哀愁漂う美しいメロディで聴く者を魅了するメロディックパンクバンド、NAFTが現メンバーでは初となる新譜を完成させた。『Turning point for continuation(継続の為の分岐点)』と名付けられた今作は、全曲リードトラッククラスの粒ぞろいな4曲を収録。すべてここ1年以内に作られた新曲のみで構成されており、今のNAFTの姿が如実に現れている。今年の3月で活動休止することが発表されているだけに、これが彼らにとって最後の1枚なのではないかと懸念するファンもいるかもしれない。だが、その心配は一切無用。作品タイトル通り、あくまでこの休止は続ける為の分岐点なのだから。
●これまでに何度かメンバーチェンジを経て、もはやオリジナルメンバーはARAKIさんだけなんですよね。OKAWARAさんとURABEさんが加入されたのは、いつ頃なんですか?
OKAWARA:まずは、僕が2010年に入りました。
ARAKI:その年にJT301というバンドとスプリット音源を出したんですけど、そのタイミングでベースが抜けちゃって。しばらくは別のサポートとツアーを回っていたんですが、ファイナルで彼が入ったんです。
●OKAWARAさんは元々NAFTを知っていたんですか?
OKAWARA:1度ライブを観たことがあるくらいで、特別親しいわけではなかったんですよ。ただメンバー募集サイトでベースを探しているのを見つけたとき、“僕のやりたいことをやっているな”という印象で。僕もちょうどやっていたバンドがポシャった時期だったし、どうしようかと悩んでいたらARAKIくんからお誘いのメールが来たんです。会ってからはポンポンと話が決まったよね。
ARAKI:軽く面接をしたんですけど、人間性が100点だったので“これなら大丈夫だな”と思って、その日のうちに加入してもらいました。
●いちばん重視していたのは人間性だった。
ARAKI:そうですね、演奏よりも人が大事だなと思っていました。URABEが入ったのが2012年なんですが、そのタイミングで前のドラムが失踪して…。
OKAWARA:ライブの前日までは連絡が取れていたんですけど、当日になっていきなり「ライブはせえへん」って言い出して。それで僕と前のギターが家まで行って説得したんですけど、結局来なくてドラム抜きでやったんですよね。
●それは“どうしよう…?”って感じですよね。
ARAKI:どうしようもなかったですね(笑)。だから逆にお客さんに「今なら何でもするよ! 何してほしい?」って言って、リクエストされた曲をやりました。
OKAWARA:ちなみにそのライブはRIDDLEのレコ発だったんですけど、それ以来なぜかスケジュールがまったく合わなくて対バンできていないんですよね。向こうから誘ってもらっても、こっちから誘ってもダメなんですよ。ここまで来ると呪われているとしか思えない(笑)。
●確かに、それは疑いたくなるかも(笑)。
ARAKI:それ以降は友達にサポートをやってもらっていたんですけど、何人か声をかけているうちにURABEに行き着いて。昔からこの子がやっていたバンドとは友達だったし、軽い感じで誘ったら「1回、音源を聴いてみるわ」って返ってきたんです。次にスタジオに入ったときには曲も覚えてきてくれたから、そこで決まりましたね。
●URABEさんとしては、誘われた時点で入ろうと思っていたんですか?
URABE:そのときは他のサポートもしていたので、少し悩みました。NAFTはアルバムも買っていたし、仲はよかったんですよ。“あとはスタジオのノリや人間性を見てもらってからだ”と思ってスタジオに入ったら、メンバーが普通に酒を飲んでいて(笑)。「このノリやったらぜひお願いします」という感じでした。
●自由な雰囲気ですね(笑)。今作は現メンバーとしては初の音源になりますが、曲もこのメンバーになってから作ったもの?
ARAKI:そうですね。2013年にギターが抜けて一時活動休止していたんですけど、はやぴー(現サポートギターの林)にサポートをお願いして2014年の3月から再開したんですよ。だから4曲とも、ここ1年くらいの曲ですね。
●今回のEPを聴かせてもらって、どの曲がリードトラックでもおかしくないクオリティだと思いました。自分たちでも特にいいと思う曲を集めたんでしょうか?
ARAKI:正直に言うと、そのときにできた曲を集めただけなんです(笑)。基本的に音源を作るときは“こんな曲ができたから、次はこういうのを作ろうかな”っていう繰り返しで形になるんですよね。
OKAWARA:僕らは、コンセプトを決めて作るタイプではないんです。「こんな雰囲気の曲を作ってみよう」というところから始まるので。
●そうだったんですか! 作品タイトルがコンセプチュアルに感じられたので、テーマありきなのかと思っていました。
ARAKI:完全に後付けです。
一同:アハハハハハ!
●言い切りましたね(笑)。
ARAKI:歌詞もタイトルも曲の後に付けていますから。歌詞に想いを込めるというより、メロディに全部込めています。
●言葉で語る以上に、音で感情が表されている。
ARAKI:歌詞は曲ができあがってそれなりに形になってきてから、必死になって書いています。あらかじめ言葉をストックしておいて“この曲やったらこれが合うかな”みたいな感じで。ぴったりハマるというよりは、そこに合わせていきますね。“この曲ならこういう歌詞の方がいいかな”みたいな。
●曲もARAKIさんが作っているんでしょうか?
ARAKI:僕が主な形を作って、アレンジは各パートにお任せという形なんですよ。だから結構自由だし、サポートのはやぴーがアレンジをやってくれた部分もありますね。
URABE:「自分のパートは自分で決めてこい」みたいなスタンスなんです。それがアカンかったら「ここに音を足してほしい」という感じでざっくりとアドバイスをもらって、アレンジを追加したりしますね。
●自主性が高いんですね。
ARAKI:だから実際にレコーディングになってから“あ、そんなフレーズやったんや”って気付いたりするんです(笑)。
URABE:逆に僕は、そのタイミングで“メロディってこんなんやったんや”って気付く(笑)。
●それはなかなか珍しい気がします(笑)。でも、個々が作ったアレンジを上手くまとめるのは難しいのでは?
OKAWARA:みんながある程度合わせにいっている部分があるんだと思います。“こんな雰囲気にしたいんだろうな”というイメージは頭の片隅にあるので。
●大まかなイメージが共有できていると。ちなみに、最初にできた曲は?
ARAKI:M-1「Illogical statement」が最初だったかな。曲自体は並行して作るので、完成した順番で言うとこの曲が最初ですけど、手を出した順番はバラバラなんです。
OKAWARA:M-3「Growing curiosity」は取りかかったのもできあがったのも最後でした。他の3曲ができてから作ったから色も違うし、いちばん時間がかかりましたね。
●候補曲は他にもあったんですか?
ARAKI:ネタはいくつかストックがあったんですけど、どうせならはやぴーのギターで新しく作ってみたかったので、昨年の3月以降にできた曲だけを収録したんです。その結果、今回は4曲入りになりました。
●この4曲に決まったのは、ごく自然な流れだったんですね。
ARAKI:そうですね。だから曲数もすごく中途半端でしょ(笑)?
一同:アハハハハ!
●レコーディングはスムーズだったんですか?
ARAKI:今回からパソコンで打ち込みを使うようになって、かかる時間がかなり短くなりましたね。今回はトータル2日半で終わりました。
●おぉ! それは早い!
ARAKI:今までなら1度やったきりで忘れてしまっていたようなフレーズも聴き直せるようになったから、エンジニアさんに具体的なイメージを伝えやすくなってすごく順調でした。それをやってくれたのは、はやぴーなんですよ。
●もはやメンバーのような存在感ですね。
OKAWARA:もう1年も一緒にいますしね。僕らとしては「入りたかったら、いつでも入っていいよ」って感じです。強制して縛りたくはないし、好きなようにしてくれたらいいなと。
●それは、すごくいい形ですね。全員が自分の意志で“やりたい”と思っているから不和もないし、自然といいものが生まれるんじゃないでしょうか。
ARAKI:普段から飲みに行くし、単純に仲もいいですしね。はやぴーがサポートで入ってくれた頃なんか、下手すると毎週飲みに行ってました。
●それもあって、今バンドにしっかりと馴染んでいるのかもしれませんね。楽曲内でもギターの音はすごく印象的でしたし、特にM-2「Continuation」のリフはすごく耳に残ります。
ARAKI:ボーカルよりギターの方が歌ってますからね(笑)。
●さすが、言葉以上に音で語るバンド(笑)。
ARAKI:ただ今回は、「Continuation」の歌詞や曲名がアルバムタイトル「Turning point for continuation (継続の為の分岐点)」にも繋がっているんです。“おじいちゃんになってもずっとやりたいな”というのが、このバンドの目標なんですよ。
●奇しくもバンドがいちばん大切にしていることが、タイトルに繋がった。
ARAKI:もちろん仕事やプライベートの影響で活動ペースが落ちることもあるし、今もそのタイミングのひとつで活動を休止するわけですが、それが理由で辞める必要はないと思うんです。続けた方が絶対に楽しいですから。
●タイミング的にはあたかも最後の作品でのように見えるかもしれないけれど、実際はタイトルが示す通り“続けること”が大前提としてあるんですね。
URABE:そうですね。解散は絶対にありえないと断言できます。
ARAKI:いつまでもやりたいと思っているし、みんなもバンドを辞めないでほしい。自分たちが復活したときにみんなが辞めていたら楽しくないし、寂しいですよね。
OKAWARA:一緒にやれなくなるのは嫌やもんな。
●“楽しい”という純粋な気持ちがあるから、おのずと続ける道を進んでいるんですね。その自然さがこのバンドの個性であり、魅力だと思います。
Interview:森下恭子