ザ・ヒーナキャット/D_Drive/exist†trace
ゴスを突き詰めた独特なルックス、昭和歌謡とハードロックが絶妙に混ざり合った楽曲に、高いスキルから繰り出されるパフォーマンス。独自路線を突き進むザ・ヒーナキャットは好きなことをやりまくった結果、他にはない魅力を手に入れた唯一無二の存在だ。そんな2人が2/25に『さくら〜春の夜の夢〜』をリリースし、D_Drive、exist†traceと共に4ヵ所をまわるスプリットツアー“月夜の演奏旅客団”を開催。そのファイナル公演が3/8にThunder Snake ATSUGIで行われた。全国のキャットクルー(※1)が集結し、すさまじい盛り上がりをみせたこの日。トリを務めた2人の熱演をレポートする。
ステージが始まる前から、もう待ちきれない! と言わんばかりに「オイッ! オイッ!」と叫ぶキャットクルー。その勢いたるや完全にお祭り状態、ものすごい盛り上がりようだ。ほどなくしてS.Eとともにステージの幕(シャッター)が上がり、ザ・ヒーナキャット特有のアナウンスが開演を告げる(※2)。
既に会場はヒートアップしまくり、大歓声が巻き起こる。オーディエンスがザ・ヒーナキャットの音楽に耳を傾けた一瞬の沈黙を突いて、2人の歌声が美しくハモるイントロから始まる「かこってしまったらね」が演奏される。キャッチーでヘヴィーなギターリフに合わせて、再びキャットクルーたちが「オイッ! オイッ!」と2人のステージに応える。それに対してザ・ヒーナキャットは決してフロアを煽らない。ぱっと見、淡々とやっているようにも見えるそのステージ、しかし時折垣間見える笑顔や振る舞いからは高い熱量を内包していることが伝わってくる。ステージとフロアとの絶妙な距離感はどこか温みのある家族のような空気が感じられた。
バンド紹介をする簡単なアナウンスが流れた後、ひーちゃんがピアノに持ち替え、新作の表題曲「さくら〜春の夜の夢〜」を演奏。こぶしの効いた歌声を披露する。続く「夢中毒」では、エレクトロビートが流れ、お立ち台に立った2人が踊り出す。高速ビートに合わせて踊る彼女たちの振り付けをキャットクルーも同じく踊る、すさまじい勢いだ。そして叩き込まれるハードなギターリフ。ヘッドバンギングをしながら弾きまくるひーちゃんに合わせて、キャットクルーもヘッドバンギングで踊り狂い、そして大合唱が巻き起こる。会場の温度はますます上がり「あやつられ人形」、「恋がしたい」と演奏される。曲の後半では、ひなのチョッパーソロに始まり、ひーちゃんのライトハンドが火を噴くソロ合戦でフロアは天井知らずに盛り上がっていく。そして本編最後は壮大にしっとりと「紫黒蝶」で締めくくった。
ザ・ヒーナキャットだけではなく会場全体が一体となって盛り上がったライブ。ライブハウスのスタッフやキャットクルーも含めて、全員が作り上げた空間は「とにかく楽しむ」というポジティブな空気で満ちていた。
前身バンド・スキルアップ時代から2人を応援してきたというキャットクルー代表・どろろ氏はこう言う。「今の盛り上がりは決してザ・ヒーナキャットから要求して作られたものではない。彼女たちのファンであるキャットクルーで作り上げていった」ものだと。まるで、スポ―ツチームのサポーターのような一体感は決して作られたものではなく自然とでき上がっていったものらしい。そんな現象を巻き起こす2人には驚きである。
これからも、8月のThunder Snake ATSUGIワンマン、年末には渋谷TSUTAYA O-WESTワンマンが控えているザ・ヒーナキャット。その飛躍的な成長を、震えて見届けたいと思う。
TEXT:馬渡司
※1・ザ・ヒーナキャットのファンをキャットクルーと呼ぶ
※2・2人はライブ中に一切喋らず、代わりに事前に録音されたアナウンスが流される
■ザ・ヒーナキャットと渡辺理之氏(厚木Thunder Snake)がフジゲンのギター/ベースについて語る“フジゲン・アンバサダー#2”も掲載中!!
【今、もしあなたが弾けないフレーズがあったとしたら、それはギターの重心が解決するかもしれない。】
https://www.jungle.ne.jp/serial_post/209fgn/