“Warped Tour”で目の当たりにした奇跡を日本のライブハウスで起こしたいという主催者の想いから2010年にスタートしたライブイベント“REDLINE”は、毎年全国各地のライブハウスで開催され、数多くの奇跡を生み出してきた。そんな“REDLINE”が2015年を目前にしてシーンに放つ新たな化学反応は、これからのラウドシーンを作り上げていくニューエイジ4バンドによるスプリットアルバム『REDLINE RIOT!!』。ハードコアやメタルコアを軸にした独自の世界観で海外にも活動の幅を拡げているCrystal Lake。SiMやcoldrain、Crossfaith、MAN WITH A MISSONといった猛者たちと凌ぎを削り合い、メキメキとその実力を上げているNOISEMAKER。未だ流通音源をリリースしていないにも関わらず海外のフェスにも出演し、大きな期待と注目を集めているSurvive Said The Prophet。様々な音楽を貪欲に取り入れて昇華したオリジナリティと強烈なライブパフォーマンスで多くの支持を集めているwrong city…次の時代を担うニューエイジによるスペシャルトークセッション。
●ラウドシーンが盛り上がっているという話をよく聞くんですが、そういう実感はあるんですか?
AG:そうですね。でもこの4バンドはおそらく自分たちのことを“ラウド”と思っていないんですよ。流行りとかそのときのシーンだけで終わるつもりはないっていうか。だからラウドというよりもロックバンドとして、何かをぶっ壊そうとしている4バンドだと俺は思っているんです。
●確かに今回のスプリットアルバム『REDLINE RIOT!!』を聴くと、ラウドという枠組みだけでは済まさないぞっていうマインドをビシビシと感じる。各バンドの個性を思い切りぶつけていますよね。
Victor:しかもおもしろいのは、全バンドちゃんとベクトルが違うっていう。
Yosh:今の2人の話からしても、ラウドシーンは間違いなく盛り上がっているんですよね。なぜかというと、一括りで終わらないということは範囲が拡がっているということで、それはニーズが高くなってきていて、“ラウドはこうじゃないといけない”というルールが無くなってきているからだと思うんです。
3人:うんうん。
Yosh:じゃあそこで何を表現するかというと、結局は生き様っていうか。シャウトじゃないといけないとか、流行りのブレイクダウンを取り入れるとか…そういうメンタリティから離れていく世代にこの4バンドはいると思っていて。だから今回のスプリットがなくても、この4バンドはきっと何か新しいものを一緒に作ろうとしたでしょうね。
●ということは、『REDLINE RIOT!!』の話はまさに必然だった。
Yosh:うん、ピンと来ました。僕らは今作が初流通作品なんですよ。普通は初流通作品ってオリジナルじゃないですか。でも今回の話が来たとき、この4バンドのスプリットだったら絶対に意味があると思ったし、逆に参加しなかったらSurvive Said The Prophetのライフスタイルが見えなくなるなと思って。
●今作は各バンド2曲ずつ収録されていますが、すべて未発表曲もしくは新曲ですよね。それぞれの楽曲からは、さっきYoshくんが言っていたようなものすごい熱量を感じたんです。どういう2曲にしようと考えたんですか?
AG:まず、まったくタイプの違う2曲にしようと思ったんです。
3人:うんうん、それは一緒。
AG:一口にバンドと言っても、別にライブで暴れなくてもいいわけじゃないですか。モッシュしなきゃいけないとか、ダイブしなきゃいけないとか…それがすべてではないから。そういう部分を今回の2曲で表現できたらいいなと。あとはやっぱり、聴いた人が「NOISEMAKERがいちばんイイね」って思うように作ってやろうと。で、実際に完成して全体通して聴いたら、みんなそれぞれ違うベクトルだったんですよね。“すごいの作ってきたな”と刺激を受けつつ、本当にこの4バンドで良かったなと思いました。
Ryo:AGさんが言ってることはおそらく全員に当てはまると思うから省略しますけど、俺たちはパンチを残したいと考えたんです。自分たちが持ってる両極端な個性を詰めた2曲。「Matrix」はヘヴィ&キャッチーを突き詰めて、「Light Up The Tunnel」は世界観と自分たちの持つメロディを前に出したんです。それぞれ違ったパンチを出せたかなと。
Victor:俺らはこの中でいちばんキャラが濃いバンドだと思うんですよ。で、ちょうどこの2曲を作っていたときは俺がすごく悩んでいた時期で。“あの人はできるのになんで俺はできないだろう?”という、自分に対する不満というか葛藤というか。
●そうだったんですね。
Victor:でも色々と考えた末に、自分にしかない個性があるハズだと吹っ切れたんです。それで作ったのが「Perfect duty」。この曲は俺ら節が全開で、最近新しいドラマーが加入したんですけど、今の俺らが間違いなくかっこいいと思えるものを詰め込もうと。もう1曲の「My shape.」は前からあった曲なんですけど、再構築をして今回新しいアプローチを提示した曲。
●最新型のwrong cityを詰め込んだと。Survive Said The Prophetはどうだったんですか?
Yosh:さっきの話に関連するんですけど、このバンドを立ち上げたときは“ラウド”というジャンルに縛り付けられていた感じがあったんですよ。でも今年に入って今の5人のメンバーになり、ジャンルというよりは音楽に対して向き合えるようになったんです。だから初めての流通作品となる今回は、俺らの世界観を思い切り詰め込んで作品全体を包み込んでやろう、くらいの意気込みで。とにかく聴いた人の感情をリリースさせるようなものにしたかったんです。楽器でハモリを入れるポジションとかも、音楽的というより、リリックに対してのアプローチをしたりして。自分たちなりのメロディをガッツリ入れて、バンドの世界観で押しまくろうと。
●4バンドともめちゃくちゃ気合いを入れて熱量と想いと個性を詰め込んだ2曲にしたんですね。来年1月にはこの4バンドでの“REDLINE RIOT TOUR 2015”が予定されていますが、この4バンドの繋がりとか刺激を与え合っている関係性からすると、このツアーは楽しみだし気合いも入りますね。
AG:この4バンドでこれだけの箇所をまわるなんて初めてのことだから、バンド同士の絆も深まるだろうし。ライブはバチバチでやるだろうけど、でもやっぱり、闘いながらも最後まで一緒に…今回のスプリット・アルバムもツアーも…1つのものを作り上げる仲間だと思ってるから、ツアーが終わったときにどういう景色が見えるのかが楽しみですね。1バンドだけでまわってても絶対に作り上げることができないものだろうから。
Victor:それに、このツアーが終わった後も楽しみなんです。たぶんこの4バンドでまわっていったら「どうやったら俺らの好きな音楽がもっと盛り上がるかな?」みたいな話もするだろうから、このツアーが終わった後の、各バンドの動き自体も気になるし、シーンが引っ掻き回されてどうなるかっていうのもすごく楽しみなんです。
●最初にAGくんが言っていたように、この4バンドは全員が“ラウドシーンだけで終わるつもりがない”と考えているからこそですよね。
Victor:そうそう。何かの芽が出そうな気がします。
Yosh:このツアーは自分たちにとってすごくためになるだろうし、この経験が今後のそれぞれの活動に活かされると思うんです。ツアーが終わったら間違いなく今以上のグルーヴができていると思うので、それを新しいムーブメントにできればいいですよね。
Ryo:パッケージツアーのいちばん楽しみなところは、一緒にライブを重ねる毎にどんどん完成していく様子自体が美しいところだと思うんです。それが自分でもすごく楽しみだし。だからどういうツアーになるのか、今からワクワクしてます。
interview:Takeshi.Yamanaka
Crystal Lake
AG:初めて観たとき、もう衝撃でしかなかった。Ryoはストリート感がすごくあるし、オラオラ系だし、観ていてすごくかっこいいし。初めて対バンした日、あまりにもかっこよくて衝撃を受けたから家に帰ってからYouTubeでCrystal Lakeを調べたんです。“あのバンド何だ?”って。それにRyoは、声はすごく野太いのに、実際に会ったらすごく優しい顔してて。大好きなバンド。
Yosh:オールドスクールと言われるカルチャーをひっくり返した存在だと思っているんです。初めてCrystal Lakeの音源を聴いたとき、“どういう風にこの声を作ってるんだろう?”と不思議だったんですよ。でもライブを観に行ったら、別に作っていたわけじゃなくてナチュラルだったという。びっくりしましたね。
Victor:俺の中ではもうハードコアじゃないんだよね。Crystal Lakeでしかない。とびきりキャッチーだし、聴いたらすぐに“Crystal Lakeだ”ってわかる。それがすごくかっこいい。
NOISEMAKER
Yosh:3年前に初めて対バンしたんですけど、ヴォーカルのメロディの安定感とインパクトがすごくて。発音とかアクションが、日本人っていうより海外でやっている本場の感じがすごくしたんです。その後のNOISEMAKERの活躍を見て「やっぱり俺の直感は間違ってなかったな」って。最初に観たときに惚れましたね。
Ryo:NOISEMAKERは自分のルーツに共通するものがあって、すごくツボを押さえてくるんですよね。シンプルなリフがあって、R&Bっぽいメロディが入って…最初観たとき、これは絶対に東京からは出てこないバンドだなと思ったんです。嫉妬じゃないけど、やっぱり観ていて悔しいんですよね。自分がやろうとしているところを先にやられたっていう。
Victor:初めて会ったときは、“本当に仲良くなれそうにないバンドだな”と思ったんです。メンバーは全員おとなしいんですよ。楽屋でもすごく静かで。でもいざライブを観たらすんげぇアグレッシヴなステージで。俺たちメンバー全員で「NOISEMAKERは嘘つくのが上手いよな!」って言ってたんです(笑)。
Survive Said The Prophet
AG:Yoshは英語がすごくて、初めて対バンしたときに衝撃を受けたんです。あと、聴く音楽が俺たちと近い。今回の新曲を聴いたときも“あ! ツボが一緒だな!”って。この4人の中で、ヴォーカリストのメロディラインのツボがいちばん近い存在だと思うし、だからこそやられた感がすごくある。観ていてすごくかっこいいと思うバンドですね。
Ryo:やっぱりYoshのフロントマンの存在感。第一印象がすごくキャッチーだし、ステージに立ったらカリスマ感があって、歌で訴る力がすごい。初めて観た人でも心にグッとくるライブをするバンドですね。
Victor:心にズカズカと入ってきて、ハートをちょんちょん触ってくるバンドなんです。しかも人間くさいんですよね。歌詞もそうですけど。昨日の晩飯が想像できるというか(笑)、歌ってて感情を隠さないんですよね。だから共感できる。
wrong city
AG:初めて対バンしたときに思ったのは、ヴォーカルがイケメンでムカつくなって(笑)。でもライブになると、かっこつけてないんですよね。それがすごく刺さるし、熱いところは熱いんだけど、緩いところもちゃんとあって、人間味がある。メロディラインは俺とまったく違うものを持っていて。ライバルでもあるし友達でもあるから、刺激も影響も受ける、自分にとって特別なバンド。
Ryo:Victorはロックバンドのヴォーカルとしてかっこいいんですよね。音は繊細だけど、Victorには尖ったオーラがあるから、ストレートにロックンロールしている感じが好きなんです。だから観ていてすごく刺激を受ける。
Yosh:間違いなくこいつらは外人ですよね。Victorのかすれた感じで歌う声が、声を張るときと張らないときのそれぞれの個性がすごく好きなんです。バンドをやればやるほど表現の幅が広がって、次はどういう世界を見せてくれるんだろうな? っていうのが楽しみですね。