“TOKYO BOOTLEG”という名前を聞いたことはあるだろうか?
100%日本のロック・オンリーのDJ&ライブ・パーティーにして、それぞれに際立った個性を持った4人組のDJチーム。それが“TOKYO BOOTLEG”だ。
“単に曲をかけるだけ”というロックDJのイメージを超え、TECHNOやHIP HOPからの正統なDJマナーも備えた4人のプレイ。さらには有名無名を問わず旬な楽曲をフロアに投下しつつ、注目の若手アーティストを中心としたライブ ブッキングでも今、話題を集めている。
2006年の結成以来、渋谷CHELSEA HOTELを中心に東京・仙台・名古屋・大阪・札幌にてイベントを主催してきた彼らが2012年、新たな段階へと進むべく動き出した。
その第一歩として 5/13に渋谷の4会場で行われるライブハウス横断型イベント“TOKYO BOOTLEG CIRCUIT'12”。その開催を前に、主宰者であるDJ O-ant a.k.a アーリー(以下、アーリー)とDJ SMYLEの2人に話を訊いた。
●今日はTOKYO BOOTLEGを代表して、お2人に来て頂いたわけですが…。
アーリー:自分が大好き! 女も大好き! 雰囲気イケメンDJアーリーしゃんです! イェー!
SMYLE:…どうも、DJ SMYLEです。
●(笑)。お2人はノリもファッションもまるで違いますが、そもそも何をキッカケに出会ったんですか?
SMYLE:元々が2人とも吉祥寺近辺に住んでいて、別のDJイベントをやっていたんですよ。それである日いきなりmixiメッセージが飛んできて、アーリーの主催するイベントに誘われて行ったんです。その時は今とファッションも全然違っていて、彼は民族衣装みたいな服を着て仙人みたいな長いヒゲを生やしてて…見るからにヤバい人っていうか…。
アーリー:ゆーてニッコニコしながら、riddim saunterとかかけてたんよね(笑)。
SMYLE:僕はそこでriddim saunterを初めて知って、すぐにCDを買いに行きました。そんな出会いです(笑)。
●そういった日本のロックを中心にプレイしているのが、TOKYO BOOTLEGの特徴なんですよね。元々、そういう感じのイベントは周りになかった?
SMYLE:僕らがやり始めた頃は他にそういうイベントがまだそれほど多くはなくて、相当アンダーグラウンド感があったと思います。
●いわゆるDJイベントやクラブって、テクノやハウスをメインとした音楽的にマニアックで敷居の高いイメージと、ナンパ目的の人が集まるチャラいイメージの両極端な気がするんですが。
アーリー:僕はテクノ系のパーティーでプレイする傍らチャラバコのパーティーにも出てたりするんで、それぞれの良さ悪さは肌で感じますよ。テクノのイベントは音楽に対してストイックなんだけど、集客に苦戦してて"パーティー"にはなっていなかったりする。逆にチャラい感じのイベントではもっとわかりやすい音楽がかかっているので来る人選ばず、人がたくさんいてエネルギーも感じられるしすごく"パーティー"感が出ますよね。そういうことを、僕らの好きなロックっていう音楽でやれないかなって。
●アーリーさんは意外と見た目ほど、チャラくない?
アーリー:昔、コンビニのバイトをしていた時は、レジの下に女の子を入れて××××させたりもしていたけどね。
SMYLE:使えねぇ!
一同:(爆笑)。
●じゃあ、今もブトレグ(※TOKYO BOOTLEGの略称)の楽屋ではもしかしたら…。
アーリー:いやいやいやいや(笑)。そこは真面目な話、ウチは過度なナンパとか禁止していて。
SMYLE:そもそも集まっているお客さんにそういう下心がほとんどないというのもありますけどね。
●お客さんも音楽が目的で集まっている。
アーリー:んー…テクノイベント的な音楽に対するストイックな向き合い方もありつつ、同等にパーティー感もあるってゆう?
SMYLE:500人集まったところで、その内の450人がナンパや談笑だけで終わっているんだったら自分たちがやる意味ないでしょうし。
アーリー:テクノブレイクですよ、よーするに(笑)。
●日本のロックにこだわっているのも、そもそも自分たちならではのパーティー作りという想いがあった?
アーリー:そこはまた複雑で…世界中の音楽をDIGれるほど知識も時間もお金もなかったし、僕が帰国子女ってのもあってウチらが最もウチららしくいられる日本人の音楽を日本人が誇れんでどーすんねんと。
SMYLE:もちろん「みんなが知っている曲で盛り上がりたい」っていう気持ちもありつつ、「こういう曲がもっとかかったらいいのにな」っていうことを各メンバーが色んなパーティーへ遊びに行く中で感じていたから、(シングルになっていない)アルバム曲や"これから"っていう感じの新譜をスタンダードにできるようなイベントが欲しかったんですよ。きっとそういう選曲をする人間が必然的に集まったんだと思います。初期からそんな感じでしたから。
●お客さんもロックキッズが多いんですか?
アーリー:キッズ多いよねー。
SMYLE:フロアに入った瞬間、2月でもTシャツに短パンで、首にタオルを巻いているみたいな(笑)。普通にライブへ行く時と同じ格好をして、盛り上がる感じですね。パンクがかかればダイブやサークルモッシュが起きたりもするし、フロアの雰囲気はライブさながらです。
●ライブと変わらない空気感がある。
アーリー:Tシャツで首にタオルを巻いたりするファッション自体がカッコ良いかは別として、それをその場において楽しめるということが重要なんですよ。外ではすごくオシャレな、"ゆるふわweekend"(※DJ O-antが今最もプッシュしているアイドルCQC'sの2ndシングル曲)な格好をしている子が、ブトレグに来る時はスニーカーを履いてきたりとか、はしゃぐときは思いっきりはしゃぐぞ! って、それこそ異性の目を意識せず全力でパーティーしきてくれるスタンスが嬉しいです。
SMYLE:普段はオシャレでかわいい子がブトレグに来ると、すっぴんでTシャツっていうギャップがいいんじゃないかと思うんですよ。
アーリー:B専な俺にはグイグイくるわ(笑)。
●そういう気軽な雰囲気だからこそ、お客さんも足を運びやすいんでしょうね。
SMYLE:入りやすい雰囲気にすることでお客さんに来てもらえるし、狭い世界で優劣なんかつける意味はないし、そもそも優劣なんてないですから(苦笑)。気軽に遊びにきて、沢山の曲を聴いて、気に入ったCDやレコードを買いに行くっていうサイクルが生まれてくればいいですよね。努めてキラーチューンの前後でコアな曲をかけてみたり、シングルにはなっていない曲も流れの中であえてフロアに投下したりしてますし。他のパーティーでもやっていることかもしれないけど、TOKYO BOOTLEGでは特にそういう出会いを強く意識していますね。
●新譜や若手アーティストの曲も意識的にかけていたりする?
SMYLE:温故知新な部分もありつつ、新しくシーンに出てきたアーティストの音源は積極的に聴いてプッシュしていくところはありますね。
アーリー:自分たちが作ってきた文脈を把握しているので、ウチのお客さんに対しては事前情報なしに聴かせても大丈夫なんす。「このへんが好きなお客さんに対して、次はこの曲を繋いだら盛り上がるかな?」って感じでかけて実際に盛り上がったら、次からは更にその曲をプッシュしていきやすくないですか? それって「やっぱ間違っていなかったな」って思えるし、自分たちも自信を持ってお客さんと一緒に応援していける気持ちになれるから。
●若手アーティストの活動を応援したい気持ちもあるんでしょうか?
アーリー:ガリガリに青田刈りですよ!
SMYLE:DJとライブを組み合わせたイベントを開催するようになってから強く意識し始めたような気がします。ただお互いにDJとライブをやるだけじゃ面白くないですし、ウチのステージでやってもらうライブはちょっと異常な多幸感があると自負してますから。それで以降のイベントも積極的にその人たちの音源をかけたりして、お客さんが「前のイベントに出ていたバンドの曲だよね」となることがお互いにとってメリットのある流れになると思いますから。大抵はバンドのほうが先に大きくなって、僕らは置いて行かれちゃうんですけど…(笑)。
●(笑)。規模が大きくなると、気軽に出演したりもできなくなりますからね。
アーリー:バンドがそこに行くまでの間、ライブハウスシーンでやれる応援を僕らはやっているのかなと。
●DJイベントにバンドが出るというスタイルも、元々はあまりなかった?
アーリー:やー、ウチらが始めた6年前くらいにはほとんどなかったと思います。大きな会場で開催するようなイベントではあったけど、ライブハウスに毎回ゲストバンドを招聘するようなイベントはほぼほぼなかった。
SMYLE:僕ら、転換のDJだけには落ち着きたくないんです。DJの技術、造詣に関しても絶対に修練を怠らないですし、その曲を歌っているバンド本人が聴いたときに「一本とられた!」って繋ぎをしたくて。だからバンドのライブと僕らのDJが対バンみたいな形でイーブンな関係まで認めてもらえたときは感無量ですよ。DJもちゃんと演奏の枠として観てもらいたいですね。
●それをより大きな規模で実現したのが、今回の"TOKYO BOOTLEG CIRCUIT'12"でしょうか?
アーリー:んー…僕らがイベントを始めた5~6年前って今よりももっとロックがカッコ良いもので、シーンの中でロックがナンバーワンやった思うんですよ。でも今はアイドルやボーカロイドから"泣き歌"とかも流行っていて全部が混合している中で、ちょっとロックの立ち位置が悪いなという想いがあって。それは他の音楽が素晴らしくなってきたから、ロックに並んだという面もあるんだけど。
●全体のクオリティが上がっていると。
アーリー:ええ。僕は昔からずっとアイドルやアニソンも聴いてるから偏見もクソもないんですけど、本心を言うと「やっぱり一番カッコ良いのはロックだ!」と思っているので。でもそこで「ロックはロックだから、俺たちは俺たちの道だけでいいぜ」って言っちゃうのはやっぱり閉じちゃってるし。今、ロック以外のシーンがどんどん垣根を壊してパーティーできてるんだから、このままじゃロック島だけ孤立しちゃうのが怖いです。良いものは良いんだから、もうちょっと視野を広げて全部楽しんでいきましょう! ってロックシーンに投げかけたいですし、ぶっちゃけ今、ロックってアニソンやアイドル、ボカロに完璧負けてますよ。いつまで寝惚けとんねん、民主党かと。だからこそアイドルやアニソンを好きな人たちにも、ロックやライブハウスのシーンにもう一度足を運んでもらえる機会にしたい。シーンのシェアを共有することで、ロックを復権していきたいという想いです。
●ジャンルと共に人の好みも細分化した今の時代に、TOKYO BOOTLEGはロックの復権を掲げている。
アーリー:ロックってみんな通ってるじゃないですか? 今の20代ならBUMP OF CHICKENを聴いてきた人は多いだろうし、30代ならLUNA SEAを聴いたことがない人はほとんどいないわけで。何やかんやでみんなバンド好きやと思うし、それを初めて聴いた時に感じた衝動を思い出して欲しい。ほいで、「ロックだけしか聴かないよ!」なんて言う人にも「オタクは気持ち悪い」とかって偏見をやめて欲しくて。色んな種類の人が手を取り合って一堂に会したら、めちゃくちゃピースフルな空間ができるんだから、そのためにロックはもっとポップス然とした見せ方をする必要があるんじゃないだろうかって。
●アイドルやオタク文化まで含めて、ロックとそういったジャンルの壁を取り除くようなイベントというか。
アーリー:僕らは何年も前からずっとそういうことをやってきてんすよ。
SMYLE:外から見てもTOKYO BOOTLEGって、どこかに偏っているわけじゃなく色んな音楽的素養を包括していると思うんです。それこそアーリーはこのブームより何年も前からアイドルをかけ続けてきたし、僕もボーカロイドにはアンテナを張ってきました。今ようやく「あそこに行けば必ずアイドル、ボカロの曲がかかるよね」って声も聴けるようになってきて、そんなイベントも増えてきてる。そういった下地が整ってきたので、次は今までよりも大きな規模にしてサーキット形式でイベントをやってみたらどうかということになったんですよ。
●TOKYO BOOTLEGの特徴を体現するようなイベントになっている。
SMYLE:今回のサーキットに誘わせて頂いたバンドを並べてみると、僕らが通常のDJイベントで流しているセットリストと何ら変わりないんですよ。外から見たら「なんでこんなよくわからない組み合わせになっているんだろう?」と思う人もいるかもしれないけど、僕らのことを少しでも知ってくれている人なら「ブトレグなら、これくらいのことはやるよね」と思ってもらえるはずだから。最初からそういうラインナップや雰囲気作りをしていこうというところから今回はスタートしているので、現状はすごく良い感じで進んでいますよ。
●最初はチャラい感じで始まりましたけど、意外とまとまりましたね…。アーリーさんはかわいいお客さんに手を出したりしないんですか?
アーリー:手は出さないっす! むしろ第三の足を出すってゆうか足が出すってゆうか視姦しまくりっすわ! ってなに!? ねぇ? なんなんこれちょっと!! (笑)。
SMYLE:5/13の開催日までに、不祥事で活動停止とかになっていなければいいんですけど…。
アーリー:アイ・レイプ・ユー。
一同:(爆笑)。
Interview:IMAI
5/13(日) 渋谷CHELSEA HOTEL / STAR LOUNGE / WWW / 屋根裏
出演:TOKYO BOOTLEG DJs (O-ant / SMYLE / KoDAMA / あばっと) / 明日、照らす / 快進のICHIGEKI / Wienners / オノマトペ大臣&CAROLIECUT / KEYTALK / キバオブアキバ / GOOD ON THE REEL / 撃鉄 / SAKANAMON / さめざめ / the storefront / SAY MY NAME. / セカイイチ / D.W.ニコルズ / 東京カランコロン / TRICERATOPS / ノンセクトラジカルズ / BARBARS / パスピエ / バックドロップシンデレラ / ピアノゾンビ / BiS-新生アイドル研究会- / みそっかす / memento森 / MONICA URANGLASS / リバーシブル吉岡