キュウソネコカミを輩出した赤マル急上昇中のインディーレーベル“EXXENTRIC RECORDS”から、この冬新たに要注目の2作品が登場! まずは日本人の心に響くグッドメロディを届けるプププランドが、1stフルアルバム『BYE!BYE!BYE!』を11/26にリリース。続けて12/24には、インパクト抜群のネガティブポップを放つQLIPの2ndミニアルバム『いきたくない』が発売となった。2015年のインディーシーンを担っていくであろう2組に対し、今回はレーベル社長はいからさん自らがインタビューを敢行! もはやお馴染みの連載コラムも含めた濃厚な特集企画をお届けする。
●まさか僕にとって初インタビューが、自分のレーベルのバンド相手だとは思わなかった(笑)。しかも上野くんとはこうしてちゃんと話すのも初めてという。
上野:そうですね。レーベルの代表ということでちょっと身構えていたんですけど、話してみたらすごく親しみやすくてホッとしました(笑)。
●そもそもQLIPとは2011年のイベントで出会ったんだよね。セイヤ(キュウソネコカミのVo./G.)が「QLIPってバンドがすごくいいんです」って言っていて、それがキッカケでイベントに出てもらったけど、初めて会ったときから“この子たちは人と話すのが苦手なんだろうな”って思った。
一同:アハハハ!
●そのときはまだ西村さんや上野くんはいなかったけど、2人も割とそういう雰囲気だよね。一歩踏み込むと一歩後ずさるタイプ。
玉岡:逆にはいからさんは“すごくパワフルだな”って思いました(笑)。体育会系というか、お店の店長みたいな。
西村:本当にパワフルで尊敬します。明るいし面白いし、はいからさんになりたいくらい(笑)。
●それはやめておいた方がいいで。
一同:アハハハハ!
●そんな現メンバーになって初めての音源が今作『いきたくない』ですけど…名前からしてもうアレだよね(笑)。どういう意図でこのタイトルに?
小椋:生死という意味でもありますし、学校や仕事に行きたくないって気持ちでもあります。すごくネガティブな意味でこのタイトルになりました。
●めっちゃキツい意味やん(笑)。あと、おぐおぐ(小椋)は12/24にリリースすることにめっちゃこだわってたよね。みんなCD以外に買いたいものがあるやろうし、レーベルとしてはズラした方がいいんちゃうかと思ってたけど(笑)。
小椋:街が多幸感にあふれる中、あえてネガティブな作品を出すという…(笑)。
●でもアルバムのM-1「リプレイ」は、君らの中ではかなり明るめの曲だから“あれ? 結構プラス思考やな”と感じて。
小椋:基本的に僕らは曲から先に作って、そこから受けたイメージを歌詞に出すことが多いんですよ。だから歌詞の世界感はそんなにブレていなくて、「リプレイ」はたまたま曲が明るめだったから、前から思っていた“音楽が好き”っていう想いをそのまま入れたんです。メンバーが変わってからできたので、昔と比べて音の雰囲気は少し変わっていますけどね。シンセの音色に広がりが出て、よりキーボードっぽくなったと思います。
●M-2「スキップ」も比較的軽やかな曲調だけど、こっちはスキップしている女の人の後をつけているストーカーの歌だよね(笑)。
玉岡:そうそう! 最初の方は女の人視点なんですけど、最後は後をつけている男視点なんですよね。バレへんかなと思っていたんですけど(笑)。
●いや、バレるやろ(笑)。今までのQLIPにも音の幅はあったけど、「スキップ」はその中でも特に明るい方に振り切れている気がするね。でも3曲目辺りから徐々にQLIPらしさが出てきて、4曲目からは完全に通常運転に戻る感じ。M-4「強いられている」は仕事に対する不満が書かれた歌詞だけど、よくこれだけ自分の仕事に対する愚痴が出てくるな(笑)。
小椋:社会人になって報・連・相とかP D C Aとかいう言葉をしょっちゅう聞くようになったんですけど、“何やねん、そのサイクルは!”と思って。その鬱憤が詰まっています(笑)。
●たまちゃん(玉岡)はずっと長い付き合いやからいいけど、新しく入ったメンバーはどう思う?
上野:基本的に僕もネガティブな人間なんで、共感できるところはいっぱいあるんですよ。
●そうなんや(笑)。M-5「なにもしない」なんか本当に酷いもんね。“どうしようもねーな、コイツ”みたいな内容(笑)。
小椋:ただのクズですからね(笑)。これも曲からできたんですけど、ずっと“追いつめられているような音だな”と感じていて。作った当時は就活やいろいろなことで葛藤があって“何もしたくないと思っているのに、何でこんなことせなあかんねん”っていう気持ちだったんですよね。
●いつもどういう流れで曲を作ってるの?
玉岡:特定のフレーズやサビが最初に出てきて、それを活かすために全体を作っていって、最終的に歌詞を付けるんです。「なにもしない」の場合はまずメロディーが出てきましたね。
西村:前のアレンジだと4つ打ち感がかなり強かったんですけど、それだと一本調子になっちゃって。緩急をつけたいということで、最終的に今みたいなアレンジに変えたんです。
●M-7「メリーリターニー」は音源になってから初めて聴かせてもらったんだけど、これは帰国子女に対するDIS曲だよね。“リターニー”は帰国子女という意味ですが、“メリー”は?
小椋:“おめでたい”というニュアンスで使っています。僕の造語なんですけど、これは“おめでたい帰国子女”っていう意味ですね。
●めっちゃDISるなぁ(笑)。
小椋:でもはいからさんって、意外とDIS好きですよね?
●それはちょっと否めない(笑)。歌詞の内容について、他のメンバーに意味を話したり相談したりするの?
小椋:基本的にはあまり話さないですね。ときどき玉岡が「それは言い過ぎちゃう?」みたいなことを言うことはあります。
玉岡:あと歌詞を書いてもらう前に、“どんなイメージで進めるか”っていうのを教えてもらったりはしますね。
●最後はM-8「ライトアップ」に繋がっていくわけだけど、この曲って歌詞がすごく面白いよね。今が全盛の4つ打ちロックやそういう音楽性で人気のあるバンド、かつそのライブに行くお客さんに対するDISが込められているじゃない。にも関わらず、この曲も4つ打ちっていうQLIPらしい複雑な心情が描かれた曲だなというのがあって。
玉岡:まさにそうです。
●たぶん、4つ打ちを主として戦っているバンド自体も“このままでいいのかな”みたいな不安や問題意識は持っているんじゃないかな。QLIP的にはその流行りの波に乗りたいと思う?
小椋:乗れるとこは乗りたいです。
●正直だ(笑)。
小椋:ただ、シーンに入り込みすぎると埋もれちゃうかなとも思っていて。上手く流行りも押えながら、やりたいことをやっていきたいですね。
●その割には結構ガンコだけどね(笑)。人の意見は聞きつつも、譲れない部分が多い?
小椋:そうですね。特にアレンジと歌詞は、自分でもかなりこだわっていると思います。
●なるほど。では最後に、今後の目標や野望を教えてください!
小椋:そうですね…このネガティブさで全国制覇したいです。
●どういう状況になったら全国制覇なの(笑)?
小椋:全国の音楽好きな人なら誰でも知っているような存在になることです。やっぱり、まずは知ってもらわないと始まらないですからね。
INTERVIEW♯2 プププランド
●プププランドは、竜哉(西村)がやっていた“ガーベラズ”というバンドが解散して新しくできたんだったよね。今のメンバーはどういう経緯で出会ったの?
富田:竜哉とはもともと大学が一緒で、軽音楽部でコピーバンドを組んでいたのがスタートでした。
吉川:僕は昔アコースティックデュオをやっていたんですけど、地元の友達が竜哉とめっちゃ仲良くて。そいつに「神戸に天才がおる」って言われて観に行ったのがガーベラズだったんです。ライブがすごくカッコよかったから、すぐに仲良くなったんですよ。
●たなりゅー(田中)は?
田中:前作のレコ発時に、前任のベースが体調不良でライブに出られなくなったことがあって。そこで急きょ代打を頼まれたのがキッカケでしたね。
●あの頃はガレージ感のあるバンドが流行っていたけど、プププランドはそれとは少し違う感じがしてすごく面白かった。ただ、最初の段階では“いいバンドなんだけど、このままで大丈夫かな?”とは思って。
吉川:それはいろんな人に言われましたね。お客さんを持っていこうとはするんだけど、“最終的にどこに持っていきたいか”が定まっていなかったというか。
●そうそう。でもその後にリリースした2nd EP『BOYS IN THE BAND』を聴いたときに“この方向性なら絶対にイケる!”って考えたから、プププランドの音源を出したいと思ったんだよね。当時あっくん(吉川)はあんまり僕にいいイメージを持っていなかったかもしれないけど(笑)。
吉川:正直、僕も“はいからさんは僕らのことをあんまり好きちゃうんやろうな”って思ってました。
一同:アハハハ!
●たぶん、2012年に神戸でやったイベントが原因だと思う。身内ノリの強いイベントだったから、キュウソ(ネコカミ)のライブ中に出演者全員がステージに出てきたんだけど、そのせいでメンバーが誰も見えなくなるっていう状況になって(笑)。僕が“お客さんはお金を払って好きなバンドを観に来てくれるんだから、それを考えなアカン”って怒ったんだよね。
吉川:みんなが勝手にステージに上がって、一緒にカメハメ波をするみたいな(笑)。正直、当時は何が悪いのかわからなかったんですけど…周りの人たちからいろいろ教えてもらう中で“ここを目指していかなアカンねんな”っていう意識が持てたから、今ならその意味がよくわかります。『BOYS IN THE BAND』が目指すべき方向性を定められた1枚だとしたら、今作『BYE! BYE! BYE!』は方向性をとことん追求した2014年の集大成って感じですね。
西村:確かに『BYE! BYE! BYE!』でひとつの終着点が見えたよな。
●今のプププランドがやりたい音楽というか。いろんな曲があるから“こういうことができますよ”っていう振り幅も見せられているよね。
田中:これを出したことによって、また意識が更に高まったというのもありますね。リリースした次の日くらいから“また新しいことをやろう”っていう意識になっていました。
●ちょっと気になったんだけど、M-9「BOYS IN THE BAND」って前々からライブでもやってたやんか。前作の『BOYS IN THE BAND』を出したときにこの曲を入れなかったのには、何か理由がある?
西村:当時はまだ出来に納得していなかった部分があって。“今出しても、技術的に上手く表現できないところがある”と思ったから、急きょ収録するのを止めたんですよ。でも“BOYS”っていう言葉はどうしても使いたかったんで、題名に使いました(笑)。
●曲のタイトルが付いている作品に入ってなくて、全く別の作品に入れるっていうのが面白いよね(笑)。あと、Twitterで「この曲は○○のリスペクト」っていうのを正直に書いていたのも面白かった。M-2「バイ・バイ・バイ」はThe White Stripesの、「BOYS IN THE BAND」はThe Libertinesのオマージュなんだっけ?
吉川:そうですね。「日本のバンドを参考にしているのかと思った」って言われたりして、意外に思われることも多いです。
●リスペクトしていてもそのまんまではないから、それは強みだと思う。曲の原型は誰が作ってくるの?
吉川:竜哉が曲のメロディや構成を決めて、弾き語りで送ってくるんです。それに僕らがフレーズを付けていくんですけど、デモと最終的にできあがったものとはかなり変わるんですよ。だから完全に竜哉のデモ通りじゃなくて、みんなでアレンジしていくっていう感じですね。歌詞も竜哉が書いています。
●歌詞と言えば、M-6「かずこ」に出てくる“かずこ”って誰なん?
西村:明確な対象はあるんですけど、そういうのってあんまり言いたくないんですよ。ライブでは話したりもするんですけど、聴く人によって捉え方が変わるのが日本語詞の面白いところだと思いますし。
吉川:アレンジ面では、それが難しいところでもあるんですけどね。竜哉は「各々の解釈でフレーズを放り込んでくれ」っていうスタンスなんで、曲の説明をしないんですよ。だからメンバー間で「俺はこういう気持ちでやってんねんけど」っていう解釈が違ったりして。
●そういう場合、どうやってバランスを取っていく?
吉川:それは話し合って意見をぶつけるしかない。スタジオに3時間入ったうちの、2時間くらいを話し合いで終わることもあります。
田中:問題を放っておいたらずっとそのレベルのままですけど、話し合うことでもっとよくなることって多いじゃないですか。仮に意見が間違っていても取り入れなければいいだけだし、自分の意見が崩れるとしてもどんどんディスカッションした方がいいと思っています。バンドにとってプラスになれば、結果的に自分にとってもプラスになるんです。
●以前に比べて、みんな野心が出てきたよね。
吉川:純粋にいい音楽を作りたいっていう気持ちが強くなった気がします。レベルの高いバンドを観る機会が増えて特に思ったんですけど、前線で活躍している人たちは、みんな強い武器があるんですよ。それを磨いていかないと僕ら自身も楽しくないやろうし、音楽だけに囚われずいろんなものに触れていきたいですね。
●何か今後の目標や野望はある?
西村:めっちゃ小さいかもしれないですけど、まずは自分たちを100%出したい。やりたいことは見えているんですけど、能力的にまだまだ手が届いていないんですよ。そういう“もっとよくしたい”という気持ちってキリがないとは思うんですけど、ちょっとでも理想に近付いていきたいですね。
●100%に向かいつつ、自分たちの中でどう折り合いを付けていくかも大切だと思うよ。
西村:そうですね。音楽の世界に入るキッカケはいろいろあると思うけど、2015年は僕らを観てそういう人が増えるよう頑張りたいと思います。
●トミー(富田)はどう? さっきから全然しゃべってないけど。
富田:完全に同意です。
一同:アハハハ!
吉川:インタビューだといつも無口ですからね(笑)。今から5分間はトミーさんしかしゃべらないんで、思い切り堀り下げてもらっていいですか?
●じゃあ、童貞失ったのはいつなん?
富田:それ聞いても絶対(誌面に)載せられないでしょ!
一同:アハハハハ!