音楽メディア・フリーマガジン

二人目のジャイナ

音とステージに覚悟を込めた 本物のエンターテインメント

PHOTO_二人目のジャイナ3年前の結成直後からワンマンをソールドアウトさせ、多くのライブを重ねて支持を集めている歌モノブラスロックバンド・二人目のジャイナ。プロの現場で活動してきたメンバーを集め、本物のエンターテインメントを追求する彼らは、目まぐるしく生き急ぐ活動の中で3枚目のアルバムを完成させ、そしてツアーファイナルは渋谷CLUB QATTROでワンマンライブを敢行する。人生を賭け、音とステージに覚悟を込めた彼らの挑戦は、たくさんの人の心を捉えて放さない。

 

 

●二人目のジャイナは音楽経験のあるメンバーで結成されたらしいですね。

Masa:そうですね。僕がもともと音楽活動(Three Piece of Communication)をやっていた中で知り合った奴らを誘ったんです。最初にKouに声をかけて、一緒にバンドをやろうと。

●Masaさんから見て、センスのあるミュージシャンを集めたと。

Masa:センスというか、人柄ですね。失踪しなさそうな人とか、問題を起こさなさそうな人(笑)。このバンドではポップスを基軸として、ソウルやファンクが融合されたエンターテインメントをやろうと。歌が上手で、曲が良くて、演奏がしっかりしていてステージが楽しい…そういうバンドにしたいと思ったんです。どれか1つが秀でていたとしても、全部が揃ったバンドはなかなか居ないなと思っていたし、そりゃあ、お客さんもわざわざお金を払ってまで何度も観たいと思わなくなるなと。そういうシーンに一石を投じたかったんですよね。

●なるほど。

Masa:大袈裟ですけどその一歩を踏み出すためにこのバンドを結成したというか。

●それまでKouさんは何をやっていたんですか?

Kou:ずっとサポートミュージシャンとして、色んなアーティストの後ろでパーカッションを叩いていました。僕はそれまでバンドを1回もやったことがなかったんですよ。でもさっきMasaが言ったように、同じようなエンターテインメントをやりたいと思っていて、最初にバンドの構想を話してる段階から楽しくて。

●なるほど。

Kou:それにMasaは、お客さんの空気を見てその場でステージを作る力がすば抜けているんですよ。歌は歌えても、そういうことができる人はなかなか居ないなと思って。

●曲はどうやって作っているんですか?

Masa:色々ですね。僕が書いてきてバンドでパワーアレンジするときもあれば、みんなで「せーの!」で作る場合もあれば、ギターのHiroshiが全部作ってきたものをリアレンジするときもあったり。今回のアルバム『3枚目のジャイナ』のリードトラックのM-1「メクルメク」なんかは、1回完成してライブでも演ったんですけど、そこで“違う”と思ったんです。それで結局1年間お蔵入りしていた曲で。

●え?

Kou:アレンジが上手くいかなかった。ライブでの反応もよかったんですけど、最初の原曲から感じた衝撃が、アレンジをしたことによって薄まっちゃったんです。

Masa:だから「もっといい曲になるはずなのに!」って。

●ああ〜。

Kou:だから今回、もともと作っていたアレンジを1回崩して、また更に構築するという作業がすごく大変だったんです。2〜3ヶ月かかりました。

●「メクルメク」もそうですけど、ポップなサウンドの中に必ず切なさがありますよね。物悲しさというか、祭りの後というか、日本人の琴線を揺さぶる感覚。

Masa:僕は刹那主義というか、ありのままを受け入れつつ前に進まなきゃいけないっていう想いが根本にあるんです。楽しさも喜びも人によって幸せの形は違うから…それはその人なりの信仰と言ってもいいと思うんですが…押し付けはしないけど、その大切さをわかったほうがいいと思うんですよね。多くの人は、自分の幸せじゃないものに捕らわれているように見えるし。二人目のジャイナを通して伝えたいことはそういうメッセージなんです。

●なるほど。

Masa:でもそれをそのまま伝えるのは嫌なんです。ストレートに伝えるのが照れくさい(笑)。

●そういう人柄というか姿勢が音楽に表れていると。

Masa:そうですね〜。余白は必ず残したい。やっぱり日本人なので、行間を読んでほしいんですよね。僕、人間にいちばん大切なのは想像力だと思うんです。想像力があるから喜びや悲しみや感動があると思うし、それを僕たちの音楽やステージから感じてほしいなって。それがいちばんのテーマですね。

●ふむふむ。

Masa:なんでも全部が“楽しい”って、大人になればなるほど感じなくなってしまうんじゃないかと思うんです。必ずいつか終わりが来るし、現実は待っている。でもそんな現実の中で音楽の楽しさを伝えたいし、そこで共感を得たいと思っているというか。

●リリースツアーのファイナルは渋谷CLUB QUATTROでのワンマンですが、結成3年でQUATTROワンマンって、かなりのスピードで規模が拡大してきたんですね。

Masa:僕たちは生き急いでいるバンドなんです(笑)。アルバムの制作期間も設けていなかったんですよ。ツアーもやって、ライブもやって、動員を増やしながらCDも出す。普通のバンドだったら尻込みするようなスケジュールですけど、それを死ぬほど本気でやるっていう。人生を賭けて実験中なんです。

●人生を賭けて(笑)。

Masa:“バンドのために自分の生活を捨ててもいい”という想いが、メンバー全員どんどん強くなっているんですよね。そういう覚悟がステージにすごく影響しているし。

●確かに、ライブってそういう目に見えない気持ちがすごく影響しますよね。

Masa:想いが強すぎて、たまに空回りすることもありますけど(笑)。

●ハハハ(笑)。

Masa:ミュージシャンって、音楽に対してはみんな真剣だと思うんですよ。それはもちろん大切なんですけど、もっと大切なのはバックボーンだと思うんです。ここ10年くらい、数あるエンターテインメントの中で音楽は確実に衰退していると感じるんですけど、それは「ミュージシャンなんだからいい音楽を創っていればいいんだ」っていうシーン全体の勘違いみたいなものが原因だと思うんですよね。そうじゃなくて、みんながお客さんを楽しませることに本気になって、物販とかも含めて、いい意味でビジネスとして成立させないとダメだろうなって。そういう現状に対して、人生を賭けて挑戦しているんです。どうせやるんだったら前のめりがいいし、たくさんの人に迷惑をかけるんだったらとことんまでやって死にたい。だからこのバンドは夢の象徴なんですよね。

interview:Takeshi.Yamanaka

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