磨きぬかれたライティングセンスに男女ツインヴォーカル、動的に感情を揺さぶるエモーショナルなライブでシーンを魅了してきたwinnie。
昨年2月に4thアルバム『Synchronized』をリリースし、同作ツアーファイナル(4/23新代田FEVER)を大成功させた彼らが、そのファイナルのライブ映像が詰まった初のライブDVDと待望のニューシングルを完成させた。
結成10周年を迎え、バンドして更なる高みへと突き進む彼らは、決して薄れることのない記憶と音像を鳴らし続ける。
「そういう中で地方に行ったら、ライブハウスの人とかすごく歓迎してくれて。色んなことの積み重ねがあったツアーだった」
「ただ俺が勝手に、仮歌のデモで"Forget me not"という言葉を入れていただけなんです。それが形になるって、なんかよかったなと」
●昨年2月に4thミニアルバム『Synchronized』をリリースし、ツアーが4/23まででしたよね。ツアーの途中で震災が起きたわけですが…。
okuji:地震以降の最初の浜松って、パッとステージ出たときにめっちゃお客さんがいて、「ウォー!」という感じがあったんです。で、"前はこんなんじゃなかったな"というのが正直あって。今回のアルバムで盛り上がってそうなっているのか、地震の反動というか日本中が傷ついているからなのかよくわからなかったんですけど、すごくシンプルに言うとすごくよかったよね? "ライブやってよかったな"というのももちろん思ったし。
●色々悩んだけどやってよかったと。
okuji:みんな「音楽に助けられました」みたいな。でもこっちはこっちで、ライブに来てくれて「ウォー!」となってくれている。それに助けられたっていうのがあって。
●素晴らしいですね。
okuji:なんか"すごくややこしい時期にバンドでツアーやることになっちゃったなあ"という気持ちはあったんですけど、でもそうじゃなかったら経験できないことだった。一生忘れないかなっていうのはありますね。
●うんうん。
okuji:ツアー後半はまだ余震とかすごく多かった時期で。自分たちは名古屋に居たり、金沢で美味いもの食ったりしてるけど、地震速報とかで「東京またすごいわ地震」って不安な感じだったんですよね。
iori:八戸でも停電になったしね。
okuji:帰りに北海道から本州に渡るときも震度5弱とかあって、フェリー乗りながら不安なんですよ。大丈夫かこれ? っていう。そういうのがずっとあった経緯でFEVERでのファイナルだったから、特別感はやっぱりすごくあったし、「ただのファイナルじゃねえぞ」っていう想いはすごくありましたね。
iori:ファイナルを迎えてすごく安心しました。
●音楽業界は4月に入ってからも自粛ムードみたいな雰囲気がありましたね。
iori:でもそういう中で地方に行ったら、ライブハウスの人とかすごく歓迎してくれて「みんなが来れない中でそれでもやっていきたいから、東京のみんなにも"来てくれ!"と言っといてください」みたいな感じで。そういう色んなことの積み重ねがあったツアーだったね。
okuji:後から思ったんですけどね。
●今回のDVDに収録されていますが、ファイナルはすごくよかったという印象があって。
okuji:お客さんがクラウドサーフしてioriの前に落ちる映像とか入っていたけど、ああいうのはやっぱり観ていておもしろいし、すごく盛り上がってる感あるけど…でもライブの理想はなんなのかはまだよくわからないですね。
iori:いつまでも満足できへんもんなんやって。ねえ?
●うん。そうだと思います(笑)。
okuji:中途半端に見えない感じがいいっすね。わりと今の感じなのかな。
●去年はツアーが終わった後も、フェスやライブで忙しかったみたいですが、8月にFOUR GET ME A NOTSのレコ発に2マンで出たことが今回のシングルに繋がっているんですよね?
okuji:そうですね。
●okujiさんがMCで「"Forget me not"という言葉が昔から好きなんだ」という話をしゃべりすぎて、1曲削らなくちゃならなくなったという(笑)。
okuji:そうそう。そこで今回のシングル曲のことも話したんです。「"Forget me not"というタイトルの曲を今書いてて…というか、俺が勝手に作っててこういう感じなんだけど」って、俺が弾き語りでちょっと歌ったんです(笑)。
●ハハハ(笑)。
okuji:それをちゃんとつじつまが合うようにioriが歌詞を書いてくれて。
iori:うふふ。
okuj:そのときはただ俺が勝手に、仮歌のデモで"Forget me not"という言葉を入れていただけなんです。それが形になるって、なんかよかったなという(笑)。FOUR GET ME A NOTSにも「このタイトルでシングル出すけど」と言って了承もらったんです。しかもFOUR GET ME A NOTSは今回のツアーの大阪に出てくれるんです。
●おおっ! なんか繋がってますね。ところでokujiさんは"Forget me not"という言葉が昔から好きなんですか?
okuji:そこだけ取り上げるとなんか変ですけど(笑)、いつもはioriが歌詞を書いているけど俺もすごく言うんですよ、キーワード的なものやタイトルだったりを。
●うんうん。
okuji:そこで好きな言葉とかかっこいいと思う言葉があって。ストックをしているわけじゃないですけど、"Forget me not"という言葉はすごく好きなんです。最初にFOUR GET ME A NOTSのバンド名を見たときも"すげーかっこいいな"と思っていて。それで8月の2マンのときにも言ってたんですけど、俺の中で"バンド名がかっこいいTOP 3"というのがあるんです。
●なんかおもしろそう。
okuji:1位はナイトメアなんです。ナイトメアはズルいなと思うくらいかっこいい。それで2位がFOUR GET ME A NOTSなんです。3位なんだっけな…。
●3位忘れてる!
okuji:とにかくFOUR GET ME A NOTSはかっこいいバンド名なんです。
●言葉の意味は関係しているんですか?
okuji:いや、意味はまったく関係ないんです。(銃を撃つポーズをしながら)「Forget me not!」みたいな。
●ハハハ(笑)。
iori:なんやねんそれ。
okuji:刑事の格好して。
iori:もうウチらには計り知れませんよこれは。
●なんか、僕はもっとロマンチックなことかと思ってました…。
okuji:ナイトメアとかもそういう感じですよ。(銃を撃つポーズをしながら)「ナイトメア!」っていう。
iori:なんやねんそれ! 意味わからんし(笑)。
●でもそのokujiさん発信のイメージというかキーワードをioriさんが歌詞でつじつまを合わせ、形になったんですね。
iori:でもね、私は単語のボキャブラリーがあるわけではないので、今回も苦労しました。
okuji:それバカってことだよな(笑)。
iori:ほんま恥ずかしいんですよ。
●よく今まで歌詞書いてきましたね(笑)。
iori:そうなんですよ。
okuji:何曲も書いてるとネタがなくなってきて、広がらないうちに次の作品が来ちゃってっていう感じでしょ?
iori:いや、別に広がるとか広がらないとかじゃないねん。「forget me not」に関して言うと、実は書いていたんですけど、なんか嫌やったんですよ。ありきたりというか。
●ほう。
iori:いつもは書くまでも至らずに「どうしようかな~」って考えてる感じなんです。でも今回はできてるのに嫌という。内容もそうやし、単語のチョイスも気にくわなくて。それで"どうしよう"って考えてたらレコーディングの前日までかかった。
●今回は苦労の種類が違ったと。
iori:私いつもそうなんですけど、ストレートな歌詞とか嫌いなんです。だからわざと色んな含みを持たせたりするんですけど、そういう自分の好みからいくとまったく真逆の普通なことを書いてきて、だからすごくイラついて。こんなの初めてでした。
●DVDと一緒にシングルを出そうというのはもともと考えていたんですか?
okuji:そうですね。だからとにかくいっぱい曲を書こうと思っていたんですけど、あまりできなかった(笑)。できたのは「forget me not」とM-2「secrets」の2曲だったという。
●その「secrets」ですが冒頭からピアノが入っていますね。
okuji:そうですね。前作『Synchronized』でギターをピアノに差し替えた「flame」という曲があって。
●確か「flame」のピアノはレコーディングのその場の思いつきからでしたよね。「ちょっとやってみよう」という。
okuji:そうそう。今回もそれと同じで、「flame」がよかったから、「またちょっとピアノ入れたいな」と言ってて。
●味をしめたと。
iori:味をしめた(笑)。
okuji:やっぱりいいんですよね。ライブでピアノをどうするかとか全然考えていないんですけど、単純に好きなんですよね、ピアノロックが。
●「secrets」はなんか独特な雰囲気がありますよね。アッパーじゃない、ちょっと冷たい感じというか。
okuji:いいですよね。あれ以上いっぱいピアノが入っちゃっても嫌で。なんかちょうどいいんですよね。ちょっとしたフレーズだけっていう。
●そうそう。
okuji:作ってて最高なんですよ。ちょっとだけ入ってきたときが「ウォー!」って(笑)。しかも今回のやちょっと高級なピアノなんです。ちょうど調律終わったばかりのなかなかいいやつがスタジオに置いてあって。レコーディングの途中からピアノで頭がいっぱいになって、「絶対にピアノ! ピアノを入れなかったらマジで嫌だから!」みたいな。
●子供か(笑)。
okuji:「secrets」は"実はこういう曲かったよね?" という感じで作り始めたんです。テンポ的にも、雰囲気とかも、"この雰囲気でまとまったらおもしろいだろうな"というのを相違して。それで結果的にすごくイメージに近い形になったんです。俺には珍しく。
●完成が見えやすかった?
okuji:思った通りにいったというか、ピアノに差し替えたらそれが更に理想としていたイメージに近づいて、雰囲気も出て。
●曲作りの最初は、自分の中で景色だったり情景が見えていたんですか? 感情とか?
okuji:俺そんなかっこいいのじゃないです。
●それ前も言ってましたね(笑)。
okuji:なんか雰囲気があっただけ。
●でもその雰囲気が自分の感情とリンクしたりとかは?
okuji:ああ~、俺そういうのないです。
一同:アハハハ(笑)。
okuji:"寂しそうな"とか"切なそうな"とか、そういうイメージはありますよ。
●でもそういうキーワードは、バンドのパブリックイメージとしてありますよね。
iroi:切ない気持ちになったから、それを音楽でやるというわけではないってことやろ?
okuji:うん。
●潜在的にストックしている雰囲気があるのかな。
iori:逆にもっと計画的かもしれませんよ。
●狙ってということ?
okuji:いやいやそれはないですよ。俺は基本的に"こういう曲が書きたい"と思っても書けないんです。だから「次はテンポが速い曲が欲しいね~」とバンドがなったとしても「任しとけ!」と言えない。
●できる人だと思ってました。
iori:私も。
okuji:そうなの?
●以前のインタビューで、「曲を聴くことに関しては中3ぐらいの頃からしこたま経験を積んできたから、何がいいのか何が悪いのかの判断力はすごく自信がある」とおっしゃっていて。
okuji:そんなこと言いましたっけ?
●言ってました(笑)。だから耳はすごくいい人で、音楽的な部分でイメージを落とし込める、いわゆる理論的な人なのかなと勝手に思っていたんですけど。
okuji:"こうなったらいいな"と思いながら書き始めても、思ったように着地するのは滅多にないんです。でも「secrets」はけっこうそれが上手くいったという。
●いつもはどうなるんですか?
okuji:だいたい「できない、もう終わり~」みたいな。
iori:え?
●終わるのか(笑)。
okuji:でも「できない、終わり」となった直後に別のものは形になったりするんです。要するに俺は何かをやらないといいものができなくて、でもその"何か"というのは完成しないものなんですよ。
●そうだったのか(笑)。
okuji:だからもうこの流れに乗るのがしんどいんですよ。最初の3曲はだいたい駄目なんですよ。それがもう自分でわかってる。
●要するに10キロぐらい全力疾走してヘトヘトになって、その後100m走ったらめちゃくちゃ速かった、みたいな。
okuji:面倒くさいですよね(笑)。
●病気ですねそれ。
iori:アーティスト気質なんです(笑)。
●感性を引き出すのに時間がかかるというか。
okuji:それが面倒くさい(笑)。
●だから毎回「曲はなかなかできない」と言ってたのか。
iori:そういうときは『アメトーーク!』観てても「おもしろくない」って言うんです。相当ですよコレ。
●相当ですね。
okuji:おもしろくないでしょ、だってそんなときに観ても。
iori:おもしろいよ~いつ観たって。
●うん。『アメトーーク!』はいつ観てもおもしろいと思いますけどね。
iori:相当おかしな所に入っていくんですよ。
●でも「scecrets」は感性がスッと出てきてくれたと。
okuji:すごく満足です。
●あと今回ちょっと訊きたかったのは、ジャケットのことなんです。今までのジャケットはバンドのイメージに合ったというか、オシャレな洗練された感があったんですけど…。
okuji:なんかwinnieはよく「オシャレだ」と言われたりすることが多いんですよ。
●はい、そう思ってます。
iori:アハハハ(笑)。
okuji:でもオシャレなのはioriだけで、他は別にあまり…。
●確かに見た目はioriさんしかオシャレじゃないですけど(笑)。
一同:アハハ(笑)。
●あ、すみません(笑)。ただ、音楽とか世界観からセンスがにじみ出ていると感じていて。洗練されているというか。だから今回のジャケットは「おっ!」と思ったんですよ。「どうした?」と。
okuji:いいですよね~(しみじみ)。
●今回のジャケットはokujiさんが持っているあっちの面が出たんだというのは見たらすぐわかりましたけど、今までに無い流れだなと思って。なんかぶち壊したかったんですか?
okuji:いやいや(笑)、そんな突拍子もないことを急にやり始めたような感覚も全くないんですけどね。
iori:ないよな。
okuji:ただ、インパクトは求めていて。前作とか前々作でもジャケットのアイディアとして「骸骨でなんとか…」というのはあったんです。
●そうだったんですね。
okuji:それと、昔のハードロックのジャケットとかでエアブラシとか使って細かくやっているやつとかあるじゃないですか。
●はいはい。昔は多かったですよね。
okuji:そういうジャケットが結構好きで、ああいうのもおもしろいかもしれないなと。それでとにかくioriに変なポーズをさせて、それを基に作ろうということで始まって。
●なるほど。
okuji:そこからまあ、色々方向変えながらやっていくうちに「骸骨にしよう」と。
●メタルの血が騒いだと。
okuji:うん。火で燃やそうと。
●騒ぎすぎですね、血(笑)。
okuji:そうそう(笑)。それで「雷でバーンッ! みたいな」とか言ってたら、それは違ったんですけど。
●アハハハ(笑)。
iori:ほんまは怪獣倒したかってんけどな(笑)。
okuji:でも、昔のレコード時代のああいうエアブラシで描いたジャケットとかは、やっぱりあの時代のあのサイズで、エアブラシとかを使って手描きじゃないと出ないニュアンスなんですよね。
●確かに最近はああいうのあまり見ないですね。
okuji:そう、今はみんなパソコンで、Photoshopとかでいじると似た様な感じにはなるんですけど、ニュアンスが全然違うんです。今回色々と試行錯誤したんですけど、なかなか上手くいかなくて。すごく苦労したんですよ。デザイナーは俺じゃないけど、俺もそのやり取りとかですごく苦労して。もう2度とジャケット制作に関わりたくない(笑)。
interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:HiGUMA