破竹の勢いで加速を続ける04 Limited Sazabysが、遂にメジャーデビューを果たす。ここ最近のライブやフェスでの盛り上がりを見れば、誰もがその勢いが本物であることを感じられるだろう。航空用語で“限りなく視界良好”という意味を持つ『CAVU』をタイトルにしたメジャーデビュー作は、彼らにとって初のフルアルバム。ここに収められた全13曲は“らしさ”から“新境地”に至るまで幅を見せつつ、無限の可能性を感じさせる。過去も現在も全てを昇華して生み出されたキラーチューンの数々が、4人を輝かしい未来へと導いていく。
●今作『CAVU』はメジャー1stフルアルバムとなるわけですが、どんな作品にしたいというイメージは当初からあったんでしょうか?
KOUHEI:そういうことはあまり考えていなかったですね。どういう曲を作りたいかというよりは、とりあえず曲を作っていくという感じでした。その中でフルアルバムとして、どうバランスを取るかというところで。たとえば暗い曲やエモい曲ばかりできちゃったら、逆にポップな曲を作ろうという感じで組み立てていって。自分たちらしさは残しつつ新しい面や成長も見せられるような、バランスの取れたアルバムを作りたいというのは全員が思っていたんじゃないかな。
●新しいことにも挑戦しようとした。
GEN:「置きに行きたくないな」という気持ちはあって。初めてのフルアルバムだから色んなことが試せるなと思っていたんですけど、ここにきて初期にあったような疾走感だったり初期衝動の入った曲ができたなと。
●今改めて初期衝動が曲に現れた理由とは?
GEN:メジャーデビューということもあって、新しいスタートじゃないですか。自分の中でもターニングポイントがいくつかあるんですけど、KOUHEIが入ってからが第2章かなと思っていて。このタイミングから“メジャー篇”が始まるというところで、自分たちの武器を全開で使って、攻めの姿勢を出せたら良いなと思っていました。
●メジャーということも意識したんでしょうか?
KOUHEI:メジャーだからというよりは、常に(前作を)超えていきたいという気持ちのほうが強くて。同じようなものを毎回出しても意味がないので、そこのプレッシャーはありましたね。曲も最初は全然できなくて、「どうしよう? こういうのは前もやったしな…」っていう。
HIROKAZ:とにかく「良い曲を作ろう」という気持ちが強くて、メジャーだからというのは全く気にしていなかったです。あとは、制作が大変だったのもあって…。曲を作るのに必死で、そんなことを気にしているヒマがなかったのかもしれない。
RYU-TA:絞りきった感じですね。
●曲作りがすごく大変だった?
HIROKAZ:毎回大変なんですけど、今回はフルアルバムだから今まで以上に曲を出さないといけなくて。
GEN:今回は難産でしたね…。
KOUHEI:最後まで「どんなアルバムになるのか」という、全体の形が見えなかったんです。自分たちが良いと思える曲をひたすら作って、バランスを整えたという感じですね。だから、ボツになった曲もいっぱいあって。
●全体のバランスを考えて、曲を選んでいったと。
GEN:カッコ良いけど、アルバムには入らなかった曲もあって。そこも全体のバランスを見た結果なんですけど、やっぱりフルアルバムで曲数も多いので飽きさせたくないという気持ちが強かったんです。最後まで一気に聴けるアルバムにしたかったので、全体のバランスはすごく意識しましたね。
●でもなかなか全体像は見えなかったわけですよね?
GEN:ミニアルバムやシングルだったら僕の好きなものが2〜3曲あれば、全体像が見えるんですよ。でも今回はフルアルバムなので、2〜3曲では全然足りないというか。
KOUHEI:今回はリード曲がなかなか決まらなかったというのもあって。リード曲が決まらないと全体のバランスが取りにくくて、他の曲も見えなくなるんです。それでM-8「knife」がリード曲に決まった時に、いよいよ「これはどうする…?」みたいな感じになっちゃって。
●「knife」は今までにないタイプの曲ですからね。
GEN:聴いた人が「何だ、この曲!?」ってビックリするようなイメージで考えていたから、リード曲になるとは自分でも思っていなかったんです。でもどんどん良くなっていって、最終的にリード曲に…。
●最初はリード曲のつもりではなかった。
GEN:でも「この曲は良いな」と、みんな思っていたはずなんですよ。だからこそアレンジも、それぞれが凝っていて。今までは要素をこんなに増やしたら、曲がダメになると思っていたんです。そこを振りきったことが、逆に良かったなと。RYU-TAが歌っているパートもあるし、それぞれの見せどころがあるというか。
●RYU-TAくんのパートで日本語詞は初めてでは?
RYU-TA:初めてですね。自分の中では日本語で歌うとは思っていなかったけど、ダミ声でもこういう歌詞を歌えるんだなと。
KOUHEI:初めて聴いた時は「日本語もちゃんと歌えるんだ!?」みたいな感じでビックリしましたけどね(笑)。しかも、ちゃんと曲にハマっているっていう。
●ラップを入れるというアイデアは前からあった?
GEN:やりたいなとは思っていたんですけど、「このバンドでやることじゃないかな」というところもあって。でもやってみたら、意外と僕たちらしくなるというか。僕の声にも合っているなと思いました。
●異色な「knife」とは逆に、M-2「Terminal」は今までの“らしさ”が出ている曲ですよね。
KOUHEI:この曲はギリギリにできたんですよ。もうラストチャンスというくらいの期間に作った曲で。レコーディングの2〜3日前でしたね。
HIROKAZ:毎回安定して、その時期に良い曲ができるんですよね(笑)。
GEN:追い詰められないと、良いものが出せないのかもしれない。これまでも、リード曲が最後にできることが多かったんですよ。
●「Terminal」ができた時は、これがリード曲になるという手応えはあったんですか?
GEN:僕はそこまで思わなかったんですけど、メンバーやスタッフからは「これがリード曲でしょ」っていう反応があって。
KOUHEI:「Terminal」とM-1「days」が同時期にできた時点で、「これで(アルバム全体の)バランスが取れたな」という感覚は全員にあったと思います。そこから色んなことが決まっていきましたね。
●「Terminal」にも“さよなら”という歌詞があって、「days」にも“バイバイバイ”と出てきますが、過去の自分たちとの決別という意味合いもあるのかなと。
GEN:メジャーという新しいステップに進む上で、今回は序盤の1〜2曲で過去との決別をして、“その先へ”というニュアンスが伝われば良いかなとは思っていましたね。
●そんな新たな第一歩となる今作に、過去曲の再録(M-7「Grasshopper」、M-11「Any」、M-13「Buster call」)を入れた理由とは?
GEN:やっぱり今でもライブでやっているというのが大きいですね。ライブではアレンジも今の自分たちなりに変えているんです。気付いたら元々のものとはだいぶ違う曲になってきていたので、何かのタイミングで再録したいなとは思っていたんですよ。新しい曲の中に昔の曲を入れたら浮いちゃうかなと最初は思っていたんですけど、ちゃんと1つのアルバムになって。今までの自分たちの活動は間違っていなかったんだなという感覚にもなれましたね。
●メンバー的にも思い入れの深い曲なんでしょうか?
HIROKAZ:やっぱりライブでずっとやってきたから。でもKOUHEIが入ってからアレンジは変わっているので、もう別の曲みたいな感じですね(笑)。今回のバージョンは、ほぼ新曲みたいな感覚でやっています。
RYU-TA:ギターのリフとかも変わったし、新鮮な感覚でやれていますね。
KOUHEI:「これが今の俺たちだぞ」というのを証明できるようなアレンジになったなと。今までを知らない人からしたら本当に新曲のように聞こえるだろうし、実際に「良いね」と言ってくれる人も多くて。そういう意味でも今回入れて良かったと思います。
●ライブ感や初期衝動感のある曲が多い中で、M-12「milk」はちょっと異色かなと。こういうストレートなラブソングは今までになかったですよね?
GEN:初めてだと思います。僕らはポップでキャッチーというイメージだったり、若くて青いという印象があると思うんですよ。でも初のフルアルバムということでもう一歩、大人になりたいなという気持ちがあって。だから今回は青さはもちろんありつつ、大人のエロさというか、酸いも甘いも多少はわかっている感じの色気を出したかったんです。
●そこでも成長を感じられる。
KOUHEI:歌詞に(成長が)出ているなと思うんですよね。もちろん今までどおり色んな解釈ができるものもあるんですけど、誰が見ても“こんな感じの歌だな”とわかりやすいような歌詞を書くようになってきたのが一番の成長なのかなと。成長というか、新たな自分を出せるようになってきたのかもしれないけど…。
GEN:情景が浮かぶような曲は、わかりやすく書きたくて。「milk」は日常生活感や生々しさのある感じにしたかったので、すごくリアルだなと思います。逆にリアルじゃない、夢の中や精神世界みたいなものを描いた歌詞は少しわかりにくくしたかったりもするんです。
●M-4「fiction」の歌詞は曲作りのこと?
GEN:“曲を作る”というテーマで歌詞を書くことが結構あって、この曲ではそれをリアルに表現できたかなと思います。“騒々しい過去の残骸も 掘り起こし今見つめ直す”という歌詞があるんですけど、今までの自分の経験を良いことも悪いことも全部、曲に昇華できたら良いなという気持ちが強いんです。それをこの曲では歌っていますね。
●良いことも悪いこともあるけれど、最終的には前を向けている。航空用語で“限りなく視界良好”という意味を持つ『CAVU』をタイトルにしたのも、今のそういう心境が表れているのかなと。
GEN:そこは願いも込めて…ですね(笑)。正直、先は見えないし、不安もあるんですよ。でもそういうモヤモヤした中にも光はあって、そこを“視界良好にしたい!”という感覚なのかもしれないです。
HIROKAZ:今はまだ雲を突き抜けるギリギリのところで、一番上まで上がった時に視界が一気に広がるのかなって。まだ上がっている最中ですね。
RYU-TA:ずっと前に進んでいるし、まだまだ行けると思っているから。
●リリース後のツアーも楽しみですね。
HIROKAZ:アルバムっていうのは、ツアーをまわってようやく完成するものだと思うんです。みんなと楽しんで、アルバムを完成させたいと思います!
RYU-TA:今回のツアーでは、今まで行ったことのない場所もあって。そこで初めて出会う人たちにもまた次も来てもらえるような、印象に残るライブがしたいと思います。
KOUHEI:やっぱり“メジャー”という言葉が引っかかっている人もいると思うんですよ。「遠くなった」とか「変わっちゃった」とか思う人もいるかもしれないけど、ライブに来てもらえれば俺らは何も変わっていないというのがわかると思うから。ライブではもうお客さんと俺らのぶつかり合いなので、音を使ってコミュニケーションがとれたらなと。ライブ会場で待っています!
GEN:今回は初めてのフルアルバムということで、バンドが持っている全部の引き出しを開けて作ったんです。僕自身も自分の中にある面を全部さらけ出せたのでちょっと恥ずかしい気持ちもありつつも、見たり聴いたりしてもらいたくて。ツアーでこの曲たちがどんなふうに演奏されるのか僕自身も楽しみだし、お客さんがどういう感じで向かってきてくれるのかも楽しみで。このアルバムができたことでライブの楽しみがまた増えたので、どうなるか期待していて欲しいです。
Interview:IMAI