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CHERRY NADE 169

その“ドアの向こう”へ。集大成『HANDWINK』は新たな始まり

チェリナ2005年の結成以来、都内のみならず全国で精力的に活動するCHERRY NADE 169(チェリーナード イチロクキュウ)。2/4に5thアルバム『HANDWINK』をリリースした彼らは、タワーレコード限定シングルのリリースを経て生み出された本作で「今の自分たちの集大成が出せた」と言う。シンプルかつ強力なギターロックサウンドに乗る力強い歌声。それは明確なメッセージを持って聴き手の心を突き動かす。今回、JUNGLE LIFEはVo./G.滝澤大地とBa.秋山貴英へインタビューを行った。本作の話をきっかけに、創作活動の根っこにある核心に迫る。

 

 

●2/4に『HANDWINK』をリリースして少し時間が経ちますが、今の心境はどうですか?

滝澤:去年の11月にレコーディングが終わってから『HANDWINK』をずっと聴いていたので、逆に「まだ発売していなかったんだ」っていう感覚でしたね。Twitterで「『HANDWINK』を買ったよ!」っていうお客さんのツイートを見て「ようやくみんなに届いたんだな」と思いました。

●聴き直してみて、作品の印象は変わりました?

滝澤:聴き直してみると、“今のCHERRY NADE 169の集大成を感じる1枚になったな”と感じます。前作『海辺のマリー』から「一度、シンプルなギターロックっていう原点に戻ろう」と試行錯誤を重ねて今の形ができたんです。そうやって立ち返ってから出した今作は、新しいところに行こうと思えるくらい出しきったアルバムというか。

●今作はM-1「One」から始まりますが、アコースティックなインスト曲で、他の収録曲とは違う雰囲気ですよね。

滝澤:実はアルバムの曲順を決めた段階で、まだ「One」はなかったんですよ。もともとはM-2「フラッシュライト」を1曲目に持ってくるつもりだったんですけど、ジャケット用に“ハンドウィンク”というキャラクターも作ったのに、触れる曲が何もないような気がしたんですよね。なので、レコーディングの前日に「こういう曲を入れたい」ってメンバーに相談をして収録することにしたんです。

●「One」が終わって、いきなりガツンと「フラッシュライト」が始まるじゃないですか。あれは印象的でした。

秋山:僕らは“ライブバンド”っていう部分が根本にあって。アルバムとして考えたら「One」やM-9「Handwink」が上手くまとめてくれているんですけど、「フラッシュライト」やM-3「○×ゲーム」がバンドとしての根本というか。

●自分たちはあくまでライブバンドだと。歌詞もメッセージを感じますね。

滝澤:「フラッシュライト」は、“生きていたら楽なことばかりじゃなくて、壁も沢山あるけど、最後に笑っている姿を見ていたい”っていう曲で。それが、ちょうど僕らのモードに合っていたんですよね。

秋山:「前に進みたいけど、なかなか進めない…どうしよう」みたいに考えている人っていっぱいいると思います。(杉田)陽輔もバンドをやる中で、そういうことを思ったのかもしれません。

●今作を聴いて、歌詞がすごく作り込まれている印象があったんですよね。ひょっとして滝澤さんは読書が好きだったりします?

滝澤:本はよく読みますね。もともと読まない人間だったんですけど、昔「もっと本を呼んで歌詞を書いた方が良いよ」と言われたことがあって、確かに考えてみればそうだなと思ったんです。例えば曲を作る時に、いろんな音楽を聴いていなかったらアイデアが浮かばないし、勉強も参考書がなかったらできない。じゃあ歌詞だったら「文字に触れるのが良いよな」って思ったんです。

●なるほど。

滝澤:それがきっかけで本を読んでいくうちに「この文章面白いな!」とか「この人はこういう文章が苦手なのかな?」とか、言葉に対して自分なりにいろいろ考えれるようになってきて、本が好きになっていったんですよね。

●本の魅力に惹きこまれた、きっかけの一冊ってありますか?

滝澤:重松清さんの『その日のまえに』っていう短編小説です。“その日”っていうのは要するに“死ぬ日”で、その前の日の話なんですけど。これを読んで、本で初めて大泣きしたんですよね。

●その作品を読んだ時に「歌詞に力を持たせたい」みたいな気持ちが生まれた?

滝澤:そうですね。その頃から作詞の時に言葉と向き合うと、いつの間にか自分自身の心と向き合うようになっていて。書いているうちに思ってもいない自分が見えてくるんです。

●じゃあ、今作の中で“思ってもいない”一面が見えた曲はありますか?

滝澤:今作だとM-10「シナリオライター」ですね。僕はわりと筆が早い方なんですけど、この曲は全くできなかったんです。僕はそういう時に極端に考えちゃう癖があって。いつの間にか言い訳を大げさに考えて、それを上手いこと逃げ道にしようとしている自分に気づいたんですよ。そこで、「じゃあ“この時に逃げようとする瞬間があった”ことを歌詞に書こう」と思って。逃げちゃいけないという意思を込めて、この曲を作ったんです。

●この曲は“このドアの向こう まだ怖いけど”からのくだりで、特に熱量が上がる感じがしますね。

滝澤:最後の歌詞で“見えない わからない だから歩けるよ”っていう歌詞があって。例えば、明日のことが全部分かる人って「明日はこうなるのか、じゃあもう別に何でもいいや」ってなっちゃうと思うんです。明日のことが分からないから「明日を生きよう」って思える。先が見えないから歩けると思っているんです。そこが僕の考えの全てというか。だからサウンド的にも熱くなるんだと思います。

●この曲は最後にスパッと終わるじゃないですか。「ドアを開けた瞬間」みたいな、新しい場面に切り替わる感じがしたんですよね。そこが“集大成”という今作の最後にふさわしい気がしたんですよ。

滝澤:あ…! 言われてみて気づきました。確かにそういう感じがあるかも。ボーナストラックを入れないで良かったです(笑)。

●ははは(笑)。3/28には渋谷TSUTAYA O-Crestでワンマンが控えていますね。今回はどういったイベントにしたいですか?

滝澤:よく友達からも「(次の)ワンマンはどんな感じにするの?」って聞かれますけど、「いつも通り」っていう。ライブのスタンスとしては変わらないというか。

秋山:「ワンマンだから特別なことをやりますよ」って言った方が良いのかもしれないですけど、根本はいつも通りのスタンスで。30分のステージを観てくれた人が、ワンマンを観ても違和感がないライブというか。観に来てくれた時に「やっぱり良いな!」って思えるようなワンマンにしたいです。

Interview:馬渡司

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