アメリカンハードロックやグランジなどの影響を独自に昇華したメロディックパンクを鳴らす3ピースバンド、ALTERNATIVE MEDICINE。SHO(Vo./G.)とGO(Dr./Cho.)を中心に東京・吉祥寺で2000年に結成した彼らが憧れていたのが、同じ吉祥寺を拠点に活躍していたOCEANLANEだった。
そのメンバー・直江慶(Kay Naoe)との対談が、ニューEP『Forget About It』の発売を機に実現! 今ではすっかり親しくなった両者の出会いから、共に洋楽をルーツにする音楽的背景の話までじっくり語り合ってもらった。
SHOによる新作の全曲解説と共に豪華2本立てでお送りする、『Forget About It』発売記念特別企画!
SHO:最初に会ったのは、2011年にOCEANLANEのツアー("URBAN SONNET TOUR")で対バンさせてもらった時ですよね。それまでは僕の中で憧れのヒーローだったんです。
Kay:そんなことないよ(笑)。
SHO:本当ですって(笑)。ツアーで金沢と宇都宮を、一緒にまわらせてもらったんですよね。でも宇都宮がちょうど去年の3/11で、震災の影響で2人とも身動きが取れなくなっちゃって一緒に過ごしたのを今でも思い出します。
Kay:ツアーはALTERNATIVE MEDICINEから一緒にやりたいと言ってくれたから、俺たちもぜひよろしくお願いしますとなって。ライブを初めて観た時は「クレイジーな人たちがいるなぁ」と思ったね。
SHO:ハハハ(笑)。
Kay:MCが面白いんだよね。SHOくんのMCに対して、GO(Dr./Cho.)くんが合いの手を入れる感じで。それがどこから聞こえてくるのか最初はわからなくて、神の声みたいで面白いなって(笑)。RIE(Ba./Cho.)ちゃんのプレイもカッコ良いし、ライブを盛り上げるのも上手で「面白いヤツらがいるな」と思った。ウチらにはない若さ溢れるライブだったので、自分たちが忘れかけていたものを思い起こしたというか。
SHO:本当は僕が1つ年下なだけなんですけどね(笑)。でもキャリアが全然違うから。2003年頃に吉祥寺の新星堂で限定シングルの『Everlasting Scene』を試聴して、その時に「ヤバいバンドがいるな」と思ったのが最初の出会いだったんです。すごく流暢な英語だし、最初は日本人のバンドだと思わなくて。でも吉祥寺で活動しているバンドだと知って、しかも自分たちがやりたかったことを先に全部やられているなと。OCEANLANEが"SUMMER SONIC '04"へ出た時にライブも初めて観て、「これはカッコ良すぎる…」と思いました。
Kay:その頃はド下手だったけどね(笑)。
SHO:僕は当時まだ大学生でバンドは一生懸命やっていたけど、CDをリリースしたりすることとは無縁で。僕は吉祥寺出身なので、「すごいバンドが吉祥寺にいるんだな」と思ったんです。だから初めてツアーに同行させてもらった時は野球少年が長嶋茂雄にバッティングを教えてもらうような感じで興奮しましたよ(笑)。ミュージシャンとして1つの夢が叶ったなと思ったくらいです。
Kay:SHOくんは「ウソじゃないか?」と思うくらい色々と誉めてくれるので、話していると良い気分になっちゃうよ(笑)。
SHO:金沢で初めて共演させてもらった時はメンバー3人で1枚ずつ『Urban Sonnet』のCDを持って、サインをもらいに行きましたからね。こっちから「マジで好きです!」っていう感じでがっついたっていうか。
Kay:"好き好きオーラ"がハンパなかった(笑)。
SHO:やっぱり自分もバンドマンだから普段は他のバンドに負けたくないと思ってトガッているんですけど、OCEANLANEに対してはもう憧れしかないから。去年の8月に千葉LOOKでOCEANLANEが細美武士さん(the HIATUS)と共演すると聞いた時は、自分の2大ヒーローが共演するっていうことで興奮して。お2人に連絡して、会場に入れてもらったんですよね。千葉からの帰りの車にも同乗させてもらって、その時に後部座席でKayくんと一緒になって初めて色々と話したのかな。
Kay:そうだったね。
SHO:Kayくんと、より仲良くなったのはそこからですよね。自分たちにPVがないという話をしたら、Kayくんが「最近、映像をやっているから撮ってあげるよ」と言ってくれて。たぶん冗談半分だったんでしょうけど、僕は真に受けて「絶対に撮って下さい!」とゴリ押しで(笑)。
Kay:食いつきがハンパなかったよね(笑)。
SHO:すぐに音源を送って、Kayくんに撮りやすい曲を選んでもらって。「SEARCHLIGHT」(『BELIEVE OUR SEARCHLIGHT EP』収録)のPVを撮ってもらったんですけど、僕らの若さ溢れる感じを引き出してくれましたね。…GOくんは撮影中に3回吐きましたけど(笑)。
Kay:ライブの翌日だったんだよね。
SHO:前の日が三重でライブだった上に、朝まで呑んでいたんですよ。朝9時から撮影予定だったのに、GOくんは大遅刻してきて…。2日酔いの状態のままで坂道を転げ落ちたり、くるくる回ったり、ぴょんぴょん飛び跳ねたりするシーンを次々やらされた結果、絶え間なく吐いていましたね(笑)。
Kay:坂道を転げ落ちるシーンは2秒くらいしか使っていないけどね(笑)。曲もキラキラしていたので、"らしい"ところを引き出したいなと思って。
SHO:直江慶・初監督作品ですよね。その映像を今回の『Forget About It』に特典として付けようと思っているので、これをキッカケにOCEANLANEのファンにも興味をもってもらえたらいいかなって。逆にウチらのファンがOCEANLANEを知って「カッコ良い!」となってくれるのも嬉しいし。
Part 2:音楽的ルーツの共通点
SHO:Jimmy Eat WorldやThe Get Up Kidsとか自分が好きで聴いていた海外のEMO系バンドと、OCEANLANEは対バンもしていて。そういうバンドと並んで、OCEANLANEは自分たちに影響を与えてくれた音楽なんですよ。
Kay:うれしいね。
SHO:OCEANLANEが1stアルバム『On my way back home』で一気に売れていなかったら、今みたいに英語で歌うバンドはそんなに出てきていなかったんじゃないかな。カタカナ英語じゃなくて、流暢な英語で歌う本格的なスタイルのバンドはOCEANLANE以降で増えた気がします。
Kay:時代に上手くハマったというのもあるけどね。ALTERNATIVE MEDICINEもUSインディー系の音楽が好きだったり、洋楽に影響を受けているんだろうなっていうのは音を聴けばわかって。聴いてきた音楽は自分たちと一緒なんだろうなと。
SHO:元から歌モノが好きだったので、英語で歌モノができたらベストだなと最初は思っていたんですよ。でもそのスタイルではOCEANLANEみたいにカッコ良いバンドが既にいるし…。
Kay:いやいや(笑)。
SHO:あと、当時は自分たちも下北沢を中心に活動していたこともあって。同期のレミオロメンやBase Ball Bearやランクヘッドとは当時よく一緒にやっていたんですけど、みんなどんどん売れていったんです。自分たちも日本語で良いメロディを伝える曲をやろうとしていたんですけど全然売れないし、大学を卒業するタイミングでこのままじゃダメだなと気付いたんですよ。
Kay:俺たちは色んなことを試した結果、日本語で歌うスタイルが自分たちには合わないと気付いたんだよね。そこで自分たちの好きな音楽を英語でやるほうが性に合っているから、追求していっただけで。
SHO:僕は大学を卒業して社会人になるあたりで、「音楽は趣味として一生続けていこう」と思って。それまでは売れたいとかメジャーデビューしたいとかいう野心があったんですけど、そういうのはもういいから好きなことをやろうと。
Kay:俺たちも野心はあったよ(笑)。
SHO:(笑)。元々、僕はアメリカに住んでいた時、グランジやアメリカン・ハードロックが大好きだったんですよ。そこから日本語も英語も関係なく好きなことをするバンドになっていって、昔とは全く違うバンドになりましたね。そしたらMyspaceで音源を聴いた前のレーベルから声をかけてもらうことになったという…。
Kay:ラッキーだったね。3人のライブを観ていると、こっちも楽しくて。何よりも演奏が上手いし、そこらへんのバンドとは違う。MCも面白いし、まだあまり知られていないのはもったいないなと思う。
SHO:これだけMCを推してくれるのは、Kayくんしかいないですよ(笑)。
Kay:もちろん曲も素晴らしいから、あとはタイミングだけなのかなって。今回からはレーベルも移籍したわけだし。
SHO:逆にKayくんの近況はどんな感じなんですか?
Kay:少し前までIVORY7 CHORDのサポートギターを担当していたんだけど、その活動は終了して。ソロでアコースティックライブもやりつつ、6/19に渋谷O-nestで開かれる"COLOUR SCENE"というイベントで自分の新バンドが第1弾のライブをやるんだよね。だから今はそこに向けて新曲を作っているところで。"THE TURQUOISE"っていうバンドなんだけど、ALTERNATIVE MEDICINEを意識して、3ピースバンドでやろうかな(笑)。
SHO:僕はそこにリードギターで入りますんで、4人でやりましょう!
Kay:平日はALTERNATIVE MEDICINEで、週末だけウチのバンドとかね(笑)。
SHO:そしたらALTERNATIVE MEDICINEは辞めようかな…1人じゃ両方は手も回らないし(笑)。Kayさんには僕たちのツアーファイナルにも出てもらう予定なので、楽しみです!
Kay:これからまた一緒に上がって行きたいよね。
SHO:OCEANLANEのツアーに連れて行ってもらえて本当に良かったなと今でも思うんですよ。まだ全然知られていない僕らみたいなバンドにもきちんと接してくれてうれしかったし、自分たちもそういう人間になろうと思います。
Interview&Edit:IMAI
M-1「Forget About It」:"Forget About It"というのはマフィア用語なんです。普通に訳したら"忘れちまえ"っていう意味だけど、マフィア用語だと"超イイな!"も逆に"最悪だな!"も全部この言葉で表せるのが面白くて。人生は山あり谷ありだけど全部"Forget About It"で、"ライブに来たら日常のつらいことや嫌なことを全部忘れて楽しもうぜ"っていう歌詞ですね。ライブでもお客さんがすごく盛り上がってくれていて。メロコア・シーンに足を踏み入れて2年で、ようやくライブでみんなを巻き込める曲ができたなと思います。
M-2「Walk」:僕らはハードロックもグランジもポップソングも全部融合したような音楽が一番好きなんです。そういうタイプの曲は今までもやってきたけど、今作にも入れたいなと思って作りました。タイトルも「Walk」だし、"前を向いて歩いていこう"っていうか。"Keep walking on air"という言葉は"天にも昇る気持ち"という意味があって。"色々と人生には難しいこともあるけど、結果的には自分が生きていて気持ち良いと思えるような生き方をしようぜ"というポジティブなメッセージを歌っています。
M-3「Candles」:三重でライブをした時、お客さんが少なかったので近くのショッピングモールへ人を集めに行ったんです。GOくんがCDショップにいた女子高生に声をかけたら、「私は西野カナみたいな失恋ソングしか聴かないのでムリ」と言われたらしくて。それに彼はものすごく衝撃を受けたらしく、「今の若い子に届けるには失恋ソングを書かないとダメだ」と言って書いた歌詞です。僕にはよく理解できないけど、彼の中ではモロに西野カナ的な胸キュン系失恋ソングなんだとか(笑)。