音楽メディア・フリーマガジン

Hi+TRY

運命的に出会ったガテン系 HIP HOPユニット

 ガテン系の仕事を通じて奇跡的&運命的に知り合った3人のヴォーカリストと1人のサウンドプロデューサーによるユニット・Hi+TRY。

RYOが綴った嘘のない言葉を、RYOのハイトーンボイス、TAKUの感情豊かな歌声、YUTOの大胆かつリズミカルなラップで作り出すHi+TRYの音楽は、毎日を必死に生きる人たちの背中を強く、そして温かく押してくれる。

Interview

●今までは自主制作でシングル2枚とアルバム1枚をリリースしたらしいですが、プロフィールに"2008年ガテン系の仕事を通じて知り合った仲間が意気投合して結成"を書いてありますが…。

RYO:その通りです。ガテン系というのは内装業なんですけど。

●内装業?

YUTO:天井の骨を組んだり、壁の骨を組んで壁材を貼ったり。

RYO:クロスの下地ですね。

●え? その会社でこんな歌が上手い3人がいたんですか? ものすごい確率じゃないですか?

RYO:ですよね(笑)。本当に偶然なんですけど、僕がその会社に入ったとき、YUTOとTAKUとプロデューサーのItoがいて、でもItoは「音楽の仕事をやる」って独立していったんです。で、ある現場の打ち上げの二次会で4人でカラオケに行ったんですよ。そこで「これ、みんなで何かやったらおもしろいんじゃない?」と。

●すごい偶然ですね。

RYO:僕は昔、路上ミュージシャンをやっていたんです。で、3人で歌う前提でM-3「愛ノ詩」を作ってItoに聴かせてみたんですよ。そしたら「なかなかおもしろいな」って。

YUTO:最初は「やってみようか」っていう軽いスタートだったんですよ。で、曲を作ってみたらいい感じで、ここまで至るという。

RYO:とりあえずCDを作ってみて、手売りで売れるだけ売るっていう。ライブは全然やってないんですよ。

●え?

RYO:これからはライブをガンガンやっていくつもりなんですけど、当初はCDを作って知り合いに売るっていう活動スタンスでした。だから完全に自己満足ですよね。「CDできたぜ!」って。で、友達とかに「俺こういうのやってんだよ」って。

●全然やってないやん!
2人:ハハハハ(笑)。

RYO:そのときにホームページを作ってみたら、コメントが書きこまれたりして反響が多くて。それで「じゃあ2枚目を作ってみるか」って。そしたら「これいいな」と。

●ということは、自主制作のCDは手売りとHPでの通販のみ?

RYO:そうです。だから完全に自己満足でした(笑)。そのノリでアルバム『A ROUND』を作ってから「ちょっとライブやってみようか」という話になって。

YUTO:知り合いのイベントに出させていただいて。ライブはまだその1回だけしかやってないんですけど。

●すごいな(笑)。

RYO:でも最初から"これはイケるな"っていう確信があったんですよ。そもそもこの4人が同じ会社で出会うって奇跡みたいな話じゃないですか。

●確かに歌がすごく上手い3人と音楽プロデューサーがひとつの会社で出会うって嘘みたいな話ですもんね。社長からしたら「お前ら何やってるんだ!」っていう話ですけど(笑)。

RYO:本当にそうですよね(笑)。そんな運命的な出会いだったから、もうやるしかないなって。

●曲は基本的にRYOさんが作っているんですか?

RYO:9割方そうです。でも前に路上ミュージシャンをやっていたときとは少しずつ作り方が変わってきて。

●その話を聞いて思ったんですが、今作のM-1「椿咲く頃に…」とかM-2「流星」は、構成が3人で歌うことが前提になっていますよね?

RYO:まさにそうです。僕は曲作りにあたって、3人の声を最大限活かしたいと思っていて。構成もキーも3人で歌うことが前提で、聴かせどころはTAKUに任せることが多くて。僕は個人的にTAKUの声がすごく好きだから、サビでは彼に歌ってほしいんです。対して、YUTOはラップや特徴的な歌い方をしてもらうことが多いんですけど、常に新しいことをして欲しいというか、挑戦者でいて欲しいんです。

YUTO:鉄砲玉だね。

●M-6「一秒先へ」のBメロとかそうですよね。棒読みみたいなヴォーカルがすごく特徴的で。

RYO:まさに棒読みみたいに歌って欲しかったんです。「歌いにくい」って文句ばかり言われますけど(笑)。

YUTO:最初に聴いたとき「すごいメロディだな!」って。難しかった。

●RYOさんとしては、3人のヴォーカリストの個性を引き出したい?

RYO:そうですね。可能性を追求して欲しいというか、いちばん最初に会ったときに感じた衝撃を常に出していて欲しいんです。YUTOはラップが上手いし、TAKUは艶っぽくて感情的なヴォーカリストだと思っていて。2人とも僕にないものを持っていて、初めて一緒にカラオケに行ったときに"こいつらすげぇな!"と思ったんです。

YUTO:3人とも好きなジャンルやアーティストがバラバラなんですよ。それもHi+TRYのバランスとしてよかったなって。

●リード曲の「椿咲く頃に…」なんですが、音楽にするのは一般的に"桜"をモチーフにすることが多いじゃないですか。なぜ"椿"をモチーフにしたんですか?

RYO:桜ソングって多いじゃないですか。それがイヤだったんです(笑)。

YUTO:RYOは結構アンチな視点が多いんですよ。

RYO:僕たちの職業って影に隠れている感じじゃないですか。スーツ着て表を歩いてるわけでもないし。僕から見るとそれが"桜"なんですよ。

●「ビジネスマン」と呼ばれるような。「日本背負ってます」みたいな。

RYO:そうそう。そう考えると僕たちは"椿"なんです。「でも俺たちがいねぇと家建たねぇぞ」っていう。

●そういう視点はRYOさんの性格的なものなんですか?

RYO:そうですね、結構引っ込み思案です。Hi+TRYもそうで、僕は別に目立たなくてもいいので2人のいいところを出したい。

●そういう視点が"椿"に行き着いたのか。

RYO:漫画『スラムダンク』の魚住が赤木に言った「泥にまみれろよ」ですよね。僕はそのポジションにいたいんです。

interview:Takeshi.Yamanaka

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