2014年6月にシングル『ego-izm』をリリース。そのクオリティーの高さに各方面から称賛を受けたla la larksが、7/29に2ndシングル 『ハレルヤ』を発売する。TVアニメ『空戦魔導士候補生の教官』のエンディングテーマでもある表題曲「ハレルヤ」ではブラスアレンジも取り入れ、きらびやかなサウンドでバンドの新たな魅力が見える。「Q And A」では疾走感のある“らしい”ナンバーを披露し、坂本真綾へ提供した楽曲のセルフカヴァー「色彩」で美しくドラマチックに展開。聴くものの心をグッと掴むような純度の高い作品に仕上がった。実力派バンドとしてデビューし、進化を続ける彼ら。前回と同じくVo. 内村とKey. 江口に行ったインタビューからは、『ego-izm』からの1年で感じた特別な想いが詰まっていた。
●前作『ego-izm』のリリースから1年。その間もアーティストへの楽曲提供や自主企画イベント“OS”を開催したりと、精力的に活動をしていたと思うんですが、振り返ってみてどんな1年でしたか?
江口:(自分に)子供が生まれたっていう1年でした(笑)。
●ハハハ(笑)。おめでとうございます!
江口:それから生活や音楽との距離感がだいぶ変わりましたね。自分が作りたいものを作ったり、仕事で音楽に関わることが当たり前になっていたんです。でも、それは全然当たり前のことじゃなくて「とてもありがたいことだ」ということに改めて気づきました。例えば1〜2時間フレーズに悩んだ時、音楽に没頭できることがどれほどありがたいことかを感じるというか。それくらい時間の価値が高まりましたね。
●バンドの変化としては何かありましたか?
江口:メンバー各々が何をしなければいけないか、どんどん明確になっていきました。今までみたいに仲良く楽しく活動できるラインがあって、そのラインを越えるのなら、それぞれがもっと頑張らなきゃいけないっていう状況になった。例えばマネージャーがいれば、車を運転してもらえて、機材も運んでもらえて、衣装も用意してもらえる。それがla la larksでは当たり前じゃないんですよ。それを突きつけられたっていう。「頑張って上に行くか、楽しいことをやるだけのバンドにするか」みたいな。
●その2択に迫られた時、どんな判断をしたんですか?
江口:上に行きたいと言っても、みんなの能力がいきなり上がるわけじゃないから、「上に行きたいな〜…」みたいな(笑)。
●やんわりと上に行くと(笑)。今年の1月には坂本真綾さんへの楽曲提供(M-3「色彩」)がありましたね。やってみてどうでしたか?
江口:かなり無理をしましたね。真綾さんは格上のアーティストですし、それに関わる他の楽曲制作陣とも並ばせてもらえるわけじゃないですか。だから、そのプレッシャーと頑張りたい気持ちでオーバーヒートしたっていう(笑)。
●じゃあ、結果的にバンドのキャパを広げるような仕事になったと。
江口:そうですね。『ego-izm』の時も頑張ったと思ったんですけど、それを越えましたね。
●それを経て、7/29にシングル『ハレルヤ』のリリースがありますね。M-1「ハレルヤ」は良い意味で予想を裏切ってくれる作品で、特にサビの爽快感のあるサウンドは意外でした。
江口:「ego-izm」と「色彩」は、la la larksっていう流れを汲んだ時に、何となく楽曲の想像はできたんですけど、「ハレルヤ」は違ったんです。ディレクターから言われてハッとしたのが「la la larksがやって格好いいと思われることをやりましょう!」って。僕の中では勝手に「ヒステリックに疾走感のあるサウンドと、バンドサウンドの融合がla la larksだ」と思って曲を作っていたんですよね。でも、「このままでも悪くないけど、もっと君たちにはやれることがあるんじゃない?」っていう提案があったんですよ。
●思わぬ角度から提案があったと。
江口:他にも候補曲を書いて何曲も聴いてもらっていたんですけど、その中で一番意外だった曲が選ばれて、どんどん変わっていったんですよね。そのディレクターが担当じゃなかったら、この曲は選んでもらえなかっただろうし、たぶんアイデアも出てこなかったと思います。
●この曲は、TVアニメ『空戦魔導士候補生の教官』のエンディング主題歌ですが、歌詞は「ego-izm」の時のようにアニメに内容を寄せて書いたんですか?
江口:そうですね。バンドのカラーもふまえて、アニメの内容から外れないように書きました。
内村:監督にお会いした時に「それぞれの少女の葛藤を描いて欲しい」という要望をもらったんです。そのアニメはキャラクターの違う女の子たちが、みんな同じ人のことが好きっていう設定があるんです。でも、私も含めてそれぞれ違うキャラクターなので、どんな人にも合うような歌詞にしようと思ったんです。
●内容は分かりやすくて、すごく明確ですね。
内村:昔は抽象的で言葉あそびみたいな歌詞が多かったんですよね。でも最近は、曲調や求められている質感に合わせて歌詞を書こうとしていて。「ハレルヤ」に関しては、あえて難しい言葉を使わないようにしたり、表現しようとしている主人公の年齢を考えて書きました。
●新しい表現ができるようになったんですね。
江口:客観的に自分のことが捉えれるようになったというか。
内村:突き詰めていくと、どうしてもアグレッシブな歌詞になってしまうんですよね。逆にM-2「Q And A」では、あえてそういう部分を描いているんです。この曲は“らしさ”や、ライブのアグレッシブ感を表現しています。
●確かに内村さんらしい内容というか。これは葛藤がテーマにある?
内村:実はこれを書いた時、la la larksとして一番忙しかった時期だったんですよね。やることがすごく多かったんだけど、きっとそれをこなせる人はいるし、もっと上手くできる人も沢山いる。そこで「前よりもこなせるようになっているはずなのに、何でこんなにできないんだろう? 」と思い悩んだ時に、勢いで書いたのがこの歌詞なんです。
●実際に悩んでいたものをそのまま書いたと。
江口:“答えは1つだ!”じゃなくて、“答えはなくてもいい”ですからね。「やるか、やらないか」じゃなくて「やらなきゃいけない」ということをどうやって消化して受け入れるか。そこが描けていると思います。
●サウンドとしては、la la larksらしい疾走感のある楽曲に仕上がっていますね。
江口:この曲はJ-ROCKの文脈に沿ったサウンドなんですが、「それをどれだけ匂わせながらla la larksらしくあるか」っていう実験的な部分がありましたね。ビートも今まで叩いていないようなリズムで、Dr. ターキーの芸達者ぶりがものすごく発揮されるから、そういうところでもチャレンジがしたかったんです。
●「Q And A」のアウトロで、コード進行が崩れていくような展開から「色彩」のイントロへ繋がっていくじゃないですか。あの感じがすごく良いですよね。
江口:今は配信で楽曲のバラ売りが買えますよね。でも僕らは「CDを作らせてもらっている」っていう感覚が強いんです。そこには責任があると思っていて。お金をかけて作らせてもらっている以上、CDを買ってくれた人たちに対してその意味を伝えたいんですよ。「色彩」が提供した曲ということもあって、より繋がりを持たせたかったし、よりCDであることの意味を提示したかったんです。
●あの展開があるから、1つの作品として通して聴けるというか。
江口:あそこには「CDたるゆえん」と「それを作らせてもらっている人間の責任」をすごく込めています。CDを買ってくれた人に対して「ありがとう!」っていう気持ちがそこにありますね。
●その流れで聴く「色彩」がまた良いですね。崩れたコードからどんどん美しい展開に変わっていくっていう。真綾さんに提供した楽曲というところで、内村としてはいろんなプレッシャーがあったと思うんですけど。どうでしょう?
内村:提供した曲を私が歌ったバージョンが聴いてみたいという声は前からあったので、その気持ちに応えようと思って。でも、いざ歌ってみて「内村さんが歌ったバージョンを聴いたけど、別に…」となるといけないから「絶対にその気持に応えなきゃいけない!」と思って歌いました。
●期待に応えられるようにと。
内村:しかも真綾さん本人も「聴きたい!」と言ってくれて。嬉しかったんですけど、責任感も増しましたね。
江口:今思うと、前向きになれる流れができていましたね。考えてもしょうがなくて、とにかく進むしかなくなった時に、真綾さんが前向きな気持ちにさせてくれて。それもあって頑張れたというか。
内村:確かに。振り返ってみるとそうですね。
●比較されることも承知の上で、あえて挑戦したところもある?
内村:自分の評価がどうなるかは考えなかったです。真綾さんの歌を聴いた人にも別のベクトルで楽しんでもらえたらと思ったし、聴きたいと言ってくれた人に喜んでもらいたいっていう。ただそれだけを考えていました。
●「色彩」は真綾さんが書いた歌詞ですが、その影響はありましたか?
内村:「色彩」の冒頭で、“ひとりになると聞こえるの 苦しいならやめていいと”という歌詞があって、真綾さんに思わず「こういうことを思う時があるんですか?」って聞いたんです。そうしたら「ありますよ〜」なんて普通に答えてくれて。それもあって「Q And A」の歌詞ができたんですよ。真綾さんが言ってくれて半分ホッとしたというか、自分も頑張らなきゃいけないと思いました。
●なるほど。
内村:私、真綾さんの書く歌詞がすごく好きなんです。「色彩」も本当に好きで、それが今作に収録される以上、他の曲では別のベクトルで歌詞を書いて、作品として成立させたいと思ったんです。頭の中で緻密に組み立てた「ハレルヤ」と、自分の感情をむき出した「Q And A」という2曲が「色彩」と別の色で並ぶように作品全体を考えました。
●「色彩」が良い刺激になったと。そういうことも全部含めて、良い作品に仕上がりましたね。
江口:自分たちの力だけではできなかったと改めて感じます。
内村:『ego-izm』を出した時にも、「CDをリリースするのは当たり前のことじゃない」と思って。知っている人にもう一度会えたりとか、いろんな人の力が加わっていることを感じたんです。それを意識しながら制作やライブを重ねることで、より良い悩みが沢山できました。
江口:そういう悩みも「ありがたい話だ」とプラスに受け取れるようになったんですよね。
●そうなると、冒頭のお子さんが産まれた話に繋がって行く気がしますね(笑)。
江口:CDリリースも出産も、すごくありがたいことだけど大変なことも沢山あって。それを活かして成長させたいと思ったら、確かに(笑)。リリースは出産と育児と似ていた…(笑)。
●ハハハ(笑)。良いと思います。
江口:『ハレルヤ』は、作品としてすごく良いものができたと思うんですよ。「こんな作品を作ってみろコノヤロー!」っていうくらい(笑)。僕たちは音楽を作る人だから、そこをより追求していきたい。そういう意味では制作陣とのコミュニケーションが取れてきているし、レコーディングエンジニアとの距離も近づいたので、どんどん環境は良くなっていますね。
Interview:西田真司