ポップパンクを基調としたハイテンションなサウンドとキャッチーなメロディを、凡人には予想がつかない構成で自由自在に展開させるTHE WELL WELLS。
中毒性の高い男女ツインヴォーカルから繰り出されるポップかつシュールな彼らの感性に触れれば、いつの間にか目の前に広がるのは“well wells world”。
約5年ぶりとなる待望のアルバム『It's a well wells world』を引っさげたツアーへと旅立つ直前の2人、Ba./Vo.09 THE WELL WELLSとG./Vo./Key.MAKO THE WELL WELLSに話を訊いた。
「僕らの世界なんて狭いし惨めだし臭いししょうもないんですけど、でもそれに賛同してくれるんだったらみんなで楽しもうよ」
●今日はアルバムインタビューということで09 THE WELL WELLS(以下、09)さんとMAKO THE WELL WELLS(以下、MAKO)さんの2人に来ていただきましたが、今日参加できなかったWELL THE BISONさんはアーティスト写真のこの真ん中の人なんですよね?
09:それは牛ですね。
●12月にリリースされたアルバム『It's a well wells world』は、アルバムとしては約5年ぶりということですが、かなり期間が空きましたね。
09:そうなんです。ドラムがいいタイミングで抜けちゃうんですよ。今まで3回くらい変わってるんですけど、なかなか見つからなくて。でも、CDを出さないとあまりにも周りがざわつかないので、そろそろザワザワさせたいなと。
●なるほど(笑)。
09:正式ドラムが見つかることを信じてレコーディングはヘルプで進めていたんですけど、それでもいい加減見つからないからもうこのままいっちゃおうと。
●結成が2001年だからもう10年ですよね。メンバーチェンジなどの苦労があった中で、なぜTHE WELL WELLSを10年続けてこれたと思いますか?
09:うーん、僕ら的にはダラダラやってたら10年経ったという感じなんです。1度も栄光の時代がない10年(笑)。
MAKO:アハハ(笑)。
09:レーベル運営も自分たちでやっているんですけど、僕らは人から言われて音楽活動をすることがあまり得意じゃないんですよ。
●社会不適合者ということ?
09:そうなんです(笑)。だから"売れよう"とか"メジャーデビューしよう"じゃなくて、"続けていこう"っていうのがコンセプトなんです。レーベルとかに所属せず、どこかのシーンにも属さずにやってきたからこそ、色んなバンドと対バンして、色んなシーンにちょっとずつ顔を出しながら10年やってこれたのかなと思います。
●それはTHE WELL WELLSの音楽性にも通じるような気がするんです。"売れたい"とか"メジャーデビューしたい"というような、いわゆる"邪念"が入ってしまうとアウトプット…自分たちの音楽が汚れるような感覚があるんじゃないですか?
09:いや~、そんな大層なことでもないですよ(笑)。
●というのは、今作『It's a well wells world』を聴かせてもらったんですけど、THE WELL WELLSの楽曲は普通のテンションでは生み出せないものだと思うんです。明らかにテンションがおかしい(笑)。
09:アハハハ(笑)。そうですね(笑)。
●ネガティブかポジティブかは別にして、そのテンションはすごく純粋な気がしたんです。さっき「楽しいからやってる」とおっしゃっていましたけど、自分たちが心から"楽しい"とか"やりたい"と思わないと出てこないテンションとか感情とか気持ちを音楽として鳴らしているような気がしたんですよね。
09:ああ~、確かにそうかもしれないです。
MAKO:やりたいことをやっちゃってる感はあるね。
●やりたいことをやっちゃってる感じがしました。
09:よく怒られますもん。今回もそうなんですけど、かなりふざけたMUSIC VIDEOを作ったりして「プロモーションになっていませんね」とか「売れる気ないよね?」とかよく言われます。
●2人はどういう瞬間に音楽をやっている歓びを感じるんですか?
09:僕は、お客さん同士が知らない間に友達になってるとかが好きなんですよね。「あれ? お前ら何で一緒にライブ来てるの?」「THE WELL WELLSのTシャツ着てたから話しかけて仲良くなったんだ」みたいな。そういう輪が拡がっていったらいいなと思います。
●MAKOさんはどうですか?
MAKO:うーん、ライブしてるときですね。
●それはなぜ?
MAKO:周りを見て笑っている人とかがいたら、"これは楽しいな"って、余計に思える。
●余計に思える? 何と比べて?
09:すみません、こいつしゃべりが下手なんです。
MAKO:しゃべ…得…日本語が。
●今日何しに来たんですか(笑)。
09:なにぶん、あっちの世界(不思議の世界)の生活が長かったので。すみません。
●今作『It's a well wells world』はパンクが基調となっていますけど、ポップなファストコアといいますか、歌が中心にあるとも思えないし、展開も想像つかないようなところにいくし…言葉で言えば"おもちゃ箱をひっくり返したような音楽"という印象があって。曲はどうやって作ってるんですか?
09:全部僕が口笛で作ってるんです。
●え? 口笛?
09:僕は喉が弱いので、曲作りで歌っているとすぐ声が枯れちゃうんです。
●ヴォーカルですよね?
09:はい。打ち上げで朝まで飲んでしゃべっていると声が枯れちゃうじゃないですか。なので、打ち上げのために喉を温存しておきたくて、普段あまり喉は使いたくないんです。
●ひどいな(笑)。
09:だからメロディを作るのは口笛なんです。僕はギターやベースよりも口笛に自信があるんです。ピーピー(口笛を吹く)。
●こんな人、初めてだ。
09:だいたいの場合はまず最初に歌詞を書いて、その歌詞を見ながら口笛でメロディを作って。歌詞は主にMAKOが書くんですけど。
●さっき「展開が想像つかない」と言いましたけど、それは歌詞を先に書いてそれをそのまま曲にしようとするから?
09:そうだと思います。普通は四小節じゃないですか。でも歌詞が足りないから三小節のまま形にしたり、拍がおかしくなったりする。
●歌詞が足りない場合は書き足したりしないんですか?
09:しないです。めんどくさいじゃないですか。
●めんどくさいって(笑)。
09:だから無理やり歌詞に曲を合わせたり、後は同じ歌詞の繰り返したりします。
●M-2「It's a well wells world」はアルバムタイトルにもなっていますよね。
09:タイトルからすぐにおわかりになると思いますが、これは「It's a Small World」のパク…インスパイアされた曲なんです。
●パク?
09:「It's a Small World」は要するに"世界は小さいんだ"というような歌詞で、"じゃあTHE WELL WELLSの世界って何なんだろう?"と考えながらまずこの曲の歌詞を書いたんです。
●ふむふむ。
09:「It's a well wells world」は、僕らの世界なんて狭いし惨めだし臭いししょうもないんですけど、でもそれに賛同してくれるんだったらみんなで楽しもうよ…という歌詞なんですけど、僕らの活動は本当に多岐に渡っているんですよ。さっき言ってくださいましたけど、ファストコアのバンドともやれば、パンクやメロディックともするし、本当に色んなバンドをやらせてもらっていて。だから"こういうやり方が俺たちのスタイルなんだよ"っていう想いも込めた曲なんです。逆に言えば"俺たちはこれしかできない"っていう開き直りかもしれないですけど(笑)。
●悟りとも言えますよね。
09:そっちがいいです。悟りです。
MAKO:アハハハ(笑)。パクッた(笑)。
09:僕はMr.Childrenも好きだし槇原敬之も好きだし尾崎豊も好きだし、Hi-STANDARDのようなメロコアも、FRUITYみたいなスカも、Ramonesも、パワーポップも…僕は何でも聴くんですけど、THE WELL WELLSはそういった色んな好きな音楽を自分がいちばんやりたいポップパンクにギュッと詰め込んでる感じなんです。
●欲張りなんでしょうか?
09:そうなのかもしれないです。色んなものを喰って「オエッ!」って吐いたらこれ(アルバム『It's a well wells world』)になったという。
●自分のアルバムをアピールしなくちゃいけないインタビューなのに、例えがものすごくひどい!
MAKO:アハハハハ(笑)。
●MAKOさんはどうやって歌詞を書くんですか?
MAKO:ふっと思いついたことです。書こうと思ったら書けないんです。
09:こいつ友達のこととか平気で歌にするんですよ。
●え? どういうことですか?
09:僕もそうなんですけど、結構狭いところに焦点を絞った曲が多いんです。M-9「I hate you!」という曲があるんですけど…。
●え? これ友達のこと歌ってるんですか?
09:ふざけた友達に対して「そばにいるとウゼェからどっか行け」というような歌詞なんです。愚痴です。
MAKO:愚痴ですね(笑)。私そういう歌詞が多いです。
09:M-7「Dramtic Woman」は憧れている友達のこと歌ってるし。
●そうだったのか(笑)。
MAKO:いい感情も悪い感情も、歌詞がはけ口になってます(笑)。
09:だから英詞にしないと歌えないっす。
●ほ~。
09:僕らは"やべぇこと言ってる歌をポップにしてみんなにシンガロングさせよう"という指向性もあるんですよ。だから暗い曲ほどメロディが明るい。ひねくれてるんでしょうね。
●それと、今作は基本的にテンションが高くてポップな曲が多いと思うんですが、M-10「Goodbye my treasure」だけはかなりエモーショナルじゃないですか。アルバムの中でもちょっと印象的な曲で。
09:「Goodbye my treasure」は、解散する友達のバンドのためだけに作った曲なんです。だからこの曲だけはどうしても明るくできなかった。
MAKO:ふざけられなかったね。
09:うん。基本的に"わかってくれる人だけに伝わればいい"という感じで曲は作ってるんですけど、この曲だけは"お前らにわかってほしい"という。
●めちゃくちゃいい話じゃないですか!
09:やっぱり嘘です。"お前らにわかってほしい"とか全然思ってないです。
●褒められたら否定するという。
09:ひねくれ者なので恥ずかしいんです(笑)。
●それと最後のM-11「Life is beautiful」ですけど、「Goodbye my treasure」の後ということもあり、"Life is beautiful"というタイトルということからも、全肯定的というか、アルバムの最後を飾るにふさわしいエモーショナルでピースな楽曲を想像したんですよ。
09:はいはい、わかります(笑)。
●で、実際に聴いてみたら…この曲もドタバタですね(笑)。
09:この曲はMAKOが歌詞を書いたんですけど、映画『Life is beautiful』を観て感動して、自分なりに「私の中の"Life is beautiful"ってどんなのだろう?」と勝手に考えたらしいんですよ。
●なるほど。独自の解釈で。
MAKO:だから映画『Life is beautiful』とは全然関係ないことを書いてます。
09:いきなり"昨日飲み過ぎて頭が痛い"から歌詞が始まりますからね。
●ひどい(笑)。
09:ろくでもないです。MUSIC VIDEOはこの曲で作ったんですけど、もうひどいっすよ。
●さっき「かなりふざけたMUSIC VIDEOを作った」と言っていましたが…。
09:うめちゃん(WELL THE BISON)が八王子の街の色んなところでご飯を食べたり走ったりする映像です。
MAKO:まったくプロモーションできていないよね(笑)。
●八王子といえば個性的なバンドも多いじゃないですか。THE WELL WELLSが10年間のびのびとやってきたのは、八王子を拠点にしているということも関係しているんじゃないですか?
09:そうですね。八王子は正統派のバンドも多いですけど、逆にすごい個性を持ったバンドも多くて、なんか音楽シーンのひとつみたいになっているところもあって。
●そうですね。
09:全国的に有名なバンドがいる一方で、アンダーグラウンドなバンドもたくさんいるんですよ。そういった人たちからの影響も大きくて。八王子で先輩のバンドの活動を見たりして、「自分たちはこうやりたい」というものを構築していった感じがありますね。
interview:Takeshi.Yamanaka