy Menが4人体制で復活する。JUNGLE☆LIFE誌面では数年に渡り連載を展開していたこともあり、彼らとの縁は特別に深い。そして現在はPoet-type.Mを率いる、門田匡陽。この風変わりな男がこれまでに携わってきた3つのバンドが一堂に会する“festival M.O.N -美学の勝利-”。ワクワクしないはずがない。
期待感で満ちた会場の空気を切り裂くように、鋭いギターノイズが鳴り響きBURGER NUDSのライブが始まる。内田武瑠(Dr./Cho.)の激しいドラムのビートが身体を揺さぶる「ANALYZE」が、オープニングチューン。破壊衝動とでも呼べるような、尖ったサウンドの質感は彼らならでは。ささくれだった十代の反抗心をまるで失っていないかのごとく刺々しい音と言葉が、2曲目の「不感症」でも襲い掛かってくる。昨年の復活ライブでも演奏した新曲「LESSON」では“君は独りで良い”と優しげに歌うが、その響きはどこか不穏だ。一転、MCでは高校時代からの友だちならではの、丸山潤(Ba./Cho.)と門田のユルい掛け合いで会場の笑いを誘う。この日の前に行われた名古屋と大阪の公演を振り返り「本当に楽しかった。今日が来るの、寂しかったもん」と語った門田。終わりへと向かう寂しさは誰もが感じつつも、次々と奏でられていく独特の孤高たる楽曲たちにワクワクが止まらない。そしてラストの名曲「ミナソコ」で、会場の興奮は一度目のピークを迎えた。
興奮冷めやらないオーディエンスをBURGER NUDSのそれとはまた違う、独自の世界観で統一されたライブで圧倒したのはPoet-type.Mだ。黒を基調としたシックな衣装で身を固めた4人のメンバー。会場に流れる門田の声によるナレーションは、彼らが今年1年をかけて表現している“A Place, Dark & Dark”…夜しかない街へと観客たちを誘う。10/21に発売したばかりの『A Place, Dark & Dark -性器を無くしたアンドロイド-』【秋盤】でもオープニングを飾る「だが、ワインは赫(Deep Red Wine)」から、ムーディーに幕開けたライブ。MCの代わりにSEとナレーションが間に挟まれ、単なる“ライブ”とも異なった非日常の空間を楽曲と共に演出していく。後半の「神の犬(Do Justice To?)」では伊藤大地(Dr.)が参加して、水野雅昭(Dr./Cho.)とのツインドラムで圧巻の演奏を聴かせる。【秋盤】のリード曲「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」をポップに響かせた後は、「楽園の追放者(Somebody To Love)」で会場全体を夜しかない街へと完全に飲み込んでしまった。
船出を思わせるようなSEはかつてを知る者には郷愁と共に、特別な時間が始まることへの高揚感を掻き立てる。そして、あの4人が蝶ネクタイにベストを着たお揃いの衣装で登場すると会場を包んだ、割れんばかりの拍手。ステージ中央のテーブルにカエルの置物を据えて、「Nightmare's Beginning」で楽団の演奏がいよいよ始まった。ツインドラムの掛け合いに、メンバー4人全員が歌うスタイルはお祭りのような“祝祭感”をもたらす。特に「大行進」や「そして列車は行く」のような楽曲に、それは顕著だ。本当に久々に生で聴く「Bit by Bit」「Pretty little horses」「Sweet heart of moon」といった初期の名曲たちに、心が震える。本編ラストの「前夜祭」では門田と韮澤雄希(Ba./Cho.)が先に退場して、残された大地と武瑠によるドラムバトルで熱気と興奮は最高潮に。渾身の演奏を終えた2人は共に笑顔で肩を組み、ステージを去っていった。
当然このまま終わることなど望んでいない大観衆の声に呼ばれて、アンコールではまず門田が1人で登場してフロアに語りかける。わざと遅れて出てきたであろうメンバーと門田がじゃれあうように話す姿は、4人とも本当に無邪気な子どもに戻ったかのよう。この澄みきったピュアネスこそが、Good Dog Happy Menというバンドを今も昔も比類なき存在たらしめているのだと再確認した。「黄金の鐘」をオリジナルバージョンで演奏したのに続き、最後はこのバンドの象徴たる「(Can you feel?) 〜Most beautiful in the world〜」で幕を閉じた“festival M.O.N -美学の勝利-”。開催にあたって門田が発表したコメントで“BURGER NUDSからPoet-type.Mに至るまで自分と仲間たちが創った曲はどれも「何か」に満足しています”と書いていた、その特別な「何か」を会場にいた誰もが体感したはずだ。冗談めかして「4年後くらいにまたやるかも」と話していたGood Dog Happy Menの復活も含めて、次なる動きに向けて密かに動いているというBURGER NUDSと、現在進行形で“美しさの翻訳”を続けているPoet-type.Mの今後をこれまで以上の期待感を持って注視していきたい。
最後に門田が「これから続いていく“線”の中で忘れられない“点”になりました」と語ったように、その果てなき活動は門田匡陽の生が続く限りは決して終わることはないのだから。そして、いつ終わったとしても“美学の勝利”は間違いないのだ。
TEXT:IMAI