滋賀県最大級の入場無料フェス“EAT THE ROCK”が今年も開催決定! 台風の影響により中止という苦渋の決断を下した昨年からのリベンジ開催となる今回。これまでの“音楽とグルメを一日食べづくし!!”というフレーズに代わり、“俺たちのフェス”という言葉を掲げた今年にかける想いを実行委員長・井上和也氏(下北沢ReG/ex.THE GELUGUGU)に語ってもらった。昨年の悔しさと、支えてくれた周囲への感謝を糧にさらなる飛躍へと突き進む。
●昨年の“EAT THE ROCK”は台風の影響で急遽中止となったわけですが、想定外の出来事だった?
井上:想定外でしたね。「雨でも傘をささずに楽しめます」と謳っておいて、まさかの中止っていう…(苦笑)。中止にした要因が2つあって。まず1つ目にして決定打になったのは、会場である竜王町に台風による避難勧告が出たことでした。台風の中でも(物販など)色んなものが会場に届くので、受け取りのために僕らは会場に待機しつつギリギリまで考えていたんです。でも避難勧告から“避難指示”になった瞬間に中止を決めました。
●もう1つの要因とは?
井上:シャトルバスを出して頂いているバス会社さんから連絡があったんですけど、風速15m/s以上だと法令で運行が禁止されているらしいんですよ。開催したとして車で来る人はいるにしても、シャトルバスで来る予定だった人たちを無視することになってしまうから。シャトルバスが運行できなくなったというのが、もう1つの要因ですね。
●中止になったことで損害も出たのでは?
井上:販売用のドリンクも仕入れていたし、スタッフや出演者用のケータリングでカレーを作るための具材も届いていたんです。それをどうしようかとなった時に町内で、イベントが中止になった事情と具材の買い取りを募る旨の連絡網をまわして下さって。全部ではないんですけど、具材やドリンクを町の人が買い取ってくれたんですよ。そこが去年で一番、感動したことでしたね。
●竜王町の人たちが助けてくれた。
井上:会場費やシャトルバスの費用についても、いらないと言って頂いて。本当に何度、頭を下げても足りないくらいです。だから、必然的に「また今年もよろしくお願いします」となりますよね。
●元々、和也さん自身は竜王町に縁があるんですか?
井上:竜王町自体には、縁はなかったですね。僕は滋賀のB-FLATとU☆STONEというライブハウスで12年くらい働いていたので、滋賀県には縁があるんです。それで“EAT THE ROCK”を始めようとした時にちょうど竜王町の青年団にも「竜王町にバンドを呼びたい」という熱を持った人がいて。僕のところに相談に来てくれたところから、ドラゴンハットのことも知りました。
●そもそも“EAT THE ROCK”を始めようと思ったキッカケとは?
井上:“COMIN'KOBE”や“FREEDOM NAGOYA”には僕もTHE GELUGUGU在籍時に出させてもらったことがあって、良いなと思っていたんです。僕の理想は青森県の“八食サマーフリーライブ”なんですけど、そちらには1回も出たことがなくて。「じゃあ、八食っぽいものを自分で作れないかな?」と思って滋賀県内の色んな場所を調べていたところ、全部の条件が竜王町で一致したという感じですね。
●“食”とのコラボも、八食が原点にあるから?
井上:僕自身もバンドマンだったので、“バンドマンの夏休み”を作りたかったんですよ。八食に出演した人たちがみんな「八食はバンドマンの夏休みだ」と言っていて。滋賀でフェスを開催してバンドマンを全国から呼んだ時にせっかくなら滋賀の名産を食べてもらったり、みんなでバーベキューをやったりして、思い出を作って欲しいなと。そこから“食”とつながったんですよね。
●出演バンドに関しては、何か基準があるんですか?
井上:ぶっちゃけ言うと、最初は僕が仲の良いバンドを集めたというところでした。実は1年目は、僕のTHE GELUGUGU脱退ライブだったんですよ。なので、僕が一緒にやりたいバンドを招いたという感じなんですよね。1年目に関しては、THE GELUGUGUへの恩返しという部分もありました。
●1年目の時点で、第2回以降の開催も考えていた?
井上:続けていきたい気持ちはあったんですけど、入場無料なので収支も見えなくて。スタッフはみんなボランティアなのでもし彼らが「来年は手伝えません」と言ったら、もうできない話で。でも1回目をやって反省会を終えた後に町長さんから「ぜひ来年も」と言われて、青年団の子たちからも「すごく良かった」と言ってもらえたので「よし、来年もやろう!」となりましたね。
●ちなみに和也さんは現在、東京在住なわけですが。
井上:2年目の“EAT THE ROCK”が終わった2日後に上京したんですよ。元々は関東の人間なので、戻ってくるという意味合いもあったんです。そこで東京の人間が「滋賀を盛り上げる」と言ったところで説得力があるのかなと思って、すごく悩みましたね。でも2年目を終えて青年団の人たちと反省会をした時にそういう気持ちも話したら、「和也さんにやって頂けるのならお願いしたい」と言ってくれて。2年間で僕個人と竜王町の人たちの間で関係性が築けたのかなと思えたので、「じゃあ必要とされる限りはやります」と。
●それで続けることになったと。
井上:遠隔で指示することになるので、どれだけ大変かはやってみないとわからなかったですけどね。今まで僕がやっていたこともある程度は代わりにお願いしなくてはいけないので、ボランティアスタッフの人たちにはより負担をかけるわけじゃないですか。本当は去年に3回目がやれていたら、さらに見えていたことがあったと思うんですけどね。
●リベンジ開催が決まって、今年は新たな試みも考えているんでしょうか?
井上:今年からはステージを1つ増やして、滋賀のバンドが出られるステージにしようと思っていて。僕が東京に来たからこそ、逆に滋賀のバンドを出していくのも大事なのかなと。あとはちょうど今年が竜王町が“町”に指定されて60周年なので、60周年事業として“EAT THE ROCK”の前夜祭をやることになりました。同じ会場のステージを1つ使ってバンドにも出てもらいつつ、町内で三味線や民謡をやっている団体を招いて本当の夏祭りみたいなことをやろうと思っています。
●思い描いていた理想に近付いている実感はある?
井上:“EAT THE ROCK”というものが、みんなの中で大きくなってきたのかなとは思います。去年が中止になったことで、「今年こそは“EAT THE ROCK”が開催できますように」とTwitterやブログでみんなが言ってくれていて。元々は僕の「こんなことがやってみたい」という勝手な思い込みから始めたものが、良い形で“みんなのフェス”になっている実感はありますね。