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“RUSH BALL 2015 feat. GREENS 25th Anniv.”

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株式会社 グリーンズコーポレーション 力竹 総明(りきたけ そうめい)

今や関西の音楽好きの間で絶大な知名度と信頼を誇る、夏休み最後の大型ロックイベント“RUSH BALL”。昨年から会場を移し環境が変わった経験を踏まえて、今年はインフラを強化し、よりライブを楽しめるような仕組みができあがった。そこで今回の取材では、“RUSH BALL”初心者である馬渡司、経験者であるPJの2人がそれぞれの視点でイベントの魅力に迫る。また、充実のラインナップが決定した経緯について語られた、力竹氏のブッキング裏話も必読だ。

 

 

 

●“RUSH BALL”は去年から会場を移して開催されていますが、今年は試行錯誤してインフラ設備を整えたそうですね。なぜそのような動きになったのですか?

力竹:まず、会場である泉大津フェニックスは大阪府の土地なんですよ。今まで10年間やっていた会場は売り地だったんですが、「買い手がついたので会場を移ってください」と言われたのが去年だったんです。ただその移動先は、最低限のインフラが整っていない状態だったんですよ。一番問題だったのは水はけ。水はけが良すぎて地面が乾燥していたから、当日のライブで酷い砂埃が立ってしまったんです。いくら出演者が好みでも劣悪な環境の中では楽しみも半減しちゃうだろうし、土地の管理者にそれを伝えて改装してもらいました。砂地だった場所が今は芝になっていますよ。

●早速対策をしてくれたんですね。

力竹:他にも、いつでも散水できるように客席の中程に散水線を出したんですよ。その辺りのストレスが無くなるとすごくやりやすくなるでしょうから、胸を張って「来てくれて大丈夫だよ」って言えるかなと思います。お客さんの事を考えて試行錯誤が生まれるのは当たり前なんですけど、“環境によってこんなに左右されるのか”と改めて思い知らされました。

●それが大きな改善点だと。

力竹:とはいえ、いくらこちらがインフォメーションしても、去年来てくれた子はまだ環境の悪印象が残っていると思うんですよ。その人達のために、更衣室を用意しようと思っています。お客さんには女子も多いですし、そういうインフラはあった方が良いのかなと。

●そういった点も含めて、お客さんの目線で整えた。

力竹:そうですね。野外である以上どうしても不便はあるでしょうが、できるだけサバイバルにならないように。ただ、まるで屋内みたいな完璧なインフラ整備はしたくないんですよ。日常から抜け出した環境の中で音楽にどっぷり浸かれるというか、それ以外の事をやる余地がないような雰囲気にしたいんで。

●そんな“RUSH BALL”ですが、今年は2days開催なんですね。

力竹:そうですね。GREENSの創立25周年にあやかりました(笑)。今はバンドが元気だから出てほしい人もいっぱい居るし、「今年は出たい」って言ってくれる人も増えてきて枠が足りないんですよね。かといってステージをたくさん作ると、被っちゃって見えないアーティストが出てくるし。よく、1曲だけ聴いたらダッシュで移動して最後の曲だけ聴くということがあるじゃないですか。あれはちょっと苦手で…。“RUSH BALL”って実は物理的には全バンド見れるんです。そういうのって逆に珍しいじゃないですか。

●確かに。

力竹:主催者側としても全部観てほしい。だから枠は増やせないので、ここぞとばかりに2日間にしようと思って(笑)。

●なるほど(笑)。枠が足らない上での2daysだから、すごく凝縮されたものになっているでしょうね。

力竹:そうなりますよね。だからメンツもいろいろと悩むんですよ。

PJ:今年は日にちごとに出演者の色がパキッと分かれてますね。

力竹:でも、2daysチケットはすぐに売り切れたんですよ。それが面白かったですね。

PJ:“RUSH BALL”というイベント自体に期待しているお客さんが多いんでしょう。

力竹:“行ったら楽しいんじゃないか”と期待して来てもらって、“やっぱり良かった”と思ってもらえる流れを盤石なものにしないと。インフラも含めてまだまだやるべき事はいっぱいありますね。

●今回は初日のトリがBRAHMAN、2日目のトリが[Alexandros]ということですが、どのようにして決まったんですか?

力竹:ライブの構想を練ってブッキングを始めるにあたり、BRAHMANと[Alexandros]は最初からトリを前提に交渉を始めたんです。BRAHMANは行動力で自分の演奏を見せてくれる気がして。

●そこから発信されるメッセージに期待している。

力竹:別にTOSHI-LOWも直接は言わないだろうし、体で表現するでしょうね。つい最近まではMCがめっちゃ長かったんですけど、最近は少し変わってきたらしいので、それを本番で確かめたいと思います。[Alexandros]に関しては、彼ら自身いろんな試行錯誤がある中で、バンドとして弾けるためのもう一踏ん張りという意味でお願いしました。大半の人は「the telephonesがトリだろう」って予測していたみたいですけどね。「KANA-BOONじゃないか」って声もありましたけど、いざ発表したらTwitterに「the telephonesちゃうんかい!」って書き込みがたくさんありました(笑)。でも[Alexandros]がトリっていうのは曲げたくなかったから。

●the telephonesも“RUSH BALL”の常連ですよね。

力竹:結構出てくれていますね。今までthe telephonesのステージは昼間が多かったから、ディスコが作れなかったんですよ。だから活動休止を前に、泉大津フェニックスをディスコにして気持ちよく関西のライブをやり遂げてもらおうかなと思っています。

●またKANA-BOONは15時の時間帯ですね。関西の同世代バンドであるTHE ORAL CIGARETTESは13時と近い時間に入っていますが、あえて意識して入れているところがある?

力竹:タイムテーブルで本当に深い意味があるのは、トリだけですね。the telephonesは今回に限って例外ですが、基本的にタイムテーブルは直感です。それぞれのワンマンを観に行って感じたものと、自分の中でイメージした流れで決めています。

●直感的に選ばれたところが、ジャンルとしてしっかり寄っているというか。

PJ:自分の頭の中の妄想を、この男は形にしているんやと思うな。それがハマっている。

力竹:みんなに“このメンツならこういうタイムテーブルになるんじゃないか”という感覚があるように、僕も同じように持っているそれが映し出されているだけなんで。さすがに何年もやっていると、“ここは一番暑い時だな”“ここは夕暮れ時だろうな”みたいな一日の流れがわかってくるから、“このアーティストがこの流れでライブをしたら面白いだろうな”というのを想い描きながらやっていますね。やっぱり、シチュエーションはすごく大事だと思うんですよ。

●本当にそう思います。それによっていつまで経っても覚えているものですよね。

力竹:RIZEはいつも13時や14時頃に出てもらっているんですよ。だから本人達も“RUSH BALL”の事を「あぁ、あの暑いイベントね」って言ってましたからね。心じゃなくて体がグダグダに暑いっていう(笑)。お客さんもそんな感じだと思いますよ。

●今回は16時からということで、少し涼しくなる時間帯ですね。でもRIZEからの10-FEET、Ken Yokoyamaっていう流れはめちゃめちゃ熱い。

力竹:健さん(Ken Yokoyama)が出演していたミュージックステーション(以下Mステ)はすごかった。本当に勇気付けられましたよ。健さんは結構おちゃめな人で“RUSH BALL”にも何回か出てもらっていますが、ライブ中に全裸になった事があったくらいで(笑)。

●本当ですか(笑)。

力竹:だからMCでもおちゃめな事をするのかなと思っていたら、真面目に真摯な姿勢で臨んでいて。バンドによっては、テレビに出るのってカッコ悪いというイメージを持っている人もいるじゃないですか。でも“音楽を好きになってもらう為にテレビに出る人もいるんだ”っていうのを示したから、そういう事ができるっていうのはバンドマンに勇気を与えましたよね。

●パンクをやっている人たちの考え方も変わっていくかもしれないですね。

力竹:変わるんじゃないかと思います。それに音楽は全然知らないけどMステは観るっていう子たちも“バンドをやってみたいな”って思うかもしれない。すごく良いテレビ出演だったと思いますよ。

PJ:僕が面白いと思ったのは、RAZORS EDGEやgo!go!vanillasを大ステージにブッキングしているというところなんですよ。

力竹:実は一番最初に出演が決まったのは彼らだったんです。ボーカル(KENJI RAZORS)は昔から仲が良いんですけど「お前ら何年リリースしてへんねん! リリースする気があるなら、“RUSH BALL”でライブをやってワンマンまでの道を作ろう」という話になりまして。

PJ:じゃあ、大きいステージへの出演という。

力竹:本人達が一番ビックリしていましたね(笑)。お互いに夢を持ってやっているんですよ。go!go! vanillasやSHISHAMOはATMCステージから大ステージになりましたし、THE ORAL CIGARETTESはオープニングアクトから4番目になりましたから。

●着実にステップアップしていると。ATMCステージの位置付けはどういったものなんですか?

力竹:「ATMCって何ですか?」っていう問い合わせはめっちゃ多いんですよ(笑)。ATは青木 勉(“BAYCAMP”のオーガナイザー)の頭文字で、MCはミュージックコミュニケーションの略です。もともと青木さんが勝手に自分で小さなテントステージを組んで、DJやまだ無名なバンドのライブをやるところから始まっていて。そこにお客さんが行くようになり、徐々に有名なミュージシャンが出るようになって、だんだんステージが大きくなって…言ってみれば不法集会で作り出した場所が、なくてはならないステージになっているんですよね。ここから輩出されているアーティストは結構伝説を残しているんですよ。

●伝説ですか?

力竹:トリが終わった後にクロージングアクトっていうのがあるんですけど、この枠を踏んだアーティストはすさまじいことになるっていう伝説があるんですよ。去年はゲスの極み乙女。(以下ゲス極)で一昨年はKANA-BOON、その前が世界の終わりやサカナクション、the telephonesもやっていますね。

●レジェンドがどんどん輩出されていった。

力竹:ゲス極は“RUSH BALL”を終えて今度初のアリーナワンマンライブを大阪城ホールでするんですよ。KANA-BOONに至っては「来年は大きいステージでやります!」って言ってたら、そのステージでワンマンをやりましたからね。“RUSH BALL”ちゃうんかい! みたいな(笑)。

●アハハ(笑)。今年はその場所にWANIMAと銀杏BOYZが居るわけですが。

力竹:銀杏BOYZは青木さんがトリに抜擢したんです。もともと4人だったバンドが峯田くん1人になって、どういうステージになるのか楽しみですね。バンドでやるのか、1人でやるのかもまだ明かされていないんですよ。

●他にもATMCには注目の若手がバンバン入っていますね。

力竹:この中でも特に夢があるのが、密会と耳鳴り。ノーマネージメント&ノーレーベルで本当に自分たちだけでやっているから、これは応援してあげたいなと。今年“RUSH BALL☆R”というプレイベントでも良いライブをしたんですよ。だったらもうちょっと駆け上がろうかということで、夏のステージにも出てもらいました。これは青木さんと2人で考えたんですよ。メジャー界を賑わせている新人達を選ぶのか、地元大阪で頑張っている、みんなで一緒に夢を持てそうなバンドのどっちが良いか…最後の最後に「じゃあ夢だろ」ってことで決まったんです。

●想いが詰まっていますね。

力竹:みんなの想いが向いているバンドですね。活動自体がまだ2年半くらいの駆け出しで“こいつらが売れたら夢があるよな”みたいな。大人の力をほとんど使わずに、マインドで売れていってくれたらと思うんです。お客さんも大人に踊らされてCDを買うんじゃなく、ちゃんとリアルを見て良さを知った上で買うっていう。

●ある意味、“RUSH BALL”からステップアップしてほしいというか。

力竹:まさにそうです。“RUSH BALL”はゴールじゃなくて、あくまで通過点なんですよ。僕らは多くのお客さんがちゃんと音楽を聴けて、アーティストがしっかり演奏できる環境を作るから、後はお互いにガチンコで見合ってもらって次のワンマンに繋げてほしい。その想いだけでやっています。

PJ:そういう意味で言うと、“RUSH BALL”をやっている意味が年々大きくなっているなという実感がある。これってアーティスト達が音楽で大成していく道標を作っている野外イベントだなと思うんですよ。特に今年はそれをすごく感じていて。

力竹:ブッキングには試行錯誤しているんですよ。2009年くらいまでは、どういう風に進めたら“RUSH BALL”という名前がもっと広がるかを本当に悩みながら考えていました。当時から“来てもらいさえすれば誰でも絶対に反応するブッキングだ”とは思っていましたけど、“RUSH BALL”自身にもパワーがないとアカンなと思っていたんですよね。ここ最近ずっとチケットが売り切れているんで、やっと形ができたかなっていう感じです。

PJ:さらっとやっているように見えるけど、それはいろいろと積み重ねてきたものがあるからこそなんやね。

Interview:馬渡司 / PJ
Edit:森下恭子

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